年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方に関する検討会
(第1回)の議事要旨
1.日時:平成21年11月30日(月) 16:00〜18:00
2.場所:経済産業省1012会議室
3.出席者
【メンバー】(敬称略)
植田和男(座長)、小島茂、小幡績、末吉竹二郎、富田邦夫、富田俊基、
村上正人、山崎元、山崎養世、米澤康博
【総務省】
階猛総務大臣政務官
【厚生労働省】
長浜博行厚生労働副大臣、山井和則厚生労働大臣政務官
4.議事要旨
(1) 長浜厚生労働副大臣、山井厚生労働大臣政務官、階総務大臣政務官挨拶
○ 長浜厚生労働副大臣
年金積立金は、将来の年金給付に充てられる貴重なもの。国民の利益にかなうような運用が必要。年金積立金の運用は巨額であり、市場に与える影響も大きく、また運用の在り方を巡っては様々な意見があることから、多角的に検討を進めることが必要。従って、この検討会では、幅広い観点から、慎重に議論をしていただきたい。一方で、法人の運営の効率化、透明性の確保といった事項については、次期中期目標に反映していきたい。
○ 山井厚生労働大臣政務官
年金積立金の運用の問題は、厚生労働行政の中でも国際的な視点、専門的な視点を必要とする分野であるとともに、政権交代前から、長妻厚生労働大臣とともに関心を持って取り上げてきた重要な分野。この機会に、有識者のメンバーの方々の意見を聞き、今後の政策決定を行っていきたい。
○ 階総務大臣政務官
総務省は独立行政法人全般について評価をしているという関係で参加をしている。原口総務大臣も、年金積立金運用のガバナンスについて非常に大きな関心を持っている。よりよい年金積立金の運用について、積極的に御議論いただきたい。
(2) 資料説明
○ 厚生労働省から資料1〜6について説明。(資料3は総務省の指摘事項。)
(3) 今後の年金積立金管理運用独立行政法人の運営について(意見交換)
○ 冒頭、年金積立金管理運用独立行政法人の運営全般にわたり、フリーディスカッションを行った。
○ その後、当面の法人の運営の見直し課題である資料5(4)の「委託手数料の効率化や運用委員会の透明化等について」を中心に議論を行い、以下のような意見が出された。
イ.運用受託機関の選定の頻度について
- 運用受託機関の見直しについて、3年ごとという期間で評価することは非常に危険。定量評価だけでなく、定性的なクオリティも評価する必要があるが、いずれにしても非常に難しいもの。
- 運用業界には2つの不都合な事実があり、1つは、アクティブ運用の平均はインデックス運用に負けること、もう1つは、相対的に優秀なアクティブ運用機関を選択することは誰にもできないということ。そういう意味では、そもそもアクティブ運用機関を上手に選定して、パフォーマンスを上げようということ自体が意味のない仕事ともいえる。見直しがなされるべきなのは、全体のポートフォリオの運用計画であり、運用受託機関の選定にあまり細かくこだわっても仕方ない。
- 特にアクティブ運用の受託機関の選定は大事な仕事であるが、難しい仕事である。
ロ.現行の委託手数料の水準について
- 資産運用業は、インフラ面での投資や人材への投資などで欧米に劣後しているように見える。本来、リスク資本の配分という観点から市場経済において非常に重要な役割を担うべき産業であり、そのような視点からいうと、決して手数料が高すぎるということはない。
- 委託手数料については、世界的な水準を考えても、バーゲニングパワーを発揮して、かなりの引き下げを実現しており、逆に受託機関側にとって、厳しい状況であるといえる。
- 委託手数料については、圧倒的にバーゲニングパワーがあるので、受託機関にとっては、特にパッシブ運用は儲からない仕事。GPIFから受託することで名声が上がるため、トータル的に採算が合っているのではないかといわれている。
- 現行の委託手数料はすでに低い水準であり、特にパッシブの運用受託機関にとっては、インセンティブがあまりない。
- パッシブ運用の委託手数料の水準をさらに引き下げるためには、パッシブ運用の委託先を絞るか、全て自家運用にするかのどちらかではないか。
ハ.株主議決権の行使について
- アメリカの公的年金基金が株式を保有していない理由の1つに株主議決権の行使の問題があり、政府が民間企業に影響を与えることは、慎重に考えるべき。
- 投資顧問協会がガイドラインを作成しており、反社会的行為などの項目については、各社独自の運用基準の中でもカバーしていると考えられる。株主議決権の行使については、GPIFで基準を定めても、企業にどれだけ良い影響を与えられるのか疑問であり、優先的な課題ではないのではないか。
- 株主議決権の行使は、株主が当然に取り組むべき義務でもあり、議決権行使ガイドラインを策定して、行使に取り組むべき。
- 反社会的行為や敵対的買収防衛策などについては、議決権行使ガイドラインを積極的に作った方がいいのではないか。
- 社会的責任や環境への配慮などの事項については、長期的に見て重要な課題であり、具体的な行使基準の策定が必要ではないか。
- 個々の事案について、株主議決権を行使することが企業価値とどのように結びついていくか、非常に難しいが、一方で、何らかの資本効率を上げるためのメッセージは強く発する必要はあるのではないか。
ニ.運用委員会の審議内容の公表について
- 日銀の金融政策決定会合(10年後に公表)を参考にすべきではないか。
- 日銀の金融政策決定会合については、委員の任期が5年であり、5年より短いと、自由な発言が阻害される懸念もあり、10年としている。
ホ.法人の役職員への専門的な知見を有する者の登用について
- 専門性の高い人材を登用することは必要。
○ 資料5(4)の「委託手数料の効率化や運用委員会の透明化等について」に関する議論を踏まえて、事務局において整理の上、座長において、以下のようなとりまとめが行われた。
- 運用受託機関の選定の頻度については、現行の原則3年という期間は決して短いとはいえないという意見が多かった。
特にアクティブ運用については、そもそも期間という観点だけで選定、評価することが難しいという意見があった。 - 現行の委託手数料の水準については、現行においても低い水準となっているという意見が多かった。
- 株主議決権の行使については、様々な議論があり、意見が分かれている。
- 運用委員会の審議内容の公表については、日銀の金融政策決定会合を参考にすべきという意見があった。
- 法人の役職員に、専門性の高い人材を登用することは必要という意見があった。
(照会先)年金局総務課 企画調査係
TEL 5253-1111(内線3358)