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(別添)

期限表示の用語・定義の統一について

報告書



平成15年4月2日
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会表示部会


期限表示の用語・定義の統一について

1.問題の背景

1.期限表示導入の経緯について
 食品の期限表示については、食品衛生法では平成6年9月の食品衛生調査会の答申を受け、また、JAS法では、平成6年8月の農林物資規格調査会の答申を受け、平成7年から従来の日付表示に代えて期限表示が導入され、別添のとおりの現状となっている。
 こうしたことから、劣化速度が比較的緩慢な食品については、「品質保持期限」と「賞味期限」の2つの用語が存在し、劣化速度が速い食品に対する「消費期限」については、2つの定義が存在することとあわせて、消費者、食品事業者双方より、分かりにくいとの指摘を受けている。

2.「食品の表示制度に関する懇談会」の中間取りまとめにおける指摘事項について
 厚生労働省医薬局食品保健部長及び農林水産省総合食料局長の私的懇談会として設置された「食品の表示制度に関する懇談会」の中間取りまとめ(平成14年8月20日)においては、「複数の法律において用語や定義などが異なっている表示項目等については、表示を見る消費者、表示を行う事業者の分かりやすさを考え、速やかに整合性の確保に向けて検討に着手すべきである。特に、消費期限や賞味期限及び品質保持期限については、関係府省で速やかに定義や用語の統一を図る必要がある。」との指摘と共に、「消費者、事業者等関係者を交えた場で、期限表示の用語の統一など具体的検討を行っていくことが必要である」との提言がなされている。
 このため、食品衛生法及びJAS法に共通する表示項目、表示方法等について検討を行うことを目的に、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会表示部会食品表示調査会と農林物資規格調査会表示小委員会の共同で、「食品の表示に関する共同会議」が設置され、平成14年12月から順次食品の表示項目、方法等に関する検討を開始した。 本会議では、最優先の検討課題として、以下のとおり期限表示の用語・定義の統一について検討を行った。


2.用語・定義の統一の考え方

1.品質保持期限と賞味期限の用語・定義の統一について
(1)用語の統一について
 食品の劣化速度が比較的緩慢な食品の期限表示は、食品衛生法では、「品質保持期限」を、JAS法では、「賞味期限」を表示することを基本としているが、同じ意味を示すにもかかわらず異なる用語を使用することは、消費者及び事業者からは、分かりにくいとの指摘を受けていることから、用語の統一を図る必要があると考えられる。用語の統一の検討過程においては、「品質保持期限」ないし「賞味期限」に統一するあるいは第3の用語に統一することが検討されたが、以下の観点から、「賞味期限」に統一を図ることが適当であるとする意見が多数を占めた。
(1)用語の各種調査(参考1)によれば、「賞味期限」が多くの種類の商品に使用されていること。
(2)平成14年10月に、厚生労働省及び農林水産省が取りまとめた、「品質保持期限及び賞味期限の用語の統一について」の意見募集の結果(参考2)で、賞味期限に統一すべきとする意見が、全体の意見の過半数を占めたこと。
(3)食品の劣化速度が比較的緩慢な食品の期限表示は、可食限界に安全係数をかけて短く設定しているものであり、可食限界そのものを示すものではないことから、可食限界のニュアンスがある品質保持期限よりも、賞味期限という用語が適切であると考えられること。
(4)限られた表示スペースの有効利用の観点から、「賞味期限」の方が、より文字数が少ないこと。

<参考1> 用語の各種調査結果
  (1)市販品の期限表示状況
  対象:品質保持期限又は賞味期限を使用している740商品について、その使用実態を調査。
(平成14年6月 農林水産消費技術センター調査結果)
品質保持期限 116商品(16%)
賞味期限 624商品(84%)
  (2)「品質保持期限」と「賞味期限」の使用実態調査について
  対象:食品関係団体41団体の主な食品の種類別にその使用実態を調査。
(平成15年1月、厚生労働省医薬局食品保健部調査)
品質保持期限 15.7%
賞味期限 80.6%
その他(消費期限等) 3.7%

<参考2> 「品質保持期限及び賞味期限の用語の統一について」に寄せられた意見について(平成14年10月、厚生労働省医薬局食品保健部企画課、農林水産省総合食料局品質課調査)
品質保持期限に統一すべき 12%
賞味期限に統一すべき 63%
統一不要 19%
その他(新語の提案等) 6%

(2)定義の統一について
 「品質保持期限」、「賞味期限」の定義は、共に、「包装食品の表示に関するコーデックス一般規格」(Codex STAN1-1985(Rev.1-1991))に規定されたdate of minimum durability(best before)の定義を引用しており、省令・告示上の文言の違いはあるものの、同じ意味を表しており、統一を図ることが適当である。
 また、「品質保持期限」、「賞味期限」として表示された期限を超過した食品を摂取した場合においても、必ずしも衛生上の危害が生じるわけではない。このため、食品資源の有効活用の観点から、それらの期限を過ぎた食品を、期限を超過したことのみを理由に、すぐに廃棄することがないように、消費者に対する啓発の意味も含めて、コーデックス一般規格に規定されたdate of minimum durability(best before)の定義中の「However, beyond the date the food may still be perfectly satisfactory.(仮訳:しかしながら、その日付を過ぎても、その食品は依然として完全に満足し得ることもある。)」の意味を定義に追加することを検討する必要がある。

2.消費期限の定義の統一について
 「消費期限」の定義については、食品衛生法では、「衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限」、JAS法では、「摂取可能であると期待される品質を有すると認められる期限」とされ、同じ用語に対して、2つの異なる表現で定義付けが行われているが、消費者及び事業者の混乱を解消するため、統一を図ることが適当である。


3.新たな用語・定義

 これらの検討を踏まえ、下記のとおり、用語、定義の統一を図ることが適当である。厚生労働省及び農林水産省においては、下記を基本として、さらに法制的な検討を加え、所要の改正手続きを行うこととされたい。

 期限表示の用語・定義
新用語 定義
賞味期限 定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。義
消費期限 定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をいう。


4.留意すべき事項

 今回、期限表示の用語・定義の統一についての検討の過程において、期限表示の用語・定義の意味についての十分な理解が得られていないことが指摘されており、今後、以下の点等についての正しい理解が得られるよう、消費者及び事業者に対する十分な情報提供、普及啓発に努める必要がある。
 (1)食品の劣化速度により、「消費期限」と「賞味期限」に区別されていること。
 (2)食品の劣化速度が比較的緩慢な食品については、表示された期限を過ぎても、必ずしも直ちに衛生上の危害が生じるわけではないこと。
 (3)表示される期限は、包装を開封する前の期限であること。
 (4)賞味期限表示への円滑な移行のため、新たな表示基準に基づく表示が義務付けられるまでの猶予期間においては、引き続き従前の表示が認められていること。


(別添)

現在の期限表示の用語と定義

1.劣化速度が比較的緩慢な食品

  食品衛生法 JAS法
用語 品質保持期限 賞味期限
定義 「品質保持期限」である旨の文字定められた方法により保存した場合において、食品又は添加物のすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。(当該期限と同一の期限を示す文字として適当であるものとして厚生労働大臣が定める文字。) 「賞味期限」(品質保持期限)容器包装の開かれていない製品が表示された保存方法に従って保存された場合に、その製品として期待されるすべての品質特性を十分に保持しうると認められる期限
 
CODEXの定義
(原文)
Date of minimum durability
"Date of minimum durability" ("best before") means the date which signifies the end of the period under any stated storage conditions during which the product will remain fully marketable and will retain any specific qualities for which tacit or express claims have been made. However, beyond the date the food may still be perfectly satisfactory.
(仮訳) [date of minimum durability(best before)]とは、ある保存条件の下で、製品が完全な市場性を有し、かつ、黙示的又は明示的に表示されたいかなる特定の品質をも保持する期間の終期を明らかにする日付を意味している。しかしながら、その日付を過ぎても、その食品は依然として完全に満足し得ることもある。

2.劣化速度が速い食品

  食品衛生法 JAS法
用語 消費期限 消費期限
定義 定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の食品又は添加物の劣化に伴う衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限を示す年月日 容器包装の開かれていない製品が表示された保存方法に従って保存された場合に、摂取可能であると期待される品質を有すると認められる期限
 
CODEXの定義
(原文)
Use-by date
“Use-by date”(recommended last consumption date, expiration date") means the date which signifies the end of the estimated period under any stated storage conditions, after which the product will not have the quality attributes normally expected by the consumers. After this date, the food should not be regarded as marketable.
(仮訳) [Use-by date(recommended last consumption date, expiration date)]とは、記載された保存条件のもとで、その期間を過ぎれば、その製品は消費者が通常期待する品質特性を多分失うであろう、と推定される期間の限度を示す日付である。その日付を過ぎたならば、その食品は販売できるとは見なすべきではない。


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