輸血用血液製剤によるHEV(E型肝炎ウイルス)感染が疑われた事例
(12月3日報告)について


1.経緯
 平成16年12月3日、日本赤十字社から、輸血(人赤血球濃厚液、人血小板濃厚液)を受けた症例でHEV感染の疑い事例の報告があった。平成16年12月11日に当該症例は日本肝臓学会東部会で主治医より発表されている。

2.事例
 患者は、平成11年から12年にかけて血液疾患の治療のため、輸血を複数回受けた20歳代の男性。
 輸血後の平成12年3月の血液検査で肝機能値の異常が認められたが、A型、B型及びC型肝炎ウイルス関連検査は陰性であり、当初薬剤性肝障害が疑われたが、同年4月の保存検体を用い、HEV−RNA陽性(但しHEV抗体はIgM, IgG共に陰性)が確認(平成16年8月末)され、E型肝炎が疑われた。
 患者はその後に肝機能は改善したが、転院し、原疾患の合併症により死亡との情報を入手している。

3.感染についての状況
(1) 輸血された血液製剤について
(1) 平成11年9月から12年3月にかけて当該患者に投与された人赤血球濃厚液、人血小板濃厚液の供血者数は62人との情報あり。
(2) 当該の供血者と同一の供血者に由来し、同時に製造された新鮮凍結血漿は医療機関へ供給済みである。投与された別の受血者(平成11年11月投与)において、現在まで肝障害等特に異常はなかったとの報告を受けている。
(2) 供血者個別NATの試験結果
 調査した62本の保管検体のうち、1本からHEV−RNAが検出。受血者及び供血者共にジェノタイプIIIであることを確認し、塩基配列の比較は、100%一致の相同性が確認された。
(3) 供血者に関する情報
(1) 供血者の平成11年当時の海外渡航歴はなく、喫食歴については調査中である。
(2) 供血者の当該献血以後の献血は、肝機能値が高値のため、不適となっている(保管検体のHEV−RNA検査は陰性)。

4.E型肝炎の状況
(1) E型肝炎は通常は経口感染が主な感染経路である。潜伏期間は2〜9週間である(平均6週間)。また、感染初期にウイルス血症を起こすため、輸血による感染を起こすおそれがあり、国内での輸血による感染が2例報告されている。(平成14年及び16年)
(2) 現在厚生労働科学研究班(主任研究者:三代俊治東芝病院研究部長)において、E型肝炎の疫学調査を進めている。

5.厚生労働省の対応
(1) 供血者の平成11年当時の渡航歴はなく、喫食歴については調査中である。
(2) E型肝炎は通常は経口感染が主な感染経路であることから、豚由来の食品や野生動物の食肉は十分に加熱調理を行うよう営業者及び消費者に対し、再度周知徹底する通知が食品安全部から発出されている(11月29日)。
(3) 献血における問診強化・HEV検査の北海道での試行的な対策の効果及び疫学調査の動向を踏まえ、これらの対策の拡大を検討する。

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