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国境を越えて蔓延する感染症から日本を守る感染症危機管理専門家の養成コース第1期生に、塩崎厚生労働大臣は激励の言葉を贈りました。

写真(2015年11月17日)

2015年11月17日
厚生労働大臣室
国境を越えて蔓延する感染症から日本を守る感染症危機管理専門家の養成コース第1期生に、塩崎厚生労働大臣は激励の言葉を贈りました。
※写真左から杉原さん、小玉さん、塩崎大臣、都築さん、氏家さん)

 日本で初めてとなる感染症危機管理専門家養成コースの受講生(女性1名を含む4名)が誕生しました。専門家になるための意気込みを伝えるため、大臣室を訪問しました。
 日本ではこれまでにも国外で感染症が発生した際、国立国際医療研究センターやJICA(国際協力機構)などに所属する感染症の対策を専門とする医師を感染症流行地に派遣し、医療の提供体制の構築などの支援を行ってきました。しかし、近年発生している感染症(エボラ出血熱やMERSなど)には、国境を越え猛威を振るうものもあり、国内でも不安を抱く方々の声が聞かれます。このことからも、臨床経験だけではなく、感染症に関する行政の知識の習得、国際機関との調整能力などの総合的な知識と経験があり、感染症流行地への対応や国内に侵入するリスクの軽減、国内での体制の整備までを迅速に対応できる専門家の養成プログラムが新設となりました。
 塩崎大臣は、「感染症の危機が訪れたときにきちんと対応ができる、世界的なレベルの知見と経験を積んだ専門家の方に国民の命を守る中心になっていただけると期待している。第1期生となる皆さんには、海外で自らの健康にも十分気をつけていただきながら研修を積んで、良い専門家になっていただき、日本(国民)の健康の守護神として頑張っていただきたい」と応援の言葉を贈りました。
 養成コースは2年間で、今後、4名は国内で国立感染症研究所や国立国際医療研究センターなどで、研修を重ねたあと、国際機関などで研修を受けます。修了は、個々の資質や経験なども加味して最終的に決定されます。プログラムの終了は2年間となっています。修了後、厚生労働省が専門家として登録し、感染症危機事案が発生した際には、優先的な派遣の候補者となります。
 厚生労働省では、来年度も同専門家を公募し、感染症に対応できる専門家を増やし、国内への侵入や感染被害を防ぐよう取り組みを進めます。
(健康局 結核感染症課)


【インタビュー】

「国際的な感染症の危機に対して貢献できなければ、国の感染症中枢機関で仕事をしている意味がない」。使命感と高い志を持ち、日本を守る決意をする。感染症危機管理専門家養成コースの第1期生・氏家無限さん(うじいえ むげん・38歳・国立国際医療研究センター所属の医師)

写真(2015年11月17日)

 感染症危機管理専門家養成コースの第1期生のなかでも、アフリカや東南アジアなどの発展途上国で、医療活動を行った経験が多い氏家さん。危険と隣り合わせとなる現場、場合によっては手探りの状況下での活動となる場所に派遣もある同専門家。今、どんな思いでいるのかを聞いてみました。

■熱帯医学一筋、若いころから積極的に発展途上国へ
「もともと、若いころから国際保健に興味がありました」と柔和な雰囲気で話す氏家さん。医学部を卒業後、長崎大学の熱帯研究所で熱帯医学を学び、アフリカや東南アジアでマラリアやレプトスピラ症などの研究活動に従事。アフリカなどで医療活動を経験したこともあり、海外からの輸入感染症の治療を行う特定感染症医療機関である国立国際医療研究センター(エボラ出血熱などの疑いのある患者を最も受け入れている医療機関)で、感染症診療に携わることになりました。
 現場では診療だけではなく、感染症予防の普及啓発活動も積極的に行っています。「同センターでは、臨床経験だけではなく、国際的な感染症・危機管理も求められています。日本の立場で国際貢献がしたい、日本に感染症が侵入してこないよう感染症対策に対応したいとの思いもありましたので、海外での経験も生かし、ワクチン接種の普及啓発や、医療従事者にも特殊な感染症の知識を広める活動もしました。正しい知識を持つことが何より大切ですから」。

■国際保健の分野で貢献したい
 世界中でニュースとなったエボラ出血熱をはじめ、新型インフルエンザ、MERSなどの様子をニュースや新聞などを通じて発信された映像を覚えている方も多いと思います。厚生労働省のTwitterにも「日本に入ってきたらどうしたらいい」、「感染症が日本に入らないようにしてほしい」などの声が寄せられていました。それだけ、国民の多くの方の目には恐怖や不安に感じたのだと思います。
 そういった現場に派遣される可能性がある感染症危機専門家。もしかしたら、自らも感染するかもしれない場所に派遣もありうる公募に手をあげたのはなぜか。「感染症に対して怖いというよりは、(専門分野なので)興味があり、そういったところで経験を積みたいという気持ちがひとつ。もうひとつは、必要な知見や国際機関も含め行政がとるべき対応などを勉強させていただき、いざというときに貢献したいと考えたからです」。感染症危機管理専門家への道を一意専心で歩む氏家さんにブレは感じませんでした。

■国の機関で働く人間はある程度“使命”を持っているから、そこで働いているはず。感染症発生地に行かなければ、国の感染症中枢機関で仕事をしている意味がない。
 途上国では医療資源の不足や、本来ならばこう動くべきというスタイルがうまくいかないケース、まさに手探り状態のなかで医療行為が行われるといった苦労もあるそうです。「現場、現場で仕事をしていくというのは、行政も同じ。理想はあるけれども、なかなかそうはいかないから、進めるところまで進みましょうというところはあると思います。そういう観点からも、できる人ができることをやるしかないと思うのです。国の機関で専門家として働く人間はある程度“使命”を持っているはず。国際的な感染症の危機に対して貢献できなければ、国の感染症中枢機関で仕事をしている意味がないと思います」。

■「専門家に期待してもいいですか」との最後の質問に「はい! 啓発も含めて貢献します」。
 エボラ出血熱やMERSなどの感染症が日本にもいずれ入ってくるのではと懸念されている人は多いのではという質問に対し、 「おそらくエボラ出血熱やデング熱が怖いと言うのは、十分な知識がないことも一因だと思います。どういう病気、症状で、日本でない流行地ではどういう状況なのか、病気の感染経路や広がりやすさなどです。また国内にも、さまざまな感染症があり、適切な感染症対策は普段から求められています。こうした適切な予防方法や感染症の特性など、しっかり理解していれば、どんどんわけもなくうつる、ばたばた倒れるという病気ではないとわかるので、必要以上に不安にあおられることもなくなると思います」。
 最後に「専門家に期待してもいいですか」と単刀直入に聞いてみました。氏家さんは「はい! 啓発も含めて貢献します。私たちは感染症発生地での対応のほかに、国民の皆さまに正しい情報を伝えるという普及啓発も重要だと思っています。ほかにも感染症危機管理専門家を増やしていくことも、危機管理のひとつだと考えています。感染症対策や対応、普及啓発、人材のプールなどがんばっていきます」と力強い言葉がかえってきました。日本で暮らす人たちを守るという大きな期待を背負いながら、研修を受け、普及啓発を行うことは並大抵の苦労ではないはず。けれども氏家さんは、これらを「やりたかったことですから」と笑顔で話してくれました。

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