厚生労働省


鳥インフルエンザと新型インフルエンザ

健康局 結核感染症課

新型インフルエンザ対策には、大きく分けて2つあります。

一つは薬剤やワクチンで、もう一つはウイルスを国内に侵入させないための水際対策や、特定の地域に閉じこめて感染の拡大を防ぐ地域封じ込め、あるいは外出や集会などの自粛といった、さまざまな公衆衛生的対応です。

ここでは公衆衛生的対応について解説しましょう。

感染拡大を阻止・抑制する公衆衛生的な対応の準備

海外で新型インフルエンザが発生した場合、日本ではつぎのような段階的対応を行います。

(1)新型インフルエンザウイルスが発生しても、国内侵入を可能な限り阻止(水際対策)

(2)国内へ侵入しても、感染拡大を防止(地域封じ込めや外出・集会の自粛要請など)

(3)感染が拡大しても、社会機能の破綻を防止(社会機能維持)

ウイルスの国内侵入を可能な限り阻止

空港・港湾での検疫が
厳重になります

海外で新型インフルエンザが発生した場合、日本政府は発生国における査証(ビザ)発給を厳格化します。日本への渡航希望者は基本的に、新型インフルエンザに感染していないことを証明しなければ、ビザを取得することができなくなるのです。

同時に、感染した人や感染の可能性のある人が容易に国内へ入らないように、検疫の強化を実施します。新型インフルエンザの患者さんは直ちに適切な医療機関に入院していただきますし、感染のおそれがある人は他の人に感染させるおそれがない場所で、個別に容態の変化を観察するようにします。感染の可能性が否定しきれないケースで、入国後の一定期間、健康状態を報告するよう求められる場合もあります。

このような検疫強化の有効性をさらに高めるため、発生国からの入国は4つの空港と3つの港湾だけにしぼられる予定です。

海外における感染の拡大状況にもよりますが、国際航空機や旅客船などの運航を自粛するよう、国が要請することも検討します。

水際対策(海外からの流入を防ぐ)

感染拡大を防止

ウイルスの拡大を封じ込めるための
複数の方策が考えられています

海外での流行状況にもよりますが、水際対策でいつまでもウイルスの国内侵入を阻止できるとは考えられません。水際対策の意味は、侵入のタイミングをできる限り遅らせることで、その他の対策準備にあてられる時間を長くすることにあるともいえます。

その他の対策とは、国内での感染拡大を防止するものです。具体的には患者の発生地域において、外出や集会の自粛、学校の臨時休業、企業の休業や職場対策などを、必要なタイミングで国・都道府県・市町村が要請することになります。

国内における感染がまだ、きわめて限定された地域にとどまる段階であり、かつ山川や道路などの地理的条件が好都合な場合、その地域の封じ込めを行う可能性もあります。その地域に住む方々の移動を地域内のみに制限することになりますが、感染拡大を防止する高い効果が期待されます。

国内発生初期における早期対応

新型インフルエンザの流行初期における対策について、詳しくお知りになりたい場合はこちらのサイト(5新型インフルエンザ発生初期における早期対応戦略ガイドライン)をご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/09.html

社会機能の破綻を防止

感染が拡大してしまったら
生活基盤の防衛を優先します

残念ながら感染が拡大してしまった場合、対策実施の目的は社会機能を維持することに移ります。一気に患者数が増えると、医療機関の収容能力がパンクしてしまったり、電気・ガス・水道・運輸・通信などのライフラインの維持に必要な人材が確保できなくなったりするかもしれません。それでは感染が拡大した地域の生活自体が危機に瀕してしまいます。

そこで求められるのは、すでに紹介した外出や集会の自粛、学校の休業、企業活動の部分的な停止などの徹底です。

同時に政府は、最低限の生活を維持するための社会機能は確保するため、ライフライン(食料・電気・水道等)や医療機能の維持に取り組みます。また、必要に応じて政府備蓄物資の活用やその供給ルートの確保も行い、医薬品や食料、生活必需品に関しては、増産を要請するなどの調整も検討します。

個人・家庭で準備しておきたいこと

うつらない、うつさないための
習慣づけを今から

今からすぐに行うことのできる対策や準備があります。

具体的には、うがい・手洗いの励行や、熱、咳、くしゃみなどの症状があるときはマスクをつけるといった日頃からの習慣づけです。インフルエンザウイルスは咳やくしゃみ、つばなどの飛沫とともに放出されますから、マスクをしていないときは、ティッシュなどで口と鼻を押さえ、ほかの人には顔を向けずに1メートルは離れて、という「咳エチケット」の習慣も大切です。

新型インフルエンザの発生により、出来るだけ外出を控えるよう要請される事態も予想されますから、できれば最低限(2週間程度)の食料や日用品を準備しておくことも大切です。

個人でできる事前対策について、詳しくお知りになりたい場合はこちらのサイトをご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/11.html

職場のレベルで準備しておきたいこと

パンデミック時の企業活動では
社会的な責任も問われることに

新型インフルエンザの流行が、職場に大きな影響をもたらすことは容易に想像できるでしょう。職場においても、事前準備と流行時の対応確認などをしておくことが求められます。

まずは、発生時に誰がなにを行うのか役割を決める、連絡網を整備する、といった危機管理体制を整備することが必要です。

そして、職場内で感染を予防することも組織防衛として不可欠でしょう。感染の疑いがある従業員には自宅待機を要請したり、感染拡大を防ぐために在宅勤務を可能にするなどの、柔軟な対応が求められます。

また、従業員やその家族が罹患すれば、当然、欠勤する人が増えるはずです。例えば、米国では感染流行時の職場の欠勤率が40%と想定されています。欠勤率しだいでしょうが、場合によっては企業の業務遂行に支障がでることも考えられます。

その際、企業の活動を中核事業のみに限定し、それ以外については段階的に休止する、という判断を行うことも必要でしょう。

現在、既に自然災害や事故を想定して、事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)を策定している企業もあるでしょう。事業継続計画は、どのように事業を継続するか、という計画であると同時に、どのように休止できるか、という計画でもあります。事前に計画を立てることで、中核事業以外に携わる従業員に対する休業命令もスムーズにできるでしょう。

従業員の生命を守るとともに、感染拡大の防止を前提に事業を継続することが企業の社会的な責任でもあります。

職場でできる事前対策などについてお知りになりたい場合は、こちらのサイトをご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/12.html


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