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中間報告書


「セルフメディケーションにおける
一般用医薬品のあり方について」

〜 求められ、信頼され、安心して使用できる一般用医薬品であるために 〜


平成14年11月8日

一般用医薬品承認審査合理化等検討会



<目次>
I.はじめに

II.国民のニーズに対応した一般用医薬品の必要性

III.一般用医薬品の役割の変化等

1.一般用医薬品の役割の変化
2.一般用医薬品が具備すべき特性
IV.一般用医薬品の適正使用と関係者の役割
1.使用者である国民に求められること
2.製薬企業・業界の役割
3.薬剤師等の役割
4.行政の役割
V.提言−具体的な方策
1.「求められる」一般用医薬品であるために
(1) 国民のニーズを反映した一般用医薬品の範囲の見直し
(2) スイッチOTC薬の開発の促進と安全対策の充実
(3) 漢方薬・生薬の活用
(4) 剤型の多様化
2.「信頼され、安心して使用できる」一般用医薬品であるために
(1) 安全対策、市販後調査の強化
(2) 再評価の推進
(3) 情報提供の拡充
3.承認審査の流れの改善等
(1) 審査体制の整備
(2) 申請区分の見直し、添付資料の軽減化

(別紙)一般用医薬品承認審査合理化等検討会名簿

(参考)一般用医薬品承認審査合理化等検討会開催状況



I.はじめに

 近年、急速な高齢化の進展や生活習慣病の増加などの疾病構造の変化、生活の質(QOL)の追求等に伴い、自分の健康に強い関心を持つ国民が増えるとともに、薬局や薬店の薬剤師等による適切なアドバイスの下で、身近にある一般用医薬品を利用するセルフメディケーション*の考え方が広がりつつある1)
 一般用医薬品のあり方等に関しては、これまでも様々な場で検討されてきた3~6)。しかしながら、以前に比べて高齢者の全人口に占める割合がさらに増加し、国民の健康ニーズも多様化している中で、今後、保健・医療資源としての一般用医薬品の有効活用を進めていくためには、国民の新たなニーズに対応し得る一般用医薬品を育成していく必要がある。
 一般用医薬品承認審査合理化等検討会では、本年6月以降、一般用医薬品をめぐる諸問題について検討を行ってきたが、今般、セルフメディケーションにおける一般用医薬品のあり方について以下のとおり意見をとりまとめることができたので、中間報告する。
* WHOによれば、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調(minor ailments)は自分で手当てすること」とされている2)

II.国民のニーズに対応した一般用医薬品の必要性

 生活環境の改善、医学・薬学の進歩等は、世界に冠たる長寿を我が国にもたらした。しかしその一方で、生活習慣病の増加や痴呆、寝たきり等の要介護状態になる者の増加等の問題がみられるようになってきた。このような状況を背景に、例えば保健福祉動向調査(1994年度)によれば、"健康への不安を感じている人"の割合は男女各年代を通じ約40%に達している。また、自分の健康に強い関心を持つ国民が増える一方で、国民の健康に関するニーズも多様化している。したがって、簡便に利用できる一般用医薬品に対する潜在的需要も少なくないと思われる。そのような中で、国民の新たな健康ニーズに対応した質の高い一般用医薬品を提供していくためには、一般用医薬品の役割を見直した上で、国民の新たなニーズに対応し得る役割・機能を備えた一般用医薬品の開発が促進されるよう、必要な環境整備を図っていく必要がある。[資料1、2]

III.一般用医薬品の役割の変化等

1. 一般用医薬品の役割の変化

 現在の一般用医薬品の役割は、主に「軽度な疾病に伴う症状の改善」、「健康の維持・増進」及び「保健衛生」であるが7)、国民の疾病・健康に対する意識や知識、ニーズが様変わりする中で、セルフメディケーションの手段としての一般用医薬品の役割も変化していくべきである。今後はこれらに加え、「生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防*,**(科学的・合理的に効果が期待できるものに限る)」、「生活の質の改善・向上」の各分野についても、その新たな役割として検討していくことが必要と考えられる。
 また、日常の健康管理のための手段の一つとして尿糖・尿蛋白や妊娠検査薬が使用されていることに鑑み、「健康状態の自己検査」についても一般用医薬品の役割に加えるとともに、一般用医薬品の役割の変化に対応し、自分の健康状態を自分でチェックできる一般用検査薬の拡充を図ることも必要と考えられる。
 以上のことを踏まえると、一般用医薬品とは、

「一般の人が、薬剤師等から提供された適切な情報に基づき、自らの判断で購入し、自らの責任で使用する医薬品であって、軽度な疾病に伴う症状の改善、生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防、生活の質の改善・向上、健康状態の自己検査、健康の維持・増進、その他保健衛生を目的とするもの」
と定義される。
* ここでいう予防とは、症状発現の防止及び症状悪化の抑制の意味である。
** 初回医師の診断を受けた後の使用を含む。
2. 一般用医薬品が具備すべき特性

 一般用医薬品が本来期待される役割・機能を十分果たすためには、次のような特性を具備していることが求められる。
(1) 品質・有効性・安全性が確保されていること。(適切な情報伝達によりこれらを確保することを含む。)
(2) 国民が自分で選択でき、適正に使用するための情報が整備されていること。
(3) 生活環境、国民の健康ニーズ等が考慮されていること。
(4) 医学・薬学等(衛生学・栄養学・保健学など関連科学領域を含む)の最新の科学水準が反映されていること。

IV.一般用医薬品の適正使用と関係者の役割

 国民が医療機関を受診する前後で適切に一般用医薬品を使用するためには、製薬企業・業界、薬剤師等及び行政によるセルフメディケーション普及活動や適正使用にかかる情報提供をより積極的に行っていくとともに、初等・中等教育において、医薬品の基本的な事項に関する教育を行うことが重要である。
 現状でも、医薬品や薬物乱用防止の教育が行われている例はあるが、医薬品の有効性・安全性とは何かといった医薬品の本質が理解できるような教育が行われることが必要である。
 我が国でも、小学生、中学生(1、2年生)を対象にして、薬の基礎知識を教育している事例があり、また、フランスでは、既にこういった医薬品教育が行われているといわれている。それらの事例を研究しつつ、教育機関へのアプローチを検討することが望まれる[資料3]。その際、教育現場に配置されている学校薬剤師の活用が図られるよう、学校薬剤師会等の関係者との協力関係を構築することも考慮すべきである。
 一方、薬剤師が一般用医薬品に関して国民に十分情報提供できるよう、大学薬学部、薬科大学における教育の充実を図ることも重要である。

1. 使用者である国民に求められること

 一般用医薬品が適正に使用されるためには、一般用医薬品の使用者である国民が、自己責任の自覚を持つことが先ず求められる。そのためには、日常の健康管理に努め、かかりつけ医師、かかりつけ薬局を確保し、適切な情報の収集に努め、さらに一般用医薬品の使用に当たっては、以下のことに留意する必要がある。
(1) 購入時、薬剤師等に相談する
(2) 添付文書をよく読み理解する
(3) 得られた情報に基づき適正使用に努める
(4) 有害事象が発生した場合は、薬剤師等にその旨を伝えるとともに、必要な場合は早期に受診する
 

2. 製薬企業・業界の役割

 製薬企業・業界には以下の役割を積極的に果たす責務がある。そのためには、個別企業だけではなく、製薬企業団体等が行政、医師会・薬剤師会等の協力を得て、出版物の作成、健康フォーラムの開催等を行い、インターネット等様々な方法で一般用医薬品の適正使用のために必要な情報を提供するよう努めるべきである。
(1) 国民の健康ニーズに対応した安全で有効な一般用医薬品の開発・改良
(2) 迅速な安全情報の収集・評価・提供及びその実施体制の充実
(3) 国民に分かりやすい適正使用情報の提供
 

3. 薬剤師等の役割

 薬剤師等は、医薬品の専門家として地域の中で国民の医薬品に関する相談等に応じることにより、一般用医薬品の適正使用に際して、その信頼性を高めることが求められている。そのためには、次の役割を果たすべきである。
(1) 一般用医薬品の適切な選択及び使用法・保管法等の相談応需
(2) 一般用医薬品を使用する人の自己の健康状態に対する理解度や症状等を考慮した医薬品使用の可否判断と必要に応じた受診勧告
(3) 市販後調査(PMS)への協力を含む使用後のフォローアップ及び使用実態試験(AUT)への参画
(4) その他、健康増進・疾病予防活動(健康日本218)等)や健康教育への協力、療養環境等の保全(衛生害虫対策を含む)等
 

4. 行政の役割

 一般用医薬品の適正使用の推進を図る上で行政が果たす役割は極めて大きい。製薬企業・業界、薬剤師等及び国民それぞれが担うべき役割を果たすための行政的な基盤整備を図る必要がある.
(1) 一般用医薬品の適正使用に関する啓発・教育活動の促進支援
(2) 一般用医薬品に係る情報提供システムの構築
(3) 申請相談体制の充実等、一般用医薬品の開発を支援するための国の一般用医薬品承認審査体制の見直し
(4) 都道府県における一般用医薬品の承認審査能力の向上
(5) 万一、有害作用がみられた場合の迅速な対応

V.提言−具体的な方策

 一般用医薬品がセルフメディケーションの重要な手段として位置付けられ、有効活用されるためには、セルフメディケーションの主体者である国民から求められ、信頼され、安心して使用できる一般用医薬品でなくてはならない。

1. 「求められる」一般用医薬品であるために

 求められる一般用医薬品であるためには、社会環境の変化に応じて迅速に国民の健康ニーズを反映することが重要である。そのためには、以下の方策が考えられる。

(1)  国民のニーズを反映した一般用医薬品の範囲の見直し

 III.1で述べたように、これまでの一般用医薬品の範囲・領域に加えて、緩和な効果が期待できる領域として「生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防(科学的・合理的に効果が期待できるものに限る)」、「生活の質の改善・向上」及び「健康状態の自己検査」分野の拡充を図るべきである。また、既存の範囲・領域についても、一般用医薬品として承認前例のない分野の開発を検討すべきであろう(注釈については、III.1参照)。
(例)
(1) 生活習慣病*等の疾病に伴う症状発現の予防:
検査で軽度の血清高コレステロール、高血圧、高血糖が発見され、そのままにしておくと、将来、高コレステロール血症、高血圧症、糖尿病等の生活習慣病の発症が予測される場合の使用**
花粉、ハウスダスト(室内塵)などによるくしゃみ・鼻水・鼻づまり・頭重等のアレルギー症状の発現の予防 等
(2) 生活の質の改善・向上:
発毛、禁煙補助、不眠、軽い尿もれ、肥満 等
(3) 健康状態の自己検査:
侵襲がないか又は少ない測定項目 等
(4) 軽度な疾病に伴う症状の改善(一般用医薬品として承認前例のないもの):
創傷面の化膿の防止・改善、膣カンジタ(膣のかゆみ、おりもの)の改善、口唇ヘルペスの改善<いずれも外用薬> 等

*生活習慣病については運動療法及び食事療法が基本となる。
**効能・効果の具体的な表現については別途検討する必要がある。

(2) スイッチOTC薬の開発の促進と安全対策の充実

 1) スイッチOTC薬の考え方

 これまでスイッチOTC薬の開発は、医療用医薬品として使用されているもののうち、一般用医薬品として承認前例のある薬効群であって、軽度な疾病の症状の改善をもたらすものを中心に行われてきた[資料4]。
 今後は、これらの分野に加えて、上で述べたように、生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防、生活の質の改善・向上等の分野についても、スイッチOTC薬の開発を積極的に進め、国民の選択肢を拡大することが望まれる。その際には、1998年に中央薬事審議会一般用医薬品特別部会で示された「スイッチOTC薬が申請された場合の承認審査の考え方」を踏まえた上で、海外でスイッチされている成分や、英国、米国などで公表されているスイッチ成分候補リストも参照するなど、国際的整合性を図りつつ推進すべきである[資料5、6、7]。
 開発の促進に当たっては、薬事・食品衛生審議会において、医療用としての十分な使用実績等を考慮して一般用として使用可能な成分、効能の範囲等を定期的に明らかにする他、臨床試験の負担を軽減するなど開発の促進を図るとともに、行政においては、米国FDAにおけるOTC審査部門のような一般用医薬品の専任審査部門の設置や、スイッチOTC薬の申請相談体制の充実を図るなど、承認審査体制を整備する必要がある[資料8]。
 安全対策は全ての医薬品に共通することであり、以下に記すような役割分担が各々あるが、スイッチOTC薬については、特にその充実が求められる。
(1) 製薬企業の役割:適正使用情報の提供、安全性情報の収集・評価・提供及びその実施体制の充実、国への副作用報告等
(2) 薬剤師の役割:適正使用情報の提供、製薬企業による副作用情報収集等への協力、国への副作用報告等
(3) 国民の役割:情報提供を求め、添付文書等をよく読み、有害事象が発現した場合には迅速に連絡する等
(4) 行政の役割:安全性情報の収集・評価とその結果に基づく迅速な対応、一般用医薬品の安全性情報提供システム構築等
 なお、スイッチOTC 薬の開発時及び市販後の留意点については、[資料9]に示したとおりである。
 

 2) 評価方法としての使用実態試験(Actual Use Trial:AUT)[資料10〜13]

 AUT とは、実際の使用場面に近い条件下での被験者における使用実態(使用パターンと行動)から一般用医薬品としての適性及び有効性・安全性を評価することを目的として行う、薬局において薬剤師が実施する試験である(いずれかの時点で医師等専門家の協力があることが前提)。スイッチOTC 薬の人での評価を行うに当たっては、臨床試験に代えてAUT を活用することも一つの方法として考えられる。現在実施されている臨床試験の問題点及びAUT 導入に関し留意すべき事項は、以下のとおりである。
@) 一般用医薬品を臨床試験(治験)で評価した場合の問題点
 現行の医療機関における臨床試験(治験)では、一般用医薬品が使用される状況(国民が自分の判断で薬を選び,使用する)を反映していないことから、国民が自ら使用した場合の評価が難しいという問題点を内在している。
A) 一般用医薬品の臨床評価におけるAUTの位置付け
 一般用医薬品として開発する際、医療用での使用成績等を考慮した上で、「国民が一定の情報に基づき適正に使用できるか否か検討する」ことが必要な場合には、AUT を実施することが有用であると考えられる。
B) AUT導入における留意点等
 AUTを実施する場合に留意すべき事項は以下の通りである。なお、現在のところ我が国では薬局においてAUTの実施経験がほとんどなく、必要な法的整備もまだなされていないこと等から、当面は、市販後一定期間を再審査的な期間として設け、その中でAUTを実施し、一般用医薬品としての適性及び有効性・安全性を総合的に評価することも一つの方法と考えられる。
(1) AUT実施体制の整備
(2) 未承認医薬品(試験薬)を薬局で取扱える法的裏付け
(3) 実施薬局の要件
(4) 責任薬剤師の研修,資格等
(5) AUT実施に際しての事前相談システムの構築
(6) AUTの適用(一般用医薬品の評価への導入)

(3) 漢方薬・生薬の活用
 
 1) 一般用漢方処方の見直し[資料14]

 一般用漢方製剤については、昭和40年代末に当時の厚生省より210の処方について承認審査の内規が公表された。その後30年ほどが経過する中で、生活環境の変化や急激な人口の高齢化に伴う疾病構造の変化等に伴い、210処方が現在の様々な国民のニーズに合致しなくなってきた面もあることから、次のような事項を検討する必要がある。
(1) 処方の選別
 疾病構造の変化等に対応した、処方の追加・削除等
(2) 処方内容の改正
 各人の体質等(「証」という)による「しばり」(制限)を必要に応じて明確化。また、効能・効果を現代に即した症状表現へ変更・追加する等
(3) 情報提供等
 漢方処方中の生薬の分量(配合量、満量に対する比率)やエキス抽出溶媒の分かりやすい表示、一般用漢方処方で用いられている生薬については、品質確保や情報公開等を目的として日本薬局方等への収載等。

 2) 生薬製剤の評価(承認審査)について[資料15]
(1) 国内で長期間医薬品として使用されてきた生薬
 これら生薬は我が国では漢方処方に配合されたり、民間薬として用いられたりするなど、有力な医薬品素材として古くから伝承され今日に至っており、各時代を通じて少なからぬ役割を果たしてきた。現在のところ、「刻み」または「末」として承認されている約30種を除いては単味の医薬品としてほとんど承認されていないが、一般用医薬品の範囲拡大のためにも具備すべき特性を考慮した基準等を策定するなど、今後とも引き続き積極的に維持存続を図るよう検討が必要である。
(2) 国外で医薬品等として使用されてきたいわゆる西洋ハーブ
 いわゆる西洋ハーブのうち、その作用等からみて医薬品成分として取り扱うことが妥当なものがあると考えられる場合には、その取扱いについて、海外での取扱い事例も参照しつつ検討する必要があろう。
(4) 剤型の多様化[資料16]

 現在は、薬効群毎に剤型規制があるが、高齢社会を迎え、セルフメディケーションの中で一般用医薬品がより有効活用されるためには、高齢者が使用し易い剤型を幅広く提供できるための環境整備を図っていくことが必要である。
 そのためには、現状の剤型に係る制限を緩和し(注射薬、経管投与剤、点耳剤など医師の指導監督下で使用することが適当と考えられる剤型を除く)、ゼリー剤、ヨーグルト剤等の高齢化に対応した剤型の他、Day & Night剤といった日中服用する処方の製剤と夜間服用する処方の製剤とを組み合わせて1剤とするような製剤についても認めていく方向で検討する必要がある。
 また、漢方・生薬製剤についても、その特性を発揮できるような剤型について検討すべきであろう。
 さらに、剤型と一体である包装容器(材質・形状)についても、操作性の高い包装容器の活用によってさらに服用コンプライアンスの向上が期待できることより、剤型と同様に制限を緩和すべきである。

2. 「信頼され、安心して使用できる」一般用医薬品であるために
 
(1) 安全対策、市販後調査の強化

 スイッチOTC薬の項でも述べたように、一般用医薬品が適正に使用されるためには、製薬企業・業界、薬剤師等、国民の各々に求められる事項があり、それらを明確にして関係者に徹底する必要がある[資料17]。
 今般の薬事法改正により、市販後安全対策のより一層の充実・強化が図られることになっているところから、一般用医薬品の市販後安全対策についても強化していく必要がある。
 製薬企業においては、薬局等に対する情報の提供や副作用情報等の収集に努めること、また、薬剤師等においては、国民に対する適正使用情報の提供等に努めることが、一般用医薬品の市販後安全対策の基本となるが、今後以下の点について検討すべきである。
(1) 副作用等情報及び適正使用の確保に関する情報の収集の徹底について
(2) 国民への情報提供のさらなる徹底について
(3) 製薬企業による副作用等情報の収集に対する医薬関係者の協力のあり方について
(4) 国民による薬に対する理解の向上のための方策について
 

(2) 再評価の推進[資料18]

 一般用医薬品は国民自らの判断で使用されることから、その評価にあたって安全性の確保に重点がおかれてきたが、最近では効き目のより確かな一般用医薬品を求める傾向が増加している。その結果、安全性だけでなく有効性の確保についても重点をおくことが求められてきていることから、最新の科学水準に照らして再評価を行うことが必要である。
 再評価の実施に当たっては、以下の項目について逐次検討していく必要がある。
(1) 製造承認基準が制定されている薬効群については、配合成分の追加・削除・組合せ、効能・効果表現の整理、基準間の整合性、各成分の安全領域に基づいた配合量などについて見直しを行い、その結果に基づき再評価を実施する。
(2) 製造承認基準が制定されていない薬効群については、一定の基準に従って優先度の高い薬効群から製造承認基準を制定し、それに基づいて再評価を実施する。
 これら製造承認基準の見直し・制定にあたっては、米国のモノグラフ作成のプロセスを参考に、専門家による委員会を設置し検討することも考慮するとともに、科学技術水準の進展をみつつ、定期的に見直す必要がある。
 

(3) 情報提供の拡充

 国民がセルフメディケーションにおいて一般用医薬品を適正に使用するためには、必要な時に適切な情報を容易に入手できるような仕組み作りが必要である。
 製薬企業及び薬剤師等には、医薬品の販売時に購入者に対し、医薬品の適正な使用のための情報を提供するよう努めなければならないことが薬事法で規定されている。
 製薬企業は、平成14年3月末日までに「一般用医薬品使用上の注意記載要領」(平成11年8月12日医薬発第938号)に基づいて添付文書の記載を分かりやすく改めることとされていたところであり、今後も、添付文書については、当記載要領に基づき、国民、特に高齢者等が適切に判断できるような情報提供に努めるべきである。
 また、医薬品に対する反応性には個人差があり、まれに予測できない有害作用を引き起こす可能性のあることや、健康被害が発生した場合の適切な対処法等についても、製薬企業が作成する添付文書等でより一層の情報提供がなされるべきである。また、一般用医薬品の購入に際して、薬剤師等から直接国民一人一人に十分な情報提供がなされるべきである。
 行政においては、製薬企業・薬剤師等の関係者と協力して、副作用情報の収集体制をより一層強化するとともに、一般用医薬品に関して医薬品情報提供システムのようなITを活用したシステムの構築について検討すべきである。その際、一般用医薬品の選択等について国民が気軽に利用できる第三者機関等による相談窓口を設置して情報提供を行う等のことも考慮すべきであろう。
 また、製薬企業が作成する添付文書等については、国民にとって理解しやすい用語のあり方についてさらに検討していく必要がある。
 広告・宣伝は、国民への情報提供の有力な手段の一つである。製薬企業・業界は、一般用医薬品について分かりやすく誤解を招かない等適切な情報提供を行わなければならないことに留意しつつ、適正使用に資する情報の伝達手段として、よりよい広告・宣伝に努める必要がある。
 今後、e-コマース市場の拡大に伴い、国内だけでなく海外の医薬品をインターネットを利用して個人使用のために購入する国民が増えることが想定されるが、世界保健機関(WHO)は、インターネット上の情報は関係当局によって検証されたものとは限らないので、インターネットによる医薬品の販売は好ましくないと表明しており9)、我が国においても今後この問題への対応について検討が必要である。

3.承認審査の流れの改善等
 
(1) 審査体制の整備
 一般用医薬品の品質・有効性・安全性の確保をさらに図るとともに、国民の健康ニーズに対応した新たな役割・機能を備えた一般用医薬品をタイムリーに提供していくためには、申請者において申請内容を申請時点での科学水準に即したものとなるよう努力する必要がある。同時に、行政においても、審査の流れを改善し、一層の迅速化を図ることが必要であり、その実現のためには、スイッチOTC薬の項でも述べたように、審査体制の整備を検討する必要がある。
 また、承認審査等の簡素合理化を一層推進するためには、新たな承認基準の制定を進める等一般用医薬品の承認審査の地方委任業務を拡大しつつ、都道府県間の調整を国が行う等、国と都道府県の役割を明確化し、相互の十分な意思疎通を図ることも重要である。
(2) 申請区分の見直し、添付資料の軽減化
 国民により早くより良い医薬品を提供することが行政に課せられた使命である。迅速・適正な審査を確保するためには、承認申請に際して煩雑な現行の申請区分を見直し、簡素化することが必要である。
 また、承認申請時に必要とされている添付資料についても、臨床試験における倫理面及び動物愛護等の観点から極力試験の重複等の無駄を省き、医療用として得られたデータを最大限活用するなど、データの軽減化を図ること等が必要である。

以上

引用文献

1) 厚生労働省医政局:医薬品産業ビジョン/「生命の世紀」を支える医薬品産業の国際競争力強化に向けて(2002年)
2) Guidelines for the Regulatory Assessment of Medicinal Products for Use in Self-Medication,WHO Geneva 2000
3) 医薬品産業政策懇談会:「大衆薬の振興方策について」答申(1984年)
4) 中薬審・一般用医薬品特別部会:スイッチOTC薬承認審査の考え方の明確化(1998年)
5) 中薬審・販売規制緩和特別部会:15製品群の新指定医薬部外品の指定(1999年)
6) 医薬品の範囲基準の見直しに関する検討会:「医薬品と食品の区分の明確化」(2001年)
7) 医薬品製造指針(1998年)
8) 21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)(2001年)
9) A Guide to Finding Information, Medical Products and the Internet, WHO Geneva 1999
照会先
厚生労働省医薬局審査管理課
TEL 03−5253−1111 (代表)
林憲一国際化専門官 (内2745)
山本学主査 (内2743)



資料一覧

資料1. 一般用医薬品を左右する要因(PDF 22KB)
資料2. 健康価値観の多様化(PDF 19KB)
資料3. 学校教育における薬に関する教育 ―日本の現状―(PDF 13KB)
資料4. 日本におけるスイッチOTC成分(PDF 19KB)
資料5. 主要国(日米英独仏)スイッチOTC成分(PDF 21KB)
資料6. 英国スイッチOTC候補成分リスト(1992)(PDF 12KB)
資料7. 米国スイッチOTC候補成分リスト(1992)(PDF 12KB)
資料8. 米国、英国の審査体制(PDF 25KB)
資料9. スイッチOTC薬の考え方(PDF 14KB)
資料10. 使用実態試験のイメージ(PDF 10KB)
資料11. 一般用医薬品を臨床試験(GCP)で評価した場合の問題点(PDF 27KB)
資料12. 一般用医薬品の臨床評価におけるAUTの位置付け(PDF 25KB)
資料13. AUT導入における留意点及びその対応策(PDF 17KB)
資料14. 一般用漢方処方の見直し(PDF 8KB)
資料15. 生薬製剤の評価(審査)について(案)(PDF 13KB)
資料16. 一般用医薬品の剤型について(PDF 21KB)
資料17. 一般用医薬品に対する安全対策のあり方について(PDF 14KB)
資料18. 一般用医薬品の再評価の考え方について(PDF 18KB)

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