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資料3−1


水質検査のためのサンプリング・評価について

(担当主査:国包委員)


 前々回(10月7日)の本委員会において、水質検査のためのサンプリング・評価については、次の事項について検討することとされた。

1.水質検査のためのサンプリング基準


2.水質検査結果の評価基準

 このため、本委員会委員以外のこの分野における専門家等の協力も得て、本委員会に対し、案を提示すべく検討を進めているところであり、その検討状況は別紙のとおりである。
 なお、先に水質基準が改正され平成14年4月1日より施行されることになっている鉛に関しては、その水質検査のための採水方法につき別途検討しており、その結果については資料3−2「鉛に係る水質検査における試料採取方法について」に取りまとめたとおりである。


水質検査に係る採水箇所・箇所数・頻度等と評価方法の考え方について(案)


 水道の水質基準項目には、健康に関連する項目29項目と、水道水が有すべき性状に関連する項目17項目の合計46項目があり、このほか、快適水質項目13項目及び監視項目35項目と、ゴルフ場使用農薬にかかる水道水の水質目標が通知により定められている。

 現在、これらの水質基準等は見直しの途上にあり、新たな基準項目の設定等についてはまだ結論が得られていないことから、ここでは、水質検査に係る採水箇所・箇所数・頻度等については、現行の水質基準を前提にその基本的考え方について整理した。

1.採水方法

1.1 定期の水質検査

 水道水の定期水質検査における採水箇所・箇所数・頻度等についての考え方の試案を表−1に示す。

(1)  採水箇所については、給配水システムにおいて濃度変化することが予想される項目は給水栓で、濃度変化することが予想されない項目は浄水場の出口等送配水システムの流入点で、それぞれ採水することを基本的とする。さらに、給水栓の採水箇所については、水が停滞しやすい場所等、水質が悪化する恐れの高い所を含めて選ぶようにすることが必要である。

(2)  採水箇所数については、原則として、水源系統ごとに少なくとも1箇所、さらに水道の規模に応じて複数の箇所を設定することが必要である。規模に応じた必要採水箇所数は今後の検討課題である。

(3)  採水頻度に関しては、取りあえず最低限必要な項目に関しては月1回、その他の項目に関しては年4回を原則として設定している。これは、次のような考え方に基づくものである。

  
(1)  表−1に示す採水頻度は、簡易水道までを含めた全国の水道に一律に適用されるべき最低限の頻度である。

(2)  現行水質基準の健康に関連する項目についての検出実態・濃度変動特性や、集水域における汚濁源からのそれらの排出実態等から見た場合、農薬類を除いては、その水道水中の濃度が頻繁に水質基準を超えて大きく変動したり、ある程度以上の期間にわたって継続的に水質基準を超えることは考えにくい。したがって、採水頻度を年4回と低く設定しても、その間に発生するかもしれない水質基準を超える濃度ピークを見逃す可能性は非常に低い。

(3)  現行の健康に関連する項目に係る水質基準は、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を除いては、短期暴露でなく長期暴露を念頭に置いて定められており、このような考え方は今後も踏襲されることになっている。したがって、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素以外の項目については、採水頻度を年4回と低く設定した場合、その間に発生するかもしれない水質基準を超える濃度ピークを万一見逃がしたとしても、前記のようなことから、その健康影響が実質的に問題となることはまずないと考えられる。

(4)  硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が問題となるのは地下水を水源とする場合であり、その地下水中の濃度変動は一般に比較的緩やかなので、採水頻度を年4回とした場合でも特に支障が生じることは考えられない。

(5)  水質検査は、水道水が水質基準を満たしていることを確認するために行うものであり、採水頻度を高くすればするほど、水道水質の基準適合性をより高い精度で確認することができる。しかし、水質検査そのものによって水道水の安全性が高まるわけではない。しかも、頻度を高くすればそれに応じてより多くの労力やコストが必要となる。このような観点から、採水頻度だけを必要以上に高くすることは得策ではない。

(6)  水道水の安全性を確保するためには、水質検査を行うことよりもむしろ、消毒を初めとする浄水処理や水道水源から給水栓までの水質の監視及び管理を、適切に行うことの方がはるかに重要である。したがって、製品検査としての水質検査はむしろ必要最小限にとどめ、それとは別に、浄水処理における日常の工程管理や水道システム全体を通した水質の監視及び管理に、より多くの力を注ぐことが好ましい。

 上記のうち特に(6)で記した、浄水処理における日常の工程管理や水道システム全体を通した水質の監視及び管理に関しては、別途、何らかの形で制度として取り入れる必要がある。表−1で示した採水頻度は、このようなことに関する制度化を前提とするものであり、その実現を見ないまま単に採水頻度だけを低くすることは妥当性を欠くものである。

 なお、改正後の水質基準において選択基準項目として指定されていて、水質検査義務免除規定の適用を受ける水質項目についても、水道水質に状況の変化がないことを定期的に確認するため、少なくとも3年に1回程度の頻度で水質検査を行う必要があるものと考えられる。

 本案はあくまで検討のための試案であり、本委員会での議論等を踏まえて更に検討を進め、2月の会議までに成案を提案したい。

(4)  また、採水方法に関しては、流水を採取して試料とすることを原則とするが、多くの場合、給水過程においてその濃度が著しく変化する鉛に関しては、別途記しているように滞留水を採取して試料とする。


1.2 臨時の水質検査

 臨時の水質検査は、水道法第20条に基づき、水質基準に適合しないおそれがあるときに行う検査である。具体的にどのような場合に行うべきかについて、「水道法の施行について」(昭和49年7月26日環水第81号水道環境部長通知)において以下のように示されている。
 臨時の水質検査は次のような場合に行うこと。
   水源の水質が著しく悪化したとき。
 水源に異常があつたとき。
 水源付近、給水区域及びその周辺等において消化器系伝染病が流行しているとき。
 浄水過程に異常があつたとき。
 配水管の大規模な工事その他水道施設が著しく汚染されたおそれがあるとき。
 その他特に必要があると認められるとき。

 以上を踏まえつつ、具体的な案については今後、検討を進めることとしたい。


1.3 給水開始前の水質検査

 水道法第13条に基づき、水道事業者等は配水施設以外の水道施設又は配水池を新設・増設・改造した場合にその施設を使用して給水を開始しようとする時に水質検査等を行う必要があり、給水開始前の水質検査については、水道法施行規則第10条において、水質基準に関する省令の46項目及び消毒の残留効果について、行うものとされている。
 昭和49年の通知「水道法の施行について」も踏まえて整理すると、検査対象は「新設、増設又は改造に係る施設(配水施設以外の水道施設又は配水池)を経た給水栓水」であり、採水場所は「水道施設の構造、配管の状態等を考慮して最も効果的な場所を選ぶ。必要に応じて水源、配水池、浄水池等における水質についても検査することが望ましい」とされ、検査項目は全項目検査(省令の表の上欄に掲げるすべての事項の検査)及び消毒の残留効果(残留塩素)とされている。

 以上を踏まえつつ、具体的な案については今後、検討を進めることとしたい。


2.評価方法

 現在の考え方(参考)を踏まえつつ、
・健康に関連する項目
・水道水が有すべき性状に関連する項目
について、それぞれ具体的な案の検討を進めることとしたい。


(参考)

「水質基準に関する省令の施行に当たっての留意事項について」(平成5年12月1日衛水第227号水道整備課長通知)抜粋

2 水質異常時の対応

(1) 健康に関連する項目

(1) 基準値超過が継続することが見込まれる場合の措置

 基準値超過が継続することが見込まれ、人の健康を害するおそれがある場合には、取水及び給水の緊急停止措置を講じ、かつ、その旨を関係者に周知させる措置を講じること。具体的には次のような場合が考えられる。

 水源又は取水若しくは導水の過程にある水が、浄水操作等により除去を期待するのが困難な病原生物若しくは人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質により汚染されているか、又はその疑いがあるとき
 浄水場以降の過程にある水が、病原生物若しくは人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質により汚染されているか、又はその疑いがあるとき
 塩素注入機の故障又は薬剤の欠如のために消毒が不可能となったとき
 工業用水道の水管等に誤接合されていることが判明したとき

 また、水源又は取水若しくは導水の過程にある水に次のような変化があり、給水栓水が水質基準値を超えるおそれがある場合は、直ちに取水を停止して水質検査を行うとともに、必要に応じて給水を停止すること。

 不明の原因によって色及び濁りに著しい変化が生じた場合
 臭気及び味に著しい変化が生じた場合
 魚が死んで多数浮上した場合
 塩素消毒のみで給水している水道の水源において、ゴミや汚泥等の汚物の浮遊を発見した場合

(2) 関係者への周知

 水質に異常が発生したこと又はそのおそれが生じたことを、その水が供給される者又は使用する可能性のある者に周知するときは、テレビ、ラジオ、広報車を用いることなどにより緊急事態にふさわしい方法をとること。

(3) 水源の監視

 原水における水質異常を早期に把握するため、各水道にあっては水源の監視を強化するとともに、水道原水による魚類の飼育、自動水質監視機器の導入等を図ること。
 また、水源の水質異常時に直ちに適切な対策が講じられるよう、平常より関係者との連絡通報体制を整備すること等を図ること。

(2) 水道水が有すべき性状に関連する項目

 基準値を超過し、生活利用上、施設管理上障害の生じるおそれのある場合は、直ちに原因究明を行い、必要に応じ当該項目に係る低減化対策を実施することにより、基準を満たす水質を確保すべきであること。なお、色度、濁度のように、健康に関連する項目の水質汚染の可能性を示す項目や、銅のように過剰量の存在が健康に影響を及ぼすおそれのある項目については、健康に関連する項目に準じて適切に対応すること。


3 水質検査結果の評価

 水質異常時の対応も含め、水質検査結果の評価は「健康に関連する項目」及び「水道水が有すべき性状に関連する項目」のそれぞれの特性に応じて、以下のとおり行うこととされたい。

(1) 健康に関連する項目

(1) 短期的な検査結果から評価すべき項目

 一般細菌、大腸菌群については、その水道水中の存在状況は病原生物による汚染の可能性を直接的に示すものであるので、それらの評価は、検査ごとの結果の値を基準値と照らし合わせて行うこと。
 シアン、水銀については、生涯にわたる連続的な摂取をしても、人の健康に影響が生じない水準を基とし安全性を十分考慮して基準値を設定したものであるが、従前からの扱いを考慮して、検査ごとの結果の値を基準値と照らし合わせて検査結果の評価を行うこと。
 これらの項目が基準値を超えていることが明らかになった場合には、2(1)により所要の対応を図るべきである。

(2) 長期的な検査結果から評価すべき項目

 長期的な検査結果から安全性の評価を行う項目であっても、検査ごとの結果の値が基準値を超えていることが明らかになった場合には、直ちに原因究明を行い所要の低減化対策を実施することにより、基準を満たす水質を確保すべきであり、基準値超過が継続すると見込まれる場合には、2(1)により所要の対応を図るべきである。
 なお、監視項目についてもこれに準じた対応を図ること。
 なお、指針値が暫定的な項目については、今後の知見の集積等により指針値が変わりうるものであることを踏まえ、測定値の評価に際して配慮すること。

(2) 水道水が有すべき性状に関連する項目

 色、濁り等生活利用上あるいは施設管理上の要請から、水道水に基本的に必要とされる項目については、その基準値を超えることにより利用上、機能上の障害を生じるおそれがあることから、検査ごとの結果の値を基準値と照らし合わせることにより評価を行うこと。
 基準値を超えていることが明らかになった場合には、2(2)により所要の対応を図るべきである。


表−1 定期水質検査における採水の箇所、箇所数及び頻度、並びに、採水方法

区分 水質項目(注1) 採水箇所 採水箇所数 採水頻度 備考(採水方法等)
健康に関連する項目 微生物及び指標微生物 一般細菌、大腸菌群 給水栓 (水源系統数等に応じて規模別に別途規定) 月1回 流水
金属 カドミウム、水銀、セレン、ヒ素、六価クロム 浄水場(注2) 水源系統ごと(注3) 年4回(*)  
給水栓 (水源系統数等に応じて規模別に別途規定) 年4回 滞留水(別途規定)
無機イオン シアン、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、フッ素、 浄水場(注2) 水源系統ごと(注3) 年4回(*)  
有機化合物 四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、シス-1,2-ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼン 浄水場(注2) 水源系統ごと(注3) 年4回(*)  
トリハロメタン類 クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルム、総トリハロメタン 給水栓 (水源系統数等に応じて規模別に別途規定) 年4回 流水
農薬 1,3-ジクロロプロペン、シマジン、チウラム、チオベンカルブ 浄水場(注2) 水源系統ごと(注3) 使用時期を選んで年4回(*)  
水道水が有すべき性状に関連する項目 金属 亜鉛、鉄、銅、マンガン 給水栓 (水源系統数等に応じて規模別に別途規定) 年4回 流水
無機イオン等 ナトリウムイオン、塩素イオン、硬度、蒸発残留物 浄水場(注2) 水源系統ごと(注3) 年4回(*)  
有機化合物等 陰イオン界面活性剤、1,1,1-トリクロロエタン、フェノール類、過マンガン酸カリウム消費量 浄水場(注2) 水源系統ごと(注3) 年4回  
その他の性状項目 pH値、味、臭気、色度、濁度 給水栓 (水源系統数等に応じて規模別に別途規定) 月1回(**) 流水

1) 現行水質基準に基づく。
2) 浄水場の出口等、送配水システムへの流入点。
3) 同じ水源系統であって浄水処理方式が異なる場合には、処理方式ごとに採水して検査を行う。
*) 過去の実績等に応じて3年に1回まで頻度を下げることも可。
**) 過去の実績等に応じて年4回まで頻度を下げることも可。


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