1.計画のねらい
(1) | 基本的考え方 労働者の安全と健康を確保することは、最も重要な国民的課題の一つである。 事業者は、労働者の安全と健康を確保する本来的な責務を有しており、この観点から、労働安全衛生関係法令に規定された最低基準としての労働災害防止措置を履行するだけではなく、自主的な安全衛生活動を体系的かつ積極的に展開し、職場内のリスクの確実な低減に取り組む必要がある。また、労働者も業務に関する知識等の維持、向上を図ることにより職場における安全と健康の確保を自らの問題として捉え、事業者の行う安全衛生活動に主体的に参画していくことが求められる。 現在、我が国の産業社会は、経済のグローバル化、少子化・高齢化、IT等の技術革新の進展等により社会経済システムの大きな変革に直面している。新たな分野における事業の立ち上げが進む一方で、企業においては事業の再編が進行している。労働市場においても、就業形態の多様化、雇用の流動化が進むとともに、成果主義の導入等により働き方や就業意識が大きく変わりつつある。このような変化は、企業の安全衛生への取組、労働者の安全衛生意識、職場環境における安全衛生水準等に様々な影響を及ぼすことから、これら社会経済情勢の変化を踏まえた実効ある安全衛生対策を展開していく必要がある。 本計画は、このような状況を踏まえ、我が国における労働災害防止の主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を示すものである。 | ||||||||||
(2) | これまでの取組 労働災害防止の実効を上げるには、事業者、事業者団体、国等の関係者がそれぞれの役割分担の下に緊密な連携を図りながら、労働災害防止対策を総合的かつ計画的に実施する必要がある。このため、国が労働災害防止についての総合的な計画を長期的な展望に立って策定し、自らが今後とるべき施策を明らかにするとともに、労働災害防止の実施主体である事業者等において取り組むことが求められる指針を示し、その自主的活動を促進することとしている。 このような趣旨から、昭和33年に産業災害防止総合5か年計画が策定されて以来、9次にわたって労働災害防止計画が定められてきた。昭和30年、40年代の第1次から第3次の計画では、最低労働条件を定めた労働基準法の下で、多発する死傷災害の防止が最も重要な課題であった。昭和47年に労働安全衛生法が施行された後の第4次から第9次の計画では、より高い安全衛生水準の確保が課題として取り上げられ、特に最近は、労働災害の防止を図るため、職場内のリスクを体系的に低減させる取組についても重要な課題として取り上げられてきている。 | ||||||||||
(3) | 本計画の基本方針 本計画は、以上の基本的考え方に基づき、社会経済情勢等の変化を踏まえ、すべての働く人々の安全と健康の確保の実現を目指して、次に示す基本方針に立って策定したものである。
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2. | 計画の期間 本計画は、平成15年度を初年度とし、平成19年度を目標年度とする5か年計画とする。 ただし、この計画期間中に労働災害防止に関し、特別の事情が生じた場合は、必要に応じ計画の見直しを行うものとする。 |
(1) | 労働災害による死亡者数の減少傾向を堅持するとともに、年間1,500人を大きく下回ることを目指し、一層の減少を図ること |
(2) | 計画期間中における労働災害総件数を20%以上減少させること |
(3) | じん肺、職業がん等の重篤な職業性疾病の減少、死亡災害に直結しやすい酸素欠乏症、一酸化炭素中毒等の撲滅を図ること |
(4) | 過重労働による健康障害、職場のストレスによる健康障害等の作業関連疾患の着実な減少を図ること |
4. | 労働災害防止を推進する上での課題 労働災害防止を推進する上での主要な課題は、次のとおりである。 |
(1) | 労働災害の動向等からみた課題 労働災害による死傷者数は、昭和43年の172万人を頂点として長期的に減少してきているが、今なお年間約55万人もの労働者が被災し、そのうち休業4日以上の死傷者が約13万人を占めている。また、死亡者数については、昭和36年の6,712人を頂点として、労働安全衛生法が施行された昭和47年から4年間で半減に近い減少を示してから漸減傾向にあったが、平成10年に2,000人の壁を破って以降、着実に減少しつつある。しかし、今なお年間1,800人近くもの労働者が労働災害により死亡している。他方、一度に3人以上が被災する重大災害の件数は、年間200件前後で推移しており、減少の傾向が認められない。
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(2) | 労働者の健康確保をめぐる課題
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(3) | 転換期の産業社会における安全衛生面の課題 我が国産業社会は大きな転換期にあり、今後の労働安全衛生の展望を考える上で、次の社会経済的要因が労働安全衛生問題に重大な影響を与えることが予想される。
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(4) | 安全衛生管理をめぐる課題
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(1) | 業種別労働災害防止対策 次に掲げる業種別対策を重点的に推進する。また、林業、港湾貨物運送事業、鉱業その他の災害発生率の高い業種についても引き続き積極的に労働災害防止対策を推進していく。
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(2) | 特定災害防止対策
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6. | 労働者の健康確保対策 労働者の健康確保対策については、特に、産業保健関連機関の機能の強化、ネットワークの形成を図りつつ、次のような対策を推進する。 |
(1) | 職業性疾病予防対策 じん肺の新規有所見者を減少させるため、アーク溶接作業について工学的対策の充実強化を図るとともに、新規有所見者の多発している業種等を重点対象とした粉じん障害防止対策の徹底を図る。また、トンネル建設作業に従事する労働者の粉じんへのばく露を低減するため、「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」に基づく対策の徹底を図る。さらに、離職者を含めて、じん肺有所見者に対し、合併する肺がんの発生リスクに応じた健康管理の充実を図る。 作業環境管理については、個人ばく露量の測定の活用に係る検討を含め、作業の実態に合った測定方法を確立し、屋外作業場における粉じんへのばく露の低減を図る。さらに、作業環境測定結果を活用した効果的、効率的な作業環境管理の手法の確立を図る。防じんマスクについては、その性能の確保を図るため、買取試験を実施する。 腰痛等の減少を図るため、引き続き「職場における腰痛予防対策指針」による腰痛等の予防対策の徹底を図るとともに、人間工学的な観点等も踏まえた見直し等の検討を行う。 VDT作業における健康障害の防止を図るため、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の普及・定着を図る。 騒音障害及び振動障害の減少を図るため、騒音障害防止対策及び振動障害防止対策の実効性が確保されるよう見直しを検討し、必要な措置を講じる。 また、さく岩機、ピックハンマー等建設作業用の機器により騒音障害、振動障害が多発している現状に鑑み、機器を使用する事業者が機器の購入に際し低騒音・低振動のものを選択しやすくするため、騒音・振動発生機器について騒音・振動レベルの表示の導入を図る。 さらに、機械の包括的な安全基準に基づく措置の一環として、騒音・振動発生機器の製造事業者等に対して騒音、振動等の有害要因に係るリスク低減措置の実施、情報の提供等の徹底を図る。 また、電離放射線障害の発生の防止を図るため、被ばくの低減化等電離放射線障害防止対策の徹底を図る。 加えて、熱中症について、適切な予防対策を推進する。 | ||||
(2) | 化学物質による健康障害の予防対策 化学物質による健康障害を予防するため、化学物質の健康影響や労働者のばく露に係る国内外の情報の収集、化学物質による職業性疾病の発生事例の分析、国際貢献の観点も踏まえた日本バイオアッセイ研究センター等における化学物質の効率的・効果的な有害性の調査及びばく露状況の調査の実施を促進し、計画的かつ科学的に化学物質のリスク評価を行い、その結果に基づき、未規制の有害な化学物質による労働者の健康障害の予防対策を迅速に推進する。 また、職場で取り扱われる化学物質が多様で、作業形態等が固定的でなく変化している状況等に対応するためには、労働安全衛生法第58条の指針等に基づく、化学物質管理計画の策定、リスクアセスメントの実施及びその結果に基づく安全サイドの必要な措置などの事業者による自律的な化学物質管理の促進が必要である。 これらの事業者の取組を支援するため、効果的な実施方法の検討を行うとともに、事業者に対して、広範な化学物質に係る有害性情報、ばく露情報、リスクアセスメント事例、化学物質による健康障害の事例の提供、MSDSの普及・充実のためのデータベースの整備、化学物質管理を担当する者への研修等を行う。 さらに、国際機関による行動計画等に基づき、化学物質の危険・有害性の分類、MSDSを含めた表示方法の統一、開発途上国への支援等が求められており、これらを踏まえた表示制度の検討、整備等を行う。 がん原性を有する物質等、特に有害性の高い化学物質等については、専門家による検討等を踏まえ、その予防対策を推進するとともに、有害性が低い化学物質等に代替することが本質的な安全化につながることから、石綿等の有害性の高い化学物質等の代替化を促進する。さらに、石綿については、建築物の解体作業等における労働者のばく露の防止対策の徹底等を図る。 廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類、いわゆる「シックハウス症候群」に関連した化学物質、PCB廃棄物の無害化処理作業や化学物質に汚染した土壌の処理作業等における有害化学物質のばく露防止対策、内分泌かく乱物質に係る調査研究、有機溶剤や一酸化炭素による中毒防止対策及び酸素欠乏症等防止対策の推進を図る。 新規化学物質による健康障害を予防するため、新規化学物質を製造・輸入する事業者による有害性調査及びその結果に基づく健康障害防止措置の効率的でかつ効果的な実施を図る。 作業環境管理については、個人ばく露量の測定の活用に係る検討を含め、作業の実態に合った測定方法を確立し、屋外作業場における有害な化学物質へのばく露の低減を図る。また、作業環境測定結果を活用した効率的かつ効果的な作業環境管理の手法の確立を図り、化学物質のばく露防止対策の実施を促進する。作業環境測定結果による管理区分を決定するための指標である管理濃度については、科学的知見を踏まえ、その見直しを図る。さらに、防毒マスクについては、その性能の確保を図るため買取試験を実施する。 | ||||
(3) | メンタルヘルス対策 労働者の心の健康確保については、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」に基づき、事業者が事業場の状況を踏まえた適切な「心の健康づくり計画」を作成し、その計画に沿ったセルフケア、ラインによるケア等を内容とするメンタルヘルスケアの積極的な推進を図る。また、職場においてうつ病等への偏見をなくし、うつ病等の予防、早期把握とそれに続く適切な治療、職場復帰に結びつけられる職場体制の整備を図るとともに、労災病院、産業保健推進センター等の事業場外資源との効果的な連携を推進する。さらに、心的外傷後ストレス障害(PTSD)への対応方策の充実についても検討する。なお、メンタルヘルス対策の推進に当たっては、プライバシーの保護について特に配慮する。 自殺予防については、「職場の自殺予防マニュアル」の周知を図るとともに、相談体制の充実強化、産業保健と地域保健の関係機関が連携した自殺防止対策を推進する。また、有効な対策の策定に資するため、引き続き労働者の自殺に関する調査研究を行う。 | ||||
(4) | 過重労働による健康障害の防止対策 過重労働による健康障害の予防を的確に進めるため、過重労働となるような長時間の時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進などにより長時間労働を排除するとともに、長時間労働が発生し、疲労が蓄積するおそれがある場合には、産業医や地域産業保健センターの登録医の活用等により、その助言指導に基づく改善や、労働者への面接による保健指導等の健康管理対策の強化を図る。さらに、過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止措置の徹底を図る。 | ||||
(5) | 職場における着実な健康確保対策 労働者の心身の健康を確保し、職業性疾病や作業関連疾患を予防するため、産業医、衛生管理者等産業保健スタッフの選任の徹底と専門性の向上を図るとともに、健康診断の実施とその結果に基づく事後措置、職場巡視の実施とその結果に基づく改善措置等の作業関連疾患等の防止対策の充実・強化を図る。 また、産業医その他の産業保健関係者を支援する産業保健推進センター、小規模事業場に対して産業保健サービスを提供する地域産業保健センター、勤労者医療を提供する労災病院等のネットワーク化等による産業保健サービス機能の充実・強化を推進する。 なお、労働者の健康確保対策を効果的に推進するためには、労働者との信頼関係の確立が前提にあることから、健康診断結果等の健康情報等についてプライバシー保護の強化を図る。 以上の内容に加え、次の項目を推進する。
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(6) | 快適職場づくり対策 労働力人口の高齢化、女性の就業分野の拡大、就業形態の多様化等に対し、すべての労働者にとって働きやすい職場環境の実現を図るため、人間工学的な観点等を踏まえた職場快適化のための手法の開発・普及を図るとともに、事業場が作成する快適職場推進計画を評価する制度に加え、継続的かつ計画的な取組を評価する制度の導入を図る。また、快適職場づくりの一層の普及定着を図るため、快適職場推進計画認定事業場の公表等を行う。 さらに、WHOのたばこ枠組み条約の動向等を踏まえ、職場における効果的な分煙対策の知見の収集、分煙対策手法の開発・普及等を推進し、受動喫煙の防止対策等の充実強化を図る。 |
(1) | 中小規模事業場対策 中小規模事業場における労働災害の減少を図るため、法令で義務づけられた労働災害防止措置の履行の徹底を図るとともに、自主的安全衛生活動の促進を図る。 そのため、労働災害防止団体による自主的安全衛生活動の促進とその活動の中小規模事業場への浸透を強化するとともに、安全衛生情報の提供及びアクセスの充実強化を図る。安全衛生情報の提供に当たっては、労働保険事務組合、中小企業団体等のチャンネルを積極的に活用し、併せて、中小規模事業場からの求めに応じメールマガジン等の手法により安全衛生情報を提供する方式の導入を図る。 また、国から支援策を受けている期間だけでなく、その後も継続して自主的安全衛生活動に取り組めるよう、中小規模事業場内における自律的な安全衛生管理の仕組みづくりの整備等を積極的に推進する。 |
(2) | 労働安全衛生マネジメントシステムの活用促進 労働災害のリスクを合理的かつ体系的に減少させ、また、安全衛生管理のノウハウの的確な継承を図るため、さらに、就業形態の多様化等により、事業場において指揮命令系統の異なる労働者の混在が高まる中で、的確な安全衛生管理を進めるため、業種、企業規模に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの導入を積極的に推進する。 労働安全衛生マネジメントシステムの普及定着を促進するため、事業者の意欲を高める観点から、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」に基づくシステムが適切に導入され、かつ、安全衛生水準の段階的向上のためシステムが適切に運用されているかを、事業場からの求めに応じ外部から確認することのできる仕組みの導入を検討する。 また、事業場がリスクアセスメントを効果的に実施するためのマニュアルを業種別に策定し、その普及を図ること等により、中小規模事業場の自律的な安全衛生管理の促進を図る。 さらに、自律的な安全衛生管理が定着し、安全衛生水準が優良な事業場に対しては、優遇措置の在り方を検討しその導入を図る。 |
(3) | 事業者及び労働者による自主的な安全衛生活動の推進 事業者及び労働者は、労働災害防止の当事者であると同時に、職場の状況についても最も熟知している立場にあることを自覚し、安全衛生委員会の活動の活性化を図るものとする。また、労働者を含めすべての関係者に安全衛生委員会の活動状況に関する情報を提供し、意見を求める仕組みを導入し、関係者の関心の高揚と参加意識の醸成を図る。 一方、安全衛生委員会の設置が義務付けられていない小規模事業場においては、安全衛生委員会に代わるものとして関係労働者の意見聴取の機会を設けることとなっており、この場を活用し、労働者の意見を積極的に吸い上げ、労働安全衛生対策への反映を推進する。 さらに、安全と健康を先取りする職場風土づくりを促進するものとして効果的な手法である危険予知活動等の導入を促進し、自主的な安全衛生活動の促進を図るとともに、労働者の安全意識の高揚を図る。 |
(4) | 人的基盤の充実等 労働安全衛生分野の各種の資格については、技術の進歩等に応じる必要があることから、資格者に求められる知識、技能等のレベルを維持するための生涯研修制度等の導入を検討する。就業制限業務、作業主任者等の現場実務資格、現場作業者に対する安全衛生教育については、緊急時の対応に関し、講習内容の充実等を図る。さらに、危険に対する感受性を高め、その回避能力を体得する危険再認識教育等の充実を図る。 安全衛生意識の高い労働者を育成するためには、就業前の教育が効果的であることから、学校段階における教育との連携に努め、安全衛生に関する教育の充実を図る。 さらに、労働災害の防止を推進するためには、労働者の家族を含め国民一般の理解が必要であることから、あらゆる機会を通じて労働災害防止の重要性を訴え協力を求める。 |
(5) | 就業形態の多様化、雇用の流動化等に対応する対策 就業形態の多様化が急速に進みつつある中で、働き方に関わらずに同等の安全衛生条件を確保する観点から、施設設備等の管理権限を有する者による下請け労働者等も含めた施設設備等に関する労働災害を防止するための方策を検討する。 また、雇用の流動化が急速に進みつつある中で、雇用期間の長短に関わらずに同等の安全衛生条件を確保する観点から、雇入れ時教育を始めとする安全衛生教育の充実を図るとともに、継続的な健康管理が可能となる仕組みの導入を図る。 |
(6) | 高年齢労働者の労働災害防止対策 高年齢労働者の労働災害を防止するため、高年齢労働者の身体的特性に配慮した機械設備、作業環境及び作業方法の改善を推進する。また、人間工学的な観点等を踏まえた職場快適化のための手法の開発・普及を推進し、高年齢労働者も含めた全ての労働者にとって働きやすい職場環境の実現を図る。さらに、快適職場認定事業場の公表、職業安定機関等との連携も含め、その普及を積極的に支援する。 |
(7) | 外国人労働者対策 外国人労働者の労働災害を防止するため、コミュニケーション・ギャップを埋める上で有効な外国人労働者向けの分かり易い安全衛生教材の開発を進め、これらの教材を活用した雇入れ時の安全衛生教育等の徹底を図る。また、外国人労働者が日本の安全衛生情報を容易に入手できるようにするため、国際安全衛生センターによる外国語での情報提供の拡充を図る。さらに、外国人雇用事業場について労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等による安全衛生診断を促進する。 |
(1) | 情報提供体制の整備 安全衛生情報センターにおいては、既に、災害事例、法令通達等有用な安全衛生情報をインターネット上でアクセスできる体制をとっているが、引き続き、安全衛生情報センターから提供する情報の充実を図る。 また、安全衛生情報センターにおいては、安全衛生意識の高揚に寄与するため、労働災害を疑似体験できるバーチャル・リアリティ(VR)シアター及び3次元(3D)シアターが設置されているが、今後は、提供するコンテンツ(情報内容)の充実を図る。さらに、併設された産業安全技術館では各種の機械設備、保護具等を展示しており、これら体験型の3施設の機能を連携強化することにより、安全衛生情報センターを労働安全衛生分野における情報発信の拠点として位置付け、広く国民全般の安全に貢献する。 |
(2) | リスク評価及び調査研究の体制整備 労働安全衛生関係法令や施策を検討する際の基礎情報を得るために、科学的かつ実証的観点からリスクの評価、専門技術的な立場から労働災害の原因究明等を実施する調査研究機関の体制整備を検討する。 また、労働災害の原因調査については、人的要因及び物的要因にとどまらずに、その背景にある管理的要因にも踏み込んだ本質的な原因の究明を図るための災害分析手法の開発を行い、有効な再発防止対策に結び付ける仕組みを整備する。 労働安全衛生分野の調査研究については、労働災害の発生原因、防止対策等の自然科学的観点からのアプローチが中心であったが、今後は同分野での研究に加えて、労働災害防止対策の普及のための条件、費用対効果分析、社会システムの在り方等の社会科学的視野も踏まえて、より一層効果的、効率的な労働災害防止対策に取り組むこととし、特に産業安全研究所及び産業医学総合研究所においては、独立行政法人としての特徴を生かした調査研究開発機能の充実を図る。 さらに、労働安全衛生対策が産業現場全体のニーズ、科学的なリスク評価等を基礎として策定される必要があることから、調査研究機関、行政機関、産業界等の間で、調査研究課題の選定、調査研究成果の活用等に当たって緊密な連携を図る。 |
(3) | 労働災害防止団体等の活動の充実 労働災害防止団体等の安全衛生関係団体が、事業者等のニーズを踏まえた有効な支援サービスの開発を進め、その普及定着に積極的に取り組むことを促進する。 特に、業種別労働災害防止団体において、業種特有の有効なリスク低減対策に関する継続的な調査研究の実施を促進し、その成果を各分野における労働災害防止対策に活用するとともに、安全衛生管理活動を引き続き効果的に進めるために、安全衛生に関する専門スタッフのノウハウを継承し活用する方策を検討する。 また、労使による労働災害防止活動を推進するという観点から、労災防止指導員を効果的に活用することにより、中小規模事業場等における安全衛生管理の向上を図る。 |
(4) | 労働安全衛生サービスのアウトソーシング化への対応 中小企業においては労働安全衛生のすべての分野について専門的な知識・ノウハウを有したスタッフや機材を抱えておくことが困難であり、大企業においても専門的なサービスについてアウトソーシング化のニーズが高まりつつある状況を踏まえ、企業からの依頼に応じて専門的な労働安全衛生サービスを提供する質の高い外部専門機関の活用及びその活用による安全衛生管理の在り方の検討を行う。 |
(5) | 国際的な視点に立った行政展開 ILO条約を始め安全衛生に関連する国際的な条約、規格等については、国内制度への取り入れを図るとともに、その策定段階から積極的に参画し、我が国から提案を積極的に行う等国際貢献の一層の推進を図る。 また、海外進出企業で働く日本人労働者の安全衛生を確保するため、海外進出企業に対する安全衛生セミナーの開催、国際安全衛生センターを通じた安全衛生情報の提供を推進するとともに、労災病院等の医療スタッフによる海外巡回健康相談の実施等を推進する。 さらに、開発途上国に対する安全衛生分野の技術協力については、積極的に推進する。 |