厚生労働省

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世界保健機関(WHO)と日本の関係について
〜第128回WHO執行理事会の動向から〜

1.WHOの概要

WHOは「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること。(WHO憲章第1条)」を目的として設立された国際機関です。国際連合と連携して活動する国連の専門機関に位置づけられており、インフルエンザなどの感染症対策や生活習慣病の対策、医薬品や食品の安全対策など幅広い分野で国際的に重要な役割を担っています。いずれも厚生労働省と関係の深い分野であり、1951年に日本がWHOに加盟して以来、厚生労働省はWHOと密接な協力関係を築いてきました。


スイスのジュネーヴにあるWHO本部

2.WHOの組織

WHO本部と世界保健総会(WHO総会)

WHOは国際保健会議の決定に基づいて、1948年の4月に設置されました。その本部は、多くの国際機関があつまるスイスのジュネーヴにあり、2011年現在、WHOの加盟国は全部で193カ国です。毎年1回ジュネーヴで開催される世界保健総会(WHO総会)は、WHOの最高意思決定機関であり、各加盟国から保健大臣など多くの閣僚級が参加しています。


第63回世界保健総会で演説する長浜前厚生労働副大臣

WHO事務局長

WHOのトップは事務局長(Director-General)と呼ばれ、後述する執行理事会における選挙で選ばれます。現在の事務局長は、香港出身のマーガレット・チャン氏です。チャン氏は、昨年11月に来日し、菅直人総理大臣や細川律夫厚生労働大臣をはじめとする日本の政府関係者と会談を行いました。


第63回世界保健総会では麦谷眞里厚生労働省大臣官房審議官が、
日本人として約半世紀ぶりに技術議題を扱うA委員会の議長を務めた(写真:WHO)


世界保健総会の議場では、毎年各国代表による活発な議論が行われる

WHO執行理事会

全加盟国で構成されるWHO総会の他、WHOの運営母体としては各国からの推薦に基づいて選ばれた34名の執行理事によって構成される執行理事会が置かれています。執行理事会は、最高意思決定機関であるWHO総会の議論を事前に調整し、また、総会の決定や方針を実施に移すといった重要な役割を与えられています。日本からの候補者は過去に何度も執行理事に選出されており、現在も2012年までの任期で執行理事国を務めています。

3.最近の動き(第128回WHO執行理事会)

第128回WHO執行理事会

WHOと日本との関係における最近の動きとして、平成23年の1月17日(月)から1月25日(火)に第128回WHO執行理事会がジュネーヴのWHO本部で開催されました。日本もWHO執行理事に任命されている尾身茂自治医科大学教授(厚生労働省国際参与)を代表としてこの会議に参加しました。


第128回WHO執行理事会で発言する尾身茂執行理事

第128回WHO執行理事会の主な議論

第128回WHO総会では、WHOが扱う分野の多様化という最近の流れを反映し非常に多岐にわたる専門的課題が話し合われました。(図1)

例えば、依然として途上国を中心に世界の人々を悩ませているHIV/エイズに関しては、WHOの世界戦略の案文が提示され、執行理事会による慎重な議論の結果、最終版を5月のWHO総会に提出することになりました。

また、今年の9月の国連総会では、生活習慣病をはじめとする非感染性疾患対策を首脳レベルで話し合う特別な会合が開催される予定ですが、この会合に向けてのWHOの活動や役割についても討議が行われました。

さらに、こうした技術的な議題に加え、世界的不況下におけるWHOの財政的な問題や組織の改革など、WHOの運営や管理に関する課題についても活発な議論が行われました。

図1 第128回WHO執行理事会で話し合われた主な専門的議題
  議題名
世界保健規則(IHR)2005の実施
保健関連MDGs < MDGsのレビューを行う第65回国連総会(2010年9月)のフォローアップにおけるWHOの役割 > ※MDGs:Millennium Development Goals
保健システム強化
HIV/エイズのWHO戦略(案) 2011-2015
コレラ:コントロールと予防のメカニズム
マラリア
非感染性疾患の予防とコントロール < 非感染性疾患の予防と対策に関する国連総会時のハイレベル会合(2011年9月)の準備・実施・フォローアップにおけるWHOの役割 >

4.日本とWHOのこれまで、そしてこれから

日本は国際社会において様々な途上国支援を行っていますが、その中でもWHOを通じた保健分野の国際貢献には長い歴史と実績があります。その内容は、戦後日本が克服してきた感染症のような個別疾患の対策から、各国の保健や行政のシステム作りといったものまで非常に幅広い分野に及びます。これらの取り組みは途上国の人々の健康を守るために役立てられており、日本とこうした国々の良好な関係を築くうえでも重要な役割を担っています。

一方、WHOが国際社会で果たした役割として、2009年に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)大流行は記憶に新しいところです。WHOは、刻々と変化する新型ウイルスの流行情報を世界中から収集・分析し、加盟国が取るべき対応策をタイムリーに発信し続けました。日本もこうしたWHOの情報を常に注視し、国内の流行を最小限に食い止めるためその情報を多いに活用しました。

このように、日本とWHOは、これまでも極めて重要な関係を築き、その協力関係は途上国の人々のためだけでなく、国民生活の向上のため広く役立てられて来ました。一方で、WHOへの国内外の期待は近年ますます大きくなっています。厚生労働省は、こうした期待をふまえて、WHOを通じた国際貢献を継続するとともに、国際保健の潮流に適切に対応し、これからも国民の健康と安全の確保に努めていきたいと考えています。

(大臣官房国際課)


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