年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会
(第5回)の議事要旨
1.日時:平成22年3月18日(木) 17:00〜19:00
2.場所:厚生労働省 省議室
3.出席者
【メンバー】(敬称略)
浅野幸弘、植田和男(座長)、小島茂、小幡績、末吉竹二郎、富田邦夫、富田俊基、村上正人、山崎元、山崎養世、米澤康博
【総務省】
原口一博総務大臣、階猛総務大臣政務官
【厚生労働省】
長妻昭厚生労働大臣、長浜博行厚生労働副大臣、山井和則厚生労働大臣政務官
4.議事要旨
(1) 長妻厚生労働大臣、原口総務大臣挨拶
○ 長妻厚生労働大臣ご挨拶
本日は、野村資本市場研究所の野村主任研究員と連合の小島総合政策局長から御意見をお伺いすると聞いている。野村主任研究員の資料は、「統治主体と執行部隊の分離」や「独立性は説明責任を伴う」などといった、GPIFのガバナンスや説明責任について示唆に富むものとなっている。120兆円の年金積立金は、国民の皆様から投資をして欲しいということではなく、老後のためにということで政府が一時的にお預かりしたお金であることを前提に、活発なご議論、ご指導を頂きたい。
○ 原口総務大臣ご挨拶
年金資産の安全運用のためには何が必要か。採算性を度外視してグリーンピア・大規模保養施設を作った。今まで使用された保険料が3727億円で、売却総額が48億円であり、目に見える損失額が3679億円となっている。例えば日銀の政策委員会はその議事録が公開されていて、なぜそのような結果になったかを国民は知ることができるが、GPIFはどうか。世界の大きなパラダイムチェンジが起きているのに、120兆円を運用するポートフォリオが見直されたことがない。
年金運用の安全性の向上ということを申し上げている。資産運用の中心である国債にも価格変動のリスクが存在し、中途売却で損失が発生する。負債の期間とマッチングさせた年限のものを組み入れて、満期保有をさせてリスクを軽減することもできる。あるいは野村先生がおっしゃったように、成長分野への投資。国債にも株にも同様にリスクがある。それをどうリスクヘッジしていくか、どう組み合わせてより信用力の高いものに運用していくか。例えば、政府間の投資協定といったものもある。
2点、総務省の動きをご報告したい。1つは、新しい行政刷新担当大臣である枝野大臣とともに、全ての独立行政法人及び公益法人を、事業仕分けの対象とすることが決定した。2点目に、今日、独立行政法人における内部統制と評価に関する研究会の報告を受けた。制度の見直しも重要だが、マネジメントそのものの改革が必要。独立行政法人のミッションは抽象的であるために、複雑で多種多様な目標・計画を効果的かつ効率的に達成しなければならず、そこには民間企業とは別のリスクがある。目標達成を容易にするために、あえて高い目標を設定しないリスク、責任を不明確にするために、曖昧な計画にするリスク、高い目標を掲げていても効果的、効率的に達成することを阻害するリスクである。
私たちはギャンブルをしなさいと言っているのではなく、年金資産の安全運用のために、無為無策は不安である。お金を減らすくらいなら、動かさずに預金をしておけばいいというのなら、関係者の方には申し訳ないが、この組織はいらない。
そういう中で、今後活発なご議論を頂き、私たちも内部統制という観点からガバナンスそのものを検証し、グリーンピアに使うような年金に対する不安を払拭し、真の意味での国民が安心できる年金制度を築いていきたい。
(2) ヒアリング
○ 野村資本市場研究所の野村亜紀子主任研究員と検討会メンバーで日本労働総連合会の小島茂総合政策局長からのヒアリングが行われた。
○ 野村氏からのヒアリング
◆説明の概要
- 公的年金積立金の運用に何を求めるのかをまず考えて、それに沿ってどのような積立金運用組織がいいのか、どのようなガバナンス体制が求められるのかを考えていくのが論理展開としては自然。
- それによって、ガバナンス・モデルは大きく2つに分かれる。ある程度のリスク・リターンを追求したいというもの(「独立型ガバナンス・モデル」)と低リスク・低リターン、低コストで運用したいというもの(「法定型ガバナンス・モデル」)である。後者の例として、アメリカのソーシャル・セキュリティでの全額国債での運用があるが、これに類するものは他に見たことがない。前者の例として、カナダのCPPIBやスウェーデンのAPなどがある。
- 公的年金積立金の運用は、民間の企業年金などと似ているところもあるが、「公的」であるがゆえの特徴として、政治介入等により積立金が年金給付という本来の目的とは異なる形で使用されたり、運用の内容に介入されたりするというリスクがある。ただし、運用の考え方、行動規範という意味では、機関投資家としての行動規範に従っていくべきであるということも概ね合意されている。
- 海外の公的年金積立金の運用を行っている組織の多くが、政府と積立金運用組織の間に「理事会」という統治主体を設け、執行部隊と分離したガバナンス体制をとっており、これにより、公的であるがゆえの政治介入や政府からの干渉などのリスクを遮断できると捉えていると考えられる。
- これにより、より自律的な組織になるが、同時に説明責任も伴う。業者の選定の際の透明性の確保、役職員の利益相反についての規定、レポートの開示などの情報開示が重要。ただし、公的年金積立金の運用組織の特徴として、対象が国民全体と幅広いため、通常の組織の情報開示に比べて難しい。カナダでは、広報のプロを配置した部署を作って、webへのアニュアル・レポートの掲載などに加え、マスメディアとのコミュニケーションの確保などに非常に知恵を絞っている。
- 各国の運用組織について主な特徴を言えば、市場運用している積立金で規模が一番大きいのは日本、次いでノルウェーで、日本の約4分の1。ノルウェーは、中央銀行の一部門が運用を行っており、他国と異なっている。積立金の規模にとしてはアメリカが一番大きいが、現在は全て非市場性国債であり、市場運用を行っていない。
- ガバナンスの形態については、ノルウェーは監督・統治主体が所管官庁の財務省であり他国と異なる。その他の国は、統治主体としては、何らかの形で年金の運用等に知見のある専門家を理事にする場合(「専門家理事会」)と労使など年金の関係者の代表を理事会に入れるという場合(「ステークホルダー参加型理事会」)の2つがあり、どちらもメリット・デメリットがある。なお、調べた範囲では、理事は基本的には非常勤であり、報酬は組織によってかなりばらつきがある。
- インハウスにするか、外部委託にするかも各国各様で、その比率によって組織の人数も変わってくる。また、運用手法については、株式・債券以外にも、不動産商品等は一般的に見られるが、最近はインフレ対応資産としてインフラ投資が目立ってきている。
- 海外の公的年金運用組織は、国連のPRI(責任投資原則)に署名しているところもあり、ESG要因を考慮した責任投資の意識が高まっている。
- 自国の市場規模に比して積立金が大きい場合、例えばスウェーデンやデンマーク、カナダなどは海外運用を積極的に行うことで対応。ノルウェーは、石油収入を将来世代に引き継ぐというミッションから、海外運用に完全に特化。為替リスクなどは割り切って考えている。スウェーデンは、基金を4分割しているが、リターンに大きな差が出ておらず、コスト節約のため1つにした方がいいという考え方も出ている。
- 各国、様々な特徴があるが、これまで変化をしてきてこのような形態になっており、今後も変化するもの。GPIFの運用委員会はあくまで諮問機関であり、統治主体ではないので、この点で他国と異なる。独立性の確保、どう運用したいかということへの答えを踏まえつつ、日本ならではの最適なガバナンス体制を検討すべき。
◆主な質問・意見
- 海外の運用組織には、政府と独立した理事会及び執行機関がある。一方、GPIFは、理事長が運用の実行部隊であり、上層部にも厚生労働省からの出向者がおり、政府からの独立性がない。運用委員会は諮問機関だが、それをきちんと監視・監督する組織は政府部内にも存在しない。このような理解でよいか。
- ノルウェーでは、運用組織は中央銀行の中にあり、監督機関は財務省であるということか。また、財務省と中央銀行の関係はどのようなものか。
- どの程度のリスク・リターンをとるかという最初の議論は、どこで行われているのか。また、日本に近いと考えられるカナダでは、年金制度からの要請が強いため、運用組織の独立性を高めて適切な運用を担保し、また、広報を積極的に行っているという理解でよいか。
- アメリカは、年金積立金を市場で運用すると、政治介入などを排除できないという問題意識から、長い論争の末、すべて国債で運用している。前世紀の末頃までアメリカと日本の資産規模は同程度であったのに、現在、大きく差が出ているのは、アメリカでは資産が積み上がっているためか。
- PRIは、今、世界で700機関くらいが署名をしており、運用資産の総額が19兆ドルとなっている。今後、この流れがどうなっていくと感じているか。特に、「合理的にリスク・リターンを追求する」というときの「合理性」の中身がこれから変わっていくと思っているが、どう考えるか。
- ノルウェーにおいて中央銀行が運用しているというのは、国内市場に投資していないこと、特別な目的を年金に持たせていることとの関係で整理ができるか。
- 4分割しているスウェーデンについては、コストがかかることは仕方ないが、分割したことでのポジティブな面があるか。
- アメリカのソーシャル・セキュリティは積み立てるという概念がないと理解していたが、積み立てているのであれば、何年分の積立金を持っているのか。
- 諸外国の資産構成を見ると株式の割合が高いが、この背景にはどのような考え方があるのか。日本では安全重視だが、海外では積極的にやろうとか、株式に投資する方が長期的にはリスクヘッジになるという考え方があるのか。
- ポートフォリオの設定でリスクとリターンの9割は決まるというのは本当だと思うが、少人数の理事会で本当に決定できるのか。執行部隊との相当な交流などがないとできないのではないか。
◆主な回答
- ノルウェーは諸外国と異なり、組織は中央銀行の中にあり、運用を監視しているのは所管官庁である財務省。またその報告相手は議会など。運用組織の中に統治機関としての理事会や執行部隊があるという形ではない。また、中央銀行と財務省の両方に運用委員会のようなものがあり、アドバイスをしている。GPIFの理事長は執行部隊の長であり、運用委員会は統治機関ではなく諮問機関。
- 年金の負債を気にしながら運用を行うカナダ、デンマーク、スウェーデンなどと、現時点では払い出しがないため、純粋に積み立てているフランス、アイルランドなどでは、積立金の性格が異なり、どのくらいのリスク・リターンをとるかにも影響する。前者の例えばカナダでは、年金の負債サイドからの要求を意識して目標利回りを決めて運用し、国民を交えたフィールド・ミーティングなど、積極的に情報開示をしている。後者の国々では、目標利回りが設定しづらいが、それぞれの運用目標を立てて運用している。
- カナダにおいて、CPPIBを最初に作ったときにも、結局、積立金をどうしたいかということについての議論があったと思われる。
- 積立金の運用は、各国各様であり、アメリカのように全額国債のところもあるが、逆に、アイルランドのように自国の国債には投資しないと決めている国もある。これは、国債に投資すると一般会計に戻るため、積立金の位置付けが分からなくなること、またいずれ取り崩す際に、政府が他の誰かに国債を買ってもらうことになり、混乱する可能性があるということが理由。
- アメリカは賦課方式で、意識的かどうかは分からないが、だいたい3年分くらい積み上がっている。予測では、今後も膨らんでいくが、いずれ2030年から2040年くらいには枯渇することになっており、改革が必要とされている。
- PRIの今後については何とも言えないが、リターンの追求の中身については、公的年金なので時間軸が相当違うということは1つの鍵になるのではないか。
- ノルウェーについては、個人的には、すべて海外で運用することと組織の形態は無関係ではないと思う。
- スウェーデンの4つの基金については、分割しても意味がないという議論は、重複した管理部門を持つことの是非など、比較的最近も起こっているが、目に見える形ではポジティブな面は示しづらい面があると思われる。
- 各国の株式比率については、ハードル・レートがある国ではそれを達成するために出てきたものと思われる。その他の国についても、各国の考え方の結果として具体的な数字が出てきていると思われる。
- 諸外国の理事会の実態としては、非常勤で年に何回か集まり、集中的に審議しているが、執行部隊がかなりの部分を用意している。ただ、責任を持つのは理事会で、理事会が最後にイエスと言わないと何も動かないという役割分担。
○ 小島氏からのヒアリング
◆説明の概要
- 積立金の原資は労使の保険料。しかし、運用方針の決定などに労使の代表が参画する仕組みになっていない。運用委員会や管理運用会議に労使の代表も含まれているが、これによってガバナンスが効いているかどうかは疑問。
- 事業主負担も国際労働運動の世界では「ワーカーズ・キャピタル」といい、労働によって生み出された付加価値の一部。また、年金の積立金が投資ファンドのM&Aによるリストラなどに使われてきたという問題意識があり、労働者の代表が直接発言していく必要がある。
- 年金積立金は、今後100年かけて1年分まで圧縮する予定だが、巨額の積立金があることで、政治的なリスクを伴うことになる。その意味で巨額の積立金を持つべきではないというのが基本的な考え方。現実には120兆円の積立金があるので、保険料率アップを抑えるために活用し、早めに積立金の圧縮を図るべき。
- 2年前の経済財政諮問会議では、公的年金積立金についての報告が出され、その中で、運用組織を分割して積極的な運用はできないかということや、GPIFの事務所を神奈川ではなく、兜町や大手町に移転したり、ニューヨークなどに支店をおいたらどうかということまで議論されている。
- このように、積立金の運用については、安全運用に徹すべきという議論と積極的に運用すべきという議論が繰り返されており、これは、膨大な積立金があるからこその議論。
- 現実に市場運用していることも踏まえると、現行法に基づいて「安全かつ効果的」な運用、国債を中心とした運用に徹すべき。国債のリスクについての指摘もあるが、リスクを最小限にするということで、責任が取れるリスクの範囲で運用すべき。年金福祉事業団が、グリーンピアや市場運用で膨大な損失を出し、それをやっと解消したという苦い経緯もあるので、安全運用を徹底すべき。
- GPIFは、120兆円の資金を運用するためのガバナンスが効く体制かどうか。積立金の原資を拠出している労使の意見をその運用に反映する場が必要。
- 今後の検討課題として、被保険者への還元融資を再検討すべき。次世代の育成・支援の観点から、一部を若い人たちに自己啓発費用として融資し、安定した雇用、収入増につなげる。結果的に保険料収入が増加し、年金財政にプラスとなる。年金制度に対する若い層の理解にもつながるのではないか。
- 公的年金についても、SRI(社会的責任投資)の観点を取り入れる必要がある。連合も、現在そのためのガイドラインを作成している。
- 株主議決権については、行使ガイドラインを作るべき。地共連はガイドラインを作成しており、最近は社会的責任投資について一部投資を始めたという話もあり、こういうことを通じて社会的価値を創造していくことも必要。
◆主な質問・意見
- 積立金を持たないと、現役の負担のみで年金を払うこととなるが、今後、高齢者が倍に増え、現役が減っていく状況では、年金の受取額が半分以下になる。高齢化の進展による世代間の不公平を許容できないということで、積立金があると思うが、どうか。また、どの程度の期間をかけて取り崩すべきとお考えか。
- SRIは、例えば反社会的なものなどを排除するので、効率的な運用という本来あるべき行動基準や投資が評価されるべき行動基準と対立する面が出てくる。公的年金の運用には持ち込まない方がいいのではないか。
- 議決権行使について、行使状況をチェックするだけであれば責任を持って議決権行使をしたことにはならない。受託者責任という意味では、議決権行使も含めて運用の一部なので、それが中途半端になると、企業のガバナンス自体の問題にもなるので、国内株には投資しないという整理をした方がよいのではないか。
- 安全運用を志向されるが、一方で年金財政を成り立たせるぐらいの利回りは必要とのことなので、資料2(野村氏の資料)の「独立型ガバナンス・モデル」でいくべきという認識か。
- 労働者は自分の預けたお金が過大なリスクを取ったり、消えて無くなったりしないかというところに関心があるのではないか。そうすると、GPIFに直接参画するよりも、目標利回りやリスクを議論する場に参画した方がいいのではないか。
- 安全運用にも定義が色々あり、極端なものはアメリカのソーシャル・セキュリティで、それとハイリスク・ハイリターンの運用の間にはいろいろな選択肢がある。運用の問題についてきちんと結論を出すには、単に安全かハイリスクかではなく、財政状況などについて広報をした上で、国民の意思を問うなど、慎重に議論すべき。
◆主な回答
- 直ちに120兆円を取り崩すということではなく、100年かけて1年分くらいに圧縮するというスピードを早めてはどうかということ。マクロ経済スライドと今後の保険料を前提とすれば、給付率は落ち、所得代替率が50%を切ることにもなりかねないが、どのくらいのスピードにするかは政策判断。
- SRIにより、効率性がどのくらい落ちるかは分からないが、年金積立金が投資ファンドを通じてM&Aの中で大幅なリストラをしてきたという経緯もあり、SRIによる一定の機会の制約は仕方がない。
- 議決権行使について、ガイドラインのような基本的な考え方をベースにして、受託機関がそれに基づいて行使をするのは現実的だと思うので、検討すべき。
- 白紙から議論するのであれば、「法定型ガバナンス・モデル」でもいいが、すでに120兆円を市場運用していることを踏まえると、両者の中間くらいで運用していくことが求められている。
- 現在は資金運用分科会のような年金制度や年金財政と、積立金の管理・運用をセットで議論する場がないので、それが必要だということ。
(3) 意見交換
○ これまでの議論の整理として、資料4(これまでの議事要旨を抜粋)を参考に、意見交換を行った。
◆主な意見
- 基本ポートフォリオを見直さないことが長期的な運用であり、何らかの変更をすることがリスクをとること、機動的な運用とされているが、機動的な資産配分は、極端な話、毎日でも見直すもので、一方、長期的な資産配分であっても、最低毎年見直しをするもの。GPIFは経済情勢の変動に応じてポートフォリオの配分を見直すことが業務であるのにそれを行っていないのはなぜか、ということを明確にすべき。
- 何もしないことが安全で、変えることがリスクというように捉えられているが、4.1%を超えないことがリスク。4.1%が高ければそれを下げればいいが、ハードルを越えないことがリスクであり、それを安全と言っているところが問題。
- 政策的な資産構成が運用結果の9割を左右するというのは誤解。これは、実際のポートフォリオのリターンの変動のうち、政策ポートフォリオによって何割説明されるかということ。ブリンソンの論文では、これは93.6%とされているが、それはあまりアクティブ・リスクをとっていないということに過ぎない。
- 基本ポートフォリオを維持するという考え方の背景には、期待リターンはほぼ一定という暗黙の想定があるが、期待リターンは変動しており、それを分析してポートフォリオを変えなければならない。
- 過去のデータを見て、アクティブ運用は、インデックス運用に勝っていないために意味がないというのは間違い。能力があるマネージャーがいても、経済メカニズムが働けば、資金が流入して超過リターンを得ることが難しくなり、最終的にそれがなくなるところで資金流入が止み均衡する。アクティブ運用により資金がきちんと配分されるといったことに経済的には非常に意味がある。
- 120兆円という金額の大きさが持つ意味を議論すべき。120兆円をどこに投資して、その結果、経済や社会にどのようなインパクトを与えるのかという議論を抜きにして、運用のあり方を議論していいのか。また、年金加入者・国民レベルでどういった情報を共有できるか、しなければならないのかも議論すべき。
- 保険料と給付は一定のルールで決まっており、足りないところを積立金の取り崩しで賄う必要がある。高いリスクをとる必要はなく、国債よりもう少し稼げればクリアできる仕組み。リスクをとって、もし、積立金がなくなったときは、保険料を上げるか、給付を下げるか、国庫負担を上げるかしかない。それができないのであれば、大きくリスクをとるべきではない。一方、全て国債としても、金利変動や国債のリスクがあり、それも難しい。インフラファンドやPEなどを着実にやっていくということも、実は手間暇がかかる。
- 積立金が金融商品であるという錯覚に陥った議論にならないように、年金の積立金について議論をしているということが最初に分かるような書き方にすべき。所得の少ない人にとって公的年金は命の綱。それを認識して議論を組み立てないと、国民の信頼がなくなってしまう。
- リスクをとらないとリターンが上がらないことは全国民分かっているので、おのずと安全運用に徹するのが基本。給付額はその時の政府の決定であり、だからこそ、安全運用による信頼が大きな意味を持ってくる。また、政治的な思惑から独立して、リターンをきっちり上げられるような体制ができるかということが問題の基本。
- 政治の責任で給付が何とでもなるということは、絶対元本を毀損しないように、確定利回りのもとで運用するということにすれば、GPIFはいらないということに帰着すると思うが、どうか。
- 現在説明責任を一番果たしやすいのは、アメリカのような方法だが、現実に株式運用を行っているので、そこから撤退することは現実的には考えにくい。しかし、これ以上リスクをとることに国民の理解が得られるかについては大きな問題がある。
- 年金財政の問題や年金制度が抱える問題、リスクと運用のあり方は密接な関係があると思うが、そのあたりも議論のまとめにいれてはどうか。
(照会先)年金局総務課 企画調査係
TEL 5253-1111(内線3358)