雇用均等室における差別的取扱いに係る相談事案の概要


女性であることを理由に退職勧奨されたとする事案(均等法第6条、第8条関係)

【相談内容】
   上司から女性である相談者のみ退職勧奨され、他の仕事を探して欲しいと言われている。年齢も高く、子を養育する必要もあるため、現在の職場で継続勤務できるようにして欲しい。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、会社は、(1)業務内容を変更することとなったことから、全員が宿直勤務を伴い、かつ一定の知識を要する機械の運転保守業務を行うことが必要となった、(2)しかし、相談者は従前、機械の運転保守業務を行ったことがないのに加え、深夜勤務があるため女性には無理であると考えたことから、相談者に対し退職勧奨したものであると主張した。
 室は、会社に対し、(1)平成11年4月より女性の深夜業の規制は解消されており、一定の職務から女性を排除することは均等法第6条に違反すること、(2)形式的には勧奨退職であっても、事業主の有形無形の圧力により、労働者がやむを得ず応ずることとなり、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は、「解雇」に含まれ、均等法第8条に違反するものであることを説明し、相談者に宿直勤務の可否について確認をし、宿直勤務から予め女性を排除しないよう指導した。また、相談者は機械の運転保守業務を行うことができるよう研修を受講したり資格を取得することにも意欲を持っているので、会社として支援するよう指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、会社は、退職勧奨をやめるとともに、相談者が宿直勤務を了解したため、機械の運転保守業務のための研修を実施した結果、相談者は他の社員と同一のローテーションで勤務することとなった。


女性であることを理由として有期契約の更新がされないとする事案(均等法第8条 関係)

【相談内容】
   有期契約社員として、これまで10年間にわたって更新を重ねて働き続けてきたが、上司から、「会社の経営状態が悪く、リストラをしなければならなくなった。男性は、家族を養わなければならず雇止めをするわけにはいかない。申し訳ないが、辞めてくれないか。」と、雇止めを通告された。しかし、自分も、生計を支える立場であり、何とか働き続けたい。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、会社は、経営上、大幅なリストラが必要である一方、会社の社会的責任として男性労働者を雇止めし、その家族を路頭に迷わせるわけにはいかないと判断したことから、女性労働者を雇止めすることとしたものであり、やむを得ない措置であると主張した。
 室は、会社に対し、(1)女性であっても、生計維持者としての役割を担っている者もおり、女性であることのみを理由として雇止めをすることは均等法の趣旨に反すること、(2)形式的には雇用期間を定めた契約であっても、それが反復更新され、実質においては期間の定めのない雇用契約と認められる場合には、その期間の満了を理由として雇止めをすることは解雇に当たり、均等法第8条に違反することを説明し、リストラについては、希望退職者を募るなどの他の手続きを踏むことを優先し、相談者について女性であることのみを理由として雇止めをしないよう、指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、会社は、個々の労働者についての事情を確認しつつ、希望退職を含めリストラを進めることとし、相談者は、勤務を継続することとなった。


婚姻したことを理由として、女性社員がパートタイマーへの身分変更を求められた 事案(均等法第8条関係)

【相談内容】
   正社員として勤務をしているが、結婚を報告したところ、上司から、「これから家事負担が重くなるからパートタイマーになったらどうか。」と言われ、断ったが、その後も執拗に身分変更を迫られている。パートタイマーになれば、ボーナスも出ず、有期契約のため、身分も不安定になるなど、処遇が現在よりも格段に低くなるため、今後とも正社員の身分のままで働き続けたい。

【雇用均等室の対応】
   室が事情聴取したところ、会社は、相談者について、パートタイマーになることを勧めているのは、本人自身が結婚したらパートタイマーの方が気楽で良いと発言していたこともあったこと、結婚すると仕事に身が入らなくなるケースが女性に多かったこと、そのうち子供もできるだろうし、これまでも他の社員に比べ遅刻や欠勤が多いなどの相談者の勤務態度からして、その方が負担感がなくて良いだろうと判断したものである旨主張した。
 室は、会社に対し、(1)本人がパートタイマーの方が気楽で良いと発言していたとしても、真意ではないことが明らかであること、(2)本人の仕事振りに問題があればそれを指摘し改める機会を与えるのが先であること、(3)女性であることを理由として、正社員から有期契約のパートタイマーに契約を変更することは、従前の労働契約が一旦終了したものとみることができ、その労働契約の終了が、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には、女性であることを理由とする「解雇」に当たり、均等法第8条に違反することを説明し、相談者について、正社員として引き続き雇用するよう指導した。
 あわせて、相談者に対しても、勤務態度に問題が指摘されているので、改めるよう指導した。

【会社の対応等】
   室の指導により、会社は、相談者についてパートタイマーへの身分変更を求めることをやめ、相談者は正社員として勤務を継続することとなった。

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