市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書

平成19年3月
市町村保健活動の再構築に関する検討会

照会先:厚生労働省健康局
総務課保健指導室
TEL::03-3595-2190

標記につきまして、別添のとおり報告書がまとまりましたのでお知らせします。

別添:市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書


市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書

平成19年3月
市町村保健活動の再構築に関する検討会

市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書目次

I   地域保健を取り巻く状況の変化

II   本検討会の趣旨

III   本検討会の検討課題

IV   検討の経緯

V   市町村保健活動の中核的な機能

VI   市町村保健活動体制の再構築にむけて

  市町村保健活動の現状と課題

市町村保健活動体制の再構築に向けての推進方策

効果的な予防活動を実施し、糖尿病医療費の
伸びを抑えた島根県安来市の事例

VII   新任時期の人材育成プログラム

まとめ

参考資料
  1)   「専門技術職員の分散配置における活動体制及び人材育成体制に
関する調査」結果
(1〜10ページ(PDF:311KB)、 11〜20ページ(PDF:388KB)、 21〜30ページ(PDF:318KB)、 31〜40ページ(PDF:329KB)、 41〜50ページ(PDF:339KB)、 51〜60ページ(PDF:356KB)、 61〜73ページ(PDF:324KB) 全体版(PDF:2,359KB))

2)   効果的な保健活動推進の事例
(1〜20ページ(PDF:465KB)、 21〜40ページ(PDF:559KB)、 41〜60ページ(PDF:532KB)、 61〜75ページ(PDF:437KB)、 76〜85ページ(PDF:326KB) 全体版(PDF:2,317KB))

市町村保健活動の再構築に関する検討会開催要綱

市町村保健活動の再構築に関する検討会構成員名簿

市町村保健活動の再構築に関する検討会ワーキンググループ開催要綱

市町村保健活動の再構築に関する検討会ワーキンググループメンバー



I   地域保健を取り巻く状況の変化
  平成6年の地域保健法の制定により、母子保健サービス等地域住民に身近で頻度の高い保健事業は市町村が中心的な役割を担うことになった。具体的には、地域住民に対する健康相談や保健指導等の保健サービスの実施拠点として市町村保健センターを法定化し、整備を促進することとなった。
  その後、平成12年の介護保険法の施行、平成18年の児童福祉法の改正及び障害者自立支援法の制定等により、市町村が取り組むべき地域の健康課題は複雑化、多様化し、業務量も増大してきている。また、高齢化の進展とともに、医療費や介護給付費の増大が予測される中、効果的、効率的に介護予防事業、生活習慣病予防対策を推進することが急務となっており、今後、市町村の果たすべき役割は益々大きくなると予測されている。
  一方、地方財政の悪化に伴う職員定数の削減、組織のスリム化等の圧力が強まる中で、住民に直接サービスを提供する事業のアウトソーシングが進む中で、市町村が保健行政の主体として果たすべき役割は何かという、根本的な問いが投げかけられている。
  また、全国的な市町村合併の進展に伴う市町村の人口規模の拡大や保健事業の活動範囲の広域化により、地域住民との距離が遠くなり「顔の見えるサービス」が希薄になったという指摘がある。
  平成20年度から特定健診・特定保健指導が医療保険者に義務付けられたことに伴い、市町村では生活習慣病予防対策を効果的に推進するために、医療保険者である国保部門と地域住民の健康問題を担当する保健衛生部門の協働した活動が強く求められる。
  このような市町村の保健活動を取り巻く状況の変化を受けて、市町村の保健師、管理栄養士等の技術職員に求められる役割も多様化している。しかしながら、人材確保や職員配置等の人材育成体制や活動体制がこのような状況の変化に対応できていないことも課題となっている。
  今後、市町村が益々厳しくなる財政状況の下で、増大し多様化する保健活動の課題に的確に対応するためには、行政主体としての役割を明確化するとともに、保健師、管理栄養士等の技術職員の活動体制や人材育成体制等市町村保健活動の体制を再構築することが喫緊の課題となっている。

II   本検討会の趣旨
  本検討会では、こうした市町村保健活動のニーズや課題を踏まえた上で、行政主体としての市町村保健活動の役割を明確にしつつ、保健師、管理栄養士等技術職員の配置や人材育成体制等について検討を行った。
  そして、本検討会の検討結果を市町村長や関係者に対して、周知することにより、市町村の保健活動体制の再構築及び保健活動の機能強化に資することを目的とした。

III   本検討会の検討課題
 1   地域保健における行政主体としての市町村の役割を明確にする。
  ○ 厳しい行財政環境の下でアウトソーシングが進行しているが、行政主体として果たすべき市町村保健活動の中核的機能は何か
 2   市町村保健活動の活動体制に関する現状と課題を分析し、効果的な保健活動の体制と推進方策を検討する。
  ○ 保健師、管理栄養士等の技術職員が保健、医療、介護、福祉等の部門に分散して配置されている現状の中で、組織横断的な取組が可能となる体制整備
  ○ 保健師、管理栄養士等の技術職員の分散配置が進行した状況下での人材育成体制のあり方
  ○ 市町村保健活動を強化するための地域住民組織やNPOとの連携・協働のあり方
  ○ 市町村が住民の健康問題の課題を把握し、保健活動の企画立案、実施、評価、改善策の実施のサイクル(PDCA)に基づく保健活動を推進するための体制整備
  ○ 都道府県保健所との協働のあり方

IV   検討の経緯
  本検討会では、まず、検討課題1として地域保健における行政主体としての市町村の役割の明確化について、行政主体として果たすべき市町村保健活動の中核的機能は何かを主に議論した。それらを踏まえ、検討課題2として市町村保健活動の現状を分析し、効果的な保健活動の取組が可能となるような体制整備の在り方について検討した。
  また、技術職員の分散配置における活動体制および人材育成体制について政令市、保健所設置市、特別区を除くすべての市町村を対象に実態を把握するためのアンケート調査を実施した。
  本検討会は、平成18年7月から平成19年3月までに計8回開催し、取りまとめを行ったので報告する。

V   市町村保健活動の中核的な機能
  今後、市町村保健活動においては、糖尿病等の生活習慣病の予防及び介護が必要となる人をできるだけ少なくするための予防が益々重要になる。生活習慣病予防対策や、介護予防事業の本格的な展開により、地域住民の健康状態の改善、生活の質の向上を目指し、結果として医療費と介護費用の効率化につなげていく必要がある。これらの対策において最も基本的なことは疾病の発生そのものを予防する一次予防活動である。一次予防が効果的に実施されない場合は、二次予防、三次予防の部分で地域住民への支援が必要になり、医療費が増大することにつながるこから医療費の効率性という観点からも重要である。
  地域保健活動においては、ヘルスプロモーションの理念に基づいた活動を推進することが求められている。ヘルスプロモーションとは、人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセスである。ヘルスプロモーションは、公衆衛生の中心的な機能を果たしており、感染症や非感染症そしてその他健康を脅かすものに取り組むことに貢献するものである。
  具体的には、[1]健康的な公共政策づくり、[2]健康な生活習慣や保健行動の実践を容易にするような環境づくり、[3]コミュニティ活動の強化、[4]個人技術の向上、[5]ヘルスサービスの考え方の転換により、自らの健康と健康を決定する身体的要素、ライフスタイル、行動様式などの要因をコントロール、改善するプロセスである。本検討会においては、市町村が保健活動を推進するにあたっては、このヘルスプロモーションの理念に基づいた活動を推進することが基本であると考え、このことを踏まえて、市町村保健活動の中核的な機能を以下の2つに整理した。

    地域住民が主体的に個人及び地域の健康状態の改善、保持、増進にむけて行動することを支援する機能
地域住民や地域全体の健康状態の改善、保持、増進は、保健師、管理栄養士等の技術職員だけが推進するものではなく、地域住民自らが主体的に行動し、地域住民自身や地域全体の健康状態を改善できるように支援する機能

     「保健サービスの提供」にとどまらず、健康課題の把握、企画立案、評価、地域の社会資源の開発等「地域保健活動」を推進する機能
直接的な地域住民へのサービスを通して、地域に顕在している健康課題や潜在している健康課題を把握し、企画立案し、委託したものも含めて評価すること、さらに地域の健康課題の解決に必要な社会資源を開発する等「地域保健活動」を推進する機能

VI   市町村保健活動体制の再構築にむけて
    市町村保健活動の現状と課題
  市町村保健活動の実態と課題を把握するために「専門技術職員の分散配置における活動体制および人材育成体制」について全ての市町村(保健所を設置する市及び特別区は除く)に対し、アンケート調査(平成18年11月〜12月)を行い(調査対象数1,758,回収数1,665,回収率94.7%)、それらを踏まえて検討を行った。

1) 保健師、管理栄養士等の技術職員が保健、医療、介護、福祉等の部門に分散して配置されている現状の中で、組織横断的な取組が可能となる体制整備
感染症対策や母子保健が中心の時代は、保健師、管理栄養士等の技術職員は保健衛生部門に集中して配置されていたが、市町村が担う対人保健サービスの役割が多様化したことにより、保健衛生部門に加えて、介護保険部門、児童福祉部門、地域包括支援センター等様々な部門に配置され、他職種と協働した活動が求められるようになった。
保健師の分散配置の進行により、保健師は単なる事業担当者として事務的な仕事を担うことが多くなり、地域全体の健康課題を把握する保健師の専門性が十分に生かされていないという指摘がある。
また、配置の部署が多様化したことにより、中堅の保健師は、地域包括支援センターや障害福祉部門に配置されることが多く、保健衛生部門に十分配置されていないことがアンケート調査で分かった
平成20年度からの特定健診・特定保健指導の実施においては、医師、保健師、管理栄養士がその中心的な役割を担うこととされているが、約44%の市町村では、管理栄養士が配置されていないことがアンケート調査で分かった。
2) 保健師、管理栄養士等の技術職員の分散配置が進行した状況下での人材育成体制の整備

市町村には、新任の保健師、管理栄養士等の技術職員の教育体制の整備が求められている。

保健師、管理栄養士等の技術職員の配置部署が分散したことにより、採用後の教育(OJT)にあたる直属の上司が不在であるなど、採用後の人材育成体制の整備が急務となっている。

3) 市町村保健活動を強化するための地域住民組織やNPOとの連携・協働のあり方
これまでの市町村保健活動においては行政が中心となり保健サービスを提供してきた。市町村保健活動における行政と地域住民組織の関係は、行政が主導し、地域住民組織が市町村保健活動の下請け的な役割を果たすことが多かった。しかし、地域住民の意識の変化や民間活用の流れを受け、今後は、地域住民組織、NPO等と役割を分担しながら協働して保健活動を推進することが求められている。
地域住民組織やNPOとの協働は、保健サービスを効果的・効率的に提供するだけではなく、協働することにより、地域住民組織やNPOが地域の健康課題を解決できるようになることも期待されている。
4) PDCAサイクル
市町村が住民の健康問題の課題を把握し、保健活動の企画立案、実施、評価、改善策の実施のサイクル(PDCA)に基づく保健活動を推進するための体制整備が必要である。
保健師は、保健衛生部門に加えて、様々な部門に配置されているため、それぞれの部門の課題を地域全体の健康課題とつなげて、保健活動を企画立案、評価することができなくなってきている。
その理由の1つとして、業務量が増え定型的なサービス業務に追われ、人口動態統計等の既存の保健統計等も含め分析できにくくなってきていることがある。
平成17年度保健師活動調査結果(保健指導室調べ)では、市町村保健師の活動状況は、健康診査、健康教育、家庭訪問等の直接サービスは55.3%、地区管理や業務管理等のその他は22.7%である。これを平成12年度からの推移でみると、直接サービスである家庭訪問や健康相談が減少傾向にある。こうした保健師による家庭訪問等直接サービスの減少と直接サービスのアウトソーシングの進展は、保健師による地域の健康課題を把握する機能の低下をもたらしているとの指摘がある。
業務量が多いことや保健活動を評価する指標が明確になっていないことから、保健活動を評価することが十分にできず、市町村による保健事業のPDCAサイクルが十分に機能していない。
5) 都道府県との協働のあり方
市町村は、都道府県保健所に市町村保健活動の企画や評価に関する支援、保健活動をスーパーバイズする機能を果たしてほしいと考えている。
しかし、都道府県保健所は、地域保健法制定以降、専門性が高まり、業務担当制をとっているため、支援できる業務が限られている。また、都道府県保健所の再編・統合により、保健所の管轄地区が拡大したことからも、管轄市町村の状況把握を非常に困難にしている。こうしたことから、都道 府県保健所が市町村保健活動に関する情報の発信源とはなり得ていないという指摘もある。
    市町村保健活動体制の再構築に向けての推進方策
1)   保健師、管理栄養士等の技術職員が分散して配置されている中で組織横断的な取組体制の構築
(1)保健衛生部門と国保部門、地域包括支援センターなど庁内で組織を横断した協議の場の設置
 ○ 地域の健康水準を向上させるためには、保健師、管理栄養士等の技術職員が所属する部門だけで事業を実施するのではなく、地域保健全体の健康課題を把握して、地域の健康水準を向上させるために関係のある部門が協働することが必要である。そのためには、市町村庁内で分散配置された部門を含む組織横断的な協議の場を設置する。
 ○ 特に、平成20年度からの特定健診・特定保健指導を含む生活習慣病対策においては、効果的・効率的な実施のために、保健衛生部門と国保部門が協働して実施することが不可欠である。

(2)職種ごとの統括的な役割をもつ者の配置
 ○ 保健師、管理栄養士等の技術職員が複数の部署に配置されている場合は、人材育成や地域全体の健康課題を明確にして活動する観点から、保健衛生部門に技術的に指導調整する職種ごとの統括的な役割をもつ者の配置が必要である。
 ○ 組織を超えて職種ごとの統括者を配置している自治体では、事例検討会や勉強会を開催する割合や、共同で事業を実施する割合が高いことがアンケート調査から分かった。
 ○ このことは、同職種の人材育成が実施されやすいことや、地域の健康に関するニーズや課題を共有することにより地域の実情にあった保健活動の企画立案ができることを示している。
 ○ また、保健師や管理栄養士が統括者として分掌事務に明記されている場合は、職種の配置を決定するプロセスにも参加でき、適正な配置を可能にしやすくする。

(3)保健衛生部門において地区分担制と業務分担制を併用するなどの体制整備
 ○ 保健師の専門性は、家庭訪問等による地域住民の生活の場に入った活動を通して地域の健康課題を把握し、それを行政の施策や住民の自発的な活動につなげることにあり、こうした地域での活動が保健師活動の中核的業務である。そのため、保健師の配置は、地区分担制をとることができる活動体制を整備することが必要である。
 ○ 地区分担制と業務分担制を併用する場合には、例えば1つの課に母子保健係と成人保健係がある場合、それぞれ業務を担当するとともに、地区分担では両方の係の保健師が同じ担当地区を持ち、その地区の住民に対し家庭訪問や健康相談等を担当したり、健康教育などを開催したりすることが望ましい。
 ○ この場合、自分の担当地区以外で自分の担当業務で課題が生じたときには、地区担当と業務担当がともに課題を解決する機会をもつことにより、地域の健康に関するニーズや課題を明確にすることができる。
 ○ また、地区分担の際の地区の分け方は、地域住民の主体的な活動につなげる観点からも地域住民の日常生活圏に着目したまとまりにすることが望ましい。

(4)保健師の配置の考え方
 ○ 地区の健康課題を明確にでき、保健師の専門性を活かすことができるよう、保健衛生部門は地区分担制をとることができる体制を組むことが望ましい。
 ○ 地区分担制をとることができる十分な人数を確保することが望ましい。
 ○ 人材育成や地域全体の健康課題を明確にして活動する観点から、保健衛生部門に保健師を技術的に指導・調整する統括的な役割をもつ保健師を配置することが望ましい。
 ○ 新任者の配置については、人材育成の観点から、同じ職種の指導者がいて、対人保健サービスや地区を受け持つことが経験できる保健衛生部門に配置することが望ましい。

(5)管理栄養士の配置の考え方
 ○ すべての市町村に常勤の管理栄養士を配置することが望ましい。
 ○ 平成20年度からの特定健診・特定保健指導や、食育、介護予防などにおいては、栄養・食生活面からのアプローチが重要となることから、保健衛生部門を始め各関係部門に配置することが望ましい。
 ○ 人材育成の観点から、管理栄養士を技術的に指導・調整する統括的な役割をもつ管理栄養士を配置することが望ましい。

(6)推進事例
−保健師−

[1] 地区分担制と業務分担制を併用している栃木県小山市の事例
  小山市では、地区分担制と業務分担制を併用している。保健衛生部門である健康増進課には、母子保健係、成人保健係、健康増進係がある。このうち、母子保健係と成人保健係の保健師が地区を分担している。
  地区分担は、昭和40年に合併した地区を基盤に6地区に分担している。1地区の分担を成人の業務担当と母子の業務担当がそれぞれ1〜2名ずつの保健師で担当し、年長者をリーダーとしている。その1地区は、さらに自治会等に分担され、自分の担当業務に関係なく、家庭訪問や健康相談、健康教育等を実施することによって地区の健康課題を把握している。

[2] すべての市民センターに保健師を配置し、健康相談、健康教育等の活動 は市民センターが、企画立案、評価等は本庁が担当し、統括する役割を 持つ保健師が、市民センター保健師の調整担当として位置づけられている兵庫県加古川市の事例
  加古川市では、市民部の市民センター9か所すべてに保健師が1名ずつ配置され、主として地域住民に身近な支援として健康相談、健康教育、家庭訪問等を実施している。本庁は主として市民センターから情報を収集し、企画立案、評価を実施する他、処遇困難事例について担当している。
  このような活動体制をとる場合は、庁内から物理的な距離がある場所に単数配置されている保健師への人材育成のための支援や精神的な支援が必要になる。また、市民センターに配置されている保健師が把握しているそれぞれの地区ごとの課題をつなぎ、地域全体の課題を把握することや、それらを本庁の企画につなげ、事業につなげ評価していくことが必要だと考えている。
  保健師の統括者は、本庁の保健福祉部健康課に所属されているが、市民センターに配置されている保健師の調整を行うことが分掌事務に記載されており、月に1回本庁で市民センター保健師と定期的な連絡会や合同研修会を開催している。

[3] 保健福祉課の参事が統括保健師として位置づけられている宮城県丸森町の事例
  丸森町では、保健福祉課の参事が統括保健師として分掌事務に記載されている。統括者の役割は、各種事業の企画立案のサポート、起案文書や資料の確認、精神的なサポート、処遇困難ケースの支援方針検討会の開催など、保健活動、保健師関係の調整をしている。

−管理栄養士−
[1] 健康福祉推進課へ管理栄養士が配置されている北海道猿払村の事例
  猿払村では、人口2,900人という小規模な自治体であるが、健康福祉推進課に管理栄養士を配置している。常勤の管理栄養士が配置されることにより、生活習慣病予防をはじめ、医療、福祉・介護、学校教育等の幅広い対象と関わりを持ちながら事業を推進している。

[2] 健康福祉部へ管理栄養士が複数配置されている山形県山形市の事例
  山形市では、健康福祉部に管理栄養士が複数配置されることにより、地域住民組織や他部局と連携し、各ライフステージごとのポピュレーションアプローチを地域全体で推進するとともに、ハイリスクアプローチとして、健診の事後指導を効果的に推進している。
  地域住民組織として食生活改善推進員や、健康づくり運動普及推進員を育成している。特に、食生活改善推進員は、市内30地区6ブロックに分かれており、各ブロックで推進員が自主的に各種事業に協力できる体制を整備したことで、管理栄養士は係長として配置され、企画・立案・調整業務を担っている。

[3] 健康管理課だけでなく、介護高齢福祉課にも管理栄養士が配置されている神奈川県伊勢原市の事例
  伊勢原市では、健康管理課の他に介護高齢福祉課に常勤管理栄養士が配置されていることにより、特定・一般高齢者施策・福祉サービス(配食サービス)等、栄養ケア・マネジメント業務を効果的に推進している。特定高齢者施策では、管理栄養士が地域に足を運び、立ち寄り訪問を実施。通所や訪問型で継続できるケースが多くなっている。管理栄養士が関わることで高齢者の低栄養状態の改善が見られるケースが多く、また地域の課題の把握にもつながっている
  一般高齢者施策では、高齢者が集まる場での料理教室など出前講座や、高齢者を支える人材(民生委員やボランティア、ヘルパーなど)の養成・育成・連携及び、民間サービス情報(配食など)の収集、配布を行っている。
  また、庁内栄養士連絡調整会議や非常勤栄養士連絡調整会を定期的に行っている。

[4] 本庁及び各地区に管理栄養士が配置され、かつ統括者がいる宮崎県都城市の事例
  都城市では、本庁及び各地区(支所)に管理栄養士が配置され、かつ統括者が配置されている。統括者は本庁(総合支所)に2名配置されており、[1]成人保健事業、地域支援事業、高齢者福祉事業を統括する者と、[2]保育所給食、母子保健事業を統括する者とで分担している。統括者が配置されることにより、地域全体で組織横断的に連携した取組が推進されている。

2)   保健師、管理栄養士等の技術職員の分散配置が進行した状況下での人材育成体制の構築
(1)人材育成の基本的な考え方置
 ○ 市町村職員の資質の向上は、まずは市町村が自ら努力することが基本である。しかし、市町村が独自で実施することが困難な場合は、都道府県や教育機関等と連携しながら実施することが必要である。

(2)計画的な人材育成
 ○ 市町村における技術職員の人材育成のための指針が必要である。その指針に基づき、市町村においても人材育成体制を構築していくことが望ましい。
 ○ 市町村の人材育成計画との整合性を図りながら専門職としての人材育成を行うことが必要である。
 ○ 新任者については、「VII  新任時期の人材育成プログラム」を参考に人材育成計画を策定することが必要である。
 ○ 中堅者、管理者については、平成14年度「地域保健従事者の資質の向上に関する検討会」報告書に中堅者、管理者に必要な能力が例示されているため、市町村がそれらを踏まえて人材育成計画を策定することが望ましい。
 ○ 適正配置のためには、年齢構成や産前産後休暇、育児休業等とその対応を含めた上で計画的な採用計画を立てることが重要である。
 ○ 行政能力の獲得については、事務職との協働を積極的に行うことも1つの方策である。
 ○ 計画的に異なる部署を経験させるジョブローテーションの仕組みをつくることが必要である。
 ○ 人事交流によって資質を向上させることも1つの方策である。その方策として都道府県と市町村や市町村間での人事交流等が考えられる。
 ○ 経験の浅い保健師、管理栄養士等の技術職員には、対象者の個別支援の事例に積極的に関わり、その経験を通して全ての保健活動に通じる技術を獲得することが必要である。

(3)推進事例
[1] 企画書の作成を通したOJTにより保健師の人材育成を支援している宮城県丸森町の事例
  丸森町では、企画書を書くためには、個人を知り、家族を知り、地域を知ることが大変重要で、「企画書が書ける保健師」が「5年目の保健師のあるべき姿」と考えている。
  「企画書を書くことは、現状把握から健康課題解決までの能力を向上させることであり、保健活動を関係職種に理解しやすいように説明する能力を向上させることである」と考え、町の計画と整合性を図り、企画の概要、目的、目標、背景、問題点、予測効果、内容や評価、リスク対策等の項目からなる企画書を作成している。統括保健師は、それを指導している。

[2] 都道府県保健所が市町村に出向き新任の保健師の人材育成を支援する岡山県の事例
  岡山県では、県内市町村の新任保健師の教育を都道府県保健所が担うこととしており、市町村に出向いて支援を行っている。具体的には、教育目標に到達できるよう介入している。

[3] 都道府県と市町村との人事交流をしている岡山県の事例
  岡山県では、昭和62年度から、「公務員としての視野拡大」を目的とする「県と市町村の人事交流制度(県市町村職員相互派遣制度要綱)」の中で、市町村からの要請による保健師相互派遣を実施し、23市町の40人と相互交流を行っている。
  人事交流について、県保健師では、「地域住民に最も身近な市町村の責務を体験した他、保健活動の評価を支援する県の役割について考えることができ、市町村への対応方法について学ぶことができた」、市町村保健師では、「保健所の業務や役割が理解できた」等の意見が聞かれている。

[4] 市町村管理栄養士等の人材育成体制を構築した神奈川県の事例
  神奈川県では、保健福祉事務所が主催する栄養改善業務連絡会議において、保健福祉事務所と市町村の保健衛生や児童福祉、高齢福祉等各部門の管理栄養士・栄養士が連携し、情報提供や研修、協働事業の企画、実施、評価などを通じての人材育成を図っている。
  保健福祉事務所、市町村(保健所設置市含む)の行政管理栄養士等を対象に研修会を実施しているが、これは単に質的向上だけでなく、地域における広域的な連携・協力体制の構築ができる栄養・健康増進対策推進のリーダーとしての人材育成を行っている。
  さらに、平成19年度には検討委員会を開催し、20年度に向けて新任管理栄養士等活動マニュアル(仮称)を作成する予定である。

3)   地域住民、NPOとの協働体制の構築
(1)目的および役割分担の明確化
 ○ 市町村が地域住民、NPO等と協働する目的や役割分担を明確にすることが必要である。
 ○ 地域住民、NPO等が企画の段階から政策決定のプロセスに関わることが必要である。
 ○ その際には、首長をはじめ、庁内で関係する担当者、地域住民等で構成される組織をつくるとともに役割分担をすることが効果的である。
 ○ 関係者が、顔を合わせた話し合いのテーブルをもち、活動の目的や役割分担について議論することが具体的な方策の1つである。

(2)地域住民の自発的な活動の支援
 ○ 市町村は、地域住民の自発的な活動を支援するために、情報の提供、場の提供など活動する機会の提供、さらに保健師、管理栄養士等による専門職として助言を積極的に行う。
 ○ 地域住民やNPOとの協働では、地域住民やNPOとともに企画、実施をすることで得られた成果の評価も必要である。
 ○ 特に、健康増進計画を策定した市町村では、健康づくり推進員を育成し、企画立案の段階から地域住民が参加することにより、健康づくり推進員が主体的に地区の健康課題を解決してきた事例が多く見られている。

(3)推進事例
[1] 市民みんなの健康づくりサポーターを結成した埼玉県坂戸市の「元気にし隊」と「応援し隊」の事例
  坂戸市は、健康増進計画策定のプロセスの段階から公募で参加してきた市民で、市民みんなの健康づくりサポーターを結成、この活動を保健師、管理栄養士等が支援をしている。
  「応援し隊」は、市民の健康づくりを様々な角度から応援する集合体で、ボランティア団体、大学、企業等23団体が登録している。公募の市民メンバーからなる「元気にし隊」と連携し、計画の推進のために市民の健康づくりを推進している。 
  その結果として、平成18年4月から政策企画部門に健康づくり政策室が新設された。また、市長が「市民がつくり育むまち、さかど」という構想を掲げており、それと合致する活動となった。


[2] 健康推進員の活動で肥満の学童を減少させた栃木県小山市の事例
  小山市のA地区では、健康推進員が地区の全支部で「肥満予防」に取り組んでいる。健康推進員が、肥満予防に関する健康教室や相談を実施してきたが、まずは推進員自身が生活習慣行動改善を実行し、家族から近所に啓発を行い、「肥満予防」の意識を高めてきた。
  肥満予防の活動を実施するなかで、学童からの啓発が大切との意見から小学校文化祭でも健康教育を実施など積極的に関わっている。
  この活動の結果、A地区の小学校の健診結果は改善し、肥満の児童が減少傾向にある。
  このような活動は、健康増進計画策定後、健康推進員が校区単位で集まり、地区の健康課題について話し合い、データの読み取り等必要な取組みをしている。また活動成果をまとめて「健康だより」を作成し、地区に回覧している。また、年度末には達成度について地区担当保健師と評価をして活動を推進している。

[3] 健康推進員の活動で基本健診受診率80%以上である大分県玖珠町の事例
  大分県玖珠町では、平成16年度の基本健康診査受診率は92.6%であり、平成17年度は、82.8%である。これは、地域住民の組織が受け持ち担当地域の世帯に訪問調査を行い、受診対象者を把握し、受診を勧奨しているためである。
  国民健康保険の老人医療費が全国と比較して低くなっている理由は、20数年前から、地域住民とともに基本健康診査とその事後フォローを行ってきたことも要因の1つと考えられる。
  現在は、壮年期の医療費が高額であるため、事業所をターゲットにモデル事業を展開しているところである。

[4] 母子保健推進員が後に地区組織の構成員として活動する埼玉県蓮田市の事例
  埼玉県蓮田市では、母子愛育会の推進員全員に母子保健推進員を委嘱し、市内で1歳未満の子育てをしている家庭の声かけ訪問や乳幼児健診未受診児の訪問を地区担当保健師とともに行っている。また子育て中の若い母親が母子保健推進員として活動している。
  この母子保健推進員は、その後地区組織の構成員として活動することが多い。

4)   PDCAサイクル(保健活動の企画立案、実施、評価、改善策の実施のサイクル)に基づく活動体制の構築
(1)PDCAサイクルの重要性
 ○

市町村は、保健事業の実施にあたっては、PDCAサイクルの概念を導入することが重要である。


(2)現状把握
 ○ 地域の健康に関するニーズや課題を明確にする際には、多様な手段を用いて現状を把握することが必要である。
 ○ 個人への保健サービスの提供を通して得られる情報、地域の保健活動に関する多様なデータ、地域住民や関係者等の意見等を統合することが重要である。
 ○ 個人への保健サービスの提供を通して地域全体の課題と関連させること、また地域全体の健康課題から個人の事例に戻って確認することは課題が明確となる方策の一つである。
 ○ 特に、平成20年度からの特定健診・特定保健指導においては、保険者である国保部門が持つデータと保健衛生部門が持つ地域全体のデータを統合させて、計画を作成することが効果的である。

(3)市町村の課題の明確化
 ○ 地域の健康に関するニーズや課題については、市町村が主体となって担うべき課題を明確にして企画することが重要である。

(4)地域住民やNPO等の意見の反映
 ○ 地域住民やNPO等の意見をPDCAサイクルの全のプロセスに反映できるようにすることも重要である。
 ○ 地域住民や関係者の意見を聞くことは、保健師、管理栄養士等の技術職員が気づきにくい視点に気づくきっかけとなる。
 ○ また、評価をする段階では、地域住民が保健サービスに満足しているかどうか把握し、公共サービスとして評価をすることも重要である。

参考資料
5)   都道府県との協働の構築
(1) 市町村特に小規模町村の保健師、管理栄養士等の技術職員の人材育成への支援が都道府県に求められる。

(2) 市町村が保健事業でPDCAサイクルを活用する際の保健活動の企画や評価に必要な技術的な支援が都道府県に求められる
 ○ 市町村が地域の健康に関するニーズや課題を明確にして企画立案する際に都道府県保健所が関連部署の関係者を集めて一緒に話し合う場を設けることも方策の1つである。
 ○ そのような場合、都道府県が持つデータを活用し、市町村の課題を事前に分析して提示し、支援することも方策の1つである。

(3)推進事例
[1] 市町村の健康課題の明確化と評価を支援している大分県の事例
  大分県では、市町村に潜在化している問題を顕在化させるために、保健所の所長以下、関係職員が市町村に出向いて、市町村の保健活動の実績報告を受けた後で、保健所が把握している保健統計のデータ等から、その市町村の保健活動により成果が出ていると思われる部分を紹介するとともに、市町村が気づいていない新たな課題を把握できるように支援している。

[2] 平成20年度からの特定健診・特定保健指導の実施のために、市町村の国保部門と保健部門の協働した活動を推進する高知県の事例
  高知県では、保健所の所長を含めたチームが市町村への医療制度改革全体の影響を説明、緊急的かつ組織横断的な推進体制づくりを提案し、担当課長(保健、国保、介護、福祉)の共通理解を得て、保健所と市町村内に医療制度改革に対応する組織横断的なチームを編成し、特定健康診査等実施計画づくりのための現状把握を協働で実施している。

  効果的な予防活動を実施し、糖尿病医療費の伸びを抑えた島根県安来市の事例
出典)「国民健康保険医療給付実態調査報告」(国)、安来市提出資料(全数調査)(安来市及び県)

1) 保健師、管理栄養士等の技術職員が分散して配置されている中での効果的な組織体制
 ○ 統括している保健師は、行政における保健師の役割や配置の要望について他職種に伝える役割を持つ。
 ○ それぞれの部門に配置されている保健師との情報交換から課題を整理する。
 ○ 保健部門が地区担当制により地区活動を通じて得た情報から市が行政の保健事業として取り組むべき課題を明確にできる。

2) 保健師、管理栄養士等の技術職員の分散配置が進行した状況下での人材育成体制の構築
 ○ 市の「人材育成基本方針」に基づき実施している。
 ○ 主任級はおおむね3年ごと、主幹級は4〜6年程度の異動基準が設けられている。
 ○ 専門能力の向上のため、それぞれの部門に配置されている保健師との情報交換や研修会等を開催している。
 ○ 行政能力の向上のため、市の職員研修や職位に応じた研修会に参加している。

3)

地域住民組織、NPOとの協働体制の構築

 ○ 健康増進計画の推進母体として、地域住民、関係団体で構成する「安来市健康推進会議」を設置している。会議の下にライフステージごとの部会を設け、具体的な事業の検討をすすめている。
 ○ 地区ごとに地区健康会議があり、地域住民が主体となる健康づくりの基盤が整備されている。また、各自治会に健康委員が配置され、住民の身近な活動が地区ぐるみで展開されている。

4) PDCAサイクル(保健活動の企画立案、実施、評価、改善策の実施のサイクル)に基づく活動体制の構築
 ○ 健康増進計画は、健診受診率、医療費分析、死亡状況、健康実態調査、地区活動における地域住民の声などを整理し、課題を明確にした上で、計画立案され、実施、評価、改善に結びつけている。
 ○ 地域住民や関係機関との協動を通して、地域の課題を明確にすることができ地域住民や関係機関による主体的活動につながっている。

5) 都道府県等との協働の構築
 ○ 圏域、県レベルでの保健統計の情報提供や近隣市町との情報交換、検討の場をもつことで、市の課題がより明確となり、具体的事業展開につながっている。
 ○ 県(保健所)が事務局を持つ「圏域健康長寿しまね推進会議」の圏域計画推進事業に、糖尿病対策の一次予防活動を位置づけ協働事業を行っている。
 ○ 県(保健所)が運営する「圏域糖尿病対策検討会」と連動した糖尿病対策が推進できるよう安来市の取組について紹介・報告し、圏域の糖尿病対策の評価につなげている。
 ○ 糖尿病管理協議会は、合併前に旧市町の活動をふまえ、管轄保健所の助言・支援のもとに設置した。協議会の場では、圏域課題の問題提起、関係団体との調整等を行い、活動の積み重ねの必要性、アプローチの方法等共通確認することで糖尿病対策の全体像を把握した上で、具体的活動につなげている。
 ○  糖尿病管理協議会には保健所長も委員として参加し、全県的な糖尿病対策と連動した取組を推進している。

6) その他
 ○ 糖尿病対策においては、医師会、歯科医師会、栄養士会、看護協会、糖尿病友の会等により協議会を立ち上げ、負担金形式で運営している。

VII  新任時期の人材育成プログラムガイドライン
 























 まとめ
    少子高齢化の進展、医療費、介護給付費の増大、行財政改革、全国的な市町村合併の進展、そして平成20年度からの特定健診・特定保健指導の実施など保健活動をめぐる状況は大きな変革期にある。このような変革は市町村の保健活動の再構築、そして活動の機能強化がなくして効果は期待できない。
  本報告書は、そのような状況にある市町村の保健活動体制を再構築し、今後の保健活動の機能強化に資することを目的に作成されたものである。市町村は、それぞれの実情にあわせて、保健師、管理栄養士等の技術職員の配置を含めた活動体制や人材育成体制を再構築することによって、効果的・効率的な保健活動を推進していくことが求められる。
  今後は、市町村が、地域住民の健康問題の課題を的確に把握し、保健活動の企画立案、実施、評価、改善策の実施のサイクル(PDCA)に基づく保健活動を地域住民等と協働して推進するが重要である。そのためには、市町村内の組織体制の再構築や人材育成体制の整備とともに、地域住民組織やNPO、都道府県等との協働が必要である。
  具体的には、保健師、管理栄養士等の技術職員が複数の部署に配置されている場合は、組織横断的な取組ができるよう、保健衛生部門に職種ごとの統括的な役割をもつ者を配置することや、地域の健康に関するニーズや課題を把握し、施策につなげる活動体制として、保健衛生部門に、地区分担制と業務分担制を併用するなど地区分担をとれる体制を整備することが望ましいこと等が本検討会で確認された。
  今後は、本検討会の検討結果を踏まえ、「地域における保健師の保健活動指針」、「地域における行政栄養士業務の基本指針」についての見直しも検討していくことも必要である。
  なお、本検討会においては、政令市、保健所設置市、特別区を除く市町村についての活動体制の再構築について検討してきたため、今後はそれら政令市等における保健活動の機能強化について方策を提示することが課題である。
  本報告書を活用し、地域住民が地域で健康に、そして安心して暮らしていくための効果的・効率的な保健活動を推進する体制が市町村に構築されることを期待したい。




市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書

(概要版)

背景
  高齢化の進展とともに、医療費及び介護給付費が増大し、効果的な予防対策の推進が急務となっています。そのため、平成18年度からは改正介護保険法による介護予防対策を、平成20年度からは医療制度改革による生活習慣病予防対策を効果的に推進することが求められています。
  これまでの取り組みから医療費や介護給付費の抑制に効果をあげている自治体の事例を参考に、市町村の保健活動体制のあり方を具体的に検討しました。
事例
 
島根県  安来市  糖尿病医療費の伸びを抑えることに成功した例

  安来市では、総合的な糖尿病対策に取り組み、医療費の伸びの抑制に成功しています。
  健康増進計画の推進母体として、地域住民、関係団体で構成する「安来市健康推進会議」と地区毎の地区健康会議があり、住民主体の健康づくりの基盤が整備されています。
  保健活動体制は、地区担当制をとって地域の保健課題を把握し、地区組織活動の育成支援の裏方として、保健師、管理栄養士が活躍しています。
  また、部署を超えた統括的役割をもつ保健師が存在し、横の連携がよくとれています。

対策の概要
糖尿病管理協議会の設置
・医師会、患者会、保健所等と連携
患者登録管理の仕組みづくり
・糖尿病手帳、友の会等
ハイリスク者への対策実施
・イエローカード発行、フォロー教室
啓発活動と地区組織活動の推進
・健康ウォーク、地区組織育成
 
  こうした先進事例のように、効果的な予防対策を推進するためには、下記の課題を解決する市町村保健活動の再構築が必要と考えられます。
(詳細は「市町村保健活動の再構築に関する検討会報告書」をご覧下さい。

課題
  保健師や管理栄養士が、地域包括支援センターや国保課、障害福祉課等へ分散して配置され、業務分担が進んでいることなどから、
  事務的な業務が多くなり、地域全体の健康課題を把握することが困難
中堅者が分散して配置され、人材育成体制が不充分
などの課題があり、効果的な保健活動が出来にくくなっています。

効果的な予防対策を実現する市町村保健活動体制のあり方

市町村保健活動の中核的な機能とは?
  地域住民自らが自分自身や地域の健康状態を改善できるように支援する機能
地域の健康課題を把握、企画立案し、評価すること、さらに地域の健康課題を解決するために必要な社会資源を開発する機能

そのためには?
 
組織横断的な取り組みが可能となる体制の整備
保健部門と国保部門、地域包括支援センターなどで構成する市町村庁内で組織を横断した協議の場の設置
複数部署をまたがる保健師、管理栄養士を、技術的に指導・調整する統括的な保健師、管理栄養士を配置
異なる部署を経験させる計画的なジョブローテーションの仕組みの構築

保健師、管理栄養士の専門性を活かす体制の整備
保健師の専門性は、地域住民の生活の場に入った活動を通して、地域の健康課題を把握し、それを行政の幅広い施策や地区組織活動などにつなげることであり、主要業務として明確に位置づける。それを担保するため、地区分担制と業務分担制を併用するなどの体制を整備する。
全ての市町村に管理栄養士を配置することが望ましい。




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