厚生労働省

  • 文字サイズの変更
  • 小
  • 中
  • 大

連絡先

厚生労働省医政局研究開発振興課

担当 佐藤・梅垣(内線2545)

電話 03-5253-1111(代表)

03-3595-2430(直通)

平成19年11月28日

厚生科学審議会科学技術部会
第3回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会
議事概要

1.日時

平成19年11月28日(水) 10:00〜12:00

場所

経済産業省別館10階 1038号会議室

2.出席委員

永井委員長
青木委員 位田委員 掛江委員 貴志委員 木下委員
高坂委員 小島委員 島崎委員 高橋委員 中畑委員
中村委員 前川委員 山口委員

(参考人)

大阪大学医学部附属病院未来医療センター准教授 松山晃文

(事務局)

厚生労働省 医政局研究開発振興課

3. 議事概要

すでに厚生科学審議会科学技術部会に付議されている6件のヒト幹細胞臨床研究実施計画のうち、継続審議となっていた東海大学、奈良県立医科大学の計2件の申請に関する審議に加え、平成19年11月21日付で新たに付議された帝京大学、信州大学(2件)、慶應義塾大学の3つの研究機関、計4件の申請についての審議も行われ、合計6件の申請について審議された。

その結果、東海大学からの申請に関しては概ね了承され、次回の科学技術部会に報告することとし、その他5件の申請に関しては継続して審議していくこととされた。

(審議された臨床研究実施計画の概要は別紙1〜6参照。)


(別紙1)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年11月28日審議分

研究課題名 自己骨髄培養細胞による顎骨疾患の治療
(自己骨髄培養間葉系細胞由来の再生培養骨を用いた顎骨良性腫瘍、顎骨腫瘍類似疾患に対する治療)
申請受理年月日 平成19年5月7日
実施施設及び
研究責任者

実施施設:奈良県立医科大学

研究責任者:桐田 忠昭

対象疾患 顎骨良性腫瘍、顎骨腫瘍類似疾患
ヒト幹細胞の種類 自己骨髄培養間葉系細胞
実施期間及び
対象症例数
顎骨腫瘍 10症例、顎骨腫瘍類似疾患 10症例 合計20症例、実施期間は承認後5年間とする。
治療研究の概要 患者自身の骨髄から培養して得られた骨芽細胞を用い、より低侵襲で、高い治療効果を望める治療法を確立することを目的とする。移植試料の調整にあたっては、腸骨から骨髄採取を行い、独立行政法人産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門にて培養を行う。骨髄由来間葉系細胞を骨芽細胞へ分化させ、骨芽細胞・骨基質を含む人工骨を作製し、顎骨欠損部に移植する。
その他(外国での状況等) 奈良県立医科大学整形外科学で行われている自己骨髄培養細胞の臨床研究では、長管骨を対象疾患とし、本研究と同様の骨髄採取法および移植材料を用いている。ドイツで行われている自己骨髄培養細胞の顎骨疾患への応用は、本研究と同様の対象疾患であるが、顎骨から骨髄を採取し、移植材料としてコラーゲンを用いている。
新規性について 自己骨髄培養細胞による骨再生研究はすでに行われているが、顎骨欠損を骨再生の対象としたヒト幹細胞臨床研究は我が国では初めてのものであり、新規性があると認められる。

(別紙2)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年11月28日審議分

研究課題名 自家骨髄間葉系幹細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究
申請受理年月日 平成19年4月16日
実施施設及び
研究責任者

実施施設:東海大学医学部

研究責任者:持田 讓治

対象疾患 腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎椎間板症
ヒト幹細胞の種類 骨髄間葉系幹細胞および椎間板由来細胞
実施期間及び
対象症例数

2年間

10症例

治療研究の概要 腰椎椎間板を摘出、あるいは椎間板摘出+骨移植術を行う腰椎椎間板変性疾患手術例において、摘出した椎間板の髄核細胞を自家骨髄間葉系幹細胞との細胞間接着を伴う共培養法によって活性化し、活性化終了直後にその髄核細胞を変性進行が予測される隣接椎間板内などに移植し、その椎間板の変性過程の抑制あるいは再生を試みる。
その他(外国での状況等) 椎間板疾患の治療法開発には栄養因子注入療法、遺伝子治療と細胞移植療法が柱となっているが、椎間板固有の髄核細胞を用いた細胞移植療法を考案し、さらに髄核細胞の活性化細胞として骨髄間葉系幹細胞に注目したのは東海大学医学部整形外科学が国内外を通してはじめてである。
新規性について 腰椎椎間板変性疾患手術例において、摘出した椎間板の髄核細胞を自家骨髄間葉系幹細胞との共培養法によって再生する治療法は我が国で初めてのものであり、新規性があると認められる。

(別紙3)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年11月28日審議分

研究課題名 自家骨髄間葉系細胞移植による骨組織再生医療に関する研究
申請受理年月日 平成19年4月13日
実施施設及び
研究責任者

実施施設:帝京大学医学部

研究責任者:松下 隆

対象疾患 骨折後の合併症としての遷延治癒・偽関節および変形矯正のための骨切り術で自家骨移植が適応となる症例
ヒト幹細胞の種類 自己骨髄培養幹細胞
実施期間及び
対象症例数

申請許可から2年間

10例

治療研究の概要 移植手術の6週間前に,手術室で患者から無菌的に骨髄液を採取する.MSC超増幅技術により,骨髄液から骨髄間葉系幹細胞の分離・培養・増殖を幹細胞自動培養装置を用いて行う.偽関節部または骨欠損部に,シート状に形成した移植細胞および新生骨組織を自家骨の代替として手術室で移植する.術後の経過は通常の手術後と同様に定期的なX線検査を中心に評価する.
その他(外国での状況等) わが国においては,歯科領域で骨髄由来間葉系幹細胞を骨補填に臨床応用されている。外国において,骨補填に骨髄由来間葉系幹細胞を用いた臨床試験の成績はない。骨髄由来間葉系幹細胞を使用した臨床試験としては、1)化学療法中の乳癌患者の造血能を回復(2000年,米国)、2)心筋梗塞の治療(2004年,中国.2005年,ギリシア)、3)筋萎縮性側索硬化症の治療(2006年,イタリア)などがある。
新規性について 骨髄由来間葉系幹細胞による骨再生の臨床研究はすでに多くなされているが、FGF-2を用いる超増幅技術による培養方法を用いた臨床研究は、新規性および審議の必要性が認められる。

(別紙4)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年11月28日審議分

研究課題名 Type I collagenを担体とする培養自己骨髄間葉系細胞移植による軟骨欠損修復
申請受理年月日 平成19年10月1日
実施施設及び
研究責任者

実施施設:信州大学医学部付属病院

研究責任者:加藤 博之

対象疾患 離断性骨軟骨炎・外傷性骨軟骨損傷・若年者の特発性膝骨壊死・変形性関節症に伴う骨軟骨障害
ヒト幹細胞の種類 (自己)骨髄間葉系幹細胞
実施期間及び
対象症例数

3年間

13歳から65歳までの10症例

治療研究の概要 治療困難であり、自然修復が期待できない重症化した上記軟骨疾患を対象とし、患者の骨髄液から採取した骨髄間葉系幹細胞を増幅した後、担体であるコラーゲン(アテロコラーゲン・ペルナック)に包埋させる。採取より数週間後、軟骨欠損部に外科的に移植して表面を骨膜でパッチすることで、軟骨欠損部および軟骨下骨の早期修復を図る。
その他(外国での状況等) 軟骨損傷に対する治療は従来、骨髄刺激法、モザイクプラスティー、自己培養軟骨細胞移植などが行われているが、骨髄間葉系幹細胞移植に関しては、1994年Wakitaniらによりウサギ膝関節軟骨欠損に対してMSC移植後、硝子軟骨様組織が形成されることが示されたのを期に、2002年ヒト膝蓋骨軟骨損傷への臨床応用例が初めて報告された。それ以降、下肢関節軟骨を中心とした国内での臨床応用が、少数例ではあるが報告されている。
新規性について これまで、骨髄間葉系幹細胞による軟骨再生の臨床研究は国内では産業技術総合研究所を中心に行われてきたが、今研究は申請者である信州大学医学部付属病院として初めて行われる研究であり、また上肢の骨軟骨損傷に対する同様の治療報告はなく、新規性を認める。

(別紙5)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年11月28日審議分

研究課題名 ハイドロキシアパタイトあるいはβ-リン酸三カルシウムを担体とする培養自己骨髄間葉系細胞移植による骨欠損修復
申請年月日 平成19年10月1日
実施施設及び
研究責任者

実施施設:信州大学医学部付属病院

研究責任者:加藤 博之

対象疾患 骨嚢腫、非骨化性線維腫、線維性骨異形成症、内軟骨腫、骨巨細胞腫
ヒト幹細胞の種類 (自己)骨髄間葉系幹細胞
実施期間及び
対象症例数

3年間

13歳から65歳までの10症例

治療研究の概要 若年者に多い良性骨腫瘍の摘出後生じる骨欠損で、骨折を生じる危険性が高い症例に対して、あらかじめ自己骨髄液から採取して、培養して得た骨髄間葉系幹細胞を付着させた人工骨を骨欠損部に充填することで早期の良好な骨形成を図る。
その他(外国での状況等) 骨髄から採取した骨形成前駆細胞を培養して増幅し、人工骨(ハイドロキシアパタイト)に播種させ、骨欠損部に移植した例は2001年Quartoら(伊・露)が3例報告した。国内でも同じく2001年Ohgushiが骨髄間葉系細胞を培養・増殖し骨形成細胞に分化させ、HAやβ-TCP等の表面に播種して移植した臨床例での報告を行っており、歯科領域でも2006年Yamadaらの報告がある。奈良医科大学、大阪大学でも臨床使用例が報告されている。
新規性について 培養骨髄間葉系幹細胞と人工骨を組み合わせて作成した再生培養骨に関しては、すでに産業技術総合研究所、奈良医大、大阪大などで臨床応用例の報告があるが、信州大学医学部付属病院での臨床研究は今回が初めてであり、新規性・審議の必要性を認める。

(別紙6)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成19年11月28日審議分

研究課題名 重症心不全患者への外科的治療に付随して行う、自己骨髄由来間葉系細胞を用いた細胞移植に関する臨床研究
申請年月日 平成19年11月14日
実施施設及び
研究責任者

実施施設:慶應義塾大学医学部

研究責任者:四津 良平

対象疾患 冠動脈バイパス術及び左室形成心臓外科手術施行予定の重症心不全患者
ヒト幹細胞の種類 (自己)骨髄間葉系幹細胞
実施期間及び
対象症例数

2年間

20歳から79歳までの5症例

治療研究の概要 冠動脈バイパス術や左室形成術などの心臓外科手術が必要な重症心不全患者に対して、自己骨髄より採取し培養した間葉系幹細胞の浮遊液を、心臓手術時に直視下に心筋内に注入し、安全性とともに手術によって得られると予想される心機能改善効果に付加的な改善効果が認められるかを、historical controlとの比較により確認する。
その他(外国での状況等) 心臓への骨髄間葉系幹細胞(MSC)移植は、中国で経冠動脈投与による70例弱の臨床例があるが、動脈塞栓の危険性により現在は心筋への直接注入が主流。特殊なカテーテルを用いて心臓内から心筋へ細胞を注入する大規模臨床試験が米国で進行中であり、本邦でも国立循環器病センターが同様の手法による臨床研究を行っている。開胸手術時に直視下に針を用いて心筋内へ細胞を注入する方法での臨床例は、2001年にLancetでの報告がある。
新規性について 開胸術時にMSCを心筋に直接注入する方法は、前述のLancetによる報告の他、大阪大学でも骨髄由来CD133陽性細胞移植の臨床研究開始が予定されている。今研究は慶應義塾大学医学部での初めての幹細胞臨床研究であることから新規性・審議の必要性を認める。

(参考)

厚生科学審議会科学技術部会
ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会委員名簿

  氏名 所属・役職
  青木   清 上智大学名誉教授
  阿部  信二 日本医科大学呼吸器感染腫瘍内科部門講師
  位田  隆一 京都大学公共政策大学院教授
  掛江  直子 国立成育医療センター研究所成育保健政策科学研究室長
  春日井  昇平 東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学教授
  貴志  和生 慶應義塾大学医学部形成外科准教授
  木下   茂 京都府立医科大学眼科学教室教授
  高坂  新一 国立精神・神経センター神経研究所長
  小島   至 群馬大学生体調節研究所所長
  島崎  修次 杏林大学救急医学教室教授
  高橋  政代 理化学研究所神戸研究所網膜再生医療研究チームチームリーダー
  戸口田  淳也 京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野教授
永井  良三 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
  中畑  龍俊 京都大学大学院医学研究科発達小児科学教授
  中村  耕三 東京大学大学院医学系研究科整形外科学教授
  西川  伸一 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 副センター長
  前川   平 京都大学医学部付属病院輸血部教授
  水澤  英洋 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学教授
  湊口  信也 岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学・呼吸病学教授
  山口  照英 国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長
 

(○は委員長)

敬称略 50音順


トップへ