厚生労働省


資料No.2−2

地域における産業保健活動の課題と論点整理

1 地域産業保健センター事業の課題

(1)課題

[1] 健康相談窓口利用者数、個別訪問実施事業場数とも増加してきているものの、平成18年度実績では、それぞれ、1センター当たり、平均213.7人、平均36事業場と活動は未だ少ないこと、地域産業保健センターのことを未だ知らない事業場も多いこと等の状況にあり、それらに対応する必要があるのではないか。

[2] 地域産業保健センターと労働局、労働基準監督署との連携を推進することが必要ではないか。

[3] 窓口別利用者数について、地域産業保健センター内での人数は減少しているが、サテライト(地域医療機関)、その他(イベント時など)での人数は大幅に増加しており、地域産業保健センターの活動が未だ少ない状況を踏まえると、窓口開設場所、時期などの工夫が必要ではないか。

(2)第1回検討会での主な意見

○ 地域産業保健センター事業について、そのセンターごとの活動の差が大きい。

○ 地域産業保健センターの知名度が低い。

○ 地域産業保健センターと労働基準監督署との連携が悪い。(労働基準監督署で把握している、どの事業場でどのような問題があるかという情報について、地域産業保健センターに伝わらないということが、非効率な事業となっている。)

● 地域産業保健センターの存在を知っていても、使い勝手が悪い。

● 全国に347カ所にある地域産業保健センターの区域をどう考えるべきか。

● サテライト方式を実施する際の運営基準のようなガイドラインがあった方がよい。

<委員からの追加意見(後日提出されたもの)>

・ 産業医マップの作成

・ 事業者が集まるイベントを行政・都道府県産業保健推進センターとともに開催

・ 登録事業場の何割かは新しくする仕組み(その結果、産業医の嘱託に繋げる)

(3)論点整理

[1]地域産業保健センターの知名度の向上((1)の課題[1]及び[2]関係)

・ 個々の地域産業保健センターにおいて、商工会議所等地域の事業者団体の協力を得て、事業者に対し、効果的に周知啓発する具体的な手法について

・ 労働基準監督署との連携を含め、地域産業保健センター連絡協議会の活用について

→ 第1回検討会において、「地域産業保健センターの知名度が低い。」、「地域産業保健センターと労働基準監督署との連携が悪い。」という意見を踏まえ、従来のコーディネーターによるパンフレット配布を中心とした周知広報活動の他、各地域産業保健センターにおいて、労働基準監督署等の行政機関、労働基準協会・商工会等の地域の事業者団体等と連携しながら、例えば、事業者が集まる場の活用、ニーズの把握、キャンペーン活動の開催等、地域産業保健センター連絡協議会において、一層の創意・工夫を検討することとしてはどうか。

→ 委員から提出された追加意見を踏まえ、産業保健情報の提供の一環として、産業医マップの作成・周知を行うことはどうか。

・ 全国規模の事業者団体と連携した全国レベルの広報活動について

→ 第1回検討会において、「地域産業保健センターの知名度が低い。」という意見を踏まえ、全国規模の事業者団体と連携して、全国レベルで広報活動を行うことはどうか。また、実施する場合、何か効果的な方法はないか。

[2]地域産業保健センターの利便性の向上((1)の課題[3]関係)

・ サテライト方式の積極的活用、夜間・休日窓口の拡大等、実施場所・実施時期の弾力化について

→ 第1回検討会において、「地域産業保健センターの存在を知っていても、使い勝手が悪い。」という意見及びサテライト方式を導入することにより相談者数が増加したというデータを踏まえ、サテライト方式の積極的活用、夜間・休日窓口の拡大等、実施場所・実施時期の弾力化を図ることとしてはどうか。

・ サテライト方式を実施する際の運営基準について

→ 第1回検討会において、「サテライト方式を実施する際の運営基準のようなガイドラインがあった方がよい。」との意見を踏まえ、調査した結果、現在、サテライト方式(医療機関における健康相談窓口の設置)については、一般診療との区別を明らかにするため、次の事項に留意するように指導している。

ア 地域産業保健センター運営協議会等において、あらかじめ窓口の医療機関を選定しておくこと。

イ 産業医の資格要件を備えた医師が対応すること。

ウ 利用料は申込者又は相談者からは徴収しないこと。

エ 相談窓口の医師等は活動状況を地域産業保健センターに適切に報告すること。

オ 事前に利用者から地域産業保健センターに直接又は相談窓口を通じて申し込みを受けること。

ついては、上記ア〜オを基本として運営基準を定めてはどうか。

2 地域におけるメンタルヘルス対策の課題

(1)課題

[1] 平成20年度から、一定の基準を満たす相談機関を登録・公表・紹介する機能などを有する「メンタルヘルス対策支援センター」(平成20年度は、都道府県産業保健推進センター内)が設置され、地域におけるメンタルヘルス対策(職域関係)を推進するセンターが、「メンタルヘルス対策支援センター」、「都道府県産業保健推進センター」及び「地域産業保健センター」の3つのセンターの体制となったため、それらの連携や支援体制を明確に位置付けるため、各々の役割分担の明確化やそれらを踏まえた地域におけるメンタルヘルス対策(職域関係)の拠点づくりが必要ではないか。

[2] 面接指導や一般の健康相談、働き盛り層支援事業における相談等において、労働者のメンタルヘルス不調が深刻な状況にあることが把握された場合、適切に、精神科医等に繋げる方策が必要ではないか。

[3] [1]の職域における社会資源と地域障害者職業センター等の社会資源や精神保健福祉センター等の地域保健における社会資源との連携が不十分であり、これらを活性化する必要があるのではないか。

[4] 地域にある社会資源の種類・数、提供できるサービスについて、サービスを求めている事業場・労働者・家族等が把握しておらず、それにより、必要なサービスが提供されていないのではないか。

(2)第1回検討会での主な意見

○ メンタルヘルス対策支援センターの機能を充実してはどうか。また、労働者からのメンタルヘルス相談は、受けられないのか。

○ 事業場では、メンタルヘルス対策の推進方法がわからないという声が多い。
また、メンタルヘルス対策関係の情報の周知が足らないと思う。

● 地域にある社会資源の情報が事業場に提供されるような仕組みがほしい。

(3)論点整理

[1]メンタルヘルス対策(職域関係)の拠点づくり((1)の課題[1]及び[2]関係)

・ 都道府県産業保健推進センターとも連携を図りつつ、メンタルヘルス対策支援センターを、メンタルヘルス対策(職域関係)の拠点とすることについて

→ このような方向性でよいか。

→ また、第1回検討会での意見を踏まえ、50人以上の事業場における産業医等産業保健関係者に対する相談・研修等については、引き続き、都道府県産業保健推進センターで実施し、メンタルヘルス対策支援センターは、メンタルヘルス相談関係の拠点(ワン・ストップ・サービス)として、地域にある社会資源の種類・数、提供できるサービスについて、サービスを 求めている事業場・労働者・家族等が情報を手軽に入手できるように、「地域における産業保健活動の推進体制図(イメージ)」の体制構築を進めてみてはどうか。

[2]地域における社会資源の情報の一元化及び提供体制((1)の課題[3]及び[4]関係)

→ これについても、「地域における産業保健活動の推進体制図(イメージ)」の体制構築で対応してはどうか。

<第1回検討会での宿題について>

・ 地域産業保健センターにおけるメンタルヘルス相談(3,706人)の事業場の規模別分布がわかれば、ありがたい。

→ 50人未満の事業場に所属する者からのメンタルヘルス相談としか、わからない。

・ メンタルヘルス相談件数の多い地域産業保健センターに対して、相談等において労働者のメンタルヘルス不調が深刻な状況にあることが把握されたケースがあるのか。あるのであれば、どのように精神科医等に繋いだのか。

→ 現在、調査途中であるが、回答があったメンタルヘルス相談件数の多い地域産業保健センター(3センター)の回答を見ると、

[1] メンタルヘルス相談件数のうち、他の機関へ紹介したものは、約10%

[2] 上記の「他の機関」とは、医師会会員の精神科医(当該医師とは定期的又は不定期に会合を開催)がほとんどで、ごく一部、保健所等を紹介(具体的には、精神科医へ行くことに抵抗がある者に対して、臨床心理士、カウンセラー等を紹介)。

3 都道府県産業保健推進センターの課題

(1)課題

[1] 都道府県産業保健推進センターにおける域内の地域産業保健センターの活動に対する支援を充実することが必要ではないか。

[2] 地域における産業保健活動の拠点としての役割を明確にする必要があるのではないか。

(2)第1回検討会での主な意見

○ 地域産業保健センター事業を運営している郡市区医師会又はコーディネーターとの関係から、地域産業保健センターと都道府県産業保健推進センターとの連携がうまくいかないところがある。

○ 労働者健康福祉機構が開催した有識者会議において、

[1]コーディネーターによる情報交換と交流の機会の提供

[2]地域産業保健センターの登録産業医に対する情報交換の場と機会の提供

[3]地域の特性に応じ、研修及び相談事業の地域産業保健センターとの共同開催

[4]地域相談員を地域産業保健センターの登録産業医の指導・助言のために派遣

等の提言がなされており、この点についても、検討願いたい。

(3)論点整理

[1]産業保健推進センターの地域産業保健センターに対する支援充実((1)の課題[1]及び[2]関係)

→ 例えば、労働者健康福祉機構が開催した有識者会議が提言した、次のような支援の充実を図ることはどうか。

[1]コーディネーターによる情報交換と交流の機会の提供

[2]地域産業保健センターの登録産業医に対する情報交換の場と機会の提供

[3]地域の特性に応じ、研修及び相談事業の地域産業保健センターとの共同開催

[4]地域相談員を地域産業保健センターの登録産業医の指導・助言のために派遣

→ これらの活動及び広報活動を通じて、都道府県産業保健推進センターは、地域における産業保健活動の拠点としての役割を果たすとができるのではないか。

4 地域の各種関係者とのネットワークの課題

(1)課題

[1] 平成17年度〜平成19年度の間、産業医に対して過重労働・メンタルヘルス対策に関する研修を、精神科医等に対して産業保健に関する研修を実施してきており、それぞれ、11,460人、1,646人(うち、精神科医等に対する産業保健に関する研修受講者のうち、その情報提供に同意した者については、地域産業保健センターに登録:1,131人が登録)修了しているので、引き続き、研修を実施するとともに、今後は、産業医と精神科医等とのネットワークの強化に努める必要があるのではないか。

[2] 地域産業保健センターにおける保健師の活用実績が少ないので、保健師等産業保健スタッフの積極的な活用を図る必要があるのではないか。

[3] 産業保健について習熟している専属産業医と臨床医としても活動する嘱託産業医の連携を考える必要があるのではないか。

(2)第1回検討会での主な意見

○ 地域産業保健センターに登録されている精神科医等は、1,131人かもしれないが、全国に精神科医は、約13,000人いる。

○ 産業医と精神科医等とのネットワークは今後重要である。

○ 産業医と精神科医等とのネットワークを構築するため、事例検討会(交流会)を開催してはどうか。

● 地域産業保健センターにおける健康相談については、開業医である登録産業医が行っているため、手が回っていない。

(3)論点整理

[1]産業医と精神科医等とのネットワークの強化((1)の課題[1]関係)

・ 産業医と精神科医等とのネットワークを強化するための具体的な方策について

→ 第1回検討会において、「産業医と精神科医等とのネットワークを構築するため、事例検討会(交流会)を開催してはどうか。」との意見を踏まえ、メンタルヘルス対策支援センターにおいて、事例検討会(交流会)を開催することとしては、どうか。

※事例検討会(交流会)のイメージ

地域における、産業医、精神科医、事業場の産業保健スタッフ、事業場外資源等が一堂に参集して、メンタルヘルスケア推進についての問題点等を提起し合い、参加者で意見を交換する。

その上で、概ね合意できるその地域における運用方法については活用し、課題については勉強会を発足させる等、地域に応じた連携を模索する。

また、これら意見交換で出された意見等については、集約したうえで、好事例等をとりまとめ、水平展開を図る。

[2]保健師等産業保健スタッフとの連携((1)の課題[2]関係)

・ 保健師等産業保健スタッフの活用と密接な連携について

→ 第1回検討会において、「地域産業保健センターにおける健康相談については、開業医である登録産業医が行っているため、手が回っていない。」との意見を踏まえ、登録産業医の活用が困難であり、かつ、必ずしも産業医でなくても活動が可能な場合については、保健師、一定の知識を有する看護師等の活用を図ることとし、その具体的方策を考えてはどうか。

<第1回検討会での宿題について>

・ 地域産業保健センターに登録されている精神科医等の数が多いところ(例えば、岡山県)は、精神科医等が活用されているのか、調べてほしい。

→ 岡山県における精神科医等の登録数は、66人と東京都と同数であるが、岡山県内の地域産業保健センターにおけるメンタルヘルス相談の総件数は、28人/年と東京都内の地域産業保健センターにおけるメンタルヘルス相談の総件数486人/年の約6%と、必ずしも、登録精神科医等の数とメンタルヘルス相談件数とは関連がない状況である。

・ 保健師がコーディネーターをしている地域産業保健センターにおける登録事業場について、特徴的なことはないのか、調べてほしい。

→ 保健師がコーディネーターをしている地域産業保健センターは、10センターあり、そのうち、5センターについて調査中(回答が未返送)。

・ 保健師(236人)を活用している地域産業保健センターにおいては、どのような保健師を活用しているのか。

→ 現在、調査途中であるが、地域産業保健センター(3センター)の回答を見ると、

[1] 医師会病院、健診センター等の医師会職員である保健師を確保

[2] 当該保健師には、

・ 健康相談窓口開設時や個別訪問指導時に産業医と一緒に同席し、保健指導を実施

・ 健康相談窓口開設時以外や個別訪問指導時以外の必要な時に担当
(産業医は、開業医であり、多忙のため、臨時には対応困難。)

・ 看護師を活用している地域産業保健センターはあるのか。

→ 厚生労働省では把握していない。このため、日本産業衛生学会産業看護部会に聞いてみたところ、「現在活動している産業看護職は少ないのが実態」とのことであった。
(なお、日本看護協会が発行している看護関係統計資料集によると、工場・事業所に勤務する看護職数は、8,738人(うち、保健師数2,556人)とのこと。)

[4]専属産業医と嘱託産業医との連携((1)の課題[3]関係)

→ 今後、関係者の意見を聞いてみてはどうか。

5 地域保健との連携の課題(地域・職域連携推進協議会の活用促進)

(1)課題

[1] 職域関係者のメンバーは労働行政関係者にとどまり、事業者の参加が少ないことが指摘されている。(具体的には、どこに声をかけてよいかわからない、事業者の情報が少ない。)

[2] 2次医療圏と労働基準監督署の管轄区域が異なるため、複数の2次医療圏協議会に労働基準監督署が参画をしなければならず、協力が得られにくいことが指摘されている。

[3] 職域関係者との連携については、関係者の連携事業のメリット等について明確化されていないことから、都道府県や2次医療圏での具体的な連携事業の取組が進んでいないことが指摘されている。

(指摘内容は平成18年度地域・職域連携支援検討会報告書から抜粋)

(2)第1回検討会での主な意見

○ 地域・職域連携推進協議会について、2次医療圏と労働基準監督署の管轄区域が異なるため、協力が得られにくいという話があったが、医療圏と福祉圏の管轄区域も異なっている。

○ 地域・職域連携推進協議会の役割を明確にした方がよい。

(3)論点整理

[1]地域・職域連携推進協議会の活用促進((1)の課題[1]及び[3]関係)

・ 地域・職域連携推進協議会の活用促進について

→ 地域・職域連携推進協議会の運営等に関し、事業者団体等の協力を求めることが必要ではないか。

→ 「平成18年度地域・職域連携支援検討会報告書」において指摘されたもののうち、事業者の参加促進や連携事業のメリット等の明示について、具体的に示していく必要があるのではないか。


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