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平成15年5月16日

厚生労働省医薬局食品保健部企画課
新開発食品保健対策室 御中


「健康食品に係わる制度のあり方に関する検討会ヒアリング申請書」


団体名:  NNFAジャパン

代表者:  執行副理事長  小澤 俊一
 科学・法務ディレクター

 大濱 宏文
団体の概要:  栄養補助食品業界の発展ならびに消費者の栄養補助食品への適切なアプローチの確保を目指し、1999年2月設立。米国NNFA(National Nutritional Food Association)との協力関係にあるが、組織としては独立した団体である。現在、栄養補助食品の製造・販売、その他関連の国内外企業約100社を会員として擁す。
米国NNFAはもとより、IADSA(国際栄養補助食品協会連合:本部ベルギー)他、海外諸団体との協力関係を築き、栄養補助食品に関する安全性、有用性、法規制、科学技術情報を収集し、会員へ提供するとともに、セミナー、国際シンポジウム等を開催して啓蒙・教育活動に勤めている。また、栄養補助食品に係わる非関税障壁を中心とする規制緩和を目指し、活動を行ってきた。


健康食品に係わる制度のあり方に関する意見

 「健康食品に係わる制度のあり方」に関して、NNFAジャパンの意見書を以下に提出させて頂きます。

 平成8年3月26日のOTO対策本部決定とそれに続く規制緩和推進計画で閣議決定された栄養補助食品の規制緩和が、平成8年度の「ビタミン」の規制緩和に関する検討会を皮切りに、「ハーブ」、「ミネラル」及び「46通知の見直し」と順次4つの検討会を通して検討されてきたところですが、NNFAジャパンでは当初からの委員であった在日米国商工会議所(ACCJ)から選任された米国側の代表の後を継いで、委員会の委員として最後の検討会が終了するまで出席させて頂き、議論に参加させて頂きました。これら一連の検討会は、在日米国商工会議所がいわゆる「健康食品」の規制緩和を目的として、市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)に問題提起したことを受けて開催されたものです。
 この問題提起では、「通常海外で食品として流通・販売されているものが医薬品として規制されることなく、食品として取り扱いできるようにするために、食薬区分の見直しを行うとともに、剤型規制の緩和、消費者が自分に必要なものを的確に選択できるように表示(効能効果表示、用法用量表示など)の規制緩和」を求めたものです。この要請は、市場開放問題の一環として捉えているばかりでなく、栄養補助食品が消費者に安全かつ適切に利用されることを目指したものでした。

 これら一連の検討会の結果を参考にし、平成12年1月31日付の厚生大臣による諮問、「いわゆる養栄補助食品に係わる表示等について」を受けて薬事・食品衛生審議会が検討し、平成13年2月26日に提出された答申書に基づいて「保健機能食品制度」が創設されました。しかしながら、在日米国商工会議所から提起された当初の規制緩和要請の対象はすべての健康食品を包含したものであり、食薬区分の見直し、表示の規制緩和、剤形規制緩和等を重要な問題と捉えていました。この観点に立てば、現行の保健機能食品制度では十分な結果が得られていないと思慮いたします。このような視点から、NNFAジャパンは以下のように意見を具申いたします。

(1) 国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割をどう位置づけるか。 「医薬品―現行制度に基づく保健機能食品―いわゆる健康食品―一般食品」の体系のあり方。

 平成13年3月27日付で公布された「保健機能食品」制度に基づいて、従来から存在していた健康食品は「いわゆる健康食品」として、一般食品に位置づけられ、薬事法、食品衛生法、健康増進法、その他幾つかの法制度の下に複雑に規制されています。しかしながら、「健康食品」は平成11年度厚生科学研究「いわゆる栄養補助食品等の流通実態と食品衛生に関する研究(田中平三主任研究者)」が報告していますように、国民の約40%が健康食品の摂取経験者であり、疲労回復、健康増進、体質改善、肥満解消などの明確な摂取目的をもつ人が多く、国民が高い関心を寄せていることが明らかです。それにもかかわらず、「健康食品」が常に「いわゆる」つきのあいまいな存在下に置かれることは、健康食品の市場がすでに1兆円を超える事実と合わせて考えると、いかにも不自然に感じます。
 このように、健康食品はかなり明確かつ具体的な目的を前提として摂取されていると考えられますが、これらの目的や摂取理由の根拠は、放送、書籍、雑誌、講演などの様々な媒体を通して消費者に伝えられた情報に基づいています。この情報には健康食品に含有される成分の有効性,安全性などに関して学会や専門学術雑誌に公表される研究報告がしばしば含まれている一方、根拠が不明瞭で、国民をミスリードするいい加減な情報も含まれています。このような玉石混淆の情報が、一般消費者の目に触れる機会が増大しており、これらの情報に基づいて消費者は健康食品になんらかの効果を期待して選択しているのが現状であると判断できます。 しかしながら、現行の法規制は健康食品に健康維持・増進以外の効能的な表現を認めていません。したがって消費者は、上記の学会で報告された研究成果や、真偽の程が定かでないような情報などが混在する、玉石混淆の情報を根拠に製品を選択・購入している状況が拡大していると判断します。なお、付言しますと、消費者が商品選択の根拠にしている情報の多くが,その商品を製造・販売している業者によって発信されたものでない場合が多いと言えます。

 したがって、「健康食品」の置かれている市場の現状を適切に認識して、「健康食品」が国民にとって、その本質的な役割(健康の維持・増進、疾病に対するリスクリダクションなど)を果たすことを可能にすると同時に、製品の安全性と品質を確保するために、新たに健康食品を包括的に取り扱う「健康食品法(仮名)」を制定して、一般食品とは異なる健康食品の立場を明確に位置づけることが急務であると判断します。なお、現行の「保健機能食品」では、一般の食品と健康食品を区別せずに一体化して取り扱っているために、不都合が生じている部分もあると判断します。したがって、健康食品を一般食品と切り離して取り扱うことが肝要であると考えます。
 NNFAジャパンでは、栄養補助食品の規制緩和の検討会に関与してきた経験を踏まえ、欧米諸国の栄養補助食品に対する法的な取り組みを参考にし、更に日本国における「健康食品」とその市場における現場を踏まえて、いわゆる「栄養補助食品法(試案)」提案いたしましたので、参考資料としてここに添付させて頂きます。この試案には、栄養補助食品=健康食品の役割を明確に位置付けております。

(2) 「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているか。「健康食品」の安全性・有用性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。

 健康食品の日本市場における現状は、上記(1)に記したとおりです。「健康食品」を包括的に取り扱う法規制は現在存在しておらず、上記のごとく薬事法、食品衛生法、健康増進法、特定商取引法、景品表示法、JAS法などの様々な法制度の下に、健康食品はかなり複雑な規制を受けています。このような、「健康食品」に係わる法規制を十分に把握して、遵守するためには高度の法知識と経験と判断力が要求されます。まして、国民にとってみれば、上記の状況を的確に理解することは無理に近い状態と思われます。

 しかも、上記(1)に記したように、一方で健康食品に関する情報(主として有効性を中心とした)が玉石混淆の状態で、様々な形態をとりながら飛び交っている現状では、国民は適切な判断手段を欠いたまま、製品を購入することを余儀なくされています。さらに、このような事態は製品の利用・流通・製造に対しても混乱を生み出していると考えられます。したがって、国民は、製品の判断・選択・購入・利用等に際して自らのいわば試行錯誤的な経験を通して結論を下し、製品を購入・使用しているのが実態ではないかと思慮いたします。
 それゆえ、「健康食品」の流通に際して、製品およびその成分に対する情報の開示と透明性の維持、流通のトレーサビリティー、使用者が自らの目的に応じて摂取できるための有用性に関する表示、適切な摂取を可能にするための用法用量に関する表示、安全性の担保と有害事象が出現した場合のフィードバック機構などを可能にする法制度化が必要であると考えます。したがって、(1)に記しましたように、新たに健康食品を包括的に取り扱う「健康食品法(仮名)」を制定して、一般食品とは異なる健康食品の立場を明確に位置づけることが急務であると判断します。(上記(1)に示しましたNNFAジャパンの「栄養補助食品法(案)」をご参照ください。)

(3) (1)及び(2)を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度はどうあるべきか。

 制度については、上記(1)および(2)に記載しましたので、ここでは省略させて頂きます。
 それぞれの役割についての意見具申:「健康食品」自体が今後の食生活、国民の健康に大きな影響を与える存在であるという認識を明確にし、「健康食品」の枠組みを明確にし、行政、業界、消費者の果たすべき役割の範疇を明らかにする必要があります。これは、一見、自明の理であると考えられますが、現在の混乱が存在する状況下では重要なことであると考えます。これまで実際に、この業界と制度が抱えてきた問題点を明確化し、健康食品が最終的には国民のためのものであるという認識の下に、健康食品を国民が適切に利用できるための法制度化と不良品(違反品を含む)を排除できるシステムの設置が早急に望まれます。

 上記に伴って、最も重要な課題として、「健康食品」の製品及び原材料の安全性、有効性、品質などに関する情報を消費者に提供するシステムを設置することが挙げられます。特に、科学的な根拠の曖昧なあるいは科学的な根拠のない、国民をミスリードする情報をどう排除するかという基本的な問題の解決が必要です。このための責任は、行政、学会、業界それぞれが負わなければならないと思慮します。そのために、いわば産・官・学の間での密な情報・意見の交流の場を作ることは、具体的な対応の重要な鍵になると考えます。様々な制度化、取り扱い、政策決定の場に産業界の参加を認めて、十分な現状認識と意見の交流を可能にする事が具体的な対応になると思います。このような状況下においてこそ、業界に対して現状認識の適正化、自浄作用、責任の取り方などに真剣に取り組む姿勢を促すことになると考えます。

 一方、消費者の立場では、「健康食品」に対する正しい知識を身につけ、必要な情報を入手するように心がけ、正しい判断の下に健康食品の適切な摂取を心がけるべきです。これに合わせて、健康障害などの不都合を生じた場合には、速やかに報告する必要性を理解し、またこれを可能にする制度化が早急に望まれます。最終的な健康食品の選択とそのために必要な判断は、国民の手に委ねられるのですから、国民自ら健康と健康食品に対する認識を高める必要があります。また、国民がこれらのことを可能にできるように、適切な情報を提供できる体制の整備と、健康食品を適正に利用できるための制度的、社会的枠組みの整備が必要であり、このための産・官・学の間での協力体制を打ち立てることが必要です。特に、産業界の自覚と、これらの体制に対する積極的な参画を除いては、実現が難しくなると思慮いたします。

 NNFAジャパンではこれらの状況を視野にいれて、栄養補助食品が国民に真に役立つ安全な市場を形成するための一助となるようにと考え、前述の「栄養補助食品法(試案)」提案いたしましたので、参考資料としてここに添付させて頂きます。


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