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ケアマネジメント業務の状況

 居宅におけるケアマネジメントについては、(1)アセスメント、モニタリング、ケアカンファレンスといった重要なプロセスが十分に実施されていないこと、(2)自立支援に即したケアプランが作成されておらず、特に軽度の要介護者等は、1種類のケアプランが多く、また、要介護度の変化も悪化傾向にあること等から、所期の目的を達していないという意見が多く、立て直しが求められている。
 これらのプロセスを実施することが困難な理由として、ケアマネジャーが挙げるもののうち共通するものは、「多忙」が多い。
 また、「多忙」の理由として、「援助困難事例の存在」も多く挙げられているが、これらの事例は、介護以外の要因によるものも多く、ケアマネジャー以外の他の専門職からの関与・支援が必要と考えられる場合が多い。

1.介護支援専門員の担当利用者数

 居宅介護支援事業所の、介護支援専門員常勤換算1人当たりの担当利用者数の分布

居宅介護支援事業所の、介護支援専門員常勤換算1人当たりの担当利用者数の分布のグラフ

 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 省令上の規定
 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに1以上の員数の介護支援専門員を置かなければならない。
 介護支援専門員の員数の標準は、利用者の数が50又はその端数を増すごとに1とする。
 (「居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」第2条)


2.利用者1人1月当たりの労働投入時間

 利用者1人1月当たりの介護支援専門員の労働投入時間

  ・ 要介護度別

要介護度別のグラフ


  ・ 業務内容別

業務内容別のグラフ

 ※出典:「居宅介護支援事業及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成13年長寿社会開発センター)、「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 高齢者介護研究会の指摘

 介護保険制度により新たに導入されたものにケアマネジメントがある。これは、高齢者の状態を適切に把握し自立支援に資するサービスを総合的、計画的に提供するための仕組みであり、介護保険制度の中核となるものである。しかし、高齢者の状況を判断するアセスメントが十分でないため適切で効果的なサービス提供が行われていないとの指摘がある。実態としても、一種類のサービスのみのケアプラン作成が半数にも上り、必要なサービスが適切に提供されているのか疑問が残る。また、サービスを提供する担当者などが介護の方針を設定し共有する場であるケアカンファレンスの開催も十分に行われておらず、担当者が同じ認識の下で、総合的に自立支援のためのサービス提供が行われているかについても疑問がある。


3.ケアマネジメントの各プロセスの実施状況

 サービス担当者会議

  ・ 開催頻度(居宅介護支援事業所に対する調査)

開催頻度(居宅介護支援事業所に対する調査)のグラフ


  ・ 実施に関する主な困難点(介護支援専門員に対する調査;複数回答可)

実施に関する主な困難点(介護支援専門員に対する調査;複数回答可)の表


 ※出典:「居宅介護支援事業及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成13年長寿社会開発センター)、「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 モニタリング記録

  ・ 実施率(調査月の過去3か月以内に実施したかどうか)

実施率(調査月の過去3か月以内に実施したかどうか)のグラフ


  ・ 実施に関する主な困難点(介護支援専門員に対する調査;複数回答可)

実施に関する主な困難点(介護支援専門員に対する調査;複数回答可)の表


 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 利用者宅への訪問

  ・ 実施率(調査月中に訪問したかどうか)

実施率(調査月中に訪問したかどうか)のグラフ


  ・ 実施に関する主な困難点(介護支援専門員に対する調査;複数回答可)

実施に関する主な困難点(介護支援専門員に対する調査;複数回答可)の表


 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)


4.軽度に対しては1種類のプランも多く、また、軽度は悪化する傾向

 要介護度別にみた利用者のケアプランに位置付けられたサービス種類数

要介護度別にみた利用者のケアプランに位置付けられたサービス種類数のグラフ


 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 要介護度の改善・悪化の状況
 (平成12年10月にある地域において要支援・要介護認定を受けていた者が、平成14年10月時点でどのような認定を受けていたか、追跡調査したもの)

要介護度の改善・悪化の状況のグラフ

 ※出典:日医総研


5.ケアマネジャーと処遇困難事例

 対応困難な利用者がいるという介護支援専門員の割合

対応困難な利用者がいるという介護支援専門員の割合のグラフ


 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 介護支援専門員が処遇困難と感じる利用者像(複数回答可)

介護支援専門員が処遇困難と感じる利用者像(複数回答可)の表


 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 介護支援専門員の業務遂行上の悩み(複数回答可)

介護支援専門員の業務遂行上の悩み(複数回答可)の表


 ※出典:「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成15年株式会社三菱総合研究所;速報値)

 在宅介護支援センターによる支援の必要性

これからの高齢者介護における在宅介護支援センターの在り方について
−中間報告−(抜粋)
平成15年5月26日 全国在宅介護支援センター協議会
これからの高齢者介護における在宅介護支援センターの在り方に関する検討委員会

4.提言
 上記の課題の解決を図るとともに、今後、在宅介護支援センターがその役割を一層的確に果たしていくことができるよう、次のような具体的な取組を進めるべきである。

(1)基幹型在宅介護支援センター
(2) 地域ケア会議について
(d)地域ケア会議には多様な職員が集まるという強みを活かして、チームでの指導を行うなど、介護支援専門員協議会等で行われている「ケアマネジメントリーダー事業」と併せて、居宅介護支援事業者の介護支援専門員の指導・支援を行う。

(2)地域型在宅介護支援センター
(3) 要援護高齢者の発見と支援・保護について
(b)このほか、何らかの援護を要する高齢者には次のようにさまざまなものがあり、これらの高齢者についても、早期に発見し、関係機関への連絡など所要の対応を行う。
 家族から虐待や介護放棄を受けている高齢者
 介護サービスの利用や消費生活の上で保護が必要な高齢者
 介護を要する状態にあるにも関わらず、要介護認定を受けていない高齢者
 介護を要する状態にはないが、生活上の問題を抱えている高齢者
 アルコール中毒等の精神疾患を有している高齢者
(c)また、広く高齢者が介護サービスを利用したり、商品を購入したりする際の苦情を受け付け、その解決機関に結びつける。
(4) 痴呆性高齢者の早期発見と早期対応について
(a)痴呆性高齢者については、早期に発見し、早期に適切な対応をすれば、痴呆に起因して生じる周辺症状(徘徊など)が緩和され、在宅での生活を長く続けることが可能である。
 しかしながら、痴呆に対する家族の無理解、周りの住民の偏見・無理解により、痴呆性高齢者やその家族が地域社会から孤立し、在宅での生活の破綻を来す事例も多く見られる。
 こうしたことを防ぐために、地域の中で痴呆性高齢者を早期に発見し、居宅介護支援事業者につなぐとともに、家族への専門的な助言や精神的な支援にもつなげていく。
(b)更に、地域住民が痴呆性高齢者を正しく理解できるように日頃からさまざまな情報を伝えるなど、地域全体で痴呆性高齢者やその家族を支えていく拠点としての活動を行う。

6.地域ケアシステムとの関係
 以上、介護保険制度の導入に伴う変化や、施行後の状況を踏まえて、在宅介護支援センターの新しい在り方について述べてきた。
 ここで、高齢者を地域の中で総合的に支える地域ケアシステムの仕組みについて図示すると図2のとおりであり、介護保険制度は、このうちケアニーズをもつ高齢者への「総合相談システム」と「サービス提供システム」に関わるものである。
 そして、在宅介護支援センターは、これらを含めた8つのシステムのいずれにおいても担うべき役割を有しており、4.で述べた具体的な取組を再整理すると、次のとおりである。

(6)権利擁護のシステム
 虐待や介護放棄など、人権が侵害されていたり、そのおそれがある高齢者を発見し、安心して地域で生活できるよう適切な権利擁護機関と結びつけていく。


 処遇困難事例の実際

事例1 男性、82歳、要介護1の表

事例2 女性、72歳、要介護3の表

 ※出典:「居宅介護支援事業及び介護支援専門員業務の実態に関する調査」(平成13年長寿社会開発センター)



在宅介護支援センター運営事業

 在宅介護支援センターは、在宅高齢者に対する総合的な支援を実施する機関として、約8,700か所が設置されている。
 一方、介護保険制度施行後、居宅介護支援事業所との役割分担が不明確になっているとの指摘もある。
 今後、地域における高齢者の総合調整機能を担う機関として機能強化していくことが必要と指摘されている。

事業内容
 高齢者やその家族等に対し、身近な場所での介護等に関する相談、介護予防・生活支援サービスの調整等、在宅高齢者に対する総合的な支援を実施。(実施主体:市町村)
 基幹型:地域型在宅介護支援センターの統括・支援
介護予防・生活支援サービスの総合調整
居宅介護支援、居宅サービス事業者の指導・支援 等
 地域型:地域住民(高齢者)の実態把握
介護サービス、介護予防・生活支援サービス等の利用に関する相談
介護予防プランの作成、介護予防教室、転倒骨折予防教室の実施 等

設置か所数(平成16年1月現在)
設置か所数(平成16年1月現在)の表

平成16年度予算額(案):208億円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)

見直しの方向性(当面の状況)
「これからの高齢者介護における在宅介護支援センターの在り方について−中間報告−」
(全国在宅介護支援センター協議会)
○市町村 〜 事業を効果的・効率的に行うため、評価を導入すべき。
○基幹型 〜職員配置や「地域ケア会議」の充実・強化を図るべき。
○地域型 〜担当区域内での総合調整機能や、セーフティーネットの強化を図るべき。
介護予防のコーディネーション機能の強化を図るべき。

「2015年の高齢者介護」(高齢者介護研究会)
 地域包括ケアを有効に機能させるためには、関係者の連絡調整を行い、サービスのコーディネートを行う在宅介護支援センター等の機関が必要。
 居宅介護支援事業所との役割分担が不明確。

「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」(高齢者リハビリテーション研究会)
 予防、医療、介護の情報交換・連携の促進を図るべく、地域リハビリテーションシステムの再構築が必要であり、地域における利用者と専門職の連携を図るため、在宅介護支援センターには、地域包括ケアのコーディネーションを担う上での機能強化が必要。


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