輸血用血液製剤でHBV(B型肝炎ウイルス)感染が
疑われた事例(7月9日報告)について


 経緯
 平成16年7月9日夕方、日本赤十字社から輸血(人赤血球濃厚液、人血小板濃厚液及び新鮮凍結血漿)によるHBV感染の疑い事例で患者が死亡した症例の報告があった。

 事例
 10歳未満の男児。原疾患は急性リンパ性白血病。平成15年9月16日〜平成16年7月5日の間に、輸血を計19回(人赤血球濃厚液1単位を10袋分、人血小板濃厚液10単位を8袋分及び新鮮凍結血漿2単位を1袋分)受ける。
 輸血前の血液検査(平成15年9月16日)ではHBs抗原検査(B型肝炎ウイルスの検査)は陰性であったが、平成16年7月6日に実施したHBs抗原検査は陽性、肝機能検査(GOT、GPT)は大幅に上昇した数値を示す。また、7月6日に新鮮凍結血漿による血漿交換(2単位製剤(約160mL)を7本使用)を行っていた。
 患者は劇症肝炎による急性肝不全で7月7日に死亡。

 状況
(1) 輸血された血液製剤について
 当該患者には、19人の供血者から採血された赤血球製剤、血小板製剤及び新鮮凍結血漿を輸血。
 当該製剤に関わる血漿は、人赤血球濃厚液2単位1本及び原料血漿19本。
 なお、赤血球製剤については、既に医療機関へ供給していたが、医療機関へは当該情報を提供済み。
(2) 19人の供血者について
 19人の供血者のうち、18人の献血者がその後献血しており、検査は陰性であった。(4月21日現在)。
(3) 供血者の個別NATの試験結果
 供血者19人の保管検体について、個別NATを実施したところ、全て陰性であった。
(4) 患者の保管検体の個別NAT及びHBs抗原の試験結果
 医療機関に保管されていた患者検体のうち、12検体すべての個別NAT及び検査可能な6検体のHBs抗原検査はすべて陰性。

 検討課題
(1) 7月7日検査のHBc抗体(+)について、IgM抗体が上昇していないので、HBVによるものとは考えにくい、及びHBVで劇症肝炎を発症する前にはウイルスDNAが上昇するが、この症例ではそれが見られないのでHBVは否定的との専門家の意見あり。
 また、7月6日のHBs抗原が低力価であったことや6月29日の患者検体の個別NAT及びHBs抗原検査が陰性であるということから、7月6日の反応が非特異的な反応であることやアーチファクトである可能性が高いとの専門家の意見あり。

(2) その他、7月6日の血漿交換により、個別NAT(−)となった可能性、6月24日個別NAT(−)であるが、短期間で劇症肝炎となるのか等の問題等を整理する必要がある。

 今後の対応
 19人の供血者のうち、その後献血に来ていない1人のフォローを行う。
 なお、患者の保管検体は微量であり、医療機関側の希望でHBs抗原検査を行った(すべて陰性)ことから、上記4課題確認のための「IgM抗体検査」、「HBV以外のウイルス検査」、「NAT」等の検査が困難な状況となっている。

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