2 事業報告書に記載された評価・課題・留意点等について

この資料は、4月11日までに48市町村から提出された「介護予防市町村モデル事業」事業報告書に記載された評価・課題・留意点等に関する記述を基に、厚生労働省において項目分けして網羅的に整理したものである。

2−1 筋力向上について 
 (※市町村名の下線はマシンを使わない事業であることを示す。)

(1)対象者について

対象者についての主な意見等は、次のとおり。
事業実施までの期間が短かったこと等から条件に合う参加者の確保に労力を要した。(多数)
関係機関との協力により、適切な対象者を選考することができた。
各人の参加意識や身体状況を踏まえた選考が必要である。

<モデル事業への参加者の確保について>
ケアマネージャー等と参加対象となりうる方々を相談し、参加勧奨を実施したが、参加に至らなかった(筋力トレーニング事業自体の理解を得られなかった。週2回のコースは体力的に自信がないとの意見があった)。(北海道奈井江町)
在宅介護支援センター等との情報交換により、介護予防に参加意識のある対象者を把握することができた。(北海道美唄市)
身体状況や現在のサービス利用状況などを考慮すると、対象者がかなり絞られる。(福島県保原町)
対象者と思われる方の中にも、週2回の筋力トレーニングはしんどい、という方、既に通所リハビリや医療のリハビリを受けている方がおり、対象者の確保が困難であった。(大阪府羽曳野市)
参加者の募集に労力がかかった。(大阪府松原市)
時間の都合上、公募をせずに地元医師会の協力医からの推薦により選定したが、結果として廃用症候群の人を選ぶことができた。(奈良県大和高田市)
小さい町であるため、今回のモデル事業では、対象者が要支援〜要介護2のサービス未利用者と限られ、人数を集めるのが大変だった。(福岡県新宮町)
事業までの時間が短かったため、参加者の意思確認、日程の徹底が不十分なため、当日の無断欠席や体調不良を理由としたキャンセルがでた。(大分県臼杵市)
当初事業参加依頼を行った方のうち、その多くが事業参加したくないと意思表示し、参加を拒否した。(宮崎県宮崎市)
事業の開始まで準備期間が短く、対象者の選定や医師の意見書をもらうことに時間的余裕がなく、対象者の人数の確保に苦労した。(鹿児島県伊集院町)

<対象者の特性について>
事業の効率性を考えると、自立歩行ができ、マシンの操作に支障がない程度の理解力が必要と感じた。(北海道奈井江町)
脳卒中後遺症として軽度認知症傾向の見られる人については、体力測定での効果は見られても、運動の必要性の認識が薄かった。(青森県十和田市)
要介護1、2の人は高齢要介護者が多く、通院だけで精一杯でそれ以上の外出が困難。(岩手県宮古市)
予防の効果がでるかは、目的意識をもてるかどうか、本人の身体の向き、不向きがある。(徳島県小松島市)
年齢を考慮して、カリキュラムの要求に応えられる選考をすべきである。(香川県東かがわ市)



(2)プログラムの内容について

プログラムの内容についての主な意見等は、次のとおり。
効果を上げるためのメニューの工夫を行った(行うべきである)。(多数)
(例:マシンと非マシンを組み合わせる、回数ごとにレベルを上げる、参加者を巻き込んで楽しさを出す、姿勢のバランス運動を行う、など)
健康管理、転倒防止や痛みの把握・対応などプログラム実施中のリスク管理が重要であり、労力を要する。

<プログラムの内容の工夫について>
ホームトレーニングや非マシンの筋力トレーニングを併せて行うことで、筋力向上の効果の向上と、マシンに馴染まない方など幅広い対象での実施が期待できるのではないか。(北海道奈井江町)
運動メニューについて、回数ごとにレベルが上がっていくよう設定し、効果が認められた。(北海道美唄市)
7種類のトレーニングメニューを個人の体力に応じて実施した。個々人に応じたトレーニングの実施が必要。(栃木県大田原市)
個人プログラムの作成に労力がかかった。(大阪府松原市)
市独自の個別バランスシートを基にした個別バランスの時間をとり、体幹の不安定な人や四肢の協調運動が苦手な人に効果が見られた。(奈良県生駒市)
下肢筋力だけでなく、日常生活動作を円滑に行うため、バランス全身よく筋力トレーニングを行う必要がある。(香川県東かがわ市)
姿勢(アライメント異常)の矯正をした上で筋力向上を進めることが重要である。(沖縄県石川市)
高齢者のトレーニングは、マシン運動の反復だけは続かない。継続させるには、参加者を巻き込んで楽しさを出すことが必要である。(沖縄県石川市)
トレーニングを続けていくためには、長期目標だけでなく、短期・中期目標を立て達成感を引き出すようにする必要があると考えられる。(沖縄県石川市)

<リスク管理について>
トレーニング期間に身体に痛みを感じたが、無理して行ったという話があった。(山形県尾花沢市)
対象者が高齢者であることから、健康管理について多大な労力があった。(大阪府枚方市)
毎回、看護師・保健師による問診とバイタルチェックを行い、疼痛がある場合にはPTの疼痛評価を、バイタルに問題がある場合には再検を随時実施することで、事故を未然に防ぐことができた。リスク管理に関して、記録・入力・医師・家族・ケアマネ等との連絡に時間を割いているが、今後継続してそのような時間がとれるかどうかが課題である。(奈良県生駒市)



(3)効果測定の方法について

効果測定の方法についての主な意見等は、次のとおり。
SF36(The 36-item short form of the Medical Outcomes Study questionnaire,主観的記述による健康面のQOL測定指標)は、高齢者にとって回答が難しい、スケールの目が粗く評価が出にくい。(多数)
体力測定項目にも誤差が生じやすい項目がある。
評価の期間を長くすべき。また、中間評価を入れるべき。(多数)
ビデオ撮影など他の測定方法もあるのではないか。

<効果測定の指標について>
筋力が向上しても歩行速度との相関性が判然としない。特に身体的に麻痺等がある方にとっての効果が判然とせず、検証していただきたい。(北海道奈井江町)
SF−36の評価を行ったのが12月下旬の積雪があるころであったため、環境的に前後で大きな変化があり、外出頻度などの項目について参加者以外の事情が影響した。(北海道奈井江町)
SF−36の質問票は筋力向上に必要とは思えない。(青森県十和田市)
SF−36の回答項目は参加者にとって難解。より簡易な質問票の工夫が必要。膝伸展能力の測定など測定する側の技量が影響するものについては、改良が必要。(秋田県横手市)
SF−36は高齢者にとって理解しにくい面があった。(福島県保原町)
SF−36は高齢者にとって回答するのが難しい。膝伸展筋力は測定が難しい。(神奈川県川崎市)
SF−36の聞き取りが難しい。(長野県上田市)
SF−36については、本人の主観が強く反映し、効果測定として疑問が残った。(大阪府羽曳野市)
前後の体力測定において、厳密な再現性が難しい項目(長座位体前屈・ファンクショナルリーチ)があり、評価に誤差が生じる可能性がある。(大阪府和泉市)
膝伸展筋力の測定の際、高齢者に負荷が大きく、測定不能者が多くでた。(大阪府枚方市)
SF−36、認定調査のスケールの目が粗く、改善度合いが評価に出にくい。(香川県東かがわ市)
生活動作について改善があっても、現在の要介護認定の認定項目では反映できない。(長崎県佐世保市)
生活機能を把握するためにも、重心計やビドスコープによる測定は効果的である。 (大分県臼杵市)
検査当日の参加者の気分・健康状態や気候、前日の睡眠時間、当日の排便の状態などによって結果が大きく左右されるため、検査や体力測定による数値的評価だけで事業の結果は一概に測れない。(大分県臼杵市)
SF−36や問診表は本人が記入することになっていたが、高齢者には負担が大きく、実際には聞き取りで記入した。(沖縄県石川市)

<効果測定の時期について>
プログラムの効果を評価するためには、3ヶ月よりも長期間で観察する必要がある。(福島県保原町)
前後評価だけでなく、中間評価をいれた方がよい。(大阪府和泉市)
利用者宅に訪問し、生活面での具体的な目標を設定し、1ヶ月ごとに目標達成を評価するべきである。(山口県周防大島町)
筋力向上の効果は個人差があるので、期間を3ヶ月間と固定することは適当でない。(徳島県小松島市)
要介護認定の調査項目の点数変化の効果測定は、認定調査時と事業終了時では、条件が異なっており、3ヶ月間の評価に適さないと考えられる。(沖縄県石川市)

<その他>
個人の了解を得て事業前後の写真や動きのビデオを撮影していると、評価もしやすいし、本人の励みになると考えられる。(福岡県新宮町)
アルコール性障害の方、リウマチの方は、効果測定の対象者から外すべきである。(大分県臼杵市)



(4)効果について

効果についての主な意見等は、次のとおり。
歩行の安定性の向上や痛みの解消など、身体的な面において改善が図られた。(多数)
生活のリズムができた、参加者・スタッフとの交流により明るくなったなど、心理面・社会面での改善や意欲の向上が図られた。(多数)

大部分の参加者に効果が認められ、参加者の感想としても好意的に受け止められた。(北海道美唄市)
機器を使用したトレーニングとストレッチを実施。新たな痛みが生じた人もなく、膝・腰・肩などの痛みが取れた人が6人いた。早い人で1ヶ月ほどで痛みの取れた人が出てきた。トレーニング中に一緒に号令をかけることにより、対象者で物忘れが少なくなったと自覚できた人がいた。(青森県十和田市)
参加者全員が何らかの身体機能の向上を感じ、その後も過半数が自主的にトレーニングを続けている。(秋田県横手市)
痛みについては、開始時に痛みを有した5名のうち、全員に改善が見られ、うち2名に関しては痛みが消失した。終了時の参加者へのアンケートでは、歩くこと、移動する距離、立ち上がりで半数以上が改善、外出機会の増えた方が4割以上、友人や家族との交流が増えた方が3割見られた。(東京都練馬区)
参加者は筋力向上だけでなく、参加者同士あるいはスタッフとの交流を通じてずいぶんと明るくなった。(山梨県牧丘町)
参加者の中には、電動車いすを利用していたが、もう一度自転車に乗りたいと考え始めている方や、バスに乗って外出できるようになったことが自信になり、次は新幹線に乗って旅行したいという夢をもっている方もいる。こうした参加者の気持ちを後押しするような関わりが必要。(大阪府羽曳野市)
グループで実施することにより、対象者同士のトレーニングをしている姿を見ることで自らの意欲向上につながっている。(大阪府和泉市)
マシントレーニングの実施による身体機能向上も図れたが、心理面、社会面にも改善を働きかけることができた。(奈良県大和高田市)
老研式活動動作指標・体力測定等に伸びが見られたこと、介護度の改善が77%あったこと等により事業の効果はあったと考える。(奈良県生駒市)
出席状況は、風邪を引いて休む等はあったものの、気分で休むということは無かった。(奈良県生駒市)
筋力向上を栄養改善と組み合わせると、もっと効果が期待できる。(山口県周防大島町)
プログラムを通して、利用者より「心のケアになった」、「楽しみに参加している」、「友達ができて教室以外でも電話で話をするようになった」等の意見が聞かれ、精神的な部分での向上は図られた。一方、筋力を向上させるという点においては、3ヶ月間では短かった。(山口県周防大島町)
体力測定等の評価指標では大きな変化は無かったが、日常生活面では、出来なかった動作ができるようになった、痛みがなくなった等の変化があり、これが利用者の自身につながり、生活の質の向上が図られたと考えられる。(山口県周防大島町)
正月休みをはさんだためトレーニング効果が薄れてしまった。(香川県東かがわ市)
筋力向上トレーニングの本来の目的が一部の利用者に理解されていなかった。(徳島県小松島市)
対象者は、廃用症候群、脳血管疾患については、著しく改善が見られたが、骨・関節系の疾患については、痛みの軽減、筋力向上を図ることが困難であった。また、身体能力の向上のほか、精神活動の向上がみられた。(長崎県佐世保市)
歩行時に杖を使用する人がいなくなった。また、単なる機能回復だけでなく、参加者の自信回復にもつながった。(大分県臼杵市)
事業終了後、10m最大歩行で見ると大きな変化はなかったが、明らかに歩行内容の安定性の向上が見られた例があった。(鹿児島県伊集院町)
意欲面での変化(1日の生活リズムができた、楽しかった、刺激になった、生活にハリができた等)には大きな効果があった。(鹿児島県伊集院町)



(5)モデル事業の一般化について

モデル事業の一般化についての主な意見等は、次のとおり。
プログラムの実施には手厚い体制を必要とし、指導スタッフの人員と質の確保が課題である。そのため、専門スタッフの養成研修や補助員として活動できるボランティアの確保も必要である。(多数)
対象者の身体レベルからみて送迎が必要。そのための体制をどうするかが課題。(多数)
事業前やプログラム実施中のリスク管理、参加者への説明や精神面でのフォローについて、適切に対応できるようにすることが必要である。
現行の介護サービス事業所を含めた実施場所の選定が必要である。

<スタッフの確保、研修等について>
専門職の確保をどのように図っていくか。(北海道奈井江町)
対象者には歩行が不安定な転倒のリスクが高い方もおり、スタッフの負担が大きかった。事業の効率とつり合うか。(北海道奈井江町)
医療専門職と指導スタッフとの連携が必要。(秋田県横手市)
安全で効果的な指導を行うためには、マンツーマンに近い体制で実施する必要がある。(福島県保原町)
マシントレーニングだけでは柔軟性やバランスについては改善されない。個別指導を実施するためには理学療法士は必須。(千葉県我孫子市)
知識面など、指導者のレベルアップや養成が必要。(大阪府和泉市)
人員の確保が困難である。(大阪府和泉市)
トレーニング指導員がマンツーマンでほぼ必要であり、人員の確保が困難である。(大阪府枚方市)
マシン購入や人件費等に問題がある。(奈良県五條市)
専門スタッフが多いため、人数を減らしても同様の事業効果が見込めるのか。ボランティア等をどう確保するのか。(奈良県生駒市)
事業化するにあたり、年齢や疾患に応じてトレーニング種目を個別化や選択化できる方が良い。(奈良県大和高田市)
トレーニング指導者の養成に時間がかかる。(大阪府枚方市)
効果的な筋力向上トレーニングを安全に実施するための専門職の確保が課題である。(岡山県中央町)
スタッフの研修や助言者がいること、スタッフの人数を確保することが、効果的に安全に事業を実施していく上で必要である。(山口県周防大島町)
個別性の高いトレーニングであるため、事業所におけるスタッフの体制を確保することが課題である。(長崎県佐世保市)
指導者への研修をどのように行うかが課題である。(長崎県佐世保市)
補助員として活動できるボランティアの確保が必要である。(宮崎県宮崎市)
理学療法士の確保が課題である。(鹿児島県和泊町)
専門スタッフの確保と質の確保をどのようにするかが課題である。(鹿児島県伊集院町)

<送迎について>
対象者の身体レベルから、送迎は不可欠。(北海道美唄市)
送迎等ボランティアの育成、確保が課題。(山形県尾花沢市)
送迎がないと参加者が減ることが予想される。(栃木県大田原市)
送迎体制の確保が必要。(埼玉県和光市)
送迎に労力がかかった。(大阪府和泉市)
送迎に労力がかかった。(大阪府枚方市)
送迎は、利用者の身体的にも、心理的にも、必要不可欠である。(奈良県大和高田市)
利用者の通所方法に問題がある。(奈良県五條市)
送迎サービスの導入が必要である。(宮崎県宮崎市)
送迎に労力がかかった。(鹿児島県和泊町)
利用者の利便性を優先した送迎体制の整備をどのようにするかは課題である。(鹿児島県伊集院町)

<その他>
今回の事業では、筋トレそのものの効果がわかりにくい。厚生労働省等で大きな規模で長期間(少なくとも6〜12ヶ月)、やらなかった対象もとり、根拠となるデータを提示してほしい。(福島県保原町)
機器は高価ですぐに準備できない。機器を使用しないトレーニングプログラムを同時に普及できるとよい。(福島県保原町)
保健師、看護師などスタッフによるリスク管理、場所の選定などが問題。(栃木県大田原市)
保険者の新たな機能、業務を再認識できた。予防医療、老人保健事業、介護予防の範囲の整理が必要。(埼玉県和光市)
事業参加のため健康診断を受けると、参加者の自己負担(一万円)が増える。(千葉県我孫子市)
高齢者にとっての筋力トレーニングがまだまだ理解されておらず、啓発が必要。(大阪府羽曳野市)
現行の介護サービス事業所内でも、筋力向上トレーニング事業ができるようにする必要がある。(大阪府枚方市)
参加者に効果だけでなく、リスクも納得してもらうような働きかけが必要。(奈良県大和高田市)
対象者は、年齢的にも負荷心電図に何らかの異常が出る可能性のあるが、負荷心電図をとりたくても取れない身体状況である。(奈良県大和高田市)
トレーニングに伴う危険性が考えられるため、事前に運動負荷試験を実施するのが適当である。(山口県周防大島町)
毎回のプログラム終了後に、健康チェックに併せて、理学療法士による痛みや関節の状況等のチェックが必要である。(山口県周防大島町)
脱落者が出ないよう、利用者に精神的なフォロー等が必要である。(山口県周防大島町)
事業の対象者ではなかったが、事業期間中2件の転倒事故があった。室内履きによるマットとの摩擦が大きいため転倒したものと考えられる。(沖縄県石川市)



(6)プログラム終了後の取組みについて

プログラム終了後の取組みについての主な意見等は、次のとおり。
プログラム終了後に身体機能や生活機能の維持向上を図るため、継続的な支援や地域の様々な社会資源を活用したトレーニングを継続できる環境づくりが必要。そのために、自主的な活動の支援やボランティアの育成が課題。(多数)

簡単な運動方法による健康増進の場の提供や、交流拠点の整備が必要。(秋田県横手市)
自主グループの運営の支援、在宅に出張で対応できるボランティアの育成が課題(埼玉県和光市)
認知症やうつなど精神疾患のある高齢者への対応に対して継続実施できるような対応。(埼玉県和光市)
高齢者向けに運動を指導できる人材の育成、仲間づくり支援。(千葉県我孫子市)
継続して運動を行うため、区立の運動施設などとの連携体制を強化。(東京都練馬区)
地域の社会資源の発掘、フィットネスクラブや疾病予防施設とのネットワークが必要。(大阪府羽曳野市)
地域の自主的な福祉活動などと連携し、町内会や老人クラブ単位などの小さな単位での簡単な筋力トレーニングの展開を考えていきたい。(大阪府羽曳野市)
継続できるように、啓発活動を行うことが必要である。(大阪府和泉市)
インフォーマル・サービスを提供する人材が不足しており、住民が自らの課題として要介護者や認知症の問題をとらえ、住民が自らサービスを提供する基盤を整備しなければならない。(奈良県大和高田市)
介護予防の教室に参加していたボランティアが、インフォーマルなサービスとして、プログラムを終了した介護予防教室を立ち上げる等の動きが見られた。(奈良県生駒市)
事業終了後に、対象者が生活機能の維持・向上を図るため、継続的に支援をすることが必要である。(岡山県中央町)
介護予防事業における改善の効果を維持するため、事業終了後の受け皿が地域に必要である。(岡山県西栗倉村)
家族やケアマネジャーの理解を得て、事業終了後も、継続して連絡をとり、フォローしていく体制が必要である。(山口県周防大島町)
事業終了後に、インフォーマルなサービスがないため、機能が低下し、元の状態に戻る可能性が高い。また、今回のレベルのものをインフォーマル・サービスで行うことはかなり困難。(香川県東かがわ市)
事業の終了後、本人の運動意欲が継続し、利用者の体力を維持するのかが課題である。(福岡県新宮町)
身体機能や精神機能の向上後、機能を維持するためには、地域のインフォーマルなサービスが不可欠である。(長崎県佐世保市)
事業終了後、向上がみられた身体機能が再び衰えるケースがあり、事業終了後もトレーニングを継続できる環境作りが必須である。ホームエクササイズのパンフレットの配布だけでは対応が困難であり、自主事業や地域の活動にどれだけつなげられるかが課題である。(長崎県佐世保市)
自宅でできる運動を取り入れ現状を維持させることが必要。事業終了後、自主活動をどのようにするかが今後の課題である。 (沖縄県石川市)



(7)中断のケースについて
 (※中断したケースのうち中断の事情が記載されたものを整理した。)

中断のケースの主な事情については、以下のとおり。
本人の事情によるもののほか、家族の事情(配偶者の入院・介護、死亡等)によるものが多かった。
本人の事情としては、既往症の悪化(注:筋力向上プログラムに起因するものではない)が多く、このほか、家庭内での転倒、かぜ、検査入院が見られた。また、他の参加者との関係等により本人が参加を拒んでいるケースもあった。

8名中断。理由は、(1)風邪をこじらせた、(2)入院、(3)参加者の夫の入院、(4)入院、(5)配偶者の入院、(6)身体に変調、(7)うつ的傾向があり、体調を考慮した、(8)家庭の事情である。(北海道美唄市)
2名中断。2名とも脳血管疾患の既往があった方で、エントリーと医師の許可を得たが、結果的には途中で中断した。(青森県十和田市)
2名中断。(1)鼻出血があり、その後の検査等が続き、体のだるさと出ることのおっくうさを訴えはじめ、参加が遠ざかったこと、(2)変形性膝関節症で、参加前から時々痛みの訴えがあった方で、参加当初は杖を持たずに歩けると喜んでいたが、途中から痛みが強くなり、参加できなくなった。(山形県尾花沢市)
1名中断。家庭内での転倒事故で入院した方。(福島県保原町)
7名中断。理由は、(1)過去の事故部位の痛みによる入院、(2)筋肉痛。(3)病気がちで通院、(4)主治医によるドクターストップ、(5)夫の怪我・認知症の介助のため、(6)夫が死亡、納骨していないため家を空けられない、(7)膝関節痛である。(栃木県大田原市)
1名中断。認知症の方。本人が実施会場に行くことを拒み中断。なお、参加中は本人も効果を実感し、身体面・精神面の改善が見られた。(東京都練馬区)
1名中断。理由は、他の参加者と十分なコミュニケーションができなかったことである。(徳島県小松島市)
2名中断。理由は、(1)栄養不足を理由に検査入院したこと、(2)自宅で転んで骨折(トレーニングとは関係なし)し、入院したことである。(香川県東かがわ市)
1名中断。理由は、脊柱管狭窄症の痛みの悪化及び胃潰瘍の発症である。(長崎県佐世保市)
6名中断。事業開始前に4名(事業参加に不安)、事業途中に2名(家族が都合により送迎できない、家族に不幸があり継続参加できない)。(宮崎県宮崎市)
1名中断。高齢者二人暮らしで、夫が入院したことである。(宮崎県北郷町)
3名中断。理由は、家族の不幸、体調不良である。(鹿児島県和泊町)
2名中断。糖尿病、高血圧の病歴者の2名について、体調不良による入院である。(鹿児島県伊集院町)



(注)上記のうち市町村に再確認したものについて、その内容は以下のとおり。
北海道美唄市:8名中断であるが、いずれも事業との因果関係は認められない。特に入院者2名、身体に変調1名、うつ傾向で体調を考慮した1名については、持病によるものであり、因果関係はないと認識している。
青森県十和田市:2名の中断者とも、事業との因果関係は認められない。両名とも脳血管障害の既往歴があり、当然のことながら主治医の了解の下にエントリーについて慎重判断して参加に至ったもの。1名は在宅での転倒、1名は在宅でのくも膜下出血による死亡であり、医学的にも事業との因果関係は認められない。
山形県尾花沢市:2名の中断者とも、事業との因果関係は認められない。鼻血による者は、中途から参加意欲が乏しくなったこともあり、在宅で鼻血を出し、体調不良を理由に中断した。膝関節症による痛みによる者は、変形性膝関節症の既往歴があり、日常的に疼痛があり、参加回数が少なく効果測定を行うケースとならなかった。
栃木県大田原市:7名の中断者とも、事業との因果関係は認められない。筋肉痛の方は普段から疲れやすい方、ドクターストップの方は既往症(骨粗鬆症)の進行による者、膝関節痛の方は既往症。
宮崎県宮崎市:6名の中断者とも、事業との因果関係は認められない。4名は実施前に辞退、純然たる中断者は2名であるが、家族との関係で事業に参加できなくなった者。
鹿児島県和泊町:3名の中断者とも、事業との因果関係は認められない。体調不良の者も自宅において体調不良となった者である。
鹿児島県伊集院町:2名の中断者とも、事業との因果関係は認められない。事例1は事業参加から数日たった後の自宅での脳血管疾患の再発作、事例2は糖尿病のコントロール不良により入院したもので退院後事業に復帰しており、両者とも事業とは医学的な因果関係は認められなかった。

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