輸血用血液製剤でHBV(B型肝炎ウイルス)感染が疑われた事例
(11月26日報告)について


.経緯
 平成16年11月26日、日本赤十字社から輸血(新鮮凍結血漿)によるHBV感染の疑い事例で患者が死亡した症例の報告があった。

.事例
 70歳代の男性。原疾患は消化器腫瘍(転移性肝癌を含む。)。平成16年3月12日から15日まで4日間に亘り、プロトロンビン時間延長のため、輸血を(新鮮凍結血漿合計36単位23本)受ける。
 輸血前の血液検査(2月28日)では、HBs抗原検査陰性であったが、平成16年10月4日に肝機能検査値異常がみとめられ、黄疸を呈したため、10月8日に検査したところ、HBs抗原陽性、HBs抗体陰性が確認され、急性B型肝炎と診断された。11月17日に右大量胸水を呈した後、呼吸状態悪化により死亡した。また、平成15年5月の手術の際にも新鮮凍結血漿2単位22本、赤血球MAP2単位3本の輸血を受けている。

.状況
(1) 輸血された血液製剤について
(1) 当該患者には平成16年3月の輸血時に23人の供血者から採血された新鮮凍結血漿を輸血。また、平成15年5月に25人の供血者から採血された新鮮凍結血漿及び赤血球MAPを輸血。
(2) 平成16年3月輸血の供血者と同一の供血者に由来し、同時に製造された原料血漿は2本が確保、10本は使用済み、新鮮凍結血漿10本及び赤血球MAP23本は全て医療機関に提供済み。
(3) 平成15年5月輸血の供血者と同一の供血者に由来し、同時に製造された原料血漿21本は使用済み、新鮮凍結血漿6本及び赤血球MAP22本は全て医療機関に提供済み。
(2) 48人の供血者について
(1) 平成16年3月の輸血時の供血者23人のうち、12人が再献血し、再献血時の検査結果はHBV関連検査陰性であった。
(2) 平成15年5月の輸血時の供血者25人のうち、15人が再献血し、再献血時の検査結果はHBV関連検査陰性であった。
(3) 供血者個別NATの試験結果
(1) 平成16年3月の輸血時の供血者23人の供血時の保管検体について、個別NATを実施したところ、すべて陰性であった。
(2) 平成15年3月の輸血時の供血者25人の供血時の保管検体について、個別NATを実施したところ、すべて陰性であった。

.今後の対応
(1) 供血者48人のうち、21人の再献血・検査に係るフォローを行う。
(2) 血液の安全対策の推進
 「輸血医療の安全確保のための総合対策」を着実に実施する。
(3) その他
(1) 受血者の輸血後検体(10月12日)を確保し、再検査したところ、HBs抗原(+)、HBs抗体(−)、HBc抗体(+)、HBV−DNA(+)であった。
(2) 受血者の肝癌については、平成15年に施術され、平成16年10月の腹部CTでは再発が認められておらず、肝癌と肝障害との因果関係はないものと考えられる。。

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