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別紙3
分科会報告書

添加物名:グルコアミラーゼ(AMG-E)
性質:グルコアミラーゼ及びα−アミラーゼの生産性向上
申請者:ノボザイムズ ジャパン株式会社
開発者:ノボザイムズA/S(デンマーク)

 ノボザイムズ ジャパン株式会社から申請された、グルコアミラーゼ(社内識別名「AMG-E」、以下「AMG-E」という。)について、「組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査基準」(以下、「審査基準」という。)に適合した安全性評価がなされているか否かについて検討し、以下のような結果を得た。

申請された食品添加物の概要

 AMG-Eは黒麹菌の培養物より調製されるグルコアミラーゼ酵素剤の一種である。グルコアミラーゼは、アミロースやアミロペクチン等のα-1,4-グルコシド結合を非還元末端からブドウ糖単位で加水分解する反応を触媒する酵素で、澱粉糖工場においてブドウ糖の製造に用いられる。また、α−アミラーゼは、アミロースやアミロペクチン等のα-1,4グルコシド結合を任意の位置で加水分解し、デキストリンやオリゴ糖の生成反応を触媒するため、食品分野では加工助剤として澱粉の液化に使用される。
 従来食品用酵素剤グルコアミラーゼの生産菌として使用されてきた微生物菌株より単離した遺伝子を同系統株のAspergillus nigerに導入し、これを生産菌として培養することにより、従来のグルコアミラーゼと比較してグルコアミラーゼ生産性とα−アミラーゼ生産性を高めたものである。

I 生産物の既存のものとの同等性に関する事項

 AMG-Eについては、生化学的性状、酵素活性等において既存のグルコアミラーゼとの間に差異がないことが示されている。また、成分組成及び機能・性質、製造方法、製品の規格及び使用方法についても既存のものと同一である。さらに、AMG-Eについては、組換え体自身を食さないものであり、食品中に含有されない使用方法が想定されている。以上の点から、既存のものと同等とみなし得ると考えられ、したがって審査基準に沿って以下の審査が可能であると判断できる。

II 組換え体等に関する事項

(1)GILSP(Good Industrial Large-Scale Practice)又はカテゴリー1による製造に用い得る非病原性の組換え体であることに関する事項

 宿主(Aspergillus niger・黒麹菌)は非病原性の微生物であり、挿入遺伝子及びベクターについても機能や構造が明らかにされており、既知の有害物質を発現することはなく、生産菌はGILSP基準を満たすと考えられる。

(2)組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項

 Aspergillus niger由来のグルコアミラーゼ遺伝子及びα−アミラーゼ遺伝子を宿主に導入することにより、グルコアミラーゼ及びα−アミラーゼの生産性が高い組換え体を得た。得られたAMG-Eは、澱粉糖製造過程においてブドウ糖の製造に用いられる。

(3)宿主に関する事項

 宿主菌株は、Aspergillus niger C40系統株BO95であり、コペンハーゲン植物園の土壌より単離され、食品用酵素の生産菌として使用されてきたC40株由来の変異株である。Aspergillus nigerは、自然界に広く分布し、食品中にも通常的に存在する微生物であり、古くから産業用酵素の製造に使用されてきたものである。また宿主は、FAO/WHOにおいて菌体がADI(一日摂取許容量)を定める必要のないものとされている。申請資料からも寄生性、定着性等において問題は認められていない。国内でも国立感染症研究所の病原体等安全管理規程によるバイオセイフティーレベル分類のレベル1となっている。

(4)ベクターに関する事項

 グルコアミラーゼ遺伝子(amg遺伝子)、α−アミラーゼ遺伝子(asa遺伝子)は、pHUda152及びpHUda154を発現ベクターとして宿主に導入されている。pHUda152は、pUC19にamg遺伝子、pyrG遺伝子及びura3遺伝子を組み込んで構築されたものである。また、pHUda154は、pUC19にamg遺伝子、amdS遺伝子、asa遺伝子及びura3遺伝子を組み込んで構築されたものである。制限酵素による切断地図は明らかにされている。
 形質転換体はアセトアミドとウリジンの生育能により選抜された。amg遺伝子はAspergillus niger BO95由来のプロモーターPamgとターミネーターTamgの制御下にあり、asa遺伝子はAspergillus niger 31-26のプロモーターPasaとAspergillus niger BO1(C-40株の変異体)由来のターミネーターTamgの制御下にある。

(5)挿入遺伝子に関する事項

 AMG-Eを発現するために挿入される遺伝子は、以下の4つであり、宿主の染色体上に導入されている。

(1)グルコアミラーゼ遺伝子(amg遺伝子)

 Aspergillus niger BO95に由来する遺伝子である。

(2)ウリジン要求性を相補する遺伝子(ura3及びpyrG遺伝子)

 ura3はSaccharomyces cerevisiae由来のクローニングベクターpYES2に由来する遺伝子であり、E.coliの選択マーカーとして用いる。pyrGAspergillus niger由来であり、プロモーター及びターミネーターを含む。

(3)アセトアミド資化性を付与する遺伝子(amdS遺伝子)

 Aspergillus nidulans由来の遺伝子である。

(4)α−アミラーゼ遺伝子(asa遺伝子)

 Aspergillus niger 31-26(C-40株の変異体)由来の遺伝子である。
 いずれも、挿入遺伝子の構造、塩基配列、性質は明らかにされており、抗生物質耐性遺伝子や有害塩基配列は含まれておらず、安全性上問題はないものと考えられる。

(6)組換え体に関する事項

 組換え体は、グルコアミラーゼ及びα−アミラーゼ産生性を獲得している。また、組換え体の外界における生存・増殖性(胞子形成能力)は宿主と同等であるが、野生株のAspergillusに比較して劣ると考えられる。組換え体は、生産工程中において、アルカリを加え、pH11、温度90℃で1時間処理することにより、死滅する。

III 組換え体以外の製造原料及び製造器材に関する事項

 AMG-Eは、通常の非組換え微生物から酵素を製造する場合に用いられる製造原料及び製造器材と同様のものを使用しGMPに基づき製造される。発酵原料についても全て食品グレードのものが用いられていることが示されている。従ってAMG-Eの製造において安全性上問題はないものと考えられる。
 また、AMG-Eの製造に用いるマスターセルバンクは、−80℃に保存され、培養にあたり、微生物汚染の無いこと、酵素生産性が適切であることの確認を行っていることが示されている。

IV 生産物に関する事項

(1)組換え体の混入を否定する事項

 AMG-Eテストバッチに組換え体DNAの混入がないことを、ドットブロットハイブリダイゼーション分析により、検出限界1ngDNA/gで確認している。また、製品の規格項目として、「生産菌の混入のないこと」を定め、製品中に生産菌の混入がないことを確認している。

(2)製造に由来する不純物の安全性に関する事項

 AMG-Eは、精製される加工助剤であり、培養等に用いられるものもJECFA並びにFCC(食品添加物規格)の食品酵素剤純度規格を満たすものであることから、生産物に有害な不純物が混入する可能性はないものと考えられる。

(3)生産物の精製方法及びその効果に関する事項

 最終製品であるAMG-Eは、pH、温度調整等の前処理をした後、固液分離、濃縮、除菌濾過の工程を経て精製、規格・製剤化されており、また、JECFA並びにFCCの定める一般規格等を満たしていることが示されている。

(4)含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する事項

 生産物の含有量の変動域は通常の食品用酵素の生産での変動の範囲内であり、生産物の含有量は既存のものと同等であると判断できる。

(5)組換え体によって製造された生産物の諸外国における認可及び使用等の状況に関する事項

 生産物AMG-Eは、2000年にフランスにおいて、2001年にオーストラリア及びデンマークにおいて承認され、販売が認められている。

V 安全性試験に関する事項

 AMG-Eについては、ラットを用いた2週間の経口反復投与試験で、毒性学的影響は認められていない。また、変異原性、染色体異常誘発性は示されなかった。

VI 基準適合性に関する結論

 ノボザイムズ ジャパン株式会社から申請されたAMG-E(グルコアミラーゼ)について、申請に際して提出された資料を、審査基準に基づき審査した結果、人の健康を損なうおそれがあると認められないと判断される。


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