厚生労働省

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資料2

2008年8月7日

労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会
委員各位

社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 高岡正

中途失聴・難聴者の雇用・就労問題に関する団体意見

国連障害者権利条約が「合理的配慮の欠如は差別」であることを明記し、障害者の雇用促進と職場での合理的配慮の提供を義務付けたのは画期的なことであり、早急にわが国の労働法制・施策が障害者権利条約に整合したものに整備されることを求めます。労働法制・施策整備に当たっての団体意見を下記の通り提出しますので宜しくご検討願います。

1.施策の前提として、わが国の聴覚障害者の定義が国際的に非常に狭く、身体障害者手帳の保持者(両耳70dB以上の聴覚障害者)が極端に少ないこと、又聴覚障害者のコミュニケーション手段が非常に多様で、大多数の聴覚障害者は補聴器の使用、筆談などで日常のコミュニケーションを図っていることを理解してください。(添付資料参照)

2.採用試験、面接試験の際に応募者の希望に従った情報保障を採用者側にて準備することを義務付けてください。又、採用可否判定においてその情報保障の利用を不利益な判定材料としないで下さい。

3.コミュニケーションに課題を持つ聴覚障害者の場合は、就労後の労働環境の問題が非常に重大です。就労した後十分なコミュニケーション支援が得られず、転職・離職・昇進差別など多くの問題に直面しています。

聴覚障害者の労働実態を調査し、就労後の差別事例、業務遂行に困難な事例を集積し、就労場面での「合理的配慮」の類型化、ガイドライン作成を進めてください。又、聴覚障害者が職場での問題を相談できる部門を企業内に設置することを義務付けて下さい。

また、難聴者問題に精通した相談支援員、カウンセラー等を養成して下さい。難聴者等当事者のジョブコーチの研修にあたって、コミュニケーション支援、情報保障を担保して下さい。

ハローワーク等に要約筆記者の配置や補聴援助システムをするなど、難聴者等の相談に配慮してください。

4.雇用者側の「合理的配慮」義務に対応した行政側の就労時施策として「障害者雇用割当制度」、またそれに基づく「障害者雇用納付金制度」がありますが、就業・労働場面では「障害者介助等助成金」を雇用者側の「合理的配慮」を補完するものとして明確に位置づけることが必要と考えます。

因みに聴覚障害の場合、現在の「障害者介助等助成金」は「手話通訳担当者の委嘱助成金」しか明文化されておらず、手話の理解の出来ない中途失聴・難聴者への配慮はありません。「障害者介助等助成金」制度は、障害者の就業時に必要な支援・配慮(例えば会議などでの要約筆記者の準備)に対応して整備・拡充すべきです。

5.就業に当たっての「合理的配慮」には、要約筆記者の派遣など人的支援に止まらず、会議室での磁気ループの設置、拡声機能のある電話機、テレビ電話の設置など補聴援助システムの整備、電話リレーサービスや遠隔コミュニケーション支援サービスの利用の確保を図ってください。

6.就業場面での「合理的配慮」は、必要なタイミングを外しては意味がありません。コミュニケーション支援に当たっては事後救済ではなく、即時的救済が可能となる施策を講じてください。

7.各種助成制度の申請要件は、中小企業にとってハードルが高いものです。企業規模に応じて、申請要件を緩和する措置を取ってください。

8.遅れた難聴者、中途失聴者の就労支援施策の検討のために、当事者団体、関連機関を含めた研究会を設けてください。

【参考資料】

1.障害程度等級表とWHOの規定比較

図 1.障害程度等級表とWHOの規定比較

2.厚生労働省身体障害児・者実態調査(2006・6・1)

身体障害者手帳保持者数             コミュニケーション手段

図 2.厚生労働省身体障害児・者実態調査(2006・6・1)

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