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独立行政法人国立健康・栄養研究所の
平成15年度の業務実績の評価結果





平成16年8月30日
独立行政法人評価委員会



1.平成15年度業務実績について

(1)評価の視点
 独立行政法人国立健康・栄養研究所は、厚生労働省の附属機関であった国立健康・栄養研究所が、平成13年4月から位置づけを変え、新たに独立行政法人として発足したものである。
 今年度の当研究所の業務実績の評価は、平成13年4月に厚生労働大臣が定めた中期目標(平成13年度〜17年度)の第3年度目の達成度についての評価である。
 当研究所に対しては、国の附属機関から独立行政法人となった経緯をふまえ、弾力的・効果的な業務運営を通じて、業務の効率性の向上、質の向上及び透明性の向上により国民の求める成果を得ることが強く求められている。
 当委員会では、従来の評価方針や平成14年度までの実績の評価の過程で生じた評価作業等に係る今後の課題に加え、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会から当委員会に対し提出された平成13年度及び14年度における独立行政法人の業務の実績に関する評価の結果についての意見等を踏まえ策定した「厚生労働省所管独立行政法人の業務実績に関する評価の基準」に基づき、評価を実施した。

(2)平成15年度業務実績全般の評価
 平成15年度は、理事長のリーダーシップの下、独立行政法人化の利点を活用し、研究者の流動化計画を策定し柔軟で効率的な業務運営の推進が図られた。
 また、当研究所の設置目的を達成するために業務の中心となる調査研究業務の実績に関しては、継続中のものについて今後の成果に留意が必要であるが、個別項目に関する評価結果にも見られるように、全般的にニーズを的確にとらえた効果的なものであったと評価できる。特に、本年度においては、第7次改定食事摂取基準(平成16年8月公表予定)の策定のため、国内外の論文の系統的レビューやより精度の高いエネルギー消費量のデータ収集、提供を行うなど、行政課題に大きく貢献した。
 研究成果の普及及び活用についても、質量ともに高水準な論文発表等を行うとともに、国民の関心の高いいわゆる健康食品の安全性情報についてのネットワーク構築や、マスコミを活用した情報提供等、積極的な取組が行われている。
 なお、運営費交付金以外の収入の確保を進める等、積極経営に取り組んでいるが、今後新規事業等については事前に十分検討し、事業計画を明示しておくことが重要である。
 これらを踏まえると、平成15年度の業務実績については、全体としては当研究所の目的である「国民の健康の保持及び増進に関する調査・研究並びに国民の栄養その他国民の食生活に関する調査・研究等を行うことによる、公衆衛生の向上及び増進」に資するものであり、適正に業務を実施したと評価できる。
 なお、中期目標に沿った具体的な評価結果の概要については、2のとおりである。個別項目に関する評価結果については、別紙として添付した。


2.具体的な評価内容

(1)業務運営の効率化について
 独立行政法人移行後の3年度目には、独法化の利点を生かした柔軟で効率的な業務運営を推進している。
 業務運営体制については、平成15年3月に策定された「独立行政法人国立健康・栄養研究所における研究者の流動化計画」に基づく研究職員の採用や、理事長のトップマネージメントによる迅速な意思決定管理体制の構築を図った結果、職員の意識の変化や研究所の活性化が図られた。
 内部進行管理については、研究業務等の評価システムによる評価結果に基づく予算・人員等の配分を実施し、研究の活性化や効率化に寄与している点が評価できる。今後、これらの評価システムの検証・改善に努めていくことが必要である。
 また、運営費交付金以外の収入の確保については、外部からの競争的研究資金を前年度よりさらに多く獲得し、目標を上回る結果を出しており成果が見られた。
 研究施設等の利用については、当研究所が独立の建物を持たないなど制約面がある中で、施設利用規程を作ることにより施設の有効利用を図り、弾力的な運用への工夫が見られる。

(2)国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上について
 (1)  調査研究に関する業務内容
 平成15年度においては、当研究所の目的である国民の健康の保持、増進に資するための調査研究等の業務を、行政ニーズ及び社会ニーズに即して着実に実施している。
 社会的ニーズの把握については、研究所、大学等の専門機関に加え、ジャーナリズム関係、健康づくり団体等と意見交換会が行われた。また、独立行政法人国立健康・栄養研究所認定栄養情報担当者制度(NR)については、国民の健康づくりに資するものと期待されるが、NRの社会的役割についてのモニタリングや評価まで責任を持って行う必要がある。
 重点的調査研究については、国内外の論文の系統的レビューやより精度の高いエネルギー消費量の測定・解析のためのヒューマンカロリーメーター及び二重標識水法によるエネルギー消費量のデータ収集、健康増進法に基づく国民健康・栄養調査に対応した栄養素摂取等の評価に必要なデータベースの構築や集計解析方法の開発、いわゆる健康食品及び栄養補助食品の生理的有効性や安全性の評価等が行われるとともに、国内規格や基準の策定や改変等のための基礎資料の作成・提供がなされた。
 基盤的研究については、生活習慣病の遺伝子要因と食事・運動との関連など所内公募による発展性のある課題研究の推進、生活習慣改善のための自己学習システムの開発,「健康日本21」推進のための地方計画データベース作成などを進める一方、「健康食品等の安全性情報ネットワーク」を適切に構築し、国民に対するいわゆる健康食品による危害の防止、健全な食生活構築のための観点から、的確な情報提供を行っている。今後は、「健康日本21」地方計画データベースや自己学習システムのより効果的な活用方法の検討や、重点調査研究と基盤的研究との課題の整理が必要である。
 平成14年度実施の栄養改善法に基づく国民栄養調査の集計業務については、糖尿病実態調査の同時実施による集計項目の大幅増加にかかわらず的確に処理が行われた。
 職員の資質の向上については、所内研究員及び外部講師によるセミナーが行われた他人事院主催の研修など必要な対応を行っている。
 このほか、行政上の重要な課題に関し、審議会等の委員として研究員を派遣する等、行政との連携が図られている。
 また、外部評価委員会を設置し、研究課題はじめ業務・組織全般について年度の事前・事後の評価が実施され、結果が業務運営に反映されるとともに、公開されている。

 (2)  調査研究成果の普及及び活用
 平成15年度においても、調査研究成果の普及・活用について着実に実施し、所期の目的を達成していると考えられる。
 学会発表、論文発表数等については、中期目標を大幅に上回っており、研究員一人当たりの発表数等の密度が高く、特にインパクトファクターの高い欧米誌への掲載が多いなど、水準も高い点が高く評価できる。
 国民に対する情報の発信については、引き続きホームページの活用、機関誌の発行の他、研究員のテレビへの出演や雑誌への情報提供等マスコミ等を通じた多面的な情報発信がなされ、講演会等への講師派遣も積極的に行っている。今後は、ホームページの効果をさらに上げるための双方向型の活用について研究を行う等、一層国民のニーズに応えるよう工夫が必要である。
 講演会の開催や研究所の一般公開等については、一日移動研究所の開催など工夫が見られるものの、さらなる戦略に基づく普及方策を考え、産業界、消費者団体、一般国民への普及を推進していくことが期待される。
 知的財産権の取得等については、研究分野からして特許の取得は難しいという制約があるが、寄附研究部の設置、学会発表内容の「スクリーニング」制度を立ち上げるなど積極的な取組はなされており、今後大きな成果を期待したい。

 (3)  外部機関との協力の推進
 平成15年度においても外部機関との協力の推進を着実に実施している。
 提携大学院を発足させるなど、若手研究者の育成に積極的であり、今後の研究所自体にとっても活力源となっている点が評価できる。今後は、大学との連携による具体的な成果を期待する。
 研究協力については、アジア地域の研究者を招聘してアジアネットワークを構築するためのシンポジウムを開催する等、招聘事業規程を作成してネットワーク作りを推進し、アジア地域の人たちの健康・栄養改善を図る努力をしている点、これらにより、アジア太平洋地域において初めての栄養関連のWHO協力センターも視野に入れた取組及び産業界との連携を重視した積極的な取組を行っている点を評価する。

(3)財務内容の改善等について
 平成15年度においても独立行政法人化の利点を生かし、運営費交付金以外の収入の確保を進め、必要な人材の弾力的な採用に努めている。
 運営費交付金を充当して行う事業に係る経費の節減については、人材派遣利用による取組等がなされているとの説明であるが、その結果どの程度効率化されたかについて数値により客観的に示すことが必要である。
 自己収入については、広く多領域より獲得しており、研究の質の高さと信頼性を認知されているといえる。今後、運営費交付金を充当する業務とのバランスの観点から、適正な水準の把握と確保が課題である。
 職員の人事については、新規採用者を原則として任期付とするとともに、任期満了者を業績により任期を付さないポストへ任用する等、研究職員の流動化を図るための工夫が見られる。
 なお、国際・産学共同研究センターに係る経費やNR認証制度等予算と執行に乖離のある業務経費等については、予算計画に反映させ、予算と執行に継続的な乖離が生じないように配慮する必要がある。
 また、積極経営は評価できるが、今後新規事業等については事前に十分検討し、事業計画を明示しておくことが重要である。


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