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血液製剤及び医薬品等のTSE伝播の予防措置の改訂等について

1.血液製剤及び人尿由来製剤

(1)血液を介したvCJDの伝播については、vCJDが感染者でリンパ系に移行すること等からみて、リスクに対する注意が必要である。特に、輸血用血液製剤・血液成分製剤については注意が必要であり、献血者において、BSEの発生頻度が高い国等での滞在経験者を排除する等の措置を継続し、対象国について拡大する。(別紙1

(2)また、白血球除去についての効果は、必ずしも、完全な効果が期待できるものではないが、一定のリスク低減効果は期待されており、欧州においても評価されていることから、国内の採血業者(輸血用血液製剤、血液成分製剤は国内自給)に対しても導入を指導する。

(3)血漿分画製剤については、スクレイピーのプリオンのスパイクテストからみて、エタノール分画その他の分画工程によりリスクが低減する効果がみられているが、工程については検証が必要。
国内製造の血漿分画製剤については採血時の問診等からみて原料レベルでの問題はない。
輸入血液製剤については、現在、次の分画製剤が、それぞれ表に示す国から輸入されている実態(別紙2)、同種間での血液を介したプリオン病の伝播の実験データに基づく、vCJDの伝播リスクを踏まえ、次のように対応する。
以下の対応に関して、国内外の血漿分画製剤においても、製造工程中でのプリオン除去能力に関するバリデーションデータを提出することを各社に通知で指導する。

欧州産の原料血漿案>
欧州で採血された原料血漿を使用している製剤においては、分画工程においてリスクが低減されることを示す文献等があることを考慮しつつも、人でのvCJD発生国(英国、フランス、イタリア)の血液を使用しない。
→ 現在の原料血漿の採血国はドイツ、オーストリア、スウェーデン。

※参考:英国においては、<欧州産の原料血漿案>の措置を平成15年2月に実施。

(4)北米産の血漿分画製剤については、現時点では、米国当局においてもCWDと米国内での若年CJDの関連については否定されているところからも、プリオン病対策としての特段の措置は行わないが、引き続き情報収集する。

(5)人尿由来製剤については、尿から検出されたPrPに感染性は確認されていないが、予防的な措置として、英国での措置と同様に、人でのvCJD発生国(英国、フランス、イタリア)の尿を使用しない措置をとる。

※ 参考:英国においては、血液と同様の措置を平成15年2月に実施。

2.医薬品等の原材料について

(1)ワクチン等の製造に用いられるマスターシード/マスターセルバンク樹立の際に使用している原材料においては、異常プリオンを増幅しないものであれば、ただちに安全性に問題はないと考えるが、マスターシード/マスターセルバンクの樹立に脳・心臓浸出液(BHI)を使用しないよう指導する。

平成13年10月に使用成分の適合性の調査が既に行われており、医薬部外品・化粧品原料のマスターシード作成の際にBHIを使用しているケースが発見され、自主回収の措置を講じていることから問題となる製品はないと考えられるが、再度製造業者等を中心に確認を行う。

(2)ウシ、ヒツジ等の反芻動物において、TSE感染動物の血液については近年の実験データにより、同種の動物同士で感染が成立することが判明したことから、反芻動物の血液も低いリスクながら感染性のある臓器として取り扱う。(具体的には、感染リスクの4段階評価表のカテゴリー3に再分類する。)

EU等での規制状況も勘案し、日本の規制により使用可能となっている国(EUのリスク分類のGBR-1又は2)において採血された反芻動物血液については、安全性において問題ないと考えて差し支えないと考える。
(注) 欧州医薬品庁(EMEA)においても、リスク4段階評価のカテゴリー3に分類する方針を既に決めている。日本においてもカテゴリー3は低リスク原料として使用禁止には至らないものである。

(3)さらなる予防的な措置として、原材料については、可能な限り、感染性の高い部位との交叉汚染のない方法で採取することを原則とする。
具体的には、
(1)骨由来原料については、交叉汚染防止の観点から、頭骨、脊椎等を使用してはならない部位として明確化する。なお、ゼラチンについては、それが確保できない場合は、GBR−1の国のみを原産国とするか、GBR−2の国を原産国とする場合は、管理されたウシの群の3条件(注1参照)を満たすことする(注2参照)。
(注1) 従来からBSE汚染国由来の原料に対して課している3条件
(1) 感染牛等(その子孫を含む。)を使用しない
(2) BSE対策が行われている
(3) 動物性飼料を使わない。
(注2) EUの科学運営委員会(SCC)は医薬品等の原料用のゼラチンについては、GBR-1の国又は管理されたウシ等の群を使用することを提案している。
(2)血液や体液(唾液、鼻粘膜を含む。)の採取については、と畜による交叉汚染を防止する観点から、と畜前の生きた状態で採血等を行うこととする。また、胎児血清を使用する場合については、子宮や胎盤等母獣組織の付着による汚染のないよう、他の臓器よりも先に羊膜に包まれた胎児を取り出し、羊膜等を除去するなどの方法により採取された胎児から採血する等の細心の注意を払うこととする。

(参考)  GBR−1 BSEのリスクはほとんどない国
 GBR−2 BSEのリスクは少ないが、否定できない国
 GBR−3 BSEのリスクがある国
 GBR−4 BSEのリスクが高い国

日本の現在の規制において、原料としての使用が認められている原産国
BSE低リスク国 アルゼンチン(1)、オーストラリア(1)、ボツワナ(1)、ブラジル(1)、チリ(1)、コスタリカ(1)、エルサルバドル(1)、ナミビア(1)、ニカラグア(1)、ニュージーランド(1)、パナマ(1)、パラグアイ(1)、シンガポール(1)、スワジランド(2)、ウルグアイ(2)、カナダ(2)、コロンビア(2)、インド(2)、ケニア(2)、モーリシャス(2)、ナイジェリア(2)、パキスタン(2)、米国(2)
(1)はGBR-1の国、(2)はGBR-2の国

リスク分類表改訂案
分類 臓器
カテゴリー1高リスク部位 脳、脊髄、眼、脳下垂体、角膜
カテゴリー2中リスク部位 内耳、扁桃、リンパ節、脾臓、回腸、腸、胎盤、松下体、硬膜、頭骨、脊椎、背根神経節、三叉神経節
カテゴリー3低リスク部位 胸腺、末梢神経、肺、鼻粘膜、骨髄、膵臓、肝臓、血液
カテゴリー4プリオンの危険性が検出されていない臓器 唾液腺、骨、骨格筋、心臓、乳腺、乳、胃、胆汁、卵巣、子宮、腎臓、精巣、精嚢、尿、皮膚、胎児、胎児組織、結合組織
下線: 今回の変更箇所


(参考)

BSE対応の日米EUの比較(新規規制案を下線太字で追加)

  日本 米国 EU
1.ウシの原産国についての規制  BSEが発生している国及びそのリスクが高い国の原産の反芻動物及びそれらの国で育った反芻動物を原料として医薬品等に使用することを認めていない。(実質、EUのGBR-1又は2の範囲のみ使用可能。)
※ 管理された動物を使用する場合は、この限りではない(英国、ポルトガルを除く)。
<BSE低リスク国として使用が認められている原産国>
アルゼンチン(1)、オーストラリア(1)、ボツワナ(1)、ブラジル(1)、チリ(1)、コスタリカ(1)、エルサルバドル(1)、ナミビア(1)、ニカラグア(1)、ニュージーランド(1)、パナマ(1)、パラグアイ(1)、シンガポール(1)、スワジランド(2)、ウルグアイ(2)、カナダ(2)、コロンビア(2)、インド(2)、ケニア(2)、モーリシャス(2)、ナイジェリア、パキスタン(2)、米国(2)

 (1): GBR-1, (2) : GBR-2
  BSEが発生している国及びそのリスクが高い国の原産の反芻動物及びそれらの国で育った反芻動物を原料として医薬品等に使用することを認めていない。

<BSE発生国>
イギリス、スイス、フランス、アイルランド、オマーン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、日本
<BSE高リスク国>
  アルバニア、オーストリア、ボスニア・ヘルチェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、ユーゴスラビア、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、マケドニア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、リヒテンシュタイン、スロベニア、スロバキア、スペイン、スウェーデン
 原則、BSEのリスクの低い国であるGBR-1又は2の国の原料の動物を用いることを明確化するとの情報。 (ただし、GBR-4の国: 英国、ポルトガルは禁止。)
2.ウシの部位についての規制  臓器のリスクによりリスクの高い部位の使用を禁止。ただし、羊毛、ラノリン、乳は適用除外

使用してはならない部位
 脳、脊髄、頭骨、脊椎、背根神経節、三叉神経節、眼、腸、リンパ節、脾臓、扁桃、硬膜、松果体、胎盤、脳脊髄液、下垂体、副腎、胸腺

 (1)可能な限り、危険部位の汚染のない方法で採取。
 (2)骨については、頭骨等の除去が確認できない場合は、GBR-1又は管理された個体を使用。

 使用を禁止する部位の特定は行っていない。ただし、ゼラチン及び乳は、地域制限の適用除外。なお、注射用製剤については、ゼラチンにおいて発生国、リスク国の原料の使用を禁止。  臓器をリスクにより4クラスに分類し、ハイリスクの部位の使用は禁止。その他はケースバイケースの対応。
クラスI:ハイリスク
脳、脊髄、眼
クラスII:中リスク
回腸、リンパ節、近位結腸、脾臓、扁桃、(硬膜、松果体、胎盤)、脳脊髄液、下垂体、副腎
クラスIII:ローリスク
末梢結腸、鼻粘膜、末 梢神経、骨髄、肝臓、肺臓、膵臓、胸腺
血液
クラスIV:リスクなし
凝血、便、心臓、腎臓、乳腺、ミルク、卵巣、唾液、唾液腺、精嚢、血清、骨格


照会先
厚生労働省医薬局安全対策課
担当 田尻
TEL 03-5253-1111 (2754)


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