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今後のがん研究のあり方について

〜 第3次対がん戦略の構築に向けて 〜


目次

1.緒言

2.第3次対がん戦略への提言

3.重点研究と支援事業

4.10年後のがん研究・がん医療の姿(目標)


緒言

 昭和56年以来、がんは日本人の死亡原因の第1位を占め、その後もがんの患者数は増え続けて、現在では約3人に1人ががんで亡くなるという状況になっている。その要因としては、平均寿命の延長などに伴う高齢者人口の増大を始めとして、感染性疾患による死亡率の減少、環境や生活習慣の変化、診断精度の向上などが考えられている。その対策の一つとして、昭和59年度(1984年)より平成5年度(1993年)までの10年にわたり、がん対策関係閣僚会議の下で、旧文部省、旧厚生省、旧科学技術庁の3省庁の共同事業として「対がん10ヵ年総合戦略」が推進された。平成6年度(1994年)からも引き続いて3省庁の共同事業として「がん克服新10か年戦略」を立ち上げ、既に9年近くが経過している。この間、旧3省庁(現2省)の研究者間の強い連携のもとに、先端的な科学技術などを活用した先駆的な研究が行われ、国際的にも目覚ましい成果を挙げている。がん研究、そしてがん対策をさらに強力に推進することにより、今後10年でがんの予防、治療成績等の飛躍的な向上が見込まれる。

 1980年代初頭はヒトがん細胞におけるがん遺伝子の異常が次々に発見され、がん研究が遺伝子の時代に突入した時期である。「対がん10ヵ年総合戦略」はこの時期に立ち上げられ、遺伝子レベルでの「がんの本態解明」を目指し、以下の6つの重点研究課題を設定して推進された。
  (1)ヒトがん遺伝子に関する研究
  (2)ウイルスによるヒト発がんの研究
  (3)発がん促進とその抑制に関する研究
  (4)新しい早期診断技術の開発に関する研究
  (5)新しい理論による治療法の開発に関する研究
  (6)免疫の制御機構および制御物質に関する研究
 その後、平成6年度からは、このような研究課題をさらに発展させて「がんの本態解明からがん克服へ」という戦略の目標達成に向けて、以下の7つの重要研究課題を設定して推進された。
  (1)発がんの分子機構に関する研究
  (2)転移・浸潤およびがん細胞の特性に関する研究
  (3)がん体質と免疫に関する研究
  (4)がん予防に関する研究
  (5)新しい診断技術の開発に関する研究
  (6)新しい治療法の開発に関する研究
  (7)がん患者のQ.O.L.に関する研究
 その間、がん研究は世界的にも急速に進歩し、「がんは遺伝子の異常によって起こる病気である」という概念が確立した。また、情報工学、生命科学の進歩も目覚ましく、がんの基礎研究や臨床研究にもその成果が積極的に導入されてきた。それらの結果によって、がんの要因や病態に対する理解が深まるとともに、診断・治療技術も大きな進歩を遂げ、治癒率が大きく向上しているがんも出てきた。
 遺伝子・分子レベルでの生物学的基盤研究、また、発がん要因とがん予防の研究では、国際的にも極めて貢献度の大きい研究成果が数多く得られた。その結果、発がんの分子機構に関する理解が急速に進み、がんの病態も細胞内の遺伝子変異との対応で捉えられるようになってきた。がんの診断・治療に関する研究は、「対がん10ヵ年総合戦略」以来推進されてきた「がんの本態解明を目指した研究」の成果を活用して、分子レベルでのがん診断や分子標的療法などの開発研究が急速に進展してきている。ヘリカルCTの開発や粒子線治療施設の設置などの医療機器の開発も世界に先駆けて行なわれ、早期診断率や治癒率の向上に大きく寄与してきた。がんの疫学研究やがん情報の基盤整備は、過去数十年における日本人の生活習慣の激変によるがん罹患率の変動状況を明らかにし、がん予防における環境要因の重要性を示してきた。若手研究者の育成、国際協力の推進、研究支援体制の整備などの研究支援事業、さらには、がん情報交換の迅速化・簡便化、新しい予防法・診断法・治療法の普及を目的としたがん情報ネットワークの推進事業も重点的に取り上げ、研究の体制や研究成果の普及に関しても着実に整備が進められてきた。このように、日本におけるがんの基礎研究および臨床研究は、国際的に見ても目覚ましい成果をあげ、がんの要因や病態に対する理解が深まるとともに診断・治療技術も大きな進歩を遂げることが出来た。しかしながら、日本人の年齢調整したがんの罹患率や死亡率は、全体としては横ばい傾向にあるものの、その内訳については、胃がんなどの一部のがんにおいて減少傾向がみとめられる一方で、結腸がん、前立腺がん、乳がんなどの欧米型のがんはむしろ増加傾向にある。また、治癒率の向上が困難な「難治がん」というものが依然として存在するのも事実である。

 我が国では、平成7年に科学技術基本法が制定され、平成8年には、それに基づいて科学技術基本計画が策定され、がんは21世紀における最も重要な研究課題の一つとして位置付けられている。米国では国立がん研究所を中心として、ニクソン大統領主導で1971年に策定されたNational Cancer Actにより継続的に大量の資金ががん研究に投入されている。欧州においてもEORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer)という組織のもとに、基礎研究と臨床研究が進められている。このような国際情勢の中で我が国が果たすべき役割は年々大きくなっているが、国の支援を受けて推進されたこの19年間の我が国のがん研究は世界的にも高く評価されている。国際的にさらに大きく貢献し、我が国における死亡の第一原因である疾病の克服という社会的にも大きな要請と期待に応えるためには、総合科学技術会議の理解のもとに、今後も文部科学省と厚生労働省がより一層強い連繋を図ることによって、充実した体制を構築することが必要である。今後のがん研究の在り方について提言すると、以下のようにまとめられる。

 発がんの要因やがんの生物学的特性は、がんの多様性と複雑性の故に、世界的にもその全容が依然解明できていない。がん細胞の浸潤能、転移能やがんに対する免疫応答など、生体内でのがんと周囲の細胞との相互作用も、その全貌が十分に解明されていない。今後は、進展がめざましい生命科学の分野との連携を深め、また、ミレニアムゲノム研究で得られた成果を統合させ総合的な基盤研究を推進することにより、がんの本態をより深く解明し、個々のがんの多面的な要因や複雑な病態を掌握し、早期発見のための新しい診断法の開発や有効な腫瘍マーカーの開発、新しい治療法の開発が可能となる。これにより、膵がんやスキルス胃がんなどの難治がんを含めたがん治癒率の一層の向上とがん発生率の減少を達成することができ、延いては国民の医療費負担低下も実現可能となる。さらに、「がんの治癒率の向上、がんの罹患率・死亡率の減少、がん患者の苦痛の軽減」を目指して、基礎的な情報や新規の治療法を積極的に臨床に導入できる体制の整備や、同時に、より有効な治療法開発のための基礎研究をさらに強力に推進させるために、いわゆるトランスレーショナルリサーチを重点的に推し進める必要がある。この分野の研究は、今後の最重要推進課題のひとつである。また、医療技術のさらなる向上を目指すためには先端的な科学技術を積極的に取り入れた研究が必須であり、文部科学省と厚生労働省の連繋のみならず、産学連携の取り組みをさらに強化することが必要である。
 疫学的研究に関しては、大規模・長期にわたる疫学研究を実施可能にするための国家的な体制作りを進め、がんの環境要因を把握するのみでなく、遺伝子多型の分布など、遺伝的要因(ゲノム情報)も取り入れた分子疫学的研究を積極的に推進する必要がある。がん情報の基盤整備に関しても、診療技術の全国への普及、国民へのがんに関する適切な知識と最新情報の提供、とりわけ、がんの発生・死亡等に関わる情報の一元管理は、まだ十分に行われているとは言えず、今後、さらに整備・充実していく必要がある。

 がん対策を有効に推進し、国民全体の利益に効率よく繋げていくためには、第3次対がん戦略を構築することにより、がん研究をより一層強力に推進させることが重要である。研究費の大幅な増額も必要である。優れた基礎研究の推進、基礎研究の成果を臨床に橋渡しし、臨床試験により評価する体制や企業との共同研究を推進することにより、個々人に対応した適切かつ有効な、いわゆるテーラーメイドな、がんの1次・2次予防、そして治療の実現が可能となる。第3次対がん10か年戦略の期間内に、がんによる死亡率を横ばいから下降に転じさせ、さらにはがん患者におけるQ.O.L.を維持するための新しい方策を立てることにより、国民の期待に応えることが出来る。


第3次対がん戦略への提言

キャッチフレーズ

〜がんの罹患率と死亡率の激減を目指して〜

そのために

がんの本態解明と克服に向けた新しい研究戦略を構築し、個々人に最適の世界最高水準のがんの予防と医療を国民全体が享受する社会を実現する

重点的に研究を推進する分野として

さらに、これら重点研究の強力な推進のために以下の点が必要


重点研究と支援事業

学横断的な発想と先端科学技術の導入に基づくがんの本態解明の飛躍的推進

(1)がんにおいて多段階的に蓄積する遺伝子異常の把握、および細胞周期、染色体動態、細胞の増殖・分化・死、血管・リンパ管形成、細胞間相互作用等の基礎研究に基づくがんの本態解明を進める。
(2)がんのゲノム研究に加え、トランスクリプトーム(転写産物総体)・プロテオーム(たんぱく質総体)・メタボローム(代謝動態の総体)の研究を強力に推進し、ゲノム情報、病理・診療情報、生活習慣情報との相関性を解明し、遺伝情報をもとにした個々人にあった予防・治療を可能とするテーラーメイド医療の基盤を作る。
(3)優れた動物モデルや高効率哺乳動物細胞発現系を確立し、機能ゲノム学的アプローチを駆使して、がん関連遺伝子の機能を解明する。
(4)がん細胞の増殖、転移、薬剤耐性、放射線感受性等に関与するたんぱく分子群を解明し、分子標的治療の基盤を作る。
(5)がん細胞に対する宿主の免疫応答機構を解明する。
(6)関連ライフサイエンス分野との連携による学横断的な新しいがん研究領域を開拓し、がん研究における新しい基盤技術を開発する。

 基礎研究の成果を臨床・公衆衛生に導入するための橋渡し研究としてのトランスレーショナル・リサーチの推進

(1)基礎研究の成果に基づいた新たな予防・診断・治療法を開発するためのトランスレーショナル・リサーチを強力に推進する。
(2)臨床病理情報を伴う腫瘍DNAなどのバイオリソースバンクや、遺伝子多型と抗がん剤副作用データベースの設置・運営を国家レベルで広域的に推進する。
(3)国家レベルの臨床・公衆衛生研究実施体制の整備{臨床研究コーディネーター(CRC)・生物統計学者等の育成、トランスレーショナルリサーチ支援等}を進める。

 革新的ながんの予防法の開発

(1)微生物・ウイルスを含む環境中の発がん要因の同定と曝露情報の収集を強力に推進する。
(2)発がんの要因と発がん機構の関連性を明らかにして、新しい予防法の確立を目指す。
(3)生活習慣・環境要因・遺伝的要因の相互作用と発がんリスクとの関連を明らかにする大規模長期コホート研究など、分子疫学的研究を全国的規模で展開する。
(4)禁煙への関心度に応じた、簡便で効果的な禁煙サポート方法を開発し、地域・職域・医療などあらゆる機会を利用して全国に普及する。
(5)遺伝子・ゲノム情報を取り入れて、発がんのリスク別に層別化された集団を対象とした生活習慣改善・化学物質投与等による介入試験を、罹患率減少をエンドポイント(評価指標)として展開する。

 革新的ながんの診断・治療法の開発

(1)ゲノム・たんぱく質情報を基盤として体系的に探索される腫瘍マーカーを駆使して、高感度・高精度のがんの早期診断法を開発する。
(2)新規のがん検診技術を開発し、検診の精度・効率を向上させ、死亡率減少効果をエンドポイントとしたがん検診の有効性を科学的に評価する。
(3)高度コンピューター技術と融合した画像診断、機能画像診断、電子・分光内視鏡、検診用自動診断支援システム等、医用工学・光学、エレクトロニクス分野の研究開発をさらに強力に推進し、がんの早期発見に資する。
(4)系統的に整理された画像情報のデータベースを構築する。
(5)ゲノム・たんぱく質情報を基盤として予測される予後や各種治療への応答性に基づいて、個々人に最も適した治療法を選択するテーラーメイド医療の確立と普及を図る。
(6)膵がんやスキルス胃がんなどの難治がんや進行がんを主たる対象として、分子標的治療や免疫療法、遺伝子・細胞治療等を含む新治療技術の体系化を図る。
(7)機能温存・機能再建療法の開発を推進し、再生医療・幹細胞系技術も導入する。また、ロボット外科などの新たな手術法や低侵襲性の手術法についても適応の拡大や臨床的有用性の検討を進め、患者のQ.O.L.の維持・改善を図る。
(8)粒子線治療の臨床的有用性を確立する。
(9)新規抗がん剤開発や診断用薬剤(造影剤や放射性薬剤)の開発を推進し、手術術式評価のための多施設共同臨床試験ネットワークを確立する。

 がんの実態把握と、がん情報・診療技術の発信・普及

(1)がんの実態を把握するために、がん登録事業を全国レベルで展開する。
(2)遠隔会議(テレカンファレンス)・遠隔医療(テレメディシン)等の技術も活用して、地域がん診療拠点病院を基盤に置いたがん医療標準化を推進する。
(3)がん診療に携わる医療従事者および一般国民に対して、最新のがんの知見および診療に関する情報を発信・普及させるためのネットワーク構築など、社会のニーズに応える支援体制を整備する。

 支援事業

(1)トランスレーショナル・リサーチ、臨床研究促進のための研究体制のより一層の充実を図る。
(2)がん登録事業等、疫学研究における基盤整備を図る。
(3)質のよい臨床データや病理情報を伴った腫瘍組織やがん患者のDNAなどの集積(バイオリソース)やそれらのデータベース化等の基盤のより一層の充実を図る。
(4)がんの予防・検診センターの設置を含む予防・診断技術の確立とその全国への普及を図る。
(5)国民に対して、がんに関する的確な知識と最新情報を提供する。
(6)産官学の連携を強化するために必要な体制の整備を図ることにより、産官学の協力を一層推進する。
(7)若手研究者ならびに研究支援者を育成し、これらの人事交流をより一層促進する。
(8)国際協力、国際交流を充実させることにより、国際貢献に資する。
(9)がん研究の推進における中核拠点機能をより強化することにより、研究・運営を一層効率化し、それらの充実を図る。

 重点研究と支援事業の詳細については、参考資料「第3次対がん戦略の構築に向けて―研究領域と課題―」を参照。


10年後のがん研究・がん医療の姿(目標)

がんの本態解明

(1)個々人の発がんに対する感受性を規定する遺伝的要因が解明される。
ゲノム情報解析、診療情報、および大規模な疫学研究の成果により、発がんの高リスク群の把握が可能になる。
(2)発がん過程における遺伝子異常の全貌や種々のがん細胞の生物学的特性が明らかにされる。
個々のがん症例に対応した、適切かつ有効で副作用の少ない「テーラーメイド」ながん医療が実現される。
がんの転移や浸潤の分子機構が解明され、その制御法の開発により、進行がん・末期がん患者の生命予後が改善される。
(3)ヒトがんの多段階的遺伝子異常を再構築した動物モデルが作製される。
複数のがん関連遺伝子の個体内における相互作用の解析が可能になる。
(4)がんの監視機構である宿主の免疫応答のメカニズムが解明される。

トランスレーショナルリサーチの展開

(1)体制整備や人材育成が進められ、がんの本態解明の基礎研究の成果を、新しい予防・診断・治療法の開発と実用化に結びつける研究が推進・展開される。
ゲノム・トランスクリプトーム(転写産物総体)・プロテオーム(たんぱく質総体)研究の成果による分子標的治療が積極的に導入される。
免疫応答機構の解明による腫瘍免疫療法が確立される。
(2)厳正な審査・評価を受けて承認される新薬の治験、遺伝子・細胞治療、医療機器などの研究的医療が活性化され、患者自身の自由意思により、それらの臨床研究に参加する機会が増える。
(3)副作用を最小限に抑え、有効でかつ個人に最適の抗がん剤投与法、放射線療法等の新たな治療法が開発される。
(4)産官学の連携体制が確立し、より有効な研究が可能になる。

がんの予防

(1)発がんの高リスク群に対して、個人に最適ながん予防対策が実現される。
発がんのリスク軽減や生活習慣の改善によるがん予防法が確立される。
遺伝子・ゲノム情報を取り入れて層別化された集団に対するがん予防対策が確立され、全国的に普及される。
がん発生の遅延あるいは生涯的な予防が可能となり、死亡率が減少する。
(2)感染予防対策の充実により、感染に起因するがんの予防法が確立される。
感染の関与が明らかな、肝臓がんや子宮頚がん、一部の胃がんや白血病の罹患率および死亡率が減少する。
(3)禁煙による発がんリスクの大きさを一般国民が正確に理解し、禁煙への関心度に応じた禁煙サポートを受ける機会が、全ての喫煙者に確保される。
(4)発がんの動物モデルを用いた研究により、新規のがん化学予防剤の開発が精力的に展開される。

がんの診断

(1)がんの「検査」がより正確に、鋭敏に、かつ簡便にできるようになり、患者の苦痛が軽減される。
新世代のデジタル画像診断や内視鏡診断、分子診断の開発が進む。早期診断率が向上し、治療成績や治療後の生活の質の改善に貢献する。
血液や尿、各種体液の中の腫瘍マーカーおよび極少数のがん細胞を高い精度で検出する検査法が開発される。
画像情報をデータベース化することで、診断の精度が向上する。
(2)全国何処でも最高水準のがんの診断が受けられるようになる。
コンピューター技術を駆使した自動診断システムの開発や、ネットワーク技術によるデータベースとの連携等を通して、最先端のがん診断技術が全国に普及する。
(3)精度の高い検診の有効性が迅速に評価され、適切な間隔で多数の人が受診できるようになる。
最新の診断技術に基づいて、精度の高い新しいがん検診技術が開発される。
死亡減少効果や延命効果などの予防および治療的有効性に加え、費用対効果などの医療経済的な観点から検診の有効性を迅速に評価するシステムが構築される。
有効性の確立した検診を、適切な精度管理とともに普及し、効率よく多数の人が受診できるようになる。

がんの治療

(1)個々人に最も適した治療法を選択する「テーラーメイド医療」が普及する。
遺伝子や遺伝子産物等、分子レベルの解析を取り入れて、個々の症例に最も効果があり、最も副作用の少ない治療法を行う「テーラーメイド医療」を、全国民が受けられるようになる。
(2)手術療法が進歩し、治療成績が向上して、患者のQ.O.L.が改善する。
化学療法・放射線療法との有効な組み合わせや、ロボット外科の研究などにより、手術療法の成績と安全性が向上する。
機能温存や機能再建する外科的技術、さらには再生医学・臓器移植の技術の進歩により、手術の後遺症が減り社会復帰が促進される。
(3)内視鏡を用いた「体に優しい」手術が広まる。
内視鏡、腹腔鏡、胸腔鏡などを用いた、身体への負担が少なく、生活の質の維持に優れた治療法がより多くのがんについて行われるようになる。
(4)より有効で副作用の少ない新しい治療法が開発される。
がん細胞の特徴を明らかにし、分子レベルの異常を標的とする新しい分子標的薬が開発される。
免疫療法、遺伝子・細胞療法などの新しい治療法が開発される。
(5)有効な放射線療法の開発・実用化が進む。
重粒子線・陽子線・高エネルギー放射線などの実用化が進み、より高度な放射線の照射法が開発されるとともに、放射線療法の効果や副作用があらかじめ予測できるようになる。
(6)緩和医療がさらに充実する。
痛みや息苦しさ、倦怠感などを克服する新しい手段が見出されるとともに、精神・心理的なケアの方法についても進歩する。
(7)難治がんに対する治療法の開発が大きく進展する。
治療が困難な「難治がん」に対して、画期的な治療法の開発が進み、治癒率が大幅に改善される。

実態把握と情報発信

(1)より正確ながんの実態の把握が可能になる。
地域がん登録・院内がん登録の意味とその重要性を国民に理解してもらい、この事業を国策として強力に推進し、その統合化等を通して、我が国のがんの実態を正確に把握する。このデータに基づき、がん対策の正しい方向付けが可能となる。
(2)がんに関する様々な情報が簡単に、全国どこからも取り出せるようになる。
患者やその家族、がんの医療や研究の専門家など、それぞれのニーズに応じたがんの最新の情報がインターネット等を介して容易に入手できるようになる。


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