厚生労働省

  • 文字サイズの変更
  • 小
  • 中
  • 大

平成21年11月21日

新型インフルエンザワクチンに関する安全性評価について

薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会

安全対策調査会及び

新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会

新型インフルエンザワクチンの接種が10月19日より開始され、実施医療機関より厚生労働省に副反応について報告されている。11月19日までに877例が報告され、うち、重篤な症例が68例(13例の死亡を含む)であった。また、20日までの死亡例の報告は21例である。

現時点で国産ワクチンにおいて得られた情報に基づき、新型インフルエンザワクチン自体の安全性、接種事業の継続及びワクチン接種にあたって注意すべき点等の安全対策についての検討を行い、次のような意見として取りまとめるものである。

1.ワクチンの基本的な安全性

○ 医療従事者2万例コホートの健康状況調査では、安全性の特性からみて、季節性インフルエンザワクチンと差はなく、期待する利益からみて、十分であったと考えられる。重篤な副反応発生についても、死亡や後遺障害に至る転帰のものはなかった。

○ 医療従事者を中心に接種が行われた10月中の接種の現状においても、2万例コホートの調査と同様に、発生している副反応の特徴に、現時点では重大な懸念は示されていない。

○ 新型インフルエンザワクチンは、副反応報告頻度が、季節性ワクチンに比較して高い傾向にあることは、次の点に留意が必要である。

・ 新型インフルエンザワクチンの接種事業は、予防接種実施要領等に基づき、「死亡、臨床症状の重篤なもの、後遺症を残す可能性のあるもの」に該当すると判断されるものは、因果関係の如何にかかわらず報告対象とし、契約により、接種医療機関に対して報告を求めていること

・ 季節性ワクチンの副反応データは、「副反応によると疑われる疾病」を報告する薬事法の下での数値であること

・ 社会的な関心が高い等の理由

○ 以上からみて、現時点で、医療従事者への接種を中心とした評価においては、ワクチンの安全性において重大な懸念を有するものではないが、今後接種規模を広げた場合での評価を継続すべきである。

2.基礎疾患を有する高齢者の死亡について

○ 11月以降の接種者において、死亡症例の報告が増加している傾向にあるのは、優先接種対象者として、呼吸器、心臓、腎臓等の基礎疾患(重度の基礎疾患)を有する患者への接種が11月から開始していることと関連した事象であると考えられる。

○ 人口動態統計から見ても、基礎疾患を有する高齢者の死亡は高い頻度で見られるものであり、今回報告された事例はいずれも重度の基礎疾患を有する者であり、ワクチン接種と死亡が偶発的に重なった可能性は否定できない。

○ 個々の死亡事例についても、限られた情報の中で因果関係は評価できないものもあるが、大部分は、基礎疾患の悪化や再発による死亡の可能性が高いと考えられ、死亡とワクチン接種との直接の明確な関連が認められた症例は現時点ではない。

○ これらのことと、健康な医療従事者における実績を併せて考えれば、ワクチン自体に安全性上の明確な問題があるとは考えにくい。

○ しかしながら、重度の基礎疾患を有する患者においては、ワクチンの副反応が重篤な転帰に繋がる可能性も完全には否定できないことから、接種時及び接種後の処置等において留意する必要がある。

○ また、感染リスクは低いものの、高齢者で基礎疾患を有する者はインフルエンザに罹患した場合に重篤な転帰をたどる可能性が高く、新型インフルエンザワクチンにおいて見られているリスクと比較して、相対的に接種のメリットは大きいと考えられる。

3.今後の対応について

○ 重度の基礎疾患を有する高齢者におけるワクチン接種後の死亡であって、ワクチンと明らかな関連がないものとして主治医等が報告したものについては、個別事例の評価以外に、集積した情報の中から、問題や注意を要する情報を抽出することに重点を置いて評価すること。

○ 実施要領において、心臓、じん臓又は呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活が極度に制限される程度の障害を有する者等への接種に当たっては、接種を行うことの適否を慎重に判断するよう、接種を担当する医師に求めているが、これを徹底すること。また、そのような者に接種した場合には、接種後短時間のうちに被接種者の体調に異変が起きた場合でも適切に対応できるよう、接種後一定時間、被接種者の状態を観察すること等について、行政は医療関係者に注意喚起するべきこと。また、ワクチン接種は個々人の判断により行うべきものであることを考慮し、現在の感染状況やワクチンの安全性情報の提供を行政は徹底させること。

照会先:医薬食品局安全対策課

電話番号:03−5253−1111



トップへ