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「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針について」

健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条
第2項の規定に基づく基本方針について

平成15年3月28日
閣議決定

 政府は、健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)附則第2条第2項の規定に基づき、基本方針を別紙のとおり定める。



(別紙)
健康保険法等の一部を改正する法律附則
第2条第2項の規定に基づく基本方針

(医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針について)

第1 はじめに

 昨年7月に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号。以下「改正法」という。)附則第2条第2項において、政府は、
(1)保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方
(2)新しい高齢者医療制度の創設
(3)診療報酬の体系の見直し
 に関する基本方針を平成14年度中に策定することとされたところである。

 この「基本方針」は、医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する今後の改革の基本的な方向を示すものであり、政府としては、この「基本方針」に基づき、今後、具体的な改革の内容を検討していくこととする。

第2 医療保険制度体系

 1 基本的な考え方

(1)安定的で持続可能な医療保険制度の構築

 人口構成、就業構造等の構造変化に柔軟に対応し、経済・財政とも均衡のとれた、安定的で持続可能な医療保険制度を構築し、将来にわたり国民皆保険制度を堅持する。

(2)給付の平等・負担の公平

 保険者の自立性・自主性を尊重した上で、医療保険制度を通じた給付の平等、負担の公平を図り、医療保険制度の一元化を目指す。

(3)良質かつ効率的な医療の確保

 保険者、医療機関、地方公共団体等の関係者が連携して、地域の住民に対して質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進する。

 2 保険者の再編・統合
(1)基本的な方向

 被用者保険、国保それぞれについて、各保険者の歴史的経緯や実績を十分尊重しながら、保険者の財政基盤の安定を図るとともに、保険者としての機能を発揮しやすくするため、再編・統合を推進する。

 再編・統合を進めるに当たっては、

(1)保険者として安定的な運営ができる規模が必要であること
(2)各都道府県において医療計画が策定されていること
(3)医療サービスはおおむね都道府県の中で提供されている実態があること
 を考慮し、都道府県単位を軸とした保険運営について検討する。

(2)具体的な方向
(1)保険者ごとの再編・統合の方向
国保

 市町村国保については、「市町村合併特例法」の期間中は、市町村合併の推進や事業の共同化等により、保険運営の広域化を図る。
 さらに、国、都道府県及び市町村の役割を明確にした上で、都道府県と市町村が連携しつつ、保険者の再編・統合を計画的に進め、広域連合等の活用により、都道府県においてより安定した保険運営を目指す。なお、被保険者管理や保険料徴収等の事務については引き続き住民に身近な市町村において実施する。

 また、低所得者を多く抱える市町村国保の保険運営の安定化を図りつつ、財政調整交付金の配分方法の見直しや都道府県の役割の強化を図る。

 国保組合については、市町村国保の補完的役割を果たしているが、職域保険と地域保険という観点から、その在り方について検討するとともに、小規模・財政窮迫組合の再編・統合に資するよう、規制緩和を進める。
 また、市町村国保との財政力の均衡を図る観点から、国庫助成の在り方について見直しを行う。

政管健保

 政管健保については、事業運営の効率性等を考慮しつつ、財政運営は、基本的には、都道府県を単位としたものとする。

 都道府県別の年齢構成や所得について調整を行った上で、保険料率の設定を行う仕組みとし、国庫補助の配分方法の見直しや、被保険者等の意見を反映した自主性・自律性のある保険運営が行われるような仕組みについて検討する。

 こうした取組を通じ、各都道府県単位で政管健保の健全な財政運営が確保され、被保険者の適切な負担の下で、地域の実情に応じた医療サービスが保障される姿を目指す。

 引き続き、政管健保の組織形態等の在り方について検討する。

健保組合等

 健保組合については、小規模・財政窮迫組合の再編・統合に資するよう規制緩和等を進めるとともに、再編・統合の新たな受け皿としての都道府県単位の地域型健保組合の設立を認める。

 全国展開の健保組合や都道府県単位の健保組合で、健全かつ安定的な運営が確保されているものについては、引き続き、自主性・自律性のある保険運営を行うものとする。

 共済組合については、その自立性を尊重しつつ、保険者としての運営の在り方を検討する。

(2)地域における取組
地域の実情を踏まえた取組

 保険者、医療機関、地方公共団体等の関係者が、都道府県単位で連携して地域の住民に対し質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進する。

  保険者・医療機関・地方公共団体が協議する場を設け、医療の地域特性の調査・分析・評価を行うとともに、医療計画、介護保険事業支援計画及び健康増進計画との整合性を図りつつ、医療費の適正化に向けて取り組むための計画を策定する。

 当該計画の実施に当たり、住民の健康づくりや適切な受診、病床の機能に応じた効率的な利用の促進等地域における取組に関し、国と都道府県の間で協議・検討を行い、必要な措置を講ずる。

 医療の地域特性に起因して生ずる医療費の地域差部分については、地域における適正化努力を促すような仕組みを導入する。

保険者による取組

 再編された保険者は、レセプト点検等の取組を更に強化するとともに、被保険者相談、地域の医療サービス等に関する情報提供、きめ細かな保健事業について都道府県単位で共同実施を推進する。

 3 高齢者医療制度
(1)基本的な方向

 個人の自立を基本とした社会連帯による相互扶助の仕組みである社会保険方式を維持する。

 年金制度の支給開始年齢や介護保険制度の対象年齢との整合性を考慮し、また、一人当たり医療費が高く、国保、被用者保険の制度間で偏在の大きいことから、65歳以上の者を対象とし、75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな制度とする。

 これに伴い、老人保健制度及び退職者医療制度は廃止し、医療保険給付全体における公費の割合を維持しつつ、世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営に責任を有する主体の明確化を図る。

 現役世代の負担が過重なものとならないよう、増大する高齢者の医療費の適正化を図る。

 この方向に沿った(2)のような制度の骨格を基本とし、今後、これを軸として検討を更に深める。

(2)具体的な方向

 後期高齢者については、加入者の保険料、国保及び被用者保険からの支援並びに公費により賄う新たな制度に加入する。
 新たな制度の保険者については、後期高齢者の地域を基盤とした生活実態や安定的な保険運営の確保、保険者の再編・統合の進展の状況等を考慮する。
 なお、国保及び被用者保険からの支援については、別建ての社会連帯的な保険料により賄う。

 前期高齢者については、国保又は被用者保険に加入することとするが、制度間の前期高齢者の偏在による医療費負担の不均衡を調整し、制度の安定性と公平性を確保する。その際、給付の在り方等についても検討する。

 高齢者については、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求める。

 後期高齢者に公費を重点化するという改正法の考え方を維持する。

 高齢者について、医療給付と介護給付が適切かつ効率的に提供されるようにするとともに、自己負担の合算額が著しく高額になる場合の負担の軽減を図る仕組みを設ける。

 高齢者の一人当たり医療費が現役世代と均衡のとれたものとなるよう、国、都道府県、地域の関係者等の取組を一層推進するとともに、保健、医療、介護等の連携による各サービスの効率化等を進め、医療費の適正化を図る。

第3 診療報酬体系

 1 基本的な考え方

 診療報酬体系については、少子高齢化の進展や疾病構造の変化、医療技術の進歩等を踏まえ、社会保障として必要かつ十分な医療を確保しつつ、患者の視点から質が高く最適の医療が効率的に提供されるよう、必要な見直しを進める。
 その際、診療報酬の評価に係る基準・尺度の明確化を図り、国民に分かりやすい体系とする。
 2 基本的な方向
 診療報酬体系については、(1)医療技術の適正な評価(ドクターフィー的要素)、(2)医療機関のコストや機能等を適切に反映した総合的な評価(ホスピタルフィー的要素)、(3)患者の視点の重視等の基本的な考え方に立って見直しを進める。
 3 具体的な方向
(1)医療技術の適正な評価

 医療技術については、出来高払いを基本とし、医療従事者の専門性やチーム医療にも配慮しつつ、難易度、時間、技術力等を踏まえた評価を進める。そのために必要な調査・分析を進める。

 高脂血症、高血圧、糖尿病等の生活習慣病等の重症化予防を重視する観点から、栄養・生活指導、重症化予防等の評価を進める。

 医療技術の進歩や治療結果等を踏まえ、新規技術の適切な導入等が図られるよう、医療技術の評価、再評価を進める。

(2) 医療機関のコスト等の適切な反映

 入院医療について必要な人員配置を確保しつつ、医療機関の運営や施設に関するコスト等に関する調査・分析を進め、疾病の特性や重症度、看護の必要度等を反映した評価を進めるとともに、医療機関等の機能の適正な評価を進める。

(1)疾病の特性等に応じた評価

 急性期入院医療については、平成15年度より特定機能病院について包括評価を実施する。また、その影響を検証しつつ、出来高払いとの適切な組合せの下に、疾病の特性及び重症度を反映した包括評価の実施に向けて検討を進める。

 慢性期入院医療については、病態、日常生活動作能力(ADL)、看護の必要度等に応じた包括評価を進めるとともに、介護保険との役割分担の明確化を図る。

 回復期リハビリテーション、救急医療、小児医療、精神医療、在宅医療、終末期医療等について、医療の特性、患者の心身の特性、生活の質の重視等を踏まえた適切な評価を進める。

(2)医療機関等の機能に応じた評価

 入院医療については、臨床研修機能、専門的医療、地域医療支援機能等の医療機関の機能及び入院期間等に着目した評価を進める。

 外来医療については、大病院における専門的な診療機能や紹介・逆紹介機能等を重視した評価を行うとともに、診療所及び中小病院等における初期診療、かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつけ薬剤師の機能、訪問看護、在宅医療等のプライマリケア機能等を重視した見直しを進める。

(3)患者の視点の重視
(1)情報提供の推進

 医療機関の施設基準や機能等に関する情報、診療・看護計画等の情報の提供を進める。

(2)患者による選択の重視

 患者ニーズの多様化や医療技術の高度化を踏まえ、特定療養費制度の見直しを行う等患者の選択によるサービスの拡充を図る。

(4)その他
(1)歯科診療報酬

 上記のほか、口腔機能の維持・増進の観点から、歯科診療所と病院歯科における機能や連携に応じた評価、う蝕や歯周疾患等の重症化予防、地域医療との連携を重視した在宅歯科医療等の評価を進める。

(2)調剤報酬

 上記のほか、医薬品の適正使用の観点から、情報提供や患者の服薬管理の適正な推進等保険薬局の役割を踏まえた評価を進める。

(3)薬価・医療材料価格制度等

 薬価算定ルールの見直しについて検討を行う。

 画期的新薬について適切な評価を推進するとともに、後発品の使用促進のための環境整備を図る。

 医薬品等に係る保険適用及び負担の在り方について検討を行う。

 医療材料価格について、引き続き、内外価格差の是正を進める。

 医薬品、医療材料、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な評価を進める。

第4 改革の手順・時期
 この基本方針に基づく医療保険制度体系に関する改革については、平成20年度に向けて実現を目指す。法律改正を伴わずに実施可能なものについては逐次実施に移すものとし、法律改正を伴うものについては、概ね2年後を目途に順次制度改正に着手する。
 診療報酬体系に関する改革については、次期診療報酬改定より、逐次、実施を図る。

 この基本方針に基づく検討に当たっては、社会経済情勢の変化、医療保険及び国・地方の財政状況の推移等を十分に勘案するとともに、地方公共団体、保険者、医療関係者等を含め広く国民の意見を聴いた上で具体的な内容をとりまとめるものとする。
 また、医療保険制度の改革に当たっては、年金制度、介護保険制度等の関連する社会保障制度の改革や政府の経済財政運営の方針との整合性を確保するとともに、その実施に当たっては、現行制度から新制度への円滑な移行がなされるよう十分に配慮するものとする。

 この基本方針のほか、先般の改正法附則第2条に規定されている医療及び医療に要する費用に関する情報の収集、分析等の体制の整備、保険給付の内容及び範囲の在り方等の課題についても引き続き検討を行い、医療制度の改革を総合的に推進するものとする。

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