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障害者基本計画(抄)

(平成14年12月24日閣議決定)

5 雇用・就業

(1)基本方針

 雇用・就業は、障害者の自立・社会参加のための重要な柱であり、障害者が能力を最大限発揮し、働くことによって社会に貢献できるよう、その特性を踏まえた条件の整備を図る。

(2)施策の基本的方向

1 障害者の雇用の場の拡大

 障害者雇用率制度を柱とした施策の推進

 障害者雇用率制度は、障害者の雇用促進策の根幹となる柱であり、障害者に自立や社会参加の機会を提供する強力な後ろ盾となる制度である。今後とも当該制度を中心として、障害者雇用の一層の促進を図る。

 個別の企業に対する日常的な指導の充実や、実雇用率の低い企業に対する雇入れ計画の作成命令等の指導の厳格化を図る一方、障害者雇用のための企業の取組を後押しするため、各種助成金についても、より効果的な活用が図られる方向で改善を図る。

 精神障害者については、今後障害者雇用率制度の対象とするための検討を進めることとし、そのために、関係者の理解を図りつつ、精神障害者の把握・確認方法の確立、企業における精神障害者雇用の実態把握など障害者雇用率制度を適用するために必要な検討、準備を着実に進める。また、採用後に発病した精神障害者については、円滑な職場復帰や雇用の安定のための施策の充実を図る。

 除外率制度については、平成16(2004)年度より段階的に縮小を進め、一定の準備期間を置いて廃止を目指す。

 国及び地方公共団体の除外職員制度についても、企業との均衡を考慮して同様の方向で進める。

 企業に対する啓発活動の充実を図るとともに、雇用管理のノウハウの情報提供に努める。

 経営者団体においても、障害者雇用についての相談に応じるなど、障害者の雇用管理のノウハウの提供が行われることが望まれる。

 障害者の教員免許取得状況等を踏まえつつ、教育委員会における実雇用率上昇のための取組について検討する。また、国、地方公共団体において障害者雇用の取組を行いやすくするため、より広い職域での雇用が可能となるよう、関係する行政機関等で合算して実雇用率を算定する方式の活用を進める。

 障害者の能力・特性に応じた職域の拡大

 重度障害者多数雇用事業所や特例子会社における障害者雇用の取組を支援するとともに、その蓄積されたノウハウをいかし、障害者の能力・特性に応じた更なる職域の拡大に努める。また、障害者がその能力にふさわしい処遇を受け、労働条件面を含む職業生活の質の向上を図ることができるよう、諸条件の整備に努める。

 重度障害者多数雇用事業所については、今後とも障害者雇用の先駆的な取組を促すべく助成金制度による支援を行う。

 特例子会社制度を積極的に活用し、グループ内企業に共通する業務の集中処理等による障害者雇用の拡大を図るとともに、グループ企業全体の雇用を促進する。

 障害者の働きやすい多様な雇用・就業形態の促進

 短時間雇用、在宅就業等の普及は障害者がその能力や特性に応じて働くための機会の増大につながるものであり、必要な支援、環境づくりに取り組む。

 直ちにフルタイムで働くことが困難な障害者等を念頭に、短時間雇用のための支援策の充実を図る。

 通勤の困難な重度障害者等を念頭に、在宅就業におけるIT活用を推進する。

 ITを活用した雇用の促進

 障害者の職域の拡大、雇用・就業形態の多様化、職業能力の開発などの面でITを最大限活用する。

 就業を可能にする機器やソフトの開発及び普及を行い、就業機会の拡大を図るとともに、障害の部位・特性等に配慮しつつ、IT技術を活用し、障害者がこれらの支援機器等の操作に習熟するための効果的な職業訓練を推進する。

 在宅就業を行う障害者の仕事の受発注や技能の向上に係る援助を行う支援機関の育成、支援等の充実を図る。

 障害者の雇用・就業を行う事業の活性化

 障害者雇用等の社会的意義を踏まえ、国の行う契約の原則である競争性、経済性、公平性等の確保に留意しつつ、官公需における障害者多数雇用事業所等及び障害者雇用率達成状況への配慮の方法について検討する。

 障害者の創業・起業等の支援

 自ら創業・起業を行うような挑戦意欲のある障害者を支援するため、その実状や実態に係る調査を実施するなど具体的ニーズの把握に努めるとともに、その結果を踏まえ、障害者の創業・起業に必要な資金調達の円滑化に資する施策など必要な方策を検討する。

 また、障害者によるNPO等の非営利団体の設立、創業・起業等の活動に対する支援策等を検討する。


2 総合的な支援施策の推進

 保健福祉、教育との連携を重視した職業リハビリテーションの推進

 障害者の雇用促進を効果的に行うため、障害者の職業生活全般にわたり福祉、教育等の関係機関が連携を図りながら施策を推進する。

 障害者総合職業センター、広域障害者職業センター及び地域障害者職業センターが連携し、その特色をいかしつつ、中途障害者も含めた職業リハビリテーションを推進するとともに、医療、福祉、教育等との連携の強化を図る。特に地域障害者職業センターにおいては、社会福祉法人や保健福祉行政機関等と連携して職場適応援助者事業や職業準備訓練等の効果的な実施を図る。

 また、障害者職業総合センターにおいて、障害の特性に応じた職業リハビリテーション技法等の研究開発を推進する。

 障害者の就業面と生活面での支援を一体的に行うため、障害者就業・生活支援センターを通じた支援の促進を図る。

 雇用への移行を進める支援策の充実

 トライアル雇用(一定期間の試行的雇用)の活用、授産施設等における支援、盲・聾・養護学校の在学中から卒業後までを通じた支援等により、雇用への移行の促進を図る。

 トライアル雇用を更に拡充、実施するとともに、あわせて、短期間の職場適応訓練等を活用しながら、事業主に障害者雇用への理解を深め、常用雇用への移行を進める。

 授産施設及び小規模作業所がその本来の機能を十分に果たし、企業等における雇用に一層効果的につなげていくことができるよう、障害者就業・生活支援センターや職場適応援助者事業を活用するほか、適切な方法で施設外授産を行う。

 盲・聾・養護学校卒業生の企業への雇用を進めるため、労働機関、福祉機関等との十分な連携の下、生徒一人一人の将来の就業に向けた個別の支援計画を策定、活用するなど在学中から卒業後を通じた適切な支援を行う。

 また、障害者が、就業を行う上で必要な各種の資格の取得において不利にならないよう、高等教育機関等の試験等で必要な配慮を進める。

 障害者の職業能力開発の充実

 多様な職業能力開発資源を活用し、新たに就業を希望する障害者及び在職障害者並びに離職を余儀なくされた障害者の早期再就職を図るための職業訓練を推進する。また、障害者の職業能力の開発・向上の重要性に対する事業主や国民の理解を高めるための啓発に努める。

 障害者の職業能力開発については、一般の公共職業能力開発施設における障害者の受入れを一層促進するとともに、施設のバリアフリー化を推進するなど障害者の受入体制の整備を図る。
 これらの施設で受入れが困難な重度障害者等については、障害者職業能力開発校において、障害の特性や程度に応じた訓練科目を設定し職業訓練を推進する。その際、障害の重度化・重複化、障害者の高齢化など訓練ニーズの多様化に留意するとともに、サービス経済化や情報化の進展、また、除外率制度の縮小に伴う雇用ニーズの動向を踏まえるものとする。

 また、ITに係る教育訓練ソフトをインターネットを通じて配信し在宅でも随時能力開発ができるようにするための遠隔訓練システムを開発し、公共職業能力開発施設等への通所に制約がある障害者への活用を図る。

 技術革新に伴う職務内容の多様化等に対応し、職業能力の向上を図るため在職障害者向け訓練を実施するほか、事業所においても在職障害者に対する効果的な職業能力開発が行われるよう、関係機関との密接な連携の下に、事業主や障害者に対し相談、援助等の支援を行う。

 障害者が高度なレベルの職業能力を身につけ、その能力にふさわしい処遇を受けることが重要であることから、可能な限り多くの訓練機会を得られるよう、民間の教育訓練機関等多様な職業能力開発資源を活用した委託訓練を幅広く実施する。

 また、民間外部講師についても一層積極的に活用し、多様化する訓練ニーズに対応していくものとする。

 雇用の場における障害者の人権の擁護

 企業等において雇用差別など障害を理由とした人権の侵害を受けることがないよう、適切な措置を講ずる。


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