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独立行政法人国立重度知的障害者総合
施設のぞみの園の平成15年度の業務
実績の評価結果



平成16年8月24日
厚生労働省独立行政法人評価委員会



1.平成15年度業務実績について
(1)  独立行政法人の発足と評価の視点
 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の前身である特殊法人心身障害者福祉協会は、昭和30年代、重度の知的障害者を受け入れる施設が極めて少なく、障害者本人やその家族の生活が深刻な状況におかれていたことから、親なき後も安心して任せることのできる施設、いわば「終生保護」の場としてのコロニーの設置が切望されたことを背景に、重度知的障害者が必要な保護及び指導の下に社会生活を営むことができる総合的な施設を設置・運営することを目的として、昭和46年1月に設立され、同年4月から「国立コロニーのぞみの園」を開園した。開園時の定員は550名で、以来全国を対象に入所者を受け入れてきたが、平成15年10月から、新たに独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(以下「のぞみの園」という。)として発足したものである。
 今年度ののぞみの園の業務実績の評価は、平成15年10月に厚生労働大臣が定めた中期目標(平成15年度〜19年度)の初年度(平成15年10月〜16年3月)の達成度についての評価である。
 なお、のぞみの園が行う業務のうち、重度知的障害者の自立支援のための取組みは、法人の設立目的の変更により、「終生保護」の施設から「地域生活への移行」を推進するモデル施設へと大きく転換するものであるが、入所者の平均年齢が54歳、入所期間が30年を超える知的障害者が8割を占める実態を踏まえ、業務の推進、また評価のあり方においても、入所者本人及び保護者・家族等の意向が第一義的に考慮されなければならないことを特記しておきたい。

(2)  平成15年度業務実績全般の評価
 のぞみの園は、新たに制定された独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成14年法律第167号。以下「法」という。)により、その前身である特殊法人心身障害者福祉協会と比較して法人の設立目的が変更され、これにより新たな設立目的に沿った業務運営への転換が求められるとともに、他の独立行政法人と同様に効率的な業務運営が求められている。
 このような中で、平成15年度においては、法の定める設立目的に沿った業務運営への本格的な取組みを行うため、とりわけ現に入所している重度知的障害者の自立(地域移行)に向けて、職員の意識改革や地方自治体等関係方面への説明及び協力要請を行う等、環境づくりに努力しているものと認められる。
 また、入所者の多くが長期にわたり入所し高齢化していることを勘案し、入所者本人及び保護者・家族等の意向を尊重しつつ、障害特性に合わせたより具体的な地域生活への移行に向けてのメニューの作成に取り組むなど、1人ひとり丁寧に手順を踏んで、真に入所者の幸せにつながる地域移行の実現を目指して、着実な取組みがなされているものと認められる。ただし、平成15年度においては、地域に移行したケースの実現には至っていない。
 一方、業務運営の効率化の観点から、効率的な業務運営体制の確立のための組織の改編が検討され、職員数の抑制や給与水準の見直し等の経費節減の努力が行われているほか、地域の知的障害者のための「通所部」の開設準備が進められ、デイサービスの拡充等による収入増が図られている。
 なお、新たな法人の設立目的に沿った調査研究や研修の実施に努力していることが認められるが、それらの一層の充実と人材育成の分野でのプログラムの検討を進め、本格的に実施していくことが望まれる。
 これらを踏まえると、平成15年度の業務実績については、全体としてはのぞみの園の設立目的である「重度の知的障害者に対する自立のための先導的かつ総合的な支援の提供、知的障害者の支援に関する調査及び研究等を行うことにより、知的障害者の福祉の向上を図ること」に資するものであり、適正に業務を実施したと評価できる。とりわけ、重度知的障害者の自立支援のための取組みとして極めて困難とされていた地域移行の準備状況については、高く評価できる。
 なお、中期目標に沿った具体的な評価結果の概要については、2のとおりである。個別項目に関する評価結果については、別紙として添付した。

2.具体的な評価内容
(1)  業務運営の効率化について
 まず、業務運営体制の整備については、地域移行推進機能を重視した組織再編の本格的な検討、地域移行のスキルを有する人材確保の取組みの面で、計画どおり進展している。
 内部進行管理の充実については、モニタリングシステムの構築、感染症対策の更なる充実、苦情解決システムの構築の面で、計画どおり進展している。
 経費の節減については、法人運営に要する経費の大部分を占めている人件費の節減に意欲的に取り組んでいることを高く評価する。また、業務委託費等人件費以外の経費の縮減や、収入の確保対策としての通所部の開設準備、デイサービス事業の拡充等についての努力も見受けられる。
 今後とも、サービスの質の確保及び職員の士気の維持・高揚に留意しつつ、このような努力を継続し、中期目標及び中期計画において設定された運営費交付金の13%以上の節減という目標の確実な達成に向けて努力する必要がある。
 効率的な施設・設備の利用については、地域とのふれあいフェスティバルに、地域の多くの人々の参加を得たこと、また通所部の開設に取り組み、平成16年度当初からの開所につなげたことを評価する。他方、診療部門に関しては、知的障害者の生活を支える医療の担い手としての診療所として、今後も地域の医療福祉に貢献することを望みたい。
 合理化の推進については、外部委託や競争入札件数の拡大の実現には至らなかったが、委託費の減少に努めたことは評価する。しかしながら、施設の特性を考慮しつつ、競争入札の導入の可能性を追求すべきである。

(2)  国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上について
(1)  自立支援のための取組み
 平成15年度に地域生活に移行した具体的なケースはないが、入所者の平均年齢が54歳、入所期間が30年を超える知的障害者が8割を占める実態を踏まえ、地域移行に向けた体制の整備と職員の意識改革のための取組みが行われていること、また、法人設立からの実施期間が6か月間と短期間ではあったが、入所者本人及び保護者・家族等への説明、関係者への協力要請、入所者の地域生活体験事業の実施など、考えられる具体的な方策に積極的に取り組んでいることは、高く評価する。
 なお、3割から4割の数値目標の達成が望ましいことは言うまでもないが、これまで法人が行ってきた処遇方針を大転換するような目標であることも事実である。
 本事項は、最も重要かつ困難な課題であり、単に数値目標の達成を目指すだけでなく、入所者の多様性を踏まえた地域社会への移行を目指して、現行の計画を、焦らず時間をかけて進めることを強く希望する。

(2)  調査・研究
 調査・研究については、重度・重複の知的障害者の地域生活移行に関する研究、重度・高齢化した知的障害者の援助に関する研究等の取組みが行われている。また、調査・研究の成果の積極的な普及・活用については、これまでの成果をホームページで掲載しているが、さらに、ニュースレターの発行、講演会や学会での発表、一般誌や学会誌での公表などにより、広く周知していくことが必要である。

(3)  養成・研修
 養成・研修については、大学等で行われている養成・研修コースの学生をはじめ、今以上の実習生の受入れが望まれる。また、養成研修事業に関しては、平成17年度からの本格的な実施に向けて、のぞみの園の専門性を生かしたプログラムを工夫する必要がある。

(4)  援助・助言及びその他の業務
 知的障害者援護施設の求めに応じた援助・助言については、従来からの相談事業も含めて、合理的な体制の整備が必要である。
 その他の業務については、例えば診療部門において、診療対象を地域に拡大したことによって、地域の知的障害者の利用が急増している。

(5)  サービス提供に関する第三者評価の実施及び評価結果の公表
 中期目標に示されている有識者、保護者、地域代表等からなるサービス提供に関する第三者評価委員会については、人選が行われたものの、その開催には至っていない。計画どおり実施し、評価結果の公表を行う必要がある。

(3)  財務内容の改善等について
 運営費交付金以外の収入の確保については、通所部の開設準備、デイサービス事業の拡充、実習料の引上げ等の収入増に向けた努力が見受けられ、計画どおり進展している。
 また、職員の採用等の人事に関する計画については、定年退職者の後補充として非常勤職員を活用しているほか、平成15年度に給与水準の見直しを実施したことにとどまらず、平成16年度からの給与水準の大幅な引下げを検討するなど、課題となっている人件費の縮減に意欲的に取り組んでいる。
 なお、人事評価システムの構築に向けて試案を検討中であるが、その着実な実施を期待する。


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