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戦略研究事例 〜糖尿病予防のための戦略研究
背景と経緯
平成14年の国民健康・栄養調査によると、わが国の糖尿病またはその可能性がある人口は急速に増加して1,620万人に達し、平成19年の調査では 2,210万人まで増加している。糖尿病はその合併症を合わせると国民医療費の大きな部分を占める疾患であり、糖尿病対策に直結するエビデンスを創出することの政策上の優先度は高い。本研究では、3つの大規模研究によって、総合的な糖尿病対策の方法を検証した。
研究課題名
- 2型糖尿病発症予防のための介入試験(J-DOIT1)
- かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関する研究(J-DOIT2)
- 2型糖尿病の血管合併症抑制のための介入研究(J-DOIT3)
期間
平成17年度〜平成21年度
研究体制
- J-DOIT1研究リーダー
国立病院機構京都医療センター 名誉院長 葛谷 英嗣 - J-DOIT2研究リーダー
富山大学大学院特別研究教授 小林 正(当初〜H21.9.30)
国立国際医療研究センター 糖尿病研究連携部 部長 野田 光彦(H21.10.1〜H22.3.31) - J-DOIT3研究リーダー
東京大学大学院医学系研究科 教授 門脇 孝 - 研究実施団体:国際協力医学研究振興財団
(1)2型糖尿病発症予防のための介入試験(J-DOIT1)
研究目的
糖尿病のハイリスク者を対象に「糖尿病予防支援」を実施し、糖尿病の発症率を低下させる効果を検証する。
主要評価項目
予防支援実施後3年間の累積糖尿病発症率
研究スキーム
成果と見通し
主として職域を対象として、糖尿病ハイリスク者における両群(対象、介入)全体での糖尿病発症率データが得られた。今後の糖尿病発症予防に関する事業や研究において、重要な基礎データとなる。
また、1000人規模での電話による療養指導を実施し、指導前後での体重・歩数のデータを取得した。 電話指導が体重・歩数に与える効果の基礎データが得られた。
なお、J-DOIT1の研究プロトコールを、研究デザイン論文として投稿中である。
(平成22年9月現在)
(2)かかりつけ医による2型糖尿病診療を支援するシステムの有効性に関する研究(J-DOIT2)
研究目的
2型糖尿病患者とそのかかりつけ医に対する診療支援介入を実施し、受診中断率、「糖尿病達成目標」の達成率、糖尿病患者のアウトカムの改善効果を検証する。
※パイロット研究によりサンプルサイズの決定および実施可能性を検討した上で大規模研究を実施する。
主要評価項目
「大規模研究」に必要なサンプルサイズの算出に用いるパラメータの推定および「大規模研究」の実行可能性の評価(パイロット研究)
受診中断率の改善率(大規模研究)
研究スキーム
成果と見通し
- パイロット研究によって、各介入のおおよその効果について基礎的データが得られた。受診中断に関しては、40歳未満の若年層では介入が逆の結果をもたらすという成績であった。電話による療養指導については、おおよその脱落率の基礎データが得られた。
- パイロット研究での、うつに関する質問票への回答状況と受診中断との関係について論文化し、in pressとしている(Exp Clin Endocrinol Diabetes)。
- パイロット研究の結果(投稿準備中)に基づき作成した大規模研究のプロトコールを、研究デザイン論文として投稿している。
(平成22年9月現在)
(3)2型糖尿病の血管合併症抑制のための介入研究(J-DOIT3)
研究目的
2型糖尿病患者を対象としたランダム化比較試験によって、生活習慣の改善を中心として血糖、血圧、脂質を厳格にコントロールする治療方法が従来の治療方法よりも糖尿病に伴う血管合併症の発症・進展予防に優れることを検証する。
主要評価項目
心筋梗塞,冠動脈バイパス術,経皮的冠動脈形成術,脳卒中,頸動脈内膜剥離術,経皮的脳血管形成術,頸動脈ステント留置術,死亡のいずれかの発生
研究スキーム
成果と見通し
- 本研究のこれまでの実施状況から、次の点が明らかとなった
- 強化療法群の目標が到達可能と考えられること。
- 強化療法群の介入が、安全に実施可能であること。
特に、海外の類似の研究に比較して、重症低血糖の頻度を極めて低く抑制して介入できることを示したことは重要な点である。
(平成22年9月現在)
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