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第3回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録


1 日時 平成15年12月16日(火)13:00〜15:00

2 場所 厚生労働省専用第17会議室

 出席者
  【委員】公益委員 渡辺会長、今野委員、岡部委員、辻山委員、
 中窪委員、古郡委員

労働者側委員 加藤委員、久保委員、中野委員、山口委員、
 横山委員

使用者側委員 浅澤委員、池田委員、川本委員、原川委員

  【事務局】厚生労働省
  大石審議官、麻田賃金時間課長、川戸主任中央賃金指
  導官、山口副主任中央賃金指導官、長課長補佐

 配付資料
 資料1 目安審議で活用されている参考資料
 資料2 賃金改定状況調査結果
 資料3 賃金改定状況調査について(概要、調査票)
 資料4 賃金改定状況調査のこれまでの検討状況
 資料5 賃金改定状況調査における賃金上昇率の計算方法の変更点
 資料6 金額水準についてのこれまでの議論の経緯
 資料7 各種指標の推移等
 (1)イ)都道府県の標準生計費
ロ)消費者物価指数等の推移
 (2)イ)地域別最低賃金と所定内給与との関係
ロ)都道府県別時間当たり所定内給与に対する最低賃金の割合
ハ)諸外国の状況
 (3)イ)日銀短観による企業の業況判断及び収益
ロ)中小企業景況調査による業況判断
 資料8 20の指標による指数と最低賃金との関係
 資料9 影響率・未満率の推移


5 議事内容

○会長
 ただいまから第3回目安制度のあり方に関する全員協議会を開催します。第1回目安制度のあり方に関する全員協議会で了解いただいたスケジュールに従いまして、本日の全員協議会では「賃金改定状況調査等参考資料のあり方」と「金額水準のあり方」について、フリートーキングを行います。
 最初に、「賃金改定状況調査等参考資料のあり方」について事務局より配付資料の説明をお願いします。

○事務局
 賃金改定状況調査等参考資料のあり方について、資料の説明をします。まずは資料の確認をします。お手元の資料は9点ありまして、資料No.1〜資料No.5が賃金改定状況調査等参考資料のあり方関係の資料です。資料No.6〜資料No.9が金額水準のあり方関係の資料です。
 資料No.1〜資料No.5を順番に説明します。資料No.1は、毎年の目安を審議するために事務局より提出している基礎資料の目次です。本年度の目安に関する小委員会での資料を付けています。資料は「全国統計資料編」「都道府県統計資料編」「業務統計資料編」の三部構成となっています。2頁の「全国統計資料編」では、GDPなどの主要経済指標、有効求人倍率など、労働市場の状況を示す指標、賃金・労働時間の動きや春季賃上げの妥結状況、物価の動向として消費者物価指数の推移や、企業の業況判断などの資料を幅広く提出しています。また最低賃金との関係ですが、3頁の未満率や影響率といった推移や、一般労働者の賃金水準との関係を示すような資料についても提供しています。
 「都道府県統計資料編」は、一人当たりの県民所得や標準生計費、高卒初任給といった各種関連指標を提示しています。また有効求人倍率の推移や賃金・労働時間関係の資料、春季賃上げ妥結状況、消費者物価指数といった基礎資料について都道府県統計資料ということで、毎回目安の際には提示しています。
 4頁の「業務統計資料編」では、地域別最低賃金の改定の状況についての資料、最低賃金の履行確保を主眼とする監督指導結果などについて、業務統計から資料を提示しています。
 目安を審議するための基礎資料として、厚生労働省が賃金改定状況調査を行い、目安に関する小委員会に調査結果を提出しています。資料No.2は、本年の目安審議の際に提出した資料です。資料は1〜4表までと参考資料で1〜5及び付表という構成になっています。1〜4表では、賃金改定実施状況別事業所割合、事業所の平均賃金改定率、事業所の賃金引上げ率の分布の特性値、一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率を資料としています。参考資料としては、6頁以下に、賃金引上げの実施時期別事業所数割合、事由別賃金改定未実施事業所割合、事業所の平均賃金改定率、事業所の賃金引上げ率の分布の特性値、一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率というものを県庁所在都市及び地方小都市別ということで出しています。最後に11頁の付表は、パートタイム労働者の比率の平成14年、平成15年分及び男女別労働者数の比率の平成14年、平成15年分、年間所定労働日数といった基礎データを付表として付けています。
 資料No.3は、賃金改定状況調査の概要を整理したものです。賃金改定状況調査について、簡単に説明します。調査の対象地域は、都道府県の県庁所在都市及び都道府県ごとに原則として5万人未満の市より選定した1つまたは複数の市の区域、これを地方小都市と称していますが、こういった区域を調査対象地域としています。調査企業は、常用労働者数が30人未満の企業で、都道府県庁所在都市からは3,000、地方小都市からは1,000の計4,000事業所を取っています。調査労働者数は約3万1,000人となっています。調査項目は前年6月及び当該年の6月分における労働者の月間所定労働日数、1日の所定労働時間数、労働者の所定内賃金額などを調べています。当調査の基本的性格として、各年6月分の賃金の実態調査を通じて、賃金の引上げ状況などを把握する。その調査結果を7月の目安審議に資料として提出させていただくことから、迅速性が求められている調査と考えています。
 2頁は、調査事業所のサンプルの状況を示しています。県庁所在都市については製造業、卸売・小売業,飲食店、サービス業の割合が3対4対3となるように取っています。こちらの数字は、総務省の行っている事業所企業統計調査の産業別の常用雇用者の割合がありますが、この3つの分野で見た場合が大体3対4対3となっていて、準じた形となっています。一方、地方小都市は製造業のみ取っていて、県庁所在都市及び地方小都市で見た場合には製造業、卸売・小売業,飲食店、サービス業の比率が6対4対3となっています。規模別では、製造業については1〜9人と10〜29人で2対1、卸売・小売業,飲食店とサービス業は1〜9人で3、10〜29人で1という構成比で取っています。
 なお、産業分類の変更がありましたので、来年度から若干産業構成比を変えることになっています。具体的には(1)産業別のイとロの括弧、(2)規模別のイの括弧で書いてあるような比率にする予定です。
 地方小都市の選定の方法は、先ほど申し上げたように原則として人口5万人未満の都市で選定していますが、調査を迅速に行う必要があるので、労働基準監督署が設置されているなどにより調査の便宜が得やすい都市を対象としています。なお参考までに、最後の頁に賃金改定状況調査票を添付させていただいています。
 賃金改定状況調査のこれまでの検討状況について説明します。資料No.4です。賃金改定状況調査の沿革は、昭和53年の目安制度の始まりと共に調査を開始しています。昭和54年からは、調査対象事業所に地方小都市も加えて、昭和58年からはランク別、産業別に事業所センサス、先ほどの総務省の事業所企業統計調査の数字を基にして、復元した数を出すことにしています。1頁の2番目の項目は、昭和57年から昭和58年にかけての全員協議会の議論です。その際の全員協議会の中では、労働者側からは調査対象事業所規模を製造業は100人未満まで拡大すべきであるとの主張が出ています。一方、使用者側からは調査対象地域を郡部の町村にまで拡大すべきではないかという主張が出ています。この点については、当方で行っている毎月勤労統計調査の結果を用いて、過去の規模別の賃金上昇率の比較を行ったということですが、調査対象を製造業について100人未満まで拡大しても、現行の調査とほとんど調査結果の差異が認められなかったことがあったようです。調査対象地域は、既に地方小都市の事業所も調査対象としていて、十分に標本数を確保していることがあって、このときの協議会では当面は現行どおり実施するとのことで労使の合意を得たとなっています。
 平成元年の全員協議会における議論です。平成元年2月に設置された全員協議会では、労働者側からは再度調査対象事業所規模のあり方を検討することが主張されています。一方、使用者側からは再度調査対象地域を都市部に偏重している状況を改めて、各県において賃金水準の異なる地域の実態を十分反映するような調査を行うべきだという主張がなされています。これらについては結局、合意に至っていません。
 2頁の4は、平成7年の全員協議会における議論です。平成5年3月に全員協議会が設置されましたが、その際の議論では労働者側からは地域別最低賃金の改正に際して、労働時間短縮の効果が勘案されていないのではないか、一般賃金に対する地域別最低賃金の比率や影響率に低下が見られているということで、問題提起がされています。一方、使用者側からは影響率の高低の善し悪しを一概には言えないのではないか、目安の参考資料は、従来どおりでよいのではないかという主張がなされています。当全員協議会では、翌年の平成6年5月に中間的な取りまとめを行っています。ここでパート労働者の賃金水準とそのウエイトの変化、男女構成比の変化及び就労日数の増減を反映した方式とすることが望ましいのではないかとされています。その後、さらに検討が重ねられて、目安審議の際の重要な参考資料の賃金改定状況調査結果の第4表の賃金上昇率の算出方法について、資料では2頁の(4)ですが、1つ目は、一般労働者及びパート労働者の全労働者について賃金の上昇率を求めること、2つ目は、従来、男女構成の変化が反映された賃金上昇率と当該影響を除去した賃金上昇率を算出していましたが、男女構成の変化を反映したもののみを算出すること、3つ目は、就労日数の増減が反映されるように、賃金上昇率を算出すること、その際、調査月の所定労働日数が日曜日の数などによって変動することもありますので、年間所定労働日数も併せて調査して、月間の所定労働日数を調整することになりまして、平成7年4月の中央最低賃金審議会で了承されました。この変更で、具体的にどのような計算手法となったかについては資料No.5で後ほど説明をします。
 5の平成12年全員協議会における議論ですが、労働者側からは再び賃金改定状況調査の対象を全労働者とすべきとの主張が出ています。一方、使用者側からは調査対象労働数や調査対象企業数を拡大する必要はないのではないかとの意見が出されています。審議の結果、賃金改定状況調査の調査結果は重要な参考資料であるとしつつも、これまで以上にその時々の状況を的確に把握の上、総合的に勘案して目安を審議し、決定していくことで合意されています。
 最後に6の、平成15年1月の中央最低賃金審議会での了承事項です。こちらは日本標準産業分類の改訂に合わせて、平成16年調査より対象産業を製造業、卸売・小売業,飲食店及びサービス業の3つから、従来のサービス業がいくつかに分類されたこともありましたので製造業、卸売・小売業、飲食店,宿泊業、医療,福祉及びサービス業と変更することとしています。これについては本年1月の中央最低賃金審議会で了承されている状況です。
 資料No.5は平成6年から平成7年にかけての変更点をまとめたものです。平成6年度以前と平成7年度以降の相違についてそれぞれ示していますが、平成6年度までは一般労働者とパート労働者を別々に計算していたものを、平成7年度以降は一般労働者とパート労働者の構成比の変化を反映させるために合算しています。別々に分けていたものを一緒にして計算しています。2点目は男女構成について、平成6年度までは男女構成の変化を除去していたものと反映していたものの2つを計算して出していましたが、平成7年度以降は構成変化を反映したもののみを計算して出しています。この点は2頁以降で説明します。3点目は、平成6年度までは就労日数の増減がないものとして計算されていましたが、平成7年度以降は増減を反映した計算方法となっています。これも2頁以降で説明します。
 2頁は、男女構成比の変化の影響について、変化を除去した場合と反映した場合の試算結果を示したものです。仮定として昨年の男性の平均時給が1,000円、女性の平均時給が650円とします。従業者数については男性が90人、女性が10人の合わせて100人だったとします。平成15年の男性の平均時給が1,000円から1,100円、女性の平均時給が650円から715円に10%ずつ上昇したと仮定します。ただ、その際従業員の構成比は変化していて、男性は50人、女性も50人のほぼ同数になったと仮定します。平成6年までの男女構成比の変化を除去した計算方法ですと、下の箱の左部分で前年の構成比を用いて当年の平均賃金額を計算していますので、賃金改定率は10%となります。具体的には左の箱で、平成15年の平均賃金を出すに当たり男性労働者、女性労働者を平成14年と同じ数字で推移したものと仮定して計算して、それで平成14年と平成15年の改定率を計算していることになります。
 一方右側の箱は、現在はこちらの計算だけを行っていますが、それぞれの年の男女構成比も考慮して計算するということで平成14年、平成15年の男性、女性の人数でそれぞれの平均時給を掛けて、最終的には割って計算するやり方をしています。それだと賃金改定率はマイナス5.9%となっています。相対的に平均時給が低い層の構成割合が増加したために、こういったことが生じていると考えられます。
 3頁は、就労日数の増減の反映をどういう計算の仕方でしているかで、簡単な例を示しています。平成14年6月と平成15年6月で、仮に月額賃金が20万円で変わらなかったと仮定します。ただ労働時間は、平成14年から平成15年にかけて1日短くなって、176時間から168時間へと少なくなったと仮定します。従来のやり方だと下の左側の箱では今年の労働時間、つまり具体例で申し上げますと168時間ということで、昨年の賃金と今年の賃金を割って賃金改定率を計算していましたが、平成7年度以降はそれぞれの年の労働時間数で割って賃金改定率を計算しています。このように時短効果を反映した計算への移行が進められている状況です。
 以上で、私からの説明は終了します。

○会長
 どうもありがとうございました。資料No.1から資料No.5までに、ご質問、ご意見等がありましたらお願いします。

○労側委員
 質問です。資料No.4の2の(2)で、「100人未満まで拡大しても、現行の調査対象規模による調査結果とほとんど差異が認められない。」という記載がありますが、どういう部分で差異が認められなかったのでしょうか。例えば賃金の上昇率の部分で差異が認められないのか、水準も含めて差異が認められないのか、どの部分で差異が認められないかをお聞かせください。

○事務局
 賃金の上昇率で見た場合に差が認められなかったということで、過去の資料などはそういったことでまとめられています。

○労側委員
 次に意見を申し上げます。類似労働者の範囲の問題。最低賃金法の第3条では類似労働者の賃金水準を参考にするということが決定要件の中にあるわけですが、1点目は類似労働者の概念としてどのくらいの事業所規模まで取るかを考えた場合に、30人未満規模は少し小さいのではないかと考えています。昭和57年の議論の中にありましたように、せめて100人未満ぐらいまではサンプルを拡大するほうがいいのではないかと思います。といいますのも、来年度からの審議に当たっては業種等の変更もありますので、そういう意味からいうと少し幅広い規模についても議論すべきではないかと思います。
 2点目は今年の目安審議の中でも多少発言させていただきましたが、資料No.5の2頁ではずいぶんわかりやすい資料をお出しいただいていると思いますが、私どもが目安審議を行うに当たって賃金改定状況調査について議論をする場合に、あくまでこれは類似労働者の賃金の推移という意味で議論をしているのだろうと思います。そうした場合に、資料No.5の2頁を見ると、明らかに男女構成比なりパート労働者を含めた労働構成比を固定したほうが、類似労働者の賃金の変化について適切に表わしていることが言えようかと思います。その意味から過去の議論の経過はあるにしても、類似労働者の賃金の変化率をきちんと表わせるような形での資料提供が求められるのではないかと思います。したがいまして、男女構成比なりパート労働者の構成比を除去した形での賃金の変化が考えられて然るべきではないかと考えています。以上です。

○会長
 構成比の変化を除去するということですか。

○労側委員
 そうです。いまは入っていますね。資料No.5の2頁ですが、構成比の変化を反映した場合は逆もあると思いますが、例えばここでは賃金の低い方の比率が増えているのでマイナスに振れています。しかし賃金の高い方が増加すればプラスに振れますから、そういう意味では賃金の変化率を重視するならば、その構成比の影響を除去してやるべきではないか。つまり左側の表のように、ここでは男女になっていますが男女共10%の賃金が上がっているとするならば、その10%が結論として、資料として提供していただくような方向で議論がなされるべきではないかと考えています。

○会長
 平成6年以前に戻ったやり方のほうが、賃金の上昇率を忠実に反映しているのではないかということですか。

○労側委員
 そういうことです。特に昨今、パート労働者の比率がずいぶん変化をしてきています。パート労働者の賃金と一般労働者の賃金水準はかなり差があるわけですから、差があればあるほど影響は大きくなってきます。そういう意味からいいますと、戻したほうがいいのではないかと考えています。

○会長
 結果を見て、差が大きいから戻したほうがいいという。もう少し内在的な理由が必要なのではないかと思いますが。

○労側委員
 1点は、パート労働者の構成変化が激しくなってきていることは内在的な理由としてあると思います。もう1点は、賃金の引上げ状況についてその構成比を入れてしまうと、資料No.5の2頁と同じように違う結果になってしまう。やはり構成比を外した形で、構成比の影響を除去した形で賃金の上昇がどうあるべきかを議論しなければ、類似労働者の賃金の変動の議論にはならないのではないかということです。

○公益委員
 私も考え方を整理しなければいけませんが、労側委員がおっしゃられたことは要するに銘柄を決めて、その銘柄の人が去年と今年でどう上がったかで賃金の上昇率を見ようということですよね。そのときの銘柄表現が男女やパートなどといろいろあるだろう。それが1つの考え方です。もう1つは、類似労働者集団があるのだから、中身がどうあろうがこの類似集団の平均賃金がどれだけ上がったかという考え方で、それが多分いまの考え方だと思います。基本的に考え方が違うので、少し考えさせてください。多分考え方としては、そういうことかなと思います。

○労側委員
 そういうことです。

○公益委員
 ただ、類似労働者の集団がどれだけ賃金が上がったかと単純に考えたら、中の銘柄がどうだろうが平均でどれだけ上がったかになるわけですが、いま言われるのだと銘柄をフィックスしておいて、その銘柄の人がいくら上がったかで上昇率を出そうということだから、基本的に考え方が違いますよね。

○労側委員
 最低賃金の決定にあたっては、ある意味で類似労働者の賃金水準を参考にするわけですから、現在のやり方でその類似労働者の集団としての捉え方が本当にできるのかどうか。集団の構成要素が変わったときに、そのことをもって類似労働者といえるかどうか。やはり銘柄はきちんと固定すべきではないかということです。

○公益委員
 この賃金改定状況調査が対象としている労働者全体について、賃金の上昇率、変化率を見ると、パート労働者が増えているのでマイナスと出ますが、それは実態です。だから、それを所与のものとして考えて、その上で類似労働者の賃金や生計費、企業の支払い能力を勘案して、あるいはほかの経済指標の物価動向、GDPというものも全部勘案して最終的にどうあるべきかを決めるのではないのですか。おっしゃっていることが逆発想だと思います。

○労側委員
 そうではなくて、総合的に勘案されるというのはそのとおりです。私は第4表の問題だけを申し上げていますが、第4表はその材料の1つですね。その第4表の求め方が先ほど公益委員がおっしゃったように、確かに集団としての平均の動きを取ったときには上がりも下がりもする。そのことが、類似労働者の賃金水準の変化をきちんと明らかにしているかどうかが問題だと申し上げています。その場合には賃金というのは個々人の賃金ですから、個々人の類似労働者でいえば類似労働者の集団の一人ひとりの水準の変化率を正確に表わさなければならないのではないかと申し上げています。資料の問題です。上がるときもあれば下がるときもあります。それは、いま下がっているからということで申し上げているわけではありません。結果がそうだから申し上げているわけではありません。逆のときだってあるでしょうと思います。

○公益委員
 でも、パート労働者の賃金水準とそのウエイトの変化を考慮するために、パート労働者や一般労働者を合わせた全労働者について賃金変化率を出すのだと平成7年以降に決めたわけですよね。それでずっとやってきて、構成変化はそこですべて取り組まれているわけですよね。

○労側委員
 そのことが正しく労働者の賃金の変化を表わしていないのではないかというご意見を申し上げています。公益委員がおっしゃるように集団として取りますと、労務コストの変化率を表わすと思います。それはそれで正しいと思います。しかし第4表なりで我々が議論しているのは、類似労働者の賃金の変化率ですから、そういう意味でいうとある意味では構成比を固定しなければならないのではないかと申し上げているわけです。

○公益委員
 そうすると、類似労働者というのは先ほどおっしゃっていた企業規模が30人未満ではなくて100人未満までを含めるかどうかが議論として入ってくると思いますが、現行の調査に基づいて賃金変化率を見るとすれば、これしか方法はないのではないですか。それは調査方法における対象労働者を変えるという議論であって、議論が2つに分かれているのでは。

○労側委員
 私は2つを申し上げました。1点目は対象の拡大の問題を申し上げましたし、2点目は変化率の表わし方の問題、構成比を反映させるかどうかの問題の2つを申し上げました。

○公益委員
 根本に戻った質問になってしまうと思いますが、いまは両方にそれぞれ一理ある感じがします。非常に初歩的な質問で恐縮ですが、結局この賃金上昇率というものがその後、最低賃金法の中で3要素のどの参考資料になるのですか。最低賃金の原則の生計費と類似労働者賃金と支払い能力がありますね。この3つの中のどの指標としてどういうふうに勘案されていくかによって、指標の取り方がどちらが正しいのかはそちらに依存していると思います。これだけを取り上げて、どちらが正しい、正しくないとは言えないので、その辺を教えていただきたい。むしろ男女構成比の変化を除去する、除去しないは、除去するほうは加重平均ではなくて単純平均を取れば同じことになりますよね。そういう2つの顕著に異なる男女という集団があるとしたら、ただ単純平均しても除去しても同じ結果になるので、いずれにしてもどちらがその後どういう使われ方をしているかによって結論が違ってくると思います。その辺を教えてください。

○会長
 第4表の話では、私の理解でいえば、それは類似の労働者の賃金がどうなっているかの参考資料のために使われる。それ以外の目安の際に出される目次の資料がありますね。「全国統計資料編」「都道府県統計資料編」「業務統計資料編」の中には類似の労働者の賃金水準を表わすための参考資料もあるけれども、生計費や賃金支払い能力を認識するために必要な資料が含まれている。大変雑駁ですが私はそう理解しています。

○公益委員
 そうすると先ほどの公益委員のご発言ですが、類似労働とは何かにも関係してくる気がします。

○会長
 まさにそのとおりですが、法律の第1条で最低賃金法は賃金の低廉な労働者について、その労働条件の改善を図って生活の安定、質的向上に資するという大前提があるわけです。その低廉な労働者とはその中の類似の労働者という意味ですから、調査対象を5万人以下の小都市に限るとか30人未満の中小に限るということで、低廉な労働者の賃金実態をまずは明らかにしましょうと。今度はその類似の労働者の中に一般労働者について男女の差があり、フルタイムとパートタイムの差があるということで平成7年の報告では、男女構成比を勘案した調査にしましょうという方針と、労働時間の短縮はカウントされるようにしましょうということが入ってきたと思います。男女構成比をどの数字で固定するかもありますが、固定するという考え方が、考え方自体として正しいかどうかが、私もよく考えないとわかりません。公益委員は両方が成り立つとおっしゃったけれども。

○公益委員
 私が申し上げているのは構成比を固定することではなくて、要するに単純平均という考え方も成り立つ。比率はあまり関係なくなるわけですよね。これは一応割り戻していますが、2つの集団がいてそれぞれの賃金合計を出して、2ポイントで比較しても同じ結果が得られるわけで、単純にいえば構成比を何で固定するかの問題とは別の問題ではないか。必ずそうしなければならないということではなくて、いま公益委員がおっしゃったような考え方のほうが単純明快だと思いますが、参考資料程度にそういうものが両方あったとしたら、片一方だけになったのは当時の状況がわからないので何とも言えませんが。

○公益委員
 多分非常に単純にわかりやすい状況を考えると、一般労働者が10%上がった、パート労働者が10%上がった。でも、パート労働者と一般労働者の構成比率が変わったことによって、マイナス1%に平均賃金が出てきた。マイナス1%の平均賃金だからそれを使うと、一般労働者、パート労働者がそれぞれ上がっているにもかかわらず、賃金改定状況調査はマイナス1%だと。そして、ここで最低賃金をマイナス1%にする。最低賃金をマイナス1%に下げる前も、経営者側の労務コストが下がっているはずだと。言っているのは下がっているにもかかわらず、またマイナス1%で下げるのかという理屈でしょ。でも私が知りたいもう1つは、ここで合意したときにどういう理由で合意したのかがよくわからない。そんなことは理論的に言ったらいつでもわかる話で、だから何か理由があったのではないかと思います。

○労側委員
 賃金を見るときに、賃金の決定のあり方や決定基準ということが、一般労働者とパートタイム労働者ではかなり異なっているわけですよね。したがって、一般労働者とパートタイム労働者の賃金水準を一緒にして比較をして、これが類似労働者の賃金だという平均の出し方は、賃金の水準を見る統計としてはあまり相応しくないのではないかというのが基本的な考え方です。したがってパート労働者の賃金はどういう状態なのか、一般労働者の賃金はどういう状態なのかを見ておく必要があります。全部混ぜて、あらゆる労働者の賃金の平均を出すことになると、それは一人平均の人件費コスト論に過ぎないわけです。ここで我々が見ようとしているのは類似の労働者の賃金水準ですので、いまは引上げ率にしか使っていない面がありますが、元来は議論の中では一般労働者の賃金水準はどういう状態か、パート労働者の賃金水準はどういう状態なのかの議論をしなければいけないので、純粋に賃金水準を見るやり方は、統計指標としてはどんなやり方が正しいかから考えれば、両方を含めて平均を出すのはいまの賃金の決定の実態から見て相応しくないのではないか。
 最後に、なぜ合意したのかと言われると、そのときの委員がいないので何とも答えようがないのですが、事務方で当時携わっていたのでそのときの流れで申し上げると、元々の切っ掛けは労働者側から言い出した話です。労働者側が1日の時間当たり賃金を出すときに、労働時間が変化しているにもかかわらず労働時間の変化を受け止めずに、労働時間を固定して比較するやり方はまずいのではないか。そのときの言い方では、労働時間短縮の影響が反映されない計算の仕方になっていることを改めるべきだと、かなり強く主張した経過があります。その中で、要するに男女あるいは一般労働者やパート労働者も含めて計算をするやり方が出てきたわけですが、それは一言でいえば審議の結果であって労働者側から主張したことではなくて、労働者側が言ったのは時間当たり賃金はその年の労働時間で割る、それが正しいやり方ではないかという主張をして、よい言葉ではないですがおそらく妥協の産物的な結論になったのではないかと思います。なぜ合意したのかと攻められても困るわけですが、そんな経過だと記憶しています。

○会長
 この議論に関連して平成7年4月の目安制度のあり方に関する全員協議会報告を読んできました。昭和55年から平成5年までの間に、一般賃金と最低賃金との格差が拡大をしてきた。それはなぜかと検討された結果、1つは就労日数の減少に伴う賃金の上昇が反映されていないことが指摘されて、それ以外にパート労働者も一般労働者と別途に集計されてきて、パート労働者の増加や賃金の変動が明確に反映されない仕組みになってきた。男女構成比についても、そういうことになっていた。そういう点が指摘されて、それらを込みにして今後は目安審議をしようと。ですから、一般労働者との賃金格差が拡大してきたことが平成6年以前と平成7年以降の資料の作り方の変化の原因なわけです。それ以上のことはこの書物には書いていませんが、いまの労側委員の問題提起を受けて議論をし直すとすれば、一般労働者との賃金格差が拡大してきたことから、そういう取り扱いをしたことが正しかったのかどうかの議論になるわけですね。

○労側委員
 改めてリセットして議論しているわけですから、そのときの決定は決定としてこれまで尊重してきてやったわけですから、今日時点でどういう計算の仕方が正しいのかの議論をしてまとめればいいのではないかと思います。

○会長
 パートタイマーはこの当時よりさらに人数が多くなってきたことも踏まえて、リセットというお話が出ましたが、もう一度改めて議論をしてもいいという意見が労働者側から出ました。今日はフリートーキングですから、いろいろな意見を自由に言ってください。

○労側委員
 水準の議論をされるのであれば、その構成比は変化に応じて反映することは可能だろうと思います。でも私どもが目安の議論をしているときは、上昇率なり変化率の議論をするわけです。例えばここにあるように、平成16年度から対象産業も変化するわけです。そのときに、本当にいまの議論で正しいのだろうかと考えるわけです。そうすると、ある一定の類似労働者の賃金、それこそ一人ひとりの労働者の賃金の変化率を正直に表わすような指標でなければならないのではないかと思っています。

○労側委員
 平成7年のときは私は事務方で最低賃金とは直接は関わりがなかったのですが、そんな議論があったときに我々事務方は審議会の労側委員にそういう指摘で、決してそういう選択、これはよくないという主張をしたことは間違いありません。ただ審議会の労側委員としては、そのときの我々の主張を入れていただくことを重視したのだと思います。我々の主張も私自身は、所定労働日数と所定労働時間はまたそれぞれ違うと思うので、そのあたりも妥協の産物だったと思っているし、使用者側がそういう意味ではあのときは労働時間短縮がかなり進んでいるときの最中ですから、それ以降5年間でパートが200何万人、それ以降は93万人と変化をしていますが、そのあたりの妥協の産物だったと私自身も理解しています。それでリセットするという意味では、そのあとにすぐに私は担当になりましたが、毎月勤労統計調査もそうですが当時は日額、時間額がありましたから実態日額と最低賃金の日額、実態時間額と最低賃金の時間額の乖離は確か2ポイント強ありました。それは毎月勤労統計調査でも賃金構造基本統計調査でも、平均所定労働時間が月170なら170時間と出ますし所定労働日数も出ますから、それぞれを別々にしたときに時間当たりが大変マイナスになっているよという資料、いまからでもその当時の資料はありますから揃います。これは公式に、厚生労働省の資料にもあると思いますが、そういう中で我々は時間当たりに反映するため、そのときのねらいは私自身はそう思っていましたが、所定労働日数がその中間にあるので、所定労働日数のプラス時点であのときはオーケーをしたと聞いています。そういう点では、いま男女構成比率といいましたが、それも確かにあるのでしょうが労側委員が言ったように、本来の男女の場合でも格差はあるにしても、一般労働者としては賃金決定基準はある意味では法律で差別が駄目ですから、その部分をどこまで考慮するかよりも、むしろ賃金決定基準さえも揃っていないパート労働者との比率についてはきちんと出すべきだし、公益委員がおっしゃられたように両方が10%上がって両方とも生活レベルは上がっているのに、下げなければいけないというのは私自身はそういう点では水準もそうでしょうし、生計費さえも十分に担保していないのだからと常に労働者側が水準論を主張していた流れからいくと、そういうことがきちんと反映できるような資料にしていただきたい。

○公益委員
 もしそこまで銘柄固定を主張するとしたら、パート労働者と一般労働者のサンプリングはちゃんとしているのでしょうね。つまり、これは対象事業所の全従業員の賃金を書かせているのですか。

○事務局
 はい。

○使側委員
 私が考えているのは賃金の低廉な労働者の実態がどうなっているのかを見ているものが、この資料と考えています。その実態を見るときに、いまはパート労働者や男女の話になっていますが、要するに安い賃金の方が増えたり、逆に高い賃金の方が増えたり、その実態が全部反映されていればいいということで考えていて、結局、おしなべて全部加重なら加重について出てくるのが実態かなと思います。例えば一般労働者の中でも、賃金が高かった産業が衰退していって、安い賃金の産業がどんどん振興してきたり、新しくできてきたりすれば影響を受けるわけです。
 いずれにしても、いま実態として大体、30人規模のところが低廉な労働者と定義した場合に、その労働者の実態は幾らになっているのか。それが前の年の実態と比べたとき、どうなっているのかを見るための資料だと考えています。したがって分ける必要性は全然ないと思うし、いまの方が実態反映としては分かりやすいのではないか。分け始めたらきりがないのではないか。パート労働者だけの問題で済まないと思います。

○労側委員
 使側委員のご意見ですが、私は逆です。パート労働者と一般労働者は雇用形態が違うわけです。期間の定めがあるパートタイム労働者と、いわゆる常用雇用労働者とは雇用形態も違うし、ましてや労働市場における賃金の決定機構も全然違うわけです。したがって、使側委員が言われたように類似の労働者の賃金の状態を見るというのであったら、別々に両方示しておけばいいわけです。どう使うかはこれから別の議論ですけれども、パート労働者はどういう実態にあるのか、常用雇用労働者は一体どういう実態にあって、どういう変化を示しているのかを示すのが、賃金統計としては常識的ではないかという感じはするのです。

○公益委員
 そうすると、一般労働者とパート労働者を別々に分けて計算しますね。それで出てきた賃金上昇率、変化率を、どういうふうに使うわけですか。

○労側委員
 活用の仕方までは、まだです。

○使側委員
 商工会議所の場合は、地方に規模の小さい会社が大変多いと思いますので、この最低賃金の調査自体が、パート労働者がいま多くなっている現状を含んでいるという前提であれば、第4表は重要な指標として、私どもの立場としては尊重していきたいということです。企業は皆さんもご存じのように、賃金を調整するためにパート労働者をずっと増やしてきたわけです。第4表の数字というのは最低賃金ですから、実態はパート労働者の賃金に近いものになっているのではないかと思いますので、従来どおり第4表を重視していきたい。
 先ほどお話があった、平成7年の全員協議会の結論というのは、男女の構成比がちゃんと反映されているものとして、実態賃金調査を行っているわけですから、それがいいのではないかという感じがしています。むしろ平成7年のときに分けていたら、もっとパート賃金は安かったのではないかと思いますが、一緒になってきたということは、パート賃金はずっと上がっていますから、実態賃金は上がってしまったのではないかという感じがします。パート労働者の比率が増えて、女性の比率が増えた最低賃金として平成7年からきたわけですから、それは最低のものを決める非常にいい指標ではないかと思います。
 1つだけ、資料No.1の都道府県と地方都市の比率ですが、これは実態としてCランク、Dランクが増えていますので、いまの3対1という比率を、もう少し地域の実態が反映されるような比率に、分けていただいてもいいのではないかという意見があります。

○会長
 いまの3対1というのは、どこですか。

○使側委員
 資料No.2の1頁です。調査事業所が3対1、3,000と1,000の事業所となっています。この比率が、地方都市の最低賃金のランクが上がってきていますから、もう少し見直してもいいのではないかという意見です。

○労側委員
 いわば最低賃金をどう改定するかというのは単純に言うと、現在、最低賃金で働いている人たちの賃金を、翌年どうするかということだと思います。そうすると、去年もしくは今年同じように働き続けている人たちの賃金がどう上がったのかが、忠実に反映されるべきではないかと私は思います。
 現在の調査方法ですと、これは先ほどどなたかの発言にありましたように、要は総平均賃金が去年と今年でどう変化したかを見るわけですから、もしこの手法を続けるのであれば、水準をどうしたらいいかといったときは、私はこれでいいと思います。ですから、現在の資料のままでやるとするならば、水準をどう合わせるか。調査結果の水準はここら辺になっていて、現行の最低賃金はこういう状況ですね、という議論をすべきではないかと思っています。ですから翻って言えば、現在の賃金上昇率の計算の仕方というのは、去年と今年の平均賃金を比較して何パーセント上がった、下がったというものを、最賃の改定の数字として使うのは、適切ではないのではないかと思います。

○公益委員
 そうなると、この類似労働者の定義の問題もいろいろあるのですが、最低賃金の近くで働いている人たちが類似労働者であると考えると、もう一般はやめて、パートだけ調べるというのもありますか。

○労側委員
 類似労働者の低廉な賃金というものは、一方でありますけれども、それをパート労働者というふうに、なぜ限定できるのかというところが説明されなければ無理だと思います。正規労働者でもかなり低い賃金が現に存在しているわけです。あるいは、例えば30人未満でも100人未満でも、かなり低廉な労働者はいますから、どのくらいが低廉で、どのくらい以上が低廉でないかというのも、また問題になるのでしょうが、それを、そこだけで類似労働者最低賃金を決定するのがパートだけだというのは、ちょっと無理な議論なのではないかと思います。

○公益委員
 それだったら、もっと簡単な方法があって、このデータがざっと上がってきていますし、時間賃金は全部計算できるのですから、最低賃金の上1割の範囲内の人が類似労働者、パート一般に含まれる、それで引き抜いてきて計算すればいい。

○労側委員
 サンプルの抽出方法の問題ですね。

○公益委員
 いいえ、このデータの中からです。賃金改定状況調査票に労働者の賃金が書いてありますが、それで時間給を計算して、最低賃金の人あるいはそれより1割高いぐらいの人だけを引っ張ってきて、そこだけが何パーセント上がったかでもいいのです。

○労側委員
 そこまで銘柄を特定できるのですかね。

○公益委員
 計算だから簡単です。

○労側委員
 計算はできます。そういうことが、これで言う類似労働者の概念とぴたっと合うかどうかの議論でしょう。

○公益委員
 先ほど言われたように、類似労働者というのは最低賃金に近い働き方をしている人だという前提にもし立てば、そういう方法でもいけますと、ただ可能性として言っているだけです。その場合には一般労働者だろうがパート労働者だろうが気にしなくていいということです。

○労側委員
 そこまで定義しているとも思いませんけどね。最低賃金法上の類似労働者というのは、要するに最低賃金近辺で働いている労働者を類似労働者だということではないと思います。

○労側委員
 もう一度私の主張を整理させていただきたいのですが、要するに、1人当たりの労務コスト変化率としては、いまのは平成7年以降のもので反映されているでしょう。しかし、労働者の置き換えが起きています。
 パート労働者が増えたりという労務構成上の違いがある。労務コストとして考える指標ならば今のままでいいでしょう。しかし類似労働者の賃金比較、しかもそれを変化率として考えるときには、類似労働者の比較ですから、それは1つ1つ銘柄がどう変わったか、労働者一人ひとりの賃金の変化がどうだったかを、正しく表わす指標で比較しなければならないでしょうというのが、私の主張です。
 ですから、その結果として、今はこういうふうに私が労働者側で申し上げると、パート労働者の比率が上がっているから、そういうことを言うのではないかと思われるかもしれませんが、そうではなくて、最低賃金法の類似労働者との比較概念の中から言うと、そのほうが合理的で説明しやすい話ではないかと申し上げているのです。

○公益委員
 理屈としてはよくわかるのですが、そうなると、ものすごくサンプリングを気にしないといけない。つまり銘柄で、たまたま今回は一般労働者とパート労働者と言っていますけれども、地域だって非常に重要かもしれないし、産業もすごく重要かもしれない。銘柄をどうするかという議論をきちっとして、それに合わせて調査のサンプリングを考えなければいけません。そこまで考えないといけない問題になってしまうと思います。

○労側委員
 そこまで言うと、かなり細かな銘柄を設定しなければいけないということですが、そこまで言っているつもりはなくて、少なくとも雇用形態が異なり、労働市場における賃金決定が異なる労働者のところは、分けた集計が必要ではないかと言っているわけです。都道府県別、職種別、学歴別に全部細かにサンプリングして集計するということではなく、常識的に考えても賃金水準があまりにも違う、雇用形態もまるっきり違うところを、全部足して平均値を出すというやり方は、企業としての1人当たりの人件費コストはものすごく分かるデータですけれども、1人当たりの賃金変化率とか賃金水準を見るには、ちょっと雑ではないか。そんな感じがしているわけです。

○使側委員
 先ほど、いまの指標で労務コストが出ているのだというお話ですが、そうではなくて、賃金実態を全部調査してその平均値を出しているわけですから、この30人未満規模における働いている労働者の賃金の平均値、実態を示しているものと考えています。別に労働コストのために出しているものだと思っていません。そういうことだけ申し上げておきます。労務コストの性格もわかるけれども、もともとこちらで使っているのは、それが実態としての平均賃金が、昨年と比べてどうだったかを見ている。こういうことだろうと思います。

○使側委員
 先ほど申し上げたのは、平成7年のときに委員がお読みになったもので、差があるから一緒にしたというお話ですが、私はそのときは妥協の産物と言われたけど、実態としてそこで一緒になることによって、労働者側には得だったのではないかと思います。パート労働者だけ特別であれば賃金上昇率は低かったはずなのですが、その時代は一般労働者と同じように上げていったから、実態としてはすごく上がっています。だから、そのときに妥協したのは、労働者側にとってもこの決定はよかったのではないかと思います。
 ただ、いまの時点になってこちらが増えてきたから、また元に戻せということになると、これは前に遡って下げていただかないと、変なことになってしまうのではないか。あの時はどんどん給料が上がっていましたから、パートも同じ比率で上げなければいけないというので、どんどん上げていきましたから、その当時の時勢柄の上昇率を見たらパート労働者とかアルバイト労働者は、一般労働者と同じようなことで、いまでも実態賃金は最低で格差があるわけですけれども、上昇率に関しては同じレベルにいったということは、すごくよかったのではないかという感じがします。

○労側委員
 私はシンプルに、いちばん最初に目安を見たときに、第4表を見せられて説明を聞きました。そのときに全産業での上昇率というのを聞いて、その後で男女別を見たり、製造業別とか小売・サービス業のそれぞれを見たときに、全産業での数値と、男女というところを見て、実態はわからないのですが想像で、例えば全体では下がっているけれども、女性の中での上昇率だけ見ていると上がっている。これはもしかしたら女性にパート労働者が多いので、そこは賃金が上がっているからプラスなのかなと思います。推測で、それが合っているか間違っているか分からないですが、あくまでも想像で考えていたのです。
 そういうところが、一つひとつクリアになって、この一般労働者あるいはパート労働者というところで、銘柄をどこまで細かくするか別として、中身について全部込み込みではなく、少し分けたほうがいいのではないか。それで、その数字を基にまた目安を考えるほうが、いまの流れの中では分かりやすいのではないかと思います。

○使側委員
 どうも聞いていてよくわからないのですが、2頁の表で、現在も一般労働者が多くてパート労働者が少ないということで推移していて、当然、一般労働者は引上げ率は高いわけですから、そうすると引上げ額は高くなる。一般労働者の割合も多い。パート労働者は仮に左側のように10%と。まだ少ない時期のことを考えると、これはいま直せということは起こらないのではないかと思うのです。
 要するに、構造が変化したことのひとつの象徴的な現象だと思うのですが、であるならば、構造が変化したことを反映するような捉え方をすべきではないか。例えばパート労働者が10%から40%に増えたと仮に考えると、一部の人は賃上げも10%あったけれども、残りの40%の人はどうなったかは全然反映されていないわけです。だから構成変化を除去した場合というのは、逆に素直に現在の賃金実態を表わしていないから、平成7年にこういうふうな変更をしたのだと私は理解していたのですが、いかがですか。

○公益委員
 意見は変わっていないのですが、要するに第4表のタイトルで賃金上昇率というふうになっています。ごく素朴に考えれば、時間当たりの賃金額が上昇したのかどうかを指標として見たいといった場合に、先ほど公益委員から指摘があったように、実態としてパート労働者も一般労働者も上がっているのに、構成比の変化によってそれが下がった比率、上昇率に計算されるというのは、それでいいのかなというのが私の意見です。

○使側委員
 ただ、例えば10%のときの上昇率が、今年割合が変わっていたら、賃金実態を表わしていない上昇率になるのではないか。実態を反映したものとならない気がします。

○公益委員
 個々で見れば全員が上がっていても、計算結果が下がったと出るのは、そのことを見るための表ではなかったのではないか。

○公益委員
 いま伺っていて、3点ほど私なりに感じたことを手短に申し上げたいと思います。1つは、先ほど類似の労働者ということがありましたが、最低賃金というのは別にパート労働者の最低賃金と一般労働者の最低賃金が決まっているわけではないですから、そういう意味では、トータルの労働者を類似と考えなければいけないのではないかという気がします。例えば9割もパート労働者になってしまったというのであれば、それは類似の労働者を考える上でひとつの前提になるのではないかという気がします。
 第2に、いま指摘がありましたように、全体として上がっているのに構成比によって比率が変わるというのは、ちょっとおかしい気がしますので、もともと第4表ですべて決めるという前提ではなかったわけですから、この全部ごっちゃにしたのと別に、一般労働者、パート労働者と、それぞれ別に出したものを置いて、それで両者を見比べながらどうするか考えるのは、それはそれで自然なことだという気がします。
 第3に、余計なことですが男女で分けるというのは、先ほど差別の問題というのがありましたが非常に問題であって、むしろ一般労働者とパート労働者というので出せば、それで後は要らないのではないかという気がします。

○使側委員
 この2頁の例の作り方が私は悪いのではないかと思います。平成14年から平成15年で、男女が1,000円と650円という最低賃金はあり得ない。こんな格差が実際にあるのですか。平成15年で男子が100円上がって、女性が65円しか上がらないというのも、こんなことをしたら組合のほうは黙っていない。平均賃金の例の作り方が私は格差があり過ぎるのではないかと思います。実態はこんなことは絶対ないと思います。もっと格差は狭いと思います。マイナスを作るなら、これぐらいの差を付けた平均賃金はあり得るけれども、1,000円に100円と750円はあり得ないし、私どもが使っているパートでもこんな男女の差を絶対付けるわけないし、現実に付けられない。

○労側委員
 確かにおっしゃるように、こうなればこうなるだけの話で、この2、3年、第4表の中でパートが実際上げられている。それが全体の中で男女を分けて女性が多いと推察したらという意味もやってきました。こういう所ですから皆さんがいろいろな資料を研究していますし、パート労働者比率が上がった、上がらないと言いますが、現実的にはパート労働者というのは労働市場の問題で、確かにバブル時期の上がり方と、それ以降の下がり方というのは、決してリンクしているものではないけれども、でもこの20年間、賃金構造基本統計調査におけるパート労働者の賃金率と、これの賃率の変化というのは、よく一般賃率の比較を出しますが、あれもこの20数年1、2ポイントしか違わないのです。男女もそんなもので、そう急激に変わったりはしていません。
 パート労働者の賃金というのは市場関係で、それが顕著に出ているというだけの話です。そういう資料を私も常に目にするし、厚生労働省も出しています。公益委員が言われたように、あのときは第4表が大変目に付く資料で、それに引っ張られて抵抗が強く、我々自身は、労務構成のマイナス傾向が顕著に出ているので主張はしていますが、そういう点では公益委員の言われたような考え方で、その中でも総合的に勘案するだけのきちっとした資料は、あって然るべきではないかと思っています。

○事務局
 資料を作成した事務局として一言申し上げます。これは仮にこういう数字であれば、こうなるということで、別に実態がこうだということではありません。いま起こっていることを、やや極端な形でわかりやすく例を挙げれば、こういうふうになるということです。

○会長
 この調査参考資料のあり方について、大切な意見がたくさん出てきて、近々のうちに結論を出すことはなかなか難しい状況ですので、今後の検討の仕方をまたご相談したいと思います。残った時間が少しになりましたが、今日予定している金額水準のあり方について説明していただき、時間が足りなければ次回以降に延ばすことにします。

○事務局
 金額水準のあり方についての資料について、説明させていただきます。資料No.6からNo.9までの4種類となっています。順番に説明させていただきます。資料No.6をご覧ください。資料No.6は金額水準についてのこれまでの議論の大まかな経緯になっています。昭和45年の中央最低賃金審議会の答申ですが、四角く囲った中に抜粋を書いています。「最低賃金は、労働市場の実態に即しかつ類似労働者の賃金が主たる基準となって決定されるようなあり方が望ましく、それは低賃金労働者の保護を実効的に確保する面でも現実に適応するものであると考える。」としています。
 その後、平成2年まで飛んでいますが、中央最低賃金審議会の専門委員会報告ですが、資料No.6の2頁目のアンダーラインを付けたところです。「最低賃金の改正は、労働市場の実態や賃金動向、低賃金労働者の賃金実態などを踏まえて決定されるべきものであり、最低賃金は、ある程度の影響率を持つ水準に設定する必要がある。」とされています。
 平成6年5月の全員協議会中間報告ですが、最低賃金と一般賃金との関係の中で、「目安は、地域別最低賃金の適用対象となる労働者が多いと思われる層の平均的な賃金水準、すなわち、その構成労働者のそれぞれの表示単位当たりの賃金水準やその構成割合を反映した平均的な賃金額を重要な判断材料として検討し決められるべきと考える。」としています。
 次は資料No.7です。資料No.7は目安に関する小委員会で使われている資料を中心に、最低賃金法第3条との関係を意識して整理した資料です。最低賃金については先ほども議論の中でありましたように、最低賃金法第3条において、最低賃金は労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の支払能力を考慮して定めなければならないとされています。資料No.7では各種指標の推移について、(1)が都道府県の標準生計費や消費者物価指数の動向、(2)が所定内給与と最低賃金との関係、(3)が日銀短観などから企業の業況判断や企業の収益の状況について整理しています。
 2頁、ここでは標準生計費を見ています。この資料は、毎年の目安に関する小委員会の参考資料として提出しているものをグラフ化したものです。都道府県人事委員会で各県の県庁所在地別標準生計費(4人世帯、月額)を出しています。それを見ると概ね各県とも20〜25万円ぐらいの範囲となっています。目安として20〜25万円の範囲で網掛けを付けています。ここでの棒グラフは各県の標準生計費、折れ線グラフは各ランクごとの標準生計費の平均値を出したものを、折れ線という形で書いています。
 標準生計費については総務省の家計調査、つまり実際の消費状況から試算されているようです。たまたま消費が高い世帯に調査が当たってしまった場合には、数字が上方に振れるといった性質のものです。このため資料の作成にあたっては、2001年から2003年の平均の値を取ってならすようにはしていますが、ぶれが大きい数字であることについてはご留意ください。
 3頁ですが、これは同じく都道府県人事委員会から出されている、都道府県県庁所在地の1人世帯の標準生計費(月額)です。ここで▲印で折れ線グラフを付けていますが、これは各都道府県の最低賃金額に176時間を掛けたものを目安として付けています。1日8時間で22日勤務した場合が176になりますので、それを想定して付けています。これを見ると、都道府県県庁所在地の1人世帯の標準生計費は、大体11万から13万円ぐらいの間で収まっている状況になっています。
 4頁、これは消費者物価指数等の推移について整理しています。日本経済は現在、持続的に物価が下落していて、緩やかなデフレ状態にあるかと思われますが、消費者物価指数の動向を見ると、1999年から2002年まで4年続けて前年比マイナスの状況が見られます。
 5頁、ここからは所定内給与と最低賃金を比較したものになります。地域別最低賃金と時間当たり所定内給与を比較していて、地域別最低賃金は一般労働者の36%程度、これは下の表の円で囲った部分です。企業規模10人以上で見ると一般労働者が36%程度です。これを10〜99人に絞ると、大体43%程度となっています。昭和53年当時から比べてみると、平成5年のバブル後に著しい比率の低下が見られますが、その後また上昇が見られ、昭和53年当時と近い割合となっているように見受けられます。一方、パートタイム労働者で見た場合が、下の表で○を付けたところです。大体73%程度となっています。
 6頁、これは都道府県ごとで見たものになります。都道府県別で時間当たり所定内給与に対する最低賃金の割合を見たものですが、ランク上位県で割合が低く、各ランクごとで見た場合では、今度はランク内での上位県で比較的割合が低い状況が見られます。
 7頁、これはOECDの資料より抜粋したものです。各国の中間賃金、これは各労働者の賃金を高いものから並べた場合に、中央となるものの賃金ですが、中間賃金に対する最低賃金の割合を見たものが、下の白色の棒グラフになります。また各国の平均賃金と最低賃金の割合を見たものが、下では黒の棒グラフとなっています。
 OECD資料では中間賃金、平均賃金を算出するにあたり、所定外給与とか特別給与も含めて計算しているようです。先ほどの資料で示した所定内給与に対する最低賃金の割合よりも、日本の場合は低くなっています。各国比較については各国で制度が異なることから、その定義を合わせることは非常に難しいこともあり、今回はOECDの資料を、そのまま参考として引用しています。これだけを見ると、日本の最低賃金の中間賃金とか平均賃金に対する割合は、欧米諸国よりも低い状況となっています。
 8頁、これは日銀が出している日銀短観から企業の業況判断の推移を見たものです。下のグラフは製造業・非製造業の産業別と、大企業、中堅企業、中小企業の企業規模別で見たものです。業況判断において「良い」と回答した企業割合から、「悪い」と回答した企業割合を引いたパーセントポイントが、この座標軸となっています。直近の状況として先週の金曜日に日銀短観が出ていますが、それを見ると製造業・非製造業ともに、直近の状況としては改善が見られます。
 9頁、これも同じ日銀短観からの資料です。売上高経常利益率の推移を見たものです。これを見ると平成15年度については、対前年度比が上がっていて改善が見られます。
 10頁、これは中小企業庁が調査を実施している中小企業景況調査から見たものです。産業別の業況判断D.I.の前年同期での推移を見たものになります。ここで申し上げる前年同期というのは、前年と比べて好転または悪化という業況判断について、それをD.I.で見たものということです。これにより過去3年間の業況判断D.I.の推移を見ると、製造業や卸売業ではまだ悪化の割合が高いのですが、その悪化の割合が高い幅が縮小傾向で推移している状況になっています。
 資料No.8をご覧ください。これは前回の目安制度のあり方に関する全員協議会の場でも提出した資料ですが、平成12年に作成した20の指標による都道府県の総合指数と、平成15年度の各都道府県の最低賃金額について、東京都を100とした指数に変換したものについて、今回はランクごとに並べ替えたものについて提出しています。
 棒グラフが20の指標に基づく最低賃金額の時間額指数です。折れ線グラフが20の指数に基づく総合指数となっています。ランクの入れ替えなどの影響があり、棒グラフの時間額指数については凸凹が見られますが、12年に議論した総合指数と同じように、大体右下がりの傾向が見られます。
 資料No.9ですが、これは平成2年度以降の地域別最低賃金の未満率及び影響率を見たものです。資料は各都道府県が行っている最低賃金に関する基礎調査から試算しています。未満率は最低賃金額を改正する前に、最低賃金額を下回っている労働者の割合、影響率は最低賃金を改正した後に、改正後の最低賃金を下回る労働者の割合となります。これを見ると、影響率については平成5年以降、ほぼ2%程度で推移している状況が見られます。私からの説明は以上です。

○会長
 ありがとうございました。残った時間はあまりありませんが、先ほど申し上げたように議論不足の点がありましたら、また今後に持ち越して議論していただくことにして、10分ないし15分ほどご質問、ご意見等がありましたら、お伺いします。

○公益委員
 資料No.7の3頁の表ですが、これに生活保護がどんなことになっているのか、もしデータが取れましたら載せていただきたい。これは比較するのは非常に難しいと思いますが、重ね合わせることができると面白い表になるのではないかという感じがします。ここに生活保護のデータを入れられますか、どうですか。

○事務局
 生活保護も地域別とか世帯人員別とか、あるいは生活保護の中でも生活扶助、住宅扶助、医療扶助と中身が分かれています。どこの部分を取るというのはなかなか難しいと思いますが、ご指摘がありましたので何らかの生活保護に関するデータを、次回以降に出せるように整理したいと思います。

○会長
 ほかに、ございますか。

○公益委員
 資料No.8で、総合指数が東京都に対して神奈川県はずいぶん小さいですが、これは合っているのですか。

○事務局
 総合指数はこのようになっています。

○会長
 ほかには、いかがですか。

○労側委員
 1点だけ、今日のテーマではないのかもしれませんが、ランクの変更なり見直しが今回の全員協議会の対象になるかどうかにもよりますけれども、20指標を使って議論してきました。20指標の指標そのものが確か前回の議論のときもあったと思いますが、少し地域によって不整合な結果が幾つかありました。とりわけ企業経営関係の指標のところで幾つか、見直したほうがいいのではないかという議論があった気がします。今日でなくていいのですが、もしそんな議論をする機会がありましたら、20指標を固定するということでなければ、もう1回全体的な見直しがあってもいいのかなという感じがします。

○事務局
 今回、目安制度のあり方の見直しの議論で5年に1回の議論ですので、ランク別の制度を維持するかどうか。あるいは、その先にはランク替えが必要かどうか。ランク替えをするとすれば、今のランク替えのやり方がいいかどうかで、指標の問題も議論の射程には入ってくると思います。本日の議論の対象ではありませんが、今後の議論で必要があれば、あるいは問題提起があれば議論していくことになるかと思います。

○労側委員
 水準論は、我々が主張して取り上げられていますので、繰り返しになりますけれども、今回、目安の中で連合としての必要最低生計費を、あの時は14万8,000円という中間資料を出したのですが、その後、いろいろな議論をしながら精査して、さいたま市で積み上げた場合、14万6,000円という連合としての考え方の資料がまとまっています。
 そういう点で、いま公益委員が言われた生活保護というのと、埼玉県の場合ではほとんどイコールで、実態生計よりはかなり低いラインだという意味では、資料No.6にもあるように、なかなか比較対象が、賃金そのものを書いているのに実態上は上げ幅に依拠せざるを得なかった。そういう実態の中で経緯はあるとしても、我々は必要な生計費を担保できるというのも、ひとつ大きな要素であると思います。そういう点では今後とも生計費という意味で、その水準論については主張していきたいと思っています。

○会長
 資料No.7で、標準生計費との比較で4人世帯と1人世帯を各都道府県ごとに比べてみて、最低賃金額との関連を見るというのと、もう1つは、地域別最低賃金と所定内賃金との給与に対する比率を見ていく。あと企業の業況判断というのがありますが、金額水準を議論するときに主として見るべき資料は、標準生計費との関係を見ればいいのか、所定内給与との関係を見るべきなのか、業況判断が主な指標になるのか、その辺の資料の見方です。説明は受けましたけれども、これをどう総合的に判断するかは、金額水準を決めるときに大変難しいことになるわけです。私自身も、ちょっとわからない点です。この順序で標準生計費が最も主要な参考資料になるのでしょうか。

○使側委員
 まさしく第3条のところの、どうやって決めるのかというときに、標準生計費と類似の労働者の賃金と、それから企業の支払能力、その他市場の経済動向とか全部、その都度出し、今日も目次で説明がありましたが、いろいろな資料の中で判断させていただいている。こういうデータにも基づきながら労使ともに意見交換を煮詰めていって、毎年、目安を決めているということですから、特にどれがということではないと思っています。

○労側委員
 私は今年初めてなのでお聞きしますが、例えば資料No.7の7頁に諸外国の状況が出ています。中間賃金とか平均賃金に対する最低賃金の割合を示した表がありますが、低廉な労働者に対する労働条件の改善なり生活の安定という意味で言うと、中間賃金なり平均賃金に対して、どのくらいが妥当なのかというのは、ひとつの考え方の上である示唆があると思います。大変申し訳ないですが、過去の経緯の中でそういう議論をされたことはあるのでしょうか。平均賃金の何割ぐらいは、最低賃金はあるべきだという議論はされたことがありますか。

○会長
 労側委員のお一人と私は平成7年から参加していますが、なかったのではないでしょうか。何割ぐらいが相当か、リーズナブルかという議論は積極的にはなされなかったような気がします。

○労側委員
 わかりました。

○使側委員
 賃金について、これはOECDの調査だけだというのは、毎月勤労統計調査から日本の賃金は出しているものですか。

○事務局
 そこの出所はよくわかりませんので、そのままOECDの調査を引用しています。

○使側委員
 各国で賃金の取り方も違うし、記憶が定かではないですが、最低賃金も国によっては少し取り方の幅が違うようなことを聞いたことがあります。何年か前に調査団を出したようですが、その辺の資料が手元にないので分からないのですが、だから単純ではない。

○労側委員
 OECDのを基準として、一応、整理したということです。

○使側委員
 OECDのは、これだよということ。

○労側委員
 OECDが、そういうことを調整したのですが、それが各国で認知されるのかどうかは別の話ということです。

○会長
 早い話が日本の場合は、OECDが一時金を入れて計算しているかどうかも分からないのでしょう。

○労側委員
 両方ありました。あのときに一時金を入れたのと、入れていないものの資料はありました。

○使側委員
 アメリカなどは最賃が5ドル15とか言っていました、これはアメリカのほうが日本よりも、最低賃金の中間賃金が高くなってしまうのですか。単純に計算すると日本のほうが高いような感じがしますが、アメリカのほうが高いですね。

○事務局
 実際のデータが何から取られているかの正確な部分がわからないところがあります。これはOECDから出された資料ということで、理解いただくしかないのかなと考えています。

○労側委員
 中間賃金より、たぶん平均賃金のほうが高くなってしまっている。

○使側委員
 ほかにも都道府県の生計費は、例えば沖縄県などずっと下にあるということは、まだ余裕があるということなのですか。最低賃金で生活できるという単純な解釈でいいのですか。千葉県などは何でこんなに高いのですか。2頁ですが東京都より高い。

○事務局
 もともと取っているのが家計調査という調査で、その調査は非常にサンプル数が少ないので、たまたま低い消費しかしなかったところとか、高い消費をしたところに当たってしまうと、それが数値として影響が出てしまうことがありますので、毎年、数字がぶれている状況になっているかと思います。これも人事委員会の資料として出されているものですが、参考ということです。

○使側委員
 高過ぎるとか低過ぎるとかで、本当に余裕があるとか、そういう解釈はできない。

○使側委員
 たまたまその家が高級な自動車を買ったりすると、サンプル数が少ないから、そういうのが出てきてしまう可能性があるということ。

○事務局
 そういうことです。

○会長
 それぞれ限られた時間の中でフリートーキングをしたわけですが、前半の改定状況調査と参考資料のあり方についても、金額水準のあり方についても、今日だけで議論が尽きたとは考えられないと思いますので、引き続き、それぞれ労働者側、使用者側で議論を、この全員協議会の場で続けていかざるを得ないと思います。少し資料をご覧になって考え方を整理していただければと思います。時間が限られていますので、今日のフリートーキングはこれくらいにして先に進みたいと思います。よろしいですか。
 次回ですが、1月22日午前10時から、厚生労働省専用第21会議室(17階)で、第13回の中央最低賃金審議会の終了後、引き続いて第4回目安制度のあり方に関する全員協議会を開催します。議題は、今後の進め方ということで継続審議ですが、事務局としては地方最低賃金審議会からのヒアリングを用意しているということですが、それでよろしいですか。

○事務局
 前の全員協議会の場で公益委員から、この場で目安を毎年審議しているわけですが、その目安を使う側の地方最低賃金審議会のほうで、使い勝手がどうかについても情報収集してみたらどうかという提案がありました。そういうこともあって網羅的にというのは難しいのですが、2カ所の地方最低賃金審議会の会長をお呼びして、目安の改定のあり方についてのご意見を伺う場を、1月に設定させていただければと、いま企画しています。

○会長
 来ていただく方にも、前もってお知らせする必要がありますので、今日ご了解いただきたいと思いますが、それでよろしいですか。使用者側のほうもよろしいですか。ではそういうことで次回は、地方最低賃金審議会からヒアリングを行うということにしたいと思います。これで第3回目安制度のあり方に関する全員協議会を終わります。本日の議事録の署名は久保委員、川本委員にお願いします。本日はありがとうございました。



(照会先) 厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5530)


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