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「児童虐待の防止等に関する法律」の施行について(平成12年11月20日児発第875号)

児発第875号
平成12年11月20日



都道府県知事

指定都市市長
  殿

厚生省児童家庭局長

「児童虐待の防止等に関する法律」の施行について

 現在我が国においては、児童相談所への虐待に関する相談件数が年々増加の一途をたどっているなど児童虐待に関する問題が深刻化しており、児童虐待の早期発見・早期対応及び児童虐待の被害を受けた児童の適切な保護を行うことは喫緊の課題となっている。
 このため、「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号。以下「法」という。別添1参照。)が先の通常国会において成立し、平成12年5月24日をもって公布され、また、「児童虐待の防止等に関する法律の施行期日を定める政令」(平成12年政令第471号。別添2参照。)及び「児童虐待の防止等に関する法律施行令」(平成12年政令第472号。別添3参照)が平成12年11月10日をもって公布され、これらにより、法が平成12年11月20日から施行されることとなったところである。
 児童虐待への対応については、従来より、児童福祉法(昭和22年法律第164号)及びこれに基づく「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」(平成9年6月20日厚生省児発第434号厚生省児童家庭局長通知)、「児童相談所運営指針について」(平成2年3月5日児発第133号厚生省児童家庭局長通知)、「児童虐待に関し緊急に対応すべき事項について」(平成10年3月31日児企第13号厚生省児童家庭局企画課長通知)、「子ども虐待対応の手引きについて」(平成11年3月29日児企第11号厚生省児童家庭局企画課長通知)等により、児童虐待の早期発見、早期対応及び被虐待児童の保護等が図られてきたものであるが、児童虐待の防止等を一層図るため、法の施行に関し、法の要点及び運用上の留意事項を下記のとおり定めたので、御了知の上、管下の市町村並びに関係機関及び関係団体等にその周知を図り、その運用に遺漏のないようお願いする。
 本通知については、警察庁と協議済みであり、また、本通知が発出されることについては、文部省より各都道府県・指定都市教育委員会等へ連絡をする予定であることを申し添える。
 なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言である。

第1 法の要点

1 法の目的(第1条関係)

 児童虐待は、家庭内におけるしつけとは明確に異なり、親権や親の懲戒権によって正当化されるものではなく、児童の心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、次の世代に引き継がれるおそれもあり、早期に発見し対応することが喫緊の課題となっているところである。
 児童虐待の防止等に関する法律は、こうした状況を踏まえ、本問題の解決の緊急性にかんがみ、児童虐待の防止等に関する施策を促進するため、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護のための措置等を定めるものであること。

2 児童虐待の定義(第2条関係)

(1) 第2条における「保護者」とは、児童福祉法と同様に親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現実に監督、保護している場合の者であり、親権者や後見人であっても、児童の養育を他人に委ねている場合は保護者ではないこと。他方、親権者や後見人でなくても、例えば、児童の母親と内縁関係にある者も、児童を現実に監督、保護している場合には保護者に該当するものであること。

(2) 「現に監護する」とは、必ずしも、児童と同居して監督、保護しなくともよいが、少なくとも当該児童の所在、動静を知り、客観的にその監護の状態が継続していると認められ、また、保護者たるべき者が監護を行う意思があると推定されるものでなければならないこと。また、児童が入所している児童福祉施設の施設長は、児童を現に監護している者であり、「保護者」に該当するものであること。

3 児童虐待の禁止(第3条関係)

第3条は、何人も、本来保護すべき児童を虐待してはならないことを規定するものであること。本条にいう「虐待」とは、第2条で定義されている保護者による児童虐待のみならず、幅広く児童の福祉を害する行為や不作為を含むものであること。

4 国及び地方公共団体の責務等(第4条関係)

(1) 第1項における関係機関の例としては、児童虐待への対応の中核的機関である児童相談所を核として、福祉事務所、保健所、市町村保健センター、主任児童委員を始めとする児童委員、児童福祉施設、里親、保護受託者、市町村、家庭裁判所、学校(幼稚園を含む)、教育委員会、警察、医療機関、人権擁護機関、精神保健福祉センター、教育相談センター、社会教育施設などが想定されること。

(2) 第2項における「児童相談所等関係機関」とは、第1項における関係機関のうち、特に実際の児童の保護に当たる機関を指し、具体的には、児童相談所(一時保護所)に加えて、福祉事務所、児童養護施設等の児童福祉施設、保健所、警察等が想定されること。

5 児童虐待の早期発見(第5条関係)

第5条における「児童の福祉に職務上関係のある者」とは、法律上に直接規定されている学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健婦、弁護士のほか、児童委員、警察職員、人権擁護委員、精神保健福祉相談員、母子相談員、婦人相談員、家庭裁判所調査官などであって職務上児童の福祉に関係のある者が想定されること。

6 通告又は送致を受けた場合の措置(第8条関係)

児童福祉法第25条による通告が児童相談所に対してなされたとき又は同法第25条の2第1号の規定に基づく福祉事務所からの送致を児童相談所が受けた場合、児童相談所長は、当該児童相談所の職員をして、速やかに児童の安全を確認するよう努めなければならないこと。なお、第8条における「速やかに」とは、特定の期間を指すものではないが、児童の福祉の保護のため、迅速な対応が求められるものであること。また、子どもの心身に直ちに重大な危害が加わるおそれがあるものとして一時保護が必要と判断されたときは、児童相談所長は、躊躇なく一時保護を行うことが必要であること。

7 立入調査等(第9条関係)

(1) 従来、児童福祉法第29条に基づき、児童福祉法第28条の規定による措置を採るため必要があると認めるときは、立入調査等行える旨が規定されていたところであるが、本条の規定により、児童虐待が行われているおそれがあると都道府県知事が認めるときは、立入調査等を実施できることを規定したものであること。

(2) 第1項に基づく立入り及び調査又は質問を正当な理由なくして拒んだ場合等については、必要に応じて児童福祉法第62条第1号の規定の活用を図ること。なお、本条は、保護者が立入調査を拒否し、施錠してドアを開けない場合などにおいて、鍵やドアを壊して立ち入ることを直ちに可能とするものではないが、事態の緊急性によっては、こうした行為が正当防衛等として許容される場合もあり得ること。

8 警察官の援助(第10条関係)

(1) 第10条において「必要があると認めるとき」とは、児童相談所長等による職務執行に際し、保護者又は第三者から物理的その他の手段による抵抗を受けるおそれがある場合、現に児童が虐待されているおそれがある場合などであって、児童相談所長等だけでは職務執行をすることが困難なため、警察官の援助を必要とする場合をいうこと。また、児童相談所長等による職務執行とこれに対する警察官の援助を効果的に実施し、児童の保護の万全を期する観点からは、緊急性のある場合などを除き、警察官と児童相談所長等との間で事前に協議を行うことが望ましいこと。

(2) 警察官の「援助」とは、児童相談所長等による職務執行に際して、当該職務執行が円滑に実施できるようにする目的で警察官が警察法、警察官職務執行法等の法律により与えられている任務と権限に基づいて行う措置をいうこと。なお、本法に基づく安全確認、一時保護、立入調査等の職務執行そのものは、警察官の任務ではなく、児童相談所長等がその専門的知識に基づき行うべきものであること。援助を求められた警察官は、具体的には、

[1] 職務執行の現場に臨場したり、現場付近で待機したり、状況により児童相談所長等と一緒に立ち入ること

[2] 保護者等が暴行、脅迫等により職務執行を妨げようとする場合や児童への加害行為が現に行われようとする場合等において、警察官職務執行法第5条に基づき警告を発し又は行為を制止し、あるいは同法第6条第1項に基づき住居等に立ち入ること

[3] 現に犯罪に当たる行為が行われている場合に刑事訴訟法第213条に基づき現行犯として逮捕するなどの検挙措置を講じること

 などの措置を採ることも考えられること。
 なお、上記[2]の警察官職務執行法第6条第1項に基づく立入りについては、立入りの際に、必要があれば、社会通念上相当と認められる範囲内で、鍵を破壊する、妨害する者を排除するなどの実力を行使することもできること。また、上記[3]の現行犯逮捕において、必要があれば認められる住居等への立入り(刑事訴訟法第220条第1項第1号)についても同様であること。

(3) 警察官の援助を「求める」とは、児童相談所長等から警察官に援助を求めることであるが、行政組織を一体的に運営し、児童の保護の万全を期する観点から、緊急の場合を除き、児童相談所長から警察署長に対して援助を求めるなど文書で事前に組織上の責任者から責任者に対して行うことを原則とすること。

9 指導を受ける義務等(第11条、第13条関係)

児童虐待を行った保護者は、児童福祉法第27条第1項第2号に規定する指導措置が採られた場合その指導を受ける義務を負い(第11条第1項)、同号の指導を受けない場合においては、都道府県知事は、当該指導を受けるよう勧告することができる(第11条第2項)こと。当該保護者の児童が児童福祉施設に入所しているか否かを問わない。また、第13条により、児童福祉施設入所措置の解除に当たって、都道府県知事は、児童福祉法第27条第1項第2号の指導を行うこととされた児童福祉司等の意見を聞かなければならず、児童福祉司は児童の家庭復帰の希望、保護者の虐待の原因解消への努力等を確認した上で意見を述べること。

10 面会又は通信の制限(第12条関係)

児童福祉法第28条に基づき、保護者の意に反する措置が採られた場合には、児童に対する保護者の監督権や居所指定権などの親権が制限されていることに鑑み、児童相談所長又は児童福祉法第27条第1項第3号に規定する施設の長は、第12条に基づき、保護者に対して面会又は通信の制限を行うことができること。

11 大都市等の特例(第16条関係)

法第16条及び児童虐待の防止等に関する法律施行令に基づき、法の規定により都道府県が処理することとされている事務は地方自治法第252条の19第1項の指定都市が処理する事務とすること。

12 児童福祉法の一部改正(附則第3条関係)

(1) 児童福祉司及び児童相談所長の任用資格に、社会福祉士が追加されたこと。

(2) 児童福祉法第33条に基づく一時保護の期間を原則として2か月に限ることとされたこと。なお、児童相談所長又は都道府県知事は必要があると認めるときは、一時保護の期間を2か月を超えて引き続き延長することができること。

(3) 児童福祉法第45条第1項に規定する最低基準は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければならないものとされたこと。また、児童福祉施設の設置者は、児童福祉施設の設備及び運営についての水準向上を図ることに努めなければならないものとされたこと。

(4) 児童福祉法第11条第1項第5号及び第16条の2第2項第4号の改正(法の公布から2年以内に施行)に係る施行については、別途の政令により施行期日を定めるとともに、当該施行に関し別途通知する予定であること。

第2 運用上の留意事項

1 今般、「児童相談所運営指針」及び「子ども虐待対応の手引き」を大幅に改定し、それぞれ「児童虐待の防止等に関する法律の施行に伴う児童相談所運営指針の改定について」(平成12年11月20日児発第876号厚生省児童家庭局長通知)及び「子ども虐待対応の手引きの改定について」(平成12年11月20日児企第30号厚生省児童家庭局企画課長通知)を発出したところであり、本通知と併せて法の施行に当たって遺漏のないよう留意されたい。

2 近年、保護者からの虐待による児童の死亡等の事件が相次いで発生しており、その際の児童相談所等関係機関における対応が必ずしも適切とは言えないケースもみられることから、改定後の「子ども虐待対応の手引き」等で示した虐待事例への対応の体制及び方針等について、再点検するとともに、特に児童虐待に係る通告があった場合における迅速な対応、適切な児童の安全確認や保護、日頃からの関係機関との連携強化に留意の上、児童虐待の防止等に努めること。

3 児童虐待事例における警察との連携については、従来より「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」(平成9年6月20日厚生省児発434号厚生省児童家庭局長通知)において定めているところであるが、その具体的な連携の方法・内容については、本通知並びに改定後の「児童相談所運営指針」及び「子ども虐待対応の手引き」に基づき実施すること。

 

 

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