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災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領

障精発0107第1号
平成26年1月7日

各 都道府県・指定都市
  精神保健福祉主管部(局)長  殿

厚生労働省社会・援護局
障害保健福祉部精神・障害保健課長

災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領について

 災害派遣精神医療チームの体制整備及び活動については、平成25年4月1日障精発0401第1号通知「災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領について」により実施いただいているところですが、今般、DPAT活動マニュアルの整備に伴い、別紙のとおり「災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領」を定めたので通知します。
 本要領は、DPATとしての基本的な活動要領であり、各都道府県で策定される防災計画において、各都道府県の事情に応じたDPATの運用を実施していただきますよう、必要な御配慮をお願いいたします。
 なお、平成25年4月1日障精発0401第1号通知「災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領について」は廃止します。

担当者

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
精神・障害保健課 河嶌
03−5253−1111(内線3054)

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災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領

I 活動理念

1. DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)とは

 自然災害や犯罪事件・航空機・列車事故等の集団災害が発生した場合、被災地域の精神保健医療機能が一時的に低下し、さらに災害ストレス等により新たに精神的問題が生じる等、精神保健医療への需要が拡大する。このような災害の場合には、被災地域の精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制との連携、各種関係機関等とのマネージメント、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援が必要である。
 このような活動を行うために都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)によって組織される、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームがDPATである。

2. 運用の基本方針

2.1 平時

  • 都道府県等は災害派遣精神医療チーム体制整備事業を活用する等して当該都道府県等のDPATの整備を行い、災害時こころの情報支援センター(厚生労働省の委託事業)にDPATに関する情報の登録をする。また、災害時こころの情報支援センターが行う「DPAT研修」に定期的に参加した上で、当該都道府県等DPATの構成員に対して研修を行い、DPATの質の維持及び向上を図る。
  • 厚生労働省は、DPATの活動要領を策定するとともに、災害時こころの情報支援センターを通じて、全国のDPATの質の維持及び向上を図る。
  • 災害時こころの情報支援センターは、都道府県等に対して技術的支援を行うとともに、広域災害等に対応するための全国規模での研修を行う。また、災害時精神保健医療情報支援システム(Disaster Mental Health Information Support System:DMHISS(後述))の運用・保守を行う。
  • 都道府県等において地域防災計画を策定する際には、DPATの運用についても記述することが望ましい。

2.2 発災後

  • DPATは、被災地域の都道府県等からの派遣要請に基づき派遣される。
  • DPATは、被災都道府県等の災害対策本部の指示で活動する。
  • 厚生労働省は、災害時こころの情報支援センターと共に、発災直後から情報収集等により都道府県等に対し必要な支援を行うものとし、DPATの活動に関わる情報集約及び総合調整、関連省庁との必要な調整並びに被災地域外の都道府県等に対するDPATの派遣要請の斡旋を行う。
  • 厚生労働省は、災害時に被災地域の都道府県等がDPATの派遣要請を行わない場合において、緊急の必要性があると認めるときには、当該都道府県等に対し、DPATの派遣要請を行うよう求めることができる。
  • 災害時こころの情報支援センターは、DMHISSの運用・保守を行うとともに、被災都道府県のDPAT調整業務を支援する。また、DPATの活動に対して必要な技術的支援、情報提供を行う。

II 活動の枠組み

1.DPATの構造

1.1 DPATの定義

 DPATは、各都道府県等が継続して派遣する災害派遣精神医療チーム全ての班を指す。各班は、被災地の交通事情やライフラインの障害等、あらゆる状況を想定し、交通・通信手段、宿泊、日常生活面等で自立している必要がある。
 DPATを構成する班の中で、発災当日から遅くとも72時間以内に、所属する都道府県等外の被災地域においても活動できる班を先遣隊とする。
 各都道府県等がDPATを組織し、災害時こころの情報支援センターに登録を行う際に、以下の項目を満たす機関が管下にあり、先遣隊を組織できる場合は、その旨も登録する。

  • 平時は、精神科医療の中核的機関(基幹病院等)としての役割を担っている。
  • 災害時は精神疾患を持つ患者の受け入れを行うことができ、DPATが参集する活動拠点となることができる。
  • 職員がDPATとして派遣される場合は、関係機関との連絡、物資の確保等の後方支援を行うことができる。
  • 日本DMAT隊員養成研修を受講する等、急性期の災害派遣医療について一定の知識や技能を有する人員で先遣隊を構成できる。
  • 災害時こころの情報支援センターと協力し、近隣都道府県等のDPATに対して人材育成を行うことができる。

1.2 DPAT各班の構成

 以下の職種を含めた数名(車での移動を考慮した機動性の確保できる人数を検討)で構成する。

  • 精神科医師
  • 看護師
  • 業務調整員(ロジスティクス):連絡調整、運転等、医療活動を行うための後方支援全般を行う者

 現地のニーズに合わせて、児童精神科医、薬剤師、保健師、精神保健福祉士や臨床心理技術者等を含めて適宜構成する。
 なお、地域の実情に応じて、都道府県等の職員だけでなく、関連機関(大学付属病院、国立病院、公立病院、その他の病院、診療所等)の職員で構成することができる。
 また、DPAT1班あたりの活動期間は1週間(移動日2日・活動日5日)を標準とする。必要に応じて、同じ地域には同一の都道府県等が数週間から数ヶ月継続して派遣する。

2.DPATの統括

2.1 DPAT都道府県調整本部(都道府県での統括)

  • 被災地域の都道府県によって設置されるDPAT都道府県調整本部は、被災地域におけるDPATを統括する。
  • DPAT都道府県調整本部は、被災地域の都道府県災害対策本部及び都道府県災害医療本部の指揮下に置かれる。あらかじめ各都道府県によって任命された精神科医(以下:DPAT統括者)および当該都道府県等の本庁担当者がその機能を担う。
  • DPAT都道府県調整本部は、必要に応じて、DPAT活動拠点本部を設置する。その設置場所と担当地域、主な活動内容についての指示を行う。
  • DPAT都道府県調整本部は、当該都道府県等管内で活動するすべてのDPATの指揮・調整とロジスティクス、都道府県災害対策本部・DMAT都道府県調整本部・派遣調整本部等との連絡および調整、都道府県等内の精神保健医療に関する被災情報の収集(精神科医療機関の被災状況等)、厚生労働省及び災害時こころの情報支援センターとの情報共有等の統括業務を行う。それらの統括業務に関しては、当該都道府県の精神保健福祉センター職員、当該都道府県外のDPAT統括者、災害時こころの情報支援センターから派遣される要員等が支援する。
    ※被災地域外の都道府県等は、管下のDPATの派遣調整の補助、被災情報等の収集、被災地域のDPAT都道府県調整本部との連絡及び調整、管下のDPATへのロジスティクス、厚生労働省および災害時こころの情報支援センターとの情報共有等の業務を行う。

2.2 DPAT活動拠点本部(保健所圏域、市町村等での統括)

  • DPAT活動拠点本部は、必要に応じて、被災地域の保健所圏域、市町村等でのDPATを統括する。
  • DPAT活動拠点本部は、DPAT都道府県調整本部の指揮下に置かれる。
  • DPAT都道府県調整本部が指定した場所に先着したDPATは、DPAT活動拠点本部の立ち上げを行い、当面の責任者となる。
  • 責任者となったDPATは、DPAT都道府県調整本部と協議し、必要に応じて、災害拠点病院、精神科の基幹病院、保健所、避難所等から、活動を効率的に行うことができる場所を活動の拠点として調整する。
  • DPAT活動拠点本部は、参集したDPATの指揮及び調整、管内の地域の精神保健医療に関する情報収集、DPAT都道府県調整本部・DMAT活動拠点本部・地域災害医療対策会議・保健所等との連絡及び調整、厚生労働省及び災害時こころの情報支援センターとの情報共有等の業務を行う。
    ※被災地域におけるDPATの指揮命令系統を図に示す。なお、被災地域の都道府県を被災都道府県、被災都道府県外の都道府県等を派遣都道府県等とする

3.災害時精神保健医療情報支援システム(Disaster Mental Health Information Support System:DMHISS)

 DPATの活動に関する各種報告は、災害精神保健医療情報支援システム(Disaster Mental Health Information Support System:DMHISS)を用いて行う。DMHISSは災害時に効率的な活動を行うためのインターネットを用いた情報共有ツールであり、派遣要請/派遣先割当機能、活動記録機能、集計機能を有するシステムである。

4.派遣の流れ

 DPATの派遣調整は、基本的にDMHISSを用いて行われる。
 なお、DPATの派遣は、基本的に災害対策基本法に基づいて行われるため、都道府県と政令指定都市によって派遣の流れが異なる。

4.1 被災都道府県外からの支援が必要な規模の災害の場合

4.1.1 厚生労働省を介して、派遣要請を行う場合

  1. 1)被災都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、厚生労働省に対し、DPATの派遣斡旋を要請する。可能であれば、必要なチーム数、期間、優先される業務についての情報を提供する。
    ※政令指定都市の場合は、まず当該都道府県または他の市町村に応援を要請する。
  2. 2)厚生労働省は、派遣都道府県に対して派遣の斡旋を行う。
  3. 3)派遣都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、派遣可能日程を厚生労働省に回答する。
    ※必要に応じて、当該都道府県に所属する政令指定都市に対して応援を要請する。
  4. 4)厚生労働省は、派遣都道府県等DPATの派遣先(都道府県)を決定する。
  5. 5)被災都道府県は、派遣都道府県等DPATの活動地域(市町村)を決定する。
  6. 6)派遣都道府県等DPATは、活動内容、活動場所、スケジュール等を被災都道府県と協議し、速やかに支援に入る。

4.1.2 厚生労働省を介さず、派遣要請を行う場合

  1. 1)被災都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、派遣都道府県に対し、DPATの派遣を要請する。
    ※政令指定都市の場合は、まず当該都道府県または他の市町村に応援を要請する。
  2. 2)派遣都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、派遣可能日程を被災都道府県に回答する。
    ※必要に応じて、当該都道府県に所属する政令指定都市に対して応援を要請する。
  3. 3)被災都道府県は、派遣都道府県等DPATの活動地域(市町村)を決定する。
  4. 4)派遣都道府県等DPATは、活動内容、活動場所、スケジュール等を被災都道府県と協議し、速やかに支援に入る。

※被災都道府県等が管下のDPATを派遣する場合は、4.2の流れでDPATを派遣する。

4.2 被災都道府県内の支援で完結する規模の災害の場合

  1. 1)被災都道府県等の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、DPATの派遣の必要性を検討する。
  2. 2)被災都道府県等は、被災都道府県等DPATの活動地域(市町村)を決定する。
  3. 3)被災都道府県等DPATは、活動内容、活動場所、スケジュール等を被災地域の担当者と協議し、速やかに支援に入る。

III 活動内容

 DPATの各班は、原則として、被災地域内の災害拠点病院、精神科の基幹病院、保健所、避難所等に設置されるDPAT活動拠点本部に参集し、その調整下で被災地域での活動を行う。

1.情報収集とアセスメント

  • 被災が予想される精神科医療機関、避難所、医療救護所等へ直接出向き、状況の把握に務める。
  • 収集した情報を基に、活動した場所における精神保健医療に関するニーズのアセスメントを行う。

2.情報発信

  • DPAT活動の内容(収集した情報やアセスメントの内容も含む)は、DPAT活動拠点本部へ、活動拠点本部が立ち上がっていない場合はDPAT都道府県調整本部へ報告する。
  • 活動に関する後方支援(資機材の調達、関係機関との連絡調整等)が必要な場合は派遣元の都道府県等に依頼する。

3.災害によって障害された既存の精神医療システムの支援

  • 災害によって障害された地域精神科医療機関の機能の補完を行う。
  • 避難所、在宅の精神疾患を持つ被災者に対する継続的で適切な精神医療の提供を行う。

4.災害のストレスによって新たに生じた精神的問題を抱える一般住民への対応

5.支援者(地域の医療従事者、救急隊員、行政職、保健職等)の支援

6.普及啓発

7.活動記録と処方箋

  • 活動地域(避難所、保健所等)に記録を残す。
  • DMHISSに記録を保存する。

8.活動情報の引き継ぎ

  • チーム内で十分な情報の引き継ぎを行う。
  • 医療機関ではその医療機関のスタッフ、避難所ではそこを管轄する担当者や保健師に対し、十分な情報の引き継ぎを行う。

9.活動の終結

  • DPAT活動の終結は、被災都道府県がDPAT都道府県調整本部の助言を踏まえて決定する。尚、DPATの活動期間は、発災当日から被災地域の精神保健医療体制が復興するまで長期間に渡ることがある。

IV 費用と保障

1.費用

  • DPATの活用に要した費用は、原則としてDPATを派遣した都道府県が支弁をする。ただし、災害救助法が適用された場合、被災都道府県のDPAT派遣要請を受けた都道府県は、同法第20条第1項に基づき、被災都道府県に対してその費用を求償できる。
  • 前項に基づきDPATの活動に要した費用を求償された被災都道府県は、求償した都道府県に対して、同法第18条により費用を支弁する。ただし、同法第20条第2項の規定に基づき、国に支弁を要請することができる。

2. 保障

  • DPATの構成員が、DPAT活動のために負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合においては、災害救助法第12条に基づき、DPATを派遣した都道府県が扶助金を支給する。

※都道府県等は、災害救助法が適用されない場合の費用の支弁と保障に関して、DPATを構成するための関連機関と事前の取り決めをしておくことが望ましい。

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