輸血用血液製剤でHBV(B型肝炎ウイルス)感染が疑われた事例
(1月12日報告)について


 経緯
 平成17年1月12日、日本赤十字社から輸血(赤血球濃厚液、血小板濃厚液)によるHBV感染の疑い事例で患者が死亡した症例の報告があった。

 事例
 60歳代の男性。原疾患は血液疾患。平成16年1月8日から5月25日まで12回に亘り、輸血(赤血球濃厚液合計26単位、血小板濃厚液合計30単位)を受ける。
 輸血前の血液検査(1月8日)では、HBs抗原検査陰性であったが、平成16年11月18日に食欲不振のため、検査したところ、HBs抗原陽性が確認され、同22日の採血の検体で、HBs抗原(+)、HBs抗体(−)、HBc抗体(+)、HBV−DNAのNATの(+)が確認された。平成17年1月8日劇症肝炎を呈した後、肝不全により死亡した。

 状況
(1) 輸血された血液製剤について
(1) 当該患者には16人の供血者から採血された赤血球濃厚液及び血小板濃厚液を輸血。
(2) 輸血の供血者と同一の供血者に由来し、同時に製造された原料血漿は3本が確保、12本は使用済み、新鮮凍結血漿12本は全て医療機関に提供済み。
(2) 16人の供血者について
(1) 輸血時の供血者16人のうち、8人が再献血し、再献血時の検査結果はHBV関連検査(−)であった。
(2) 供血時保管検体の2人の陽性血から、原料血漿2本、新鮮凍結血漿が2本製造され、原料血漿は使用済み、新鮮凍結血漿も使用済みであった。当該新鮮凍結血漿の受血者2名のうち、1人は輸血後11日目で死亡、もう1人はHBs抗原検査(−)であった。
(3) 供血者個別NATの試験結果
(1) 輸血時の供血者16人の供血時の保管検体について、個別NATを実施したところ、2人がNAT(+)であった。
(2) 当該2人は、共に、複数回再献血を行っているが、再献血時にHBV関連検査(−)であり、HBc抗体及びHBc抗体-IgMは(−)、個別NATも共に(−)であった。
(3) 当該2名の供血時の保管検体のウイルス解析の結果、共に、ゲノタイプ C サブタイプadrと推定、また、497番目と498番目の間に12塩基が挿入した極めて特殊な変異株と挿入のない野生株が存在していた。これらは、受血者の血液も同様に挿入のある変異株と挿入のない野生株を有しており、三者のウイルスのシークエンスは完全に一致した。

 今後の対応
(1) 血液の安全対策の推進
 「輸血医療の安全確保のための総合対策」を着実に実施する。
(2) 輸血時の供血者16人のうち、再献血に訪れていない8人について引き続き、調査する。
(3) その他
(1) 供血時保管検体でNAT(+)となった2名は、その後の再献血の検査がすべて(−)であり、HBc抗体も(−)であり、感染歴があった可能性は低い。
(2) また、発見されたウイルスのシークエンスは稀なものであり、これらが偶然に保管検体2本一致することは考えにくい。
(3) 当該供血者の血液から同時に製造された新鮮凍結血漿の受血者で感染は発生していない。
(4) 以上のことから、NAT時に受血者血液が供血者サンプルに混入する等の測定上の誤差が発生した可能性も考えられる。

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