全国の児童相談所における児童虐待の相談件数が急増しており、(平成11年度には11,631件であり、統計をとり始めた平成2年度の10倍強)児童虐待への対応が社会的な課題となっている。このため、昨年11月20日から施行された「児童虐待の防止等に関する法律」(以下「児童虐待防止法」という。)の円滑な施行を図るとともに、平成13年度予算案においても児童虐待防止対策の推進に必要な費用を確保しており、児童虐待の予防、早期発見・早期対応、被虐待児童への適切な保護等の総合的な対策の推進をお願いする。
(1)児童虐待防止法について
近年の児童虐待に関する相談件数の急増等を踏まえ、昨年5月に児童虐待防止法が制定され、昨年11月20日から施行されたところ。
(2)児童相談体制の充実について
(1) 児童虐待防止市町村ネットワーク事業について
(2) 児童家庭支援センターについて
(3) 児童相談所の体制整備
イ 一時保護所への心理職の配置について
ウ 一時保護所の施設整備について
エ 児童福祉司任用資格の取得のための通信教育について
オ 児童虐待への適切な対応の徹底について
(イ)子どもの安全確保の優先
(ウ)組織的な対応
(エ)機関連携による援助
(オ)家族の構造的問題としての把握
(カ)専門性の向上、体制の整備
(3)児童虐待に対する広報・啓発について
児童虐待の防止等に関する法律が平成12年5月に成立し、このなかで「学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健婦、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない(第5条)」と規定されたところである。
(4)児童養護施設等の職員配置について
(1) 被虐待児個別対応職員の配置
(5)児童養護施設等の整備について
〔平成12年度補正予算〕
※2 特例措置の内容
〔平成13年度予算(案)〕
(6)虐待・思春期問題情報研修センター(仮称)の設置について
児童虐待の防止等に関する法律の施行や附帯決議などを踏まえ、「虐待・思春期問題情報研修センター(仮称)」を横浜市に設置し、児童相談所等の第一線機関への情報提供や職員研修などの技術的支援を行うことにより、深刻化する児童虐待問題や思春期問題(非行・家庭内暴力等)への対応を充実強化する。
〔 機 能 〕
平成13年度
児童虐待防止法の主な内容は以下のとおり。
(1)「児童虐待」の定義
身体的虐待、性的虐待、保護の怠慢(ネグレクト)、心理的虐待
(2)児童に対する虐待の禁止
(3)国及び地方公共団体の責務
関係機関及び民間団体の連携の強化、職員の人材の確保及び資質の向上、広報等の啓発活動の実施
(4)児童虐待を発見しやすい立場にある者(教職員、医師、弁護士等)の早期発見義務
(5)国民の通告義務
(6)児童虐待を受けた児童の適切な保護
・速やかな安全確認及び一時保護、立入調査、警察官の援助
・虐待を行った保護者に係るカウンセリングを受ける義務、面会・通信の制限
(7)親権の適切な行使
なお、児童相談所長及び児童福祉司の資格要件に係る改正(児童虐待防止法附則第3条に基づく児童福祉法第11条第1項第5号及び第16条の2第2項第4号の改正)については、平成14年4月1日から施行(「児童虐待の防止等に関する法律の一部の施行期日を定める政令」(平成12年政令第516号))することとされており、当該改正の具体的な内容を定める厚生労働省令については、追って公布するとともに通知の発出を予定している。
近年、児童虐待の問題が深刻な社会問題となっており、住民に身近な市町村域において、こうした問題への取り組みを進めることが必要となっている。
このため、平成12年度より、保健、医療、福祉、教育、警察、司法等の関係機関・団体等のネットワークを整備する「児童虐待防止市町村ネットワーク事業」を実施しているところであるが、平成13年度予算案においては、200か所(100か所増)を実施することとしているので、積極的な取り組みをお願いする。
なお、本事業については、「子どもの心の健康づくり対策事業」の一環として実施しており、同事業に対する市町村における積極的な対応をお願いする。
児童相談所等の関係機関と連携しつつ、虐待や非行など複雑な問題を抱える児童及びその家庭に対し、地域に密着したきめ細かい相談支援を行う施設として、整備に努めているところであるが、平成13年度予算案では、12年度の実績及び各県の計画等を勘案して10か所(計50か所)の増を図ることとしているので、積極的な設置が図られるよう、管下の施設に対する指導をお願いする。
ア 保護者へのカウンセリングの充実について
児童相談所におけるカウンセリングは、心理療法担当職員及び児童福祉司が家庭訪問や児童相談所内において、実施してきたところであるが、児童虐待を引き起こす保護者は、心に問題(保護者自身の被虐待体験等)を抱えていることが多いと言われており、心理療法担当職員等だけでの対応には限界があることから、精神科医の助言・指導を得て、効果的なカウンセリングを実施することとしたので、事業実施に向けた体制の整備をお願いしたい。
被虐待児童は、夜驚、夜尿、べたつき、挑発行為などの問題行動の発現が多いことから、心理職員(非常勤職員)を配置し、生活場面において行動観察及び心のケアを実施することとしたので、事業実施に向けた体制の整備をお願いしたい。
一時保護所は、被虐待児童の受入が増加していることから、乳幼児が自由に過ごせる遊戯室や児童生徒が勉強する学習室、来訪する保護者のための面談室等を補助基準面積に追加することとしたので、一時保護児童の生活の質の向上に向けた施設の充実をお願いしたい。
補助基準面積9.9平方メートル → 18.4平方メートル(1人当たり)
児童福祉法第11条に規定する厚生労働大臣の指定する講習会を通信教育により開設し、児童福祉司の人材養成を行うこととしているので、児童福祉司を希望する貴管下職員の受講について御配意をお願いする。
なお、募集要領等については、通信教育を実施する全国社会福祉協議会中央福祉学院より、後日、送付を予定しているので御了知願いたい。
近年、保護者からの虐待による児童の死亡等の事件が相次いで発生しており、その際の児童相談所等関係機関における対応が必ずしも適切とは言えないケースも見られる。このため、貴管下の児童相談所等における対応体制について、下記に基づき再点検を行い再発防止に努めていただきたい。
(ア)迅速な対応
児童虐待は、事例によっては猶予を許さない緊急な対応が必要であることが少なくない。児童相談所の職員は日常業務に追われ多忙を常としていると思われるが、虐待の発見や通告がなされたときは他の業務に先んじて対応を行うことを原則としなければならない。初期の対応が緩慢であったり手間取ることによって取り返しのつかない事態に至る事例が少なからず生じていることに留意し、適切な対応をお願いする。
児童相談所が介入・保護の役割と後の指導・治療の役割を担うため双方のバランスが難しく、保護者と摩擦を起こさないことに注意が注がれることになりがちであるが、個々の子どもにとっては安全確保こそが最優先課題であることを常に意識しておかなければならない。保護者との関係に配慮が行き過ぎることによって介入や保護の判断が鈍り、結果として子どもが犠牲になってしまうことがあってはならない。
児童虐待への援助は、担当者一人の判断で行うことを避けなければならない。発見や通告があれば、即刻受理会議を開いて調査やアプローチの方法、あるいは一定の評価を機関として行わなければならない。以降も情報の収集や機関連携、援助の方向などを組織的協議に則って進めていく必要がある。特に困難な保護者への対応、ポイントとなる調査や機関協議などは複数の職員で対応することを心がけねばならない。担当者一人に負担がかかり過ぎないように組織としてサポートしなければならないし、一視点による判断の弱点を組織としてカバーすることに留意しなければならない。
また、総合的、多面的に問題をとらえ、より的確な評価や判断を行うためにも、事例検討会などを積極的に活用するよう心がけるべきである。
多様な複合的問題を抱える家族に対しては、一機関の自己完結的な援助で効果をあげることは困難である。したがって、問題に対する対応機能をもった機関との連携が援助にあたっての必須の条件になる。しかし、機関連携が効果を発揮するためにはお互いがそれぞれの立場と機能を十分に理解し、問題に対する認識と援助目標を共有化させる作業が必要である。そして、その上で相互の役割分担や援助のキーパーソンを定め、随時援助の評価や調整を行っていくことが大切になるが、機関の合同会議に当たっては事前に機関内で十分詰めをすることや、必要に応じ機関としての決定権をもつ人の参加が重要になる。また、日ごろからの機関同士の協力関係の維持や職員の相互面識も大変重要な要素であるので、日常的なネットワークの構築や多職種研究会の取り組み等にも積極的に努力すべきである。
児童虐待が生じる家族は、保護者の性格、経済、就労、夫婦関係、住居、近隣関係、医療的課題、子どもの特性等々、実に多様な問題が複合、連鎖的に作用し、構造的背景を伴っているという理解が大切である。したがって、単なる一時的な助言や注意、あるいは経過観察だけでは改善が望みにくいということを常に意識しておかなければならない。放置すれば循環的に事態が悪化・膠着化するのが通常であり、積極的介入型の援助を展開していくことが重要との認識が必要である。また、家族全体としての問題やメカニズムの把握の視点と、トータルな家族に対する援助が必要不可欠である
児童相談所は、いうまでもなく児童福祉における専門行政機関と位置づけられ、必要な人員、体制の整備が図られている必要がある。
今般、児童虐待防止法においても、児童虐待の防止等のための必要な体制整備に努めることが規定されたところである。
厚生労働省としても、平成13年度予算案において、児童相談所、児童福祉施設等の体制整備に必要な予算を確保したところであり、また、地方財政当局へ児童福祉司の増員等を要望しているところであるので、人材の確保、資質の向上等一層の努力をお願いする。
なお、厚生労働省においては、平成13年度より児童虐待防止担当企画官を家庭福祉課に配置するなど児童虐待防止対策に係る体制の強化を予定している。
このため、法律の成立を踏まえ迅速な対応を図る観点から、平成12年度補正予算において、児童虐待を発見しやすい立場にある者等を対象に子ども虐待防止のリーフレットを作成、平成13年3月までに配布し、児童虐待の通告義務の周知と自覚を促すこととしているので、御協力をお願いする。
被虐待児については、過度な甘えや、過敏反応、他児への暴力、不眠傾向などが見られ、他児への影響が大きく集団生活に不適応な状態をきたす場合があり、集団の中ではできない個人的な受け止めの場を用意し、職員と児童との1対1の関係の中で安全感と安心感を確保し、その児童と職員との信頼感を形成していくことが重要である。
そのため、豊富な知識と経験を有する主任児童指導員またはそれに準じた職員1人を被虐待児個別対応職員として変則勤務から外し、個別面接や、生活場面での1対1の対応、保護者への援助、他の児童指導員等への助言、里親への紹介等にあたることができる環境を整え、被虐待児の処遇の充実を図ることとしたので、積極的な取り組みをお願いする。
(2) 心理療法担当職員の配置
虐待により心的外傷を受けた児童に対しては、遊戯療法や箱庭療法等の心理療法により心の傷を癒すことが必要である。また、親子関係の再構築を図るためには、保護者へのカウンセリングや家族療法等の方法が重要となる。
このため、大学で心理学を修め心理療法の技術を有する者を、児童養護施設等(児童養護施設298か所、乳児院40か所、母子生活支援施設86か所)に非常勤職員として配置し、児童及びその保護者の心のケアを行うこととしたので、積極的な取り組みをお願いする。
虐待を受けた児童が入所している児童養護施設の改築等や新たに情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センターを整備するための経費を計上するとともに、施設整備を行う社会福祉法人等の負担軽減のための特例措置を行うこととしたので、管下市町村及び社会福祉法人等への指導をお願いする。
※1 改築等の内容
・児童養護施設のうち居室面積について、児童福祉施設最低基準の一部を改正する省令(平成10年2月18日厚生省令第15号)附則第2条の経過規定によって2.47平方メートルを上回っているが、新基準の3.3平方メートルを下回っているものを現行基準にあわせるための増築、改築、大規模修繕等
・老朽民間社会福祉施設整備の対象とならない児童養護施設であって、5人以上の居室を4人以下の居室に改善するための増築、改築、大規模修繕等
・社会福祉法人等が、被虐待児童処遇のための児童養護施設の改築等及び情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センターを新設するための施設整備又は設備整備に係る費用を社会福祉・医療事業団から借り入れた場合について、借入金の無利子及び一定の条件に適合する場合の元本の一部を償還免除する。(老朽民間社会福祉施設整備並び)
・上記に係る児童養護施設及び児童家庭支援センターについて、社会福祉・医療事業団の融資率を80%に引き上げる。
児童福祉施設等における虐待を受けた児童への処遇体制を整えるた め、下記に掲げる措置を講じることとしたので、管下市町村及び社会 福祉法人等への指導をお願いする。
(1) 心理療法室の整備
児童養護施設においては、従来から不登校児童のみならず虐待を受けた児童の心のケアも行っており、これを明確化するため、現行の対象児童を名称とした不登校児童等治療室を平成13年度から心理療法室に名称変更して整備を行うこととした。
併せて、情緒障害児短期治療施設の不登校児等治療室の名称も心理療法室に変更する。
(2) 親子訓練室の整備
虐待等により児童養護施設や乳児院に入所した児童に対しては、施設において心のケアが行われ、保護者等に対しては児童相談所による在宅指導が行われることとなるが、再び保護者等と子が一緒に暮らせるようにするためのステップとして、家庭復帰後の良好な親子関係を構築するための「親子生活訓練室」を平成13年度から整備することとした。
1施設当たり 29.8平方メートルを加算
〔 スケジュール 〕
平成14年度
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