厚生労働省

  • 文字サイズの変更
  • 小
  • 中
  • 大

厚生科学審議会科学技術部会
第11回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会
議事概要

1.日時

平成22年4月2日(金)15:00〜17:00

場所

厚生労働省 2階 共用第6会議室

2.出席委員

永井委員長 青木委員 阿部委員 掛江委員 貴志委員 木下委員
小島委員 高橋委員 戸口田委員 中村委員 前川委員 松山委員
水澤委員 湊口委員 山口委員

(事務局)

厚生労働省医政局研究開発振興課

3. 議事概要

すでに厚生科学審議会科学技術部会に付議されたヒト幹細胞臨床研究実施計画のうち、継続審議となっていた奈良県立医科大学、名古屋大学医学部附属病院、島根大学医学部からの申請に加え、平成22年3月10日付で、新たに付議された名古屋大学医学部附属病院、慶應義塾大学医学部、国立大学法人高知大学医学部、および財団法人住友病院からの申請をあわせた、計7件の申請について審議された。

その結果、奈良県立医科大学、慶應義塾大学医学部、財団法人住友病院からの計3件の申請については了承し、次回以降の科学技術部会に報告することとされた。継続審議の島根大学医学部からの申請は持ち回り審議、継続審議の名古屋大学医学部附属病院、新規申請の名古屋大学医学部附属病院、国立大学法人高知大学医学部の計3つの申請については、次回審査委員会以降も継続して審議していくこととされた。

(審議された臨床研究実施計画の概要は別紙1〜7参照。)


(別紙1)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分

研究課題名 顎骨嚢胞摘出後の骨欠損を対象とした自己骨髄培養細胞由来再生培養骨の有用性を検証する研究
申請年月日 平成21年8月31日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:奈良県立医科大学
研究責任者:桐田 忠昭
対象疾患 顎骨嚢胞
ヒト幹細胞の種類 骨髄由来間葉系細胞
実施期間及び
対象症例数
登録期間 承認後5年間
培養骨移植群10症例、自家骨移植群10症例
治療研究の概要 本研究は、自家骨移植が必要な比較的規模の大きな顎骨疾患に対して、患者自身の骨髄細胞から分離・培養して得られた骨芽細胞とセラミックを複合化することにより得られる培養骨移植法が自家骨移植法の代替法となり得るか検討する。
その他(外国での状況等) 奈良県立医科大学整形外科学講座では、大腿骨壊死に対して自己骨髄培養細胞の臨床研究が行われた。ドイツではPradelらが、骨髄培養細胞の顎骨疾患へ応用した。ともに、数例の症例報告がみられる段階にとどまる。
新規性について 本研究は顎骨嚢胞治療後の骨欠損への応用に関して、骨髄由来間葉系細胞を培養し作製した人工骨を用いることに新規性が認められる。

(別紙2)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分

研究課題名 ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法についての研究
申請年月日 平成21年9月9日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:名古屋大学医学部附属病院
研究責任者:室原 豊明
対象疾患 閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病による重症虚血肢
ヒト幹細胞の種類 ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞
実施期間及び
対象症例数
登録期間 意見発出日から5年間
40症例
治療研究の概要 重症化した末梢動脈疾患の患者のうち、既存の治療で十分な効果が得られない症例に対して、皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)による血管新生療法を行う。皮下脂肪組織から脂肪吸引法にて脂肪組織を吸引し、ADRCs分離装置を用いてADRCsを分離する。虚血肢の骨格筋内40〜60カ所に移植し、治療効果と安全性を評価する。
その他(外国での状況等)  2001年UCLA大学のZukらにより、皮下脂肪組織から間葉系前駆細胞が発見同定された。研究責任者らにより、ADRCsの移植により、移植細胞と虚血組織から血管新生増強因子が分泌され、骨髄から血管内皮前駆細胞が放出され血管新生を増強する機序が明らかにされた。
ADRCs分離装置は欧州CE Markを取得し、循環器疾患に対する臨床研究が開始されているところ。
新規性について 研究責任者らが開発した、難治性重症虚血肢に対する自己骨髄単核球細胞移植療法に変わる、ADRCsを新たな細胞供給源として血管再生療法に用いることに新規性がある。

(別紙3)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分

研究課題名 重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植
申請年月日 平成21年11月25日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:島根大学医学部
研究責任者:竹谷 健
対象疾患 重症低ホスファターゼ症
ヒト幹細胞の種類 同種骨髄由来間葉系幹細胞
実施期間及び
対象症例数
登録期間 意見発出日から平成25年3月31日まで
5症例
治療研究の概要 本研究は、アルカリホスファターゼ欠損により骨を作ることが障害される低ホスファターゼ症の中で、致死的な経過をとる乳幼児の患者に対して、骨髄移植と同種骨髄間葉系幹細胞移植の併用治療を行うものである。ドナーは、患者の家族(2親等以内)の中でこの病気ではない人から選定する。骨髄移植の前処置には抗癌剤を用い、移植後には造血幹細胞移植および臓器移植に準じて、免疫抑制剤を6か月間使用する。
その他(外国での状況等) この疾患の重症型は、現在の段階では、呼吸障害に対する人工呼吸管理、痙攣に対する抗けいれん薬などの対症療法が行われる。これまで、同施設の経験症例を含めて3人の患者が骨髄移植、骨移植および骨芽細胞・間葉系幹細胞移植を施行され救命された。なお、2008年からアメリカで骨へ移行しやすく改良されたリコンビナントALP製剤の治験が始まっている。
新規性について 本研究では重症低ホスファターゼ症の患者を救命するために、骨髄移植と同種間葉系幹細胞を用いた移植治療研究をおこなうことに新規性が認められる。

(別紙4)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分 

研究課題名 培養骨髄細胞移植の併用による骨延長術
申請年月日 平成22年2月15日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:名古屋大学医学部附属病院
研究責任者:石黒 直樹
対象疾患   骨欠損のため骨延長を要する以下の症例
(1)各種骨系統疾患(軟骨無形成症、軟骨低形成症など)に伴う-3SD以下の著しい低身長を呈する症例
(2)外傷や先天性疾患により3cm以上の脚長不等を有する症例
ヒト幹細胞の種類 骨髄間葉系幹細胞
実施期間及び
対象症例数
研究実施期間は、承認後5年間
目標症例数は、主要評価項目解析対象数として50骨
治療研究の概要 骨欠損のため骨延長を要する症例を対象として、培養骨髄細胞移植を併用した骨延長術の有効性を検討する。2002年より、培養骨髄細胞と多血小板血漿をトロンビン、カルシウムとともに延長部位に移植する治療を開発し、これまでに40例、70骨以上に対して臨床研究を実施し、良好な仮骨形成を確認してきた。さらに、GMP基準を遵守した細胞調製室で実施し、臨床応用基盤を確立する。
その他(外国での状況等) 骨髄間葉系細胞を培養下に骨芽細胞へ分化、増殖させる技術は確立されてきた(Pittenger et al, Science, 1999)。分化・増殖させた骨芽細胞を移植部位において良好な増殖および骨形成能を発揮するためには、細胞増殖因子と足場の開発が行われている。
新規性について ヒト幹指針の施行前に既に開始され、安全性と有効性を示してきた臨床研究について、臨床基盤を整備したうえで臨床応用を目指す。

(別紙5)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分

研究課題名 末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験
申請年月日 平成22年2月18日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:慶應義塾大学医学部
研究責任者:尾原 秀明
対象疾患 末梢動脈疾患
ヒト幹細胞の種類 G-CSF動員自家末梢血単核球細胞
実施期間及び
対象症例数
厚生労働大臣の意見発出から3年間、144例(推奨療法群72例,推奨療法+細胞移植治療群72例) 
治療研究の概要 G-CSF皮下注射から4日目に自己末梢血を採取、アフェレシスにより単核球を採取、末梢動脈疾患患肢に筋肉内注射し、末梢血管再生効果を見る。札幌北楡病院等を含む計21施設で多施設共同研究を予定。
その他(外国での状況等) Inabaら、Asaharaらは,G-CSFで動員された末梢血単核球からCD34陽性細胞を単離・純化し,慢性重症下肢虚血患者に対して臨床研究を実施。一方,Kawamuraら(2005)はCD34陽性細胞を単離・純化することなく,G-CSF動員による末梢血由来の単核球細胞を重症下肢虚血患者への移植を報告している。その他、Huang, Ishida(2005)、Hoshino(2007)による同様の臨床研究の報告がある。
新規性について 本研究は用いる幹細胞、対象疾患としての新規性はないが、計21施設が参加予定の多施設臨床研究として実施され、推奨療法群あるいはG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植併用治療群のいずれかに無作為に割り付け,この併用治療の有効性と安全性を評価するものであり、ランダム化比較試験としての新規性を認める。

(別紙6)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分

研究課題名 小児脳性麻痺に対する自己臍帯血幹細胞輸血による治療研究
申請年月日 平成22年2月26日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:国立大学法人高知大学医学部
研究責任者:杉浦 哲朗
対象疾患 小児脳性麻痺
ヒト幹細胞の種類 ヒトさい帯血幹細胞(自己)
実施期間及び
対象症例数
登録期間は2010年9月1日より2014年8月31日
目標症例数は10症例
治療研究の概要 出産時に採取された自己さい帯血を治療に用いる。さい帯血から比重遠心法にて分離された単核球を、ステムセル社の細胞調製施設にて凍結保存する。保存された自己さい帯血幹細胞を脳性麻痺患児に投与し、安全性を評価するとともに、身体的機能障害及び発達障害の回復をはかる臨床研究。
その他(外国での状況等) 現在、自己さい帯血幹細胞を用いての小児脳性麻痺への治療は、米Duke大学のDr.Kurtzberg研究室でOpen Studyが実施されている。200症例以上実施(2010年2月)の経験があり、現在、二重盲検試験を米国FDAに申請している。
新規性について 自己さい帯血幹細胞を脳性麻痺患者の治療に応用するという新規の臨床研究であり、米国の研究機関以外からの報告はない。

(別紙7)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年4月2日審議分

研究課題名 末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験
申請年月日 平成22年3月8日
実施施設及び
研究責任者
実施施設:財団法人住友病院
研究責任者:阪口 勝彦
対象疾患 末梢動脈疾患
ヒト幹細胞の種類 G-CSF動員自家末梢血単核球細胞
実施期間及び
対象症例数
厚生労働大臣の意見発出から3年間、144例(推奨療法群72例,推奨療法+細胞移植治療群72例) 
治療研究の概要 G-CSF皮下注射から4日目に自己末梢血を採取、アフェレシスにより単核球を採取、末梢動脈疾患患肢に筋肉内注射し、末梢血管再生効果を見る。札幌北楡病院等を含む計21施設で多施設共同研究を予定。
その他(外国での状況等) Inabaら、Asaharaらは,G-CSFで動員された末梢血単核球からCD34陽性細胞を単離・純化し,慢性重症下肢虚血患者に対して臨床研究を実施。一方,Kawamuraら(2005)はCD34陽性細胞を単離・純化することなく,G-CSF動員による末梢血由来の単核球細胞を重症下肢虚血患者への移植を報告している。その他、Huang, Ishida(2005)、Hoshino(2007)による同様の臨床研究の報告がある。
新規性について 本研究は用いる幹細胞、対象疾患としての新規性はないが、多施設臨床研究として実施され、推奨療法群あるいはG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植併用治療群のいずれかに無作為に割り付け,この併用治療の有効性と安全性を評価するものであり、ランダム化比較試験としての新規性を認める。

厚生科学審議会科学技術部会
ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会委員名簿

  氏名 所属・役職
  青木   清 上智大学名誉教授
  阿部  信二 日本医科大学呼吸器感染腫瘍内科部門講師
  位田  隆一 京都大学大学院法学研究科教授
  掛江  直子 国立成育医療センター研究所成育保健政策科学研究室長
  春日井  昇平 東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学教授
  貴志  和生 慶應義塾大学医学部形成外科教授
  木下   茂 京都府立医科大学眼科学教室教授
  小島   至 群馬大学生体調節研究所所長
  島崎  修次 杏林大学救急医学教室教授
  高橋  政代 理化学研究所神戸研究所網膜再生医療研究チームチームリーダー
  戸口田  淳也 京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野教授
永井  良三 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
  中畑  龍俊 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門疾患再現研究分野教授
  中村  耕三 東京大学大学院医学系研究科整形外科学教授
  前川   平 京都大学医学部付属病院輸血部教授
  松山  晃文 先端医療振興財団先端医療センター研究所膵島肝臓再生研究グループグループリーダー
  水澤  英洋 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学教授
  湊口  信也 岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学・呼吸病学教授
  山口  照英 独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査第一部
 

(敬称略)

○:委員長


トップへ