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精神疾患は、誰でも罹る可能性のある疾患であると同時に、適切な治療の継続により、その症状を相当程度安定化させ、寛解又は治癒することも可能な疾患である。近年では、うつ、ストレス疾患、痴呆等精神医療の対象となる患者は増えており、精神疾患は、より一般的な病気となっている。また、代表的な精神疾患の一つである統合失調症も、放置すれば多くの場合に症状が悪化、再発するが、一方、継続的に治療を行うことにより長期的に症状の安定を図ることが可能であることは、糖尿病等の慢性疾患と同様である。
従って、精神疾患を発症した者についても、早期に適切な対応を行うことにより、当事者は地域において社会生活を継続することが可能であり、また、症状が悪化し入院が必要な状態になっても、手厚い急性期治療を行うことにより、多くは早期の退院を見込むことができる。たとえ10年、20年を超える長期入院を余儀なくされていた場合であっても、適切な社会生活訓練等のリハビリテーションや退院支援、退院後の居住先の確保及び地域生活支援により、社会生活が可能となる場合もある。
こうした入院予防、早期退院、社会復帰の可能性の拡大は、近年の薬物治療の進歩、リハビリテーション等の治療技術の向上に負うところが大きく、精神病床においても、できるだけ早期に地域生活を可能とするようその機能を明確化し、例えば急性期集中治療、積極的リハビリテーション治療、専門治療の提供等の機能分化を図る必要がある。このことは当事者が可能な限り地域で生活できる途を広げていくことを可能とする。一方、当事者が地域において安心かつ安定した社会生活を送るためには、地域ケア体制の整備とともに、住居を確保し、働く場を提供し、地域生活を支援する体制を整えることが不可欠である。欧米諸国においては、こうした精神医療の改革や地域の支援体制の整備を進めた結果、入院医療中心から地域生活中心へと変わってきたが、我が国においては、制度のあり方も含めてこのような流れに未だ十分対応できていない。
こうした認識に立ち、世界的趨勢を踏まえて、わが国の精神保健福祉対策の各分野について、改革に向けた具体的施策の方向を提案する。 |