輸血用血液製剤でHBV(B型肝炎ウイルス)感染が疑われた事例
(12月9日報告)について(平成17年1月19日時点)

複数回献血による感染疑い事例

 経緯
 平成16年10月8日、日本赤十字社から輸血(人血小板濃厚液)によるHBV感染の疑い事例で報告があった。さらに、供血者のうち保管検体のHBV-DNAの個別NATが陽性と判明した供血者の供血歴を調査したところ、別の採血時点の当該供血者に由来する血液から製造された人血小板製剤を投与された複数の受血者においてHBVの感染が確認又は感染が疑われたため、同年12月9日、日本赤十字社から、低濃度のHBVキャリアによる感染事例としての報告があった。

 事例及び状況
(1) 平成16年1月19日に供血者が献血した血液による輸血を受けた血液腫瘍の50代の男性受血者にB型肝炎が確認され、10月7日に日本赤十字社に報告があった(上記平成16年10月8日報告分)。11月2日に供血者のHBVとジェノタイプ(C)及びサブタイプ(adw)の一致を確認。
(2) 当該供血者のそれ以前及びそれ以降の献血歴を調査したところ、平成15年9月以降10回の献血がされていたことが現時点で確認されていた(平成16年12月17日現在:平成16年度第3回安全技術調査会開催時)。
 その後、平成14年4月22日以降の9回の献血血液について新たに調査結果が判明した(計19回(それ以前についても調査中))。
 いずれの採血時点でも、ミニプールでのNATでは陰性だった。現在までに、受血者4例((1)及び新規1例を含む。)についてHBVウイルス感染が確認され、また、3例がB型肝炎ウイルス抗体検査から、感染既往又は初回の不顕性感染の疑いとなっている。
(1)  平成16年に献血されたもの(2月6日、2月23日、3月10日、3月25日及び4月12日)並びに平成15年6月9日及び10月22日献血分の7回の供血者保管検体の個別NATは、陽性。このうち、平成15年10月22日、平成16年3月10日、3月25日分の献血から製造された血小板製剤を輸血された3人の患者において、HBs抗体及びHBc抗体陽性が確認された(平成16年12月9日報告分)。
(2)  平成14年4月22日、5月22日、6月15日、8月28日、12月12日、平成15年1月13日、7月14日、7月28日、9月22日、12月4日、12月29日献血分の計11回の個別NATは、陰性平成14年4月22日並びに平成15年9月22日及び12月29日分の献血から製造された血液製剤を輸血された3人の患者からB型肝炎ウイルス(うち、2人はジェノタイプ及びサブタイプが供血者と一致。1人はウイルス相同性あり。)が確認された。
(3)  なお、平成14年5月22日、6月15日、平成15年7月14日献血分については受血者の感染の有無について調査中であり、また、平成14年8月28日及び平成15年1月13日献血分については受血者への使用の有無について調査中である。
(3) 低濃度キャリアの血液により、ミニプールNATをすり抜けて複数HBV感染したものであると考えられる。

 今後の対応
(1)  現在の日本赤十字社の遡及調査ガイドラインは、B型肝炎ウイルスの低濃度キャリアの存在を念頭に置いて実施してきたものであり、引き続き、低濃度キャリアによる複数回献血の感染事例が把握できた場合は同ガイドラインの実施により対応する。
(2)  また、今回の事例では、遡及の途中で供血者の保管検体のNATが陰性になった時期もあったが、ガイドラインとは別に「研究的に必要な調査を行う」こととしており、このように連続して陽性を呈する場合は、過去の可能な限りの献血歴を入念的に調査し、該当する受血者の健康管理を行うこととする。
(3)  血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン(仮称)に基づき、医療機関において輸血前後の感染症検査の実施を図ることにより、今回と同様の事例が発生した場合には、副作用・感染症報告を速やかに行っていただき、できる限り早く遡及調査へつなげていく。
(4)  低濃度キャリアによるB型肝炎の感染事例については、低濃度キャリアと受血者の感染の程度についてはさらに調査・研究を進める必要がある。
(5)  現時点でミニプールNATや個別NATをすり抜ける低濃度キャリアを事前に把握する有効な手段はないが、低濃度キャリアを含む方々に対し日頃の健康管理を促すような方策を検討する。



HBV低濃度キャリア感染事例の遡及調査経緯 1

HBV低濃度キャリア感染事例の遡及調査経緯1の図

HBV低濃度キャリア感染事例の遡及調査経緯 2

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 研究的調査
HBV低濃度キャリア感染事例の遡及調査経緯2の図

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