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資料1

薬事制度見直し(案)の概要について


[ 平成14年1月30日
厚生労働省
]

はじめに

 薬事法は、医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性確保の観点から、企業が行う製造・販売等に関して必要な規制を行う法律。

⇒ 国際的な整合性や、科学技術の進展、企業行動の多様化等、社会経済情勢の変化を踏まえ、逐次適切な見直しが必要

○ ライフサイエンスの時代=21世紀への対応

○ 21世紀のニーズに合わせた薬事制度の見直し


見直しに向けての視点

○ 医療機器に係る安全対策の抜本的な見直し
 = 医薬品以上に多様な技術・素材が用いられる医療機器の特性に対応

○ 「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実
 = 生物由来製品の安全確保に向けての法的整備は、急務の課題

○ 市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見直し
 = 企業の安全対策責任の明確化と、国際整合性を踏まえた製造承認制度の見直し



I 医療機器に係る安全対策の抜本的な見直し

○ メス・ピンセットから画像診断装置、ペースメーカに至る、多種多様な医療機器

○ 医療機器の構造の複雑化や医療の高度化等に対応した見直しの必要性


1 医療機器のリスクに応じたクラス分類制度の導入

○ 多種多様な医療機器につき、人体に与えるリスクに対応した安全対策を講じるため、国際分類等を踏まえ、以下の3つの類型に分類すること。

 《医療機器に係るクラス分類》

〔極低リスク医療機器〕人体へのリスクが極めて低い医療機器
 [例] メス、ピンセット、X線フィルム等

〔低リスク医療機器〕人体へのリスクが比較的低い医療機器
 [例] MRI、電子式血圧計、消化器用カテーテル等

〔高リスク医療機器〕人体へのリスクが比較的高い医療機器
 [例] 透析器、ペースメーカ、放射線治療装置等

 注) 1. クラスごとの医療機器の呼称については、検討中
    2. また、具体的な品目は、厚生労働大臣が指定。



2 低リスクの医療機器に係る第三者認証制度の導入

○ 国レベルでの承認審査の重点化の一環として、低リスク医療機器のうち厚生労働大臣が適合性認証基準を定めた品目については、現行の厚生労働大臣による承認制度に代えて、公平・公正な第三者認証機関による基準適合性認証を受けることとすること。

 《第三者認証機関の主な認定要件》

1 法人であること。
2 基準適合性認証業務の適格かつ円滑な遂行能力を有すること。
3 基準適合性認証業務が不公正になるおそれがないよう、一定の基準に適合すること。 等



3 高リスク医療機器等の販売業・賃貸業への許可制の導入

○ 医療機器の販売・賃貸における安全対策をより一層推進していく必要性に鑑み、現在、都道府県知事への届出制とされている医療機器の販売業・賃貸業のうち、高リスク医療機器及び特定保守管理医療機器(仮称。※)に係る販売業・賃貸業については、現行の届出制に代えて都道府県知事の許可を必要とすること。

※ 特定保守管理医療機器(仮称):保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技術を必要とする医療機器。[例] レントゲン装置、CT装置、人工呼吸器等


4 医療機器に係る治験制度等の充実

○ 医療機器に係る治験制度等について、現行の医薬品に係る治験等の例と同様に、治験の実施に係る有害事象報告制度の導入や、臨床試験の実施基準(GCP)の設定等、制度の充実や法的根拠規定の整備を図ること。


5 その他

(1) 法制上の名称を「医療用具」から「医療機器」に変更

○ 医療機器の多様化や高度化の実態等を踏まえ、薬事法上、従来、「医療用具」としていた法制上の名称を「医療機器」に変更

(2) その他の安全対策充実策

(1) 医療機器の販売業・賃貸業全般に共通する遵守要件の強化

 遵守要件(※)として、納品先記録の作成・保管、一般消費者への情報提供、中古品販売時における元売業者からの指示事項の遵守等を追加

※ 現行の遵守要件(具体的内容は厚生労働省令で規定)においては、営業所における品質の確保義務や苦情の適正な処理義務等を規定。

(2) 表示事項の充実

 医療機器本体直接の容器・被包への表示ルールについて、医療機器の高度化・複雑化や、中古品の流通実態等に対応した安全対策の充実を図るため、必要な見直しを実施。

(3) 医療機器修理業に係る位置付けの明確化

○ 製造業の一類型として位置付けられてきた修理業について、法的明確化を図るとともに、遵守要件を強化。


II 「バイオ・ゲノムの世紀」に対応した安全確保対策の充実

○ 人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される生物由来製品

○ 一方、原材料の汚染に由来する感染リスク等に、特段の注意が必要な場合あり


1 生物由来製品の定義と感染リスクに応じた分類

○ 多種多様な生物由来製品につき、感染リスク等に対応した安全対策を講じるため、法的な定義を置くとともに、2つの類型に分類すること。

 《生物由来製品の定義と分類》

〔生物由来製品〕人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される医薬品・医療機器等のうち、保健衛生上特別の注意を要するもの
 [例] 遺伝子組換製剤、自己由来製品、ワクチン等

〔特定生物由来製品〕生物由来製品のうち、その特性に鑑み、当該製品による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための特段の措置を講ずることが必要なもの
 [例] 人血液製剤、人細胞組織医薬品、動物「生」細胞組織医薬品・医療機器等

注) 具体的な品目は、厚生労働大臣が指定。



2 製造から市販後に至る各段階における生物由来製品の安全確保

○ 生物由来製品については、その感染リスク等を踏まえ、原材料の採取、製造から市販後に至る各段階において、一般の医薬品・医療機器等における各種基準に加え、付加的な基準等を定めることにより、一層の安全確保を図ること。

 《生物由来製品に係る付加的な安全対策の例》

〔原材料採取段階〕

  •  原材料記録を保管しなければならないこと。

〔製造段階〕

  •  構造設備や製造管理・品質管理の方法(GMP)について、生物由来製品の特性に応じた付加的な基準を設けること。

    [付加的な基準] 厚生労働省令における規定事項(案)
    •  原材料の受入・保管区域の他の区域からの区分
    •  細胞・組織等が交叉汚染を起こさないような保管方法
    •  原材料記録の10年間保管

〔適正に使用するための措置〕

  •  直接の容器・被包、添付文書等に、生物由来製品である旨等の表示を行うこと。
  •  関係者は、その使用者等に対して、生物由来製品に係る必要な情報の提供を行うこと。

〔感染症定期報告制度〕

  •  生物由来製品の元売業者は、原材料の感染症に係る情報収集・分析評価を行い、その結果を、厚生労働大臣に定期的に報告しなければならないこと。


3 「特定生物由来製品」に係る更なる安全措置

○ 「特定生物由来製品」については、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため、さらに、以下の対策を講じること。

 「特定生物由来製品」に係る更なる対策》

〔原材料採取段階〕

  •  保健衛生上の観点から定める品質等基準(いわゆる42条基準)において、原材料採取の方法等につき、付加的な基準を設けること。

    [付加的な基準] 厚生労働大臣が定める付加的な基準に規定する内容(案)の例
    •  細胞・組織等の採取に際してのドナースクリーニング(問診、ウイルス検査等)
    •  必要な衛生管理設備や採取方法等

〔市販後段階〕

  •  感染因子の混入が判明した場合に、その時点において可能な安全確保措置(遡及調査等)を速やかに講ずることを可能とするため、関係者が必要な記録を作成・保存しなければならないこと


III 市販後安全対策の充実と、承認・許可制度の見直し

○ 製造所単位の「製造行為」に着目した現行の承認・許可制度

○ 「製造許可・製造承認」から「元売許可・元売承認」へ

注) 「元売」の用語・呼称は、現段階では、仮称。


1 元売行為と市販後安全対策に着目した許可体系の構築

○ 国際整合性確保等の観点を踏まえ、医薬品・医療機器等を市場に提供するに際しての厚生労働大臣の関与につき、個別承認品目ごとの製造許可制度を廃止し、実際に出荷・上市する者が行う元売行為に着目した許可体系に再構築すること。

 《「元売業」許可制度の概要》

〔許可〕医薬品・医療機器等の元売業には、厚生労働大臣の許可(※)が必要。
 ※ 実際の許可権者は、政令で、その全部又は一部を都道府県(法定受託事務)とする予定。

〔許可区分〕その元売を行おうとする医療用医薬品、一般用医薬品、医療機器(クラス分類ごと)、医薬部外品及び化粧品の区分ごとに許可。

〔許可要件〕市販後安全対策を重視する観点から以下のとおりとすること。

  •  法人であること
  •  品質管理体制及び市販後安全管理体制等を定めること
  •  具体的には、必要業務の量や質等を勘案して、許可区分に応じた段階的な要件を設定

〔更新制〕元売業の許可は、更新制(原則5年ごとを想定。)とすること。

〔遵守要件〕市販後安全対策業務の適正実施・業務記録の保存等の要件を設定。

〔責任者の設置義務〕市場に対する責任を明確化するため、元売業者は、「品質管理・安全対策総括責任者(仮称)」の設置が必要。

〔市販後安全対策業務等の外部委託〕一定の定型的な業務等については、要件に適合する卸売販売業者等に対し、業務委託を行うことができること。


 《「製造等関連施設」認定制度について》

○ 製造行為の全面委託を可能とするに際し、実際の製造行為が、医薬品・医療機器等を製造するための要件(構造設備基準等)を確実に具備している施設において行われることを確保するため、製造等関連施設の認定制度を導入



2 元売承認制度の導入等承認制度の見直し

○ 元売業許可制度の創設にあわせ、個別の医薬品・医療機器等を市場に提供するに当たっての厚生労働大臣の関与についても、従来の製造承認制度から、元売業者が製品を市場に出荷・上市することを承認する仕組みに改めるとともに、体外診断用医薬品に係る承認制度の見直し等を行うこと。

 《「承認制度」に係る見直しの概要》

〔承認〕医薬品・医療機器等の元売には、品目ごとに厚生労働大臣承認が必要。

〔承認拒否事由〕現行とほぼ同様であるが、以下の項目を拒否事由に追加。

  •  承認申請品目に係る区分について、元売業の許可を受けていないとき。
  •  承認申請品目の製造等関連施設が、施設認定を受けていないとき。
  •  承認申請品目の製造管理・品質管理の方法が、GMPに適合しないとき。

〔承認時の査察〕従来、承認品目ごとに行っていた製造業許可が廃止されたことに伴い、厚生労働大臣(政令で委任された場合には都道府県知事(法定受託事務))は、個別品目の承認前にGMP査察を行うことを原則化。

〔軽微な承認事項変更に係る届出制の導入〕承認審査の効率化・迅速化を図る観点から、承認事項のうちの一定の軽微な事項については、届出によってこれを認める仕組みを導入。

〔品目の元売承認の失効等〕元売承認品目の承認要件としての元売業許可、製造等関連施設認定又はGMPに関する査察結果効力が失われた場合には、承認自体も効力を失う等の措置を実施。


〔マスターファイル制度の導入〕原薬メーカー等の知的財産としての製造データ等を最終製品製造者や元売業者から保護するとともに、承認申請のための添付データの簡略化を図るため、当該データ等について、原薬メーカー等が厚生労働大臣(審査機関)に直接登録することができる仕組み(マスターファイル制度)を導入。


〔体外診断用医薬品に係る承認制度の見直し〕その他の医薬品と比べ、人体に対する直接的リスクが低いと考えられる体外診断用医薬品について、診断情報リスク(※1)に基づく類型化を行うとともに、当該類型ごと(※2)に、承認不要化や、第三者認証制度を導入

※1 診断情報リスク:確定診断に与える寄与度の大きさを勘案し、当該医薬品の不具合が確定診断に与えるリスク

※2 以下の3類型に分類

(1) 低リスク製品のうち、精度管理が容易  ⇒ 承認不要化
(2) 低リスク製品のうち、基準を定めて指定 ⇒ 第三者認証制度の導入
(3) (1)、(2)以外の体外診断用医薬品 ⇒ 従来どおり、厚生労働大臣承認


IV その他検討中の項目

1 医療機関が行う臨床研究に係る薬事法上の適用関係の明確化

○ 医療機関が自ら行う臨床研究において用いる薬物・器具器械の企業による提供を可能とするため、現行の治験届出制度を拡大し、当該臨床研究に係る薬事法上の適用関係を明確化する。


2 医薬品に係る分類の見直し

○ 薬局開設者等が医師・歯科医師の処方せん等なくして販売できない医薬品の分類として、「処方せん薬」(仮称)を新たに設け、現行、医療用医薬品として承認されている医薬品を、原則として処方せん薬(仮称)として指定する。また、これに伴い、「要指示医薬品」を廃止する。


3 日本薬局方に関する規定の見直し

○ 現行薬事法上、「主として繁用される原薬たる医薬品及び基礎的製剤を収める第一部」と、「主として混合製剤及びその原薬たる医薬品を収める第二部」の二部構成となっている日本薬局方について、現在の科学的水準を踏まえた構成が可能となるよう、その根拠規定に係る所要の見直し等を行う。


4 その他

○ 科学技術水準の向上等を踏まえた、既承認製品の承認内容の見直し
  … 各種の品質に関する基準の策定、再評価制度の運用の見直し 等

○ 未承認医薬品に係る特例輸入制度の見直し
  … 未承認医薬品に係る特例輸入制度について、医療機器にも拡充 等

○ 企業責務の強化、行政による指導権限の強化、罰則の強化等
  … 副作用発生時の元売業者による危害防止措置実施義務の法的明確化 等


V その他

○ 所要の経過措置や準備期間を設け、改正法の円滑な施行を図る。


[参考]「より安全」で「より有効」な製品を「より早く」承認できる体制の構築

○ 特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)等を踏まえ、医薬品・医療機器等の審査体制の抜本的な見直しを行う。新体制の構築については、特殊法人等改革や、「薬事制度の見直し」の施行スケジュール等も勘案しつつ、着実に実施。

 《承認審査体制等の見直しに向けての方向性等(案)》

  •  承認に係る最終的な判断等、「国が自ら行うべき」業務等は引き続き、厚生労働本省において実施。
  •  現在の「審査関係3組織」の機能を統合し、より効率化した体制を構築。
  •  バイオ・ゲノム等、21世紀型の先端技術に対応した審査スタッフの充実等。
  •  がんなどの重篤かつ予後の悪い疾患に対する医薬品や、リスクの高い医療機器に係る審査につき、より重点化や迅速化を図れるよう、検討。
  •  企業の安全対策責任をより重視していくことに伴い、国レベルの安全対策関連業務をより迅速かつ効果的に実施するための体制についても、検討。

以上



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