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独立行政法人福祉医療機構の平成
15年度の業務実績の評価結果



平成16年8月24日
厚生労働省独立行政法人評価委員会



1.平成15年度業務実績について
(1)  独立行政法人の発足と評価の視点
 独立行政法人福祉医療機構の前身である特殊法人社会福祉・医療事業団は、高齢化社会の到来等、時代の変化に対応した新しい観点から社会福祉の増進、医療の普及向上を図っていくという要請に適切に対応するため、福祉貸付事業、社会福祉施設職員退職手当共済事業及び心身障害者扶養保険事業を行っていた社会福祉事業振興会(昭和29年発足)と医療貸付事業を行っていた医療金融公庫(昭和35年発足)が昭和60年1月に統合して設立された特殊法人である。事業団発足後においても、昭和60年に経営診断・指導事業を、昭和63年、平成元年、8年、10年及び12年の各年度に政府からの出資を受け、その政府出資金の運用益を財源とする長寿・子育て・障害者基金事業を、平成2年に福祉保健医療情報サービス事業を行うようになった。
 さらに、平成13年には年金福祉事業団の廃止に伴い、年金担保貸付事業を承継し、より多岐にわたる業務を行うようになり、そのすべての業務を承継する独立行政法人福祉医療機構(以下「福祉医療機構」という。)が平成15年10月に発足したものである。
 また、平成16年4月より労働福祉事業団の廃止に伴い労災年金担保貸付事業を承継している。
 今年度の福祉医療機構の業務実績の評価は、平成15年10月に厚生労働大臣が定めた中期目標(平成15年度〜19年度)の初年度(平成15年10月〜16年3月)の達成度についての評価である。
 なお、福祉医療機構の業務は非常に多岐にわたり、それぞれの業務の性質が異なっていることを特記しておきたい。

(2)  平成15年度業務実績全般の評価
 福祉医療機構は、福祉医療貸付事業をはじめとして、福祉医療経営指導事業、福祉保健医療情報サービス事業、長寿・子育て・障害者基金事業、社会福祉施設職員等退職手当共済事業、心身障害者扶養保険事業、年金担保貸付事業など、国の福祉・医療政策等に密接に連携した多様な事業を公正かつ効率的に運営していかなければならない。
 平成15年度においては、ISO9001の認証取得に向けた取組みや目標管理型人事評価制度の試行的運用など、業務の運営管理の改善のための新たな取組みが積極的に行われている。また、業務運営の効率化に伴う一般管理費の経費節減等については、計画を上回る実績を上げている。
 福祉医療貸付事業については、国の福祉政策及び医療政策に即して民間の社会福祉施設、医療施設等の整備に対し貸付が行われている。当該貸付業務については、リスク管理体制の強化が重要となっていることから、リスク要因の分析等の取組みを積極的に進めていかなければならない。
 心身障害者扶養保険事業については、中期目標で定める当該事業の見直しについて、検討が進められることとなっている。
 他にも、国民・利用者に対するサービスの向上についての取組みがなされており、審査期間の短縮などの実績を上げている。今後とも引き続き、計画の達成に向けて、一層の努力が期待される。
 これらを踏まえると、中期目標の初年度に当たる平成15年度の業務実績については、全体としては福祉医療機構の設立目的である「社会福祉事業施設及び病院、診療所等の設置等に必要な資金の融通並びにこれらの施設に関する経営指導、社会福祉事業に関する必要な助成、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の運営、心身障害者扶養保険事業等を行い、もって福祉の増進並びに医療の普及及び向上を図ること」及び「厚生年金保険制度、船員保険制度及び国民年金制度に基づき支給される年金たる給付の受給権を担保として小口の資金の貸付けを行うこと」に資するものであり、適正に業務を実施したと評価できる。
 なお、福祉医療機構の多岐にわたる業務内容について積極的に周知に努めるとともに、今後とも時代の状況に的確に対応して業務を展開していくことを期待する。
 中期目標に沿った具体的な評価結果の概要については、2のとおりである。個別項目に関する評価結果については、別紙として添付した。

2.具体的な評価内容
(1)  各事業の共通事項に関する評価
(1)  効率的な業務運営体制の確立
@)  ISO9001の認証取得に向けた取組みについて
 ISO9001の認証取得に向けた取組みについては、福祉医療機構の全事業を対象とし、平成17年5月の取得に向けた順調な取組みが行われているが、認証取得の意義をより明確にしていく必要がある。

A)  人事評価制度の構築及び試行的運用
 人事評価制度については、中期目標期間中に導入する予定であった、福祉医療機構の経営方針や中期計画・年度計画の事項等を個々人の業務目標に落とし込み、その実施状況を評価する仕組みに関し、平成16年4月からの実施に向けて、試行的運用などの順調な取組みが行われており、これにより、個々の職員の意識向上を通じて機構全体が活性化される等の波及成果が期待される。

B)  トップマネジメント機能の発揮
 トップマネジメント機能については、経営企画会議等の設置や企画調査部門の強化など、経営管理を有効に行うための業務管理のルール化等の体制整備が進められた。

(2)  業務管理の充実
@)  業務管理のための仕組みの検討
 業務管理のための仕組みについては、人事評価制度における職員の目標管理を活用し、その実施状況を評価する仕組みが設けられた。また、定例報告など報告体制も構築された。これらを通じて、管理者と一般職員のコミュニケーションの向上や、業務管理の更なる質の向上につなげていくことが期待される。

A)  リスク管理体制の強化
 リスク管理体制については、業務管理委員会及び事務リスク管理部会を設置し、リスク管理を徹底する仕組みが作られた。さらに、事務リスクの洗い出し、信用リスクモデルの開発に着手し、客観的な管理の仕組みが作られ、リスク管理債権比率を中期計画期初の1.53%から平成15年度末において1.50%に減少させた。

B)  ALMシステム(資産負債管理)の活用等、りん議・決裁システムの開発
 ALMシステムの活用については、4テーマのシミュレーション分析が行われた。また、平成15年度中にりん議・決裁システムを完成させ、平成16年4月からの稼働体制を整備するとともに、操作手順書の作成、全役職員に対する研修を実施した。これらの業務の電子化を通じて、業務管理の効率化について充実が図られた。

(3)  一般管理費等の経費削減
 一般管理費等の経費削減については、基準年度である平成14年度に対して、通年換算で2%削減した予算を計画し、その効率的な実施に努めた結果、計画の97.5%の執行(平成14年度に対し95.4%に相当)となった。今後とも、中期目標及び中期計画において設定された経費削減目標の確実な達成に向けて努力する必要がある。

(2)  各事業ごとの評価
(1)  福祉医療貸付事業
 福祉医療貸付事業の業務運営の効率化については、国の福祉及び医療の政策目標に沿った融資が行われている。また、国からの要請に基づき、金融環境の変化に対応した緊急融資がなされた。さらに、民間資金の活用策について、協調融資制度の導入に向けて検討が行われた。
 具体的には、福祉貸付について、国の政策と密接に連携し、ゴールドプラン21、新エンゼルプラン、新障害者プランなどに基づく重点分野の施設整備に対し、優先的に貸付を行っている(老人福祉関係施設589件、児童福祉関係施設323件、障害者福祉関係施設232件等)。
 また、医療施設の地域格差の是正と機能の向上を図るために、病床等不足地域に対する融資(病院70件、診療所239件)や医療機関の機能分化に応じた融資(療養病床を有する病院86件、純増4,704床、転換1,898床等)などに実績を上げた。また、平成15年度においては「金融環境の変化に伴う運転資金に対する緊急融資」を実施し、前回融資実績(平成10年度から3か年の貸付件数152件、契約額3,102百万円)に対し、貸付件数で5倍、金額で3倍の成果を上げた。
 なお、新規契約分の利差益の確保の水準に関し、政策金融としての観点から、今後検討が求められる。
 福祉医療貸付事業の業務の質の向上については、審査業務及び資金交付業務の迅速化において目標数値を上回る実績をあげ、サービスの向上が見られた。また、借入申込書等の簡素化や融資説明会及び融資相談会の実施など利用者サービスが向上した。今後とも、業務の質の維持・向上を図りつつ、業務の効率化に向けて努力することが必要である。

(2)  福祉医療経営指導事業
 福祉医療経営指導事業の業務運営の効率化については、集団経営指導の開催経費を受講料収入で賄う実績をあげている。また、個別経営診断の処理日数を目標より3日短縮している。
 福祉医療経営指導事業の業務の質の向上については、医療と福祉の診断体制を一本化するとともに、集団経営指導の延べ受講者数が年度計画における目標を7.6%上回り、平均満足度指標も中期計画における目標に達している。職員の専門能力向上及び調査研究能力強化のための組織改正、個別経営診断、開業医承継支援事業については、計画を上回る実績をあげている。

(3)  長寿・子育て・障害者基金事業
 長寿・子育て・障害者基金事業の業務運営の効率化については、資金の運用実績に関して妥当と認められる。今後は、独創的・先駆的な民間の取組みを支援するため、助成事業の効果の一層の広報に努め、より適切な事業の発掘に努めるとともに、審査の質の向上を進めるべきである。
 長寿・子育て・障害者基金事業の業務の質の向上については、第三者による基金事業審査・評価委員会が設置され、業務評価が実施されている。

(4)  退職手当共済事業
 退職手当共済事業については、社会福祉施設職員の雇用の安定を図るとともに、福祉サービスの質の向上の観点からも意義ある事業である。当該事業の支給期間の短縮については、機械処理手順の見直しを図ったところであるが、予算制約による支給の遅延の影響があった。

(5)  心身障害者扶養保険事業
 心身障害者扶養保険事業については、財務状況の定期的公開、安全性を重視した運用、地方公共団体事務担当者会議の開催による日常業務の正確な事務の遂行の促進が計画どおり進展しているところである。なお、当該事業の繰越欠損金については、その解消に向けて、検討が進められることとなっている。

(6)  福祉保健医療情報サービス事業(以下「WAM NET事業」という。)
 福祉保健医療情報サービス事業の業務運営の効率化については、行政機関や関係団体が直接入力することにより、情報の蓄積、活用が同時に行えるというWAM NET事業の特性に基づいた情報収集の効率化や利便性の向上のために様々な試行をしている。平成15年度に行った機器更新による基盤整備を、今後の業務の効率化に反映させていくことが求められる。
 福祉保健医療情報サービス事業の業務の質の向上については、満足度調査において利用者等から高い評価を得ている。また、提供情報の内容の充実、操作機能の改善等が図られた結果、平成15年度通年のアクセス件数が600万件を超え、前年度に比して約74%増、利用機関の登録数約8%増を達成するとともに、医療機関情報提供システムの拡充が図られている。今後とも引き続き、内容の充実を図るとともに、情報発信の迅速性、情報検索の利便性について、一層の改善を行っていくことが課題である。

(7)  年金担保貸付事業
 年金担保貸付事業の業務運営の効率化については、当該事業の業務運営コストを分析し、その増加を抑制するための管理を適切に行うとともに、これを反映した適切な金利設定に向けて、更なる取組みが求められる。
 年金担保貸付事業の業務の質の向上については、当該事業に関する周知の取組みが認められるほか、悪質な貸金業者に関する注意喚起を行うなどの努力がなされている。また、事務処理期間の短縮については、事務処理方法の見直しにより、平成17年10月を目途に1週間の短縮を図るための取組みが行われている。


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