厚生労働省

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花粉症Q&A集(平成21年花粉症対策用)

医療従事者向け



Q.花粉症の歴史は?
  A. 花粉症の歴史は1819年にBostockによってイネ科の花粉症がはじめてhay feverと診断され始まった。日本では1963年に荒木がブタクサ花粉症が、1964年に堀口、斉藤らによりスギ花粉症がはじめて報告された。
  文献: 堀口申作、斎藤洋三:栃木県日光地方におけるスギ花粉症.Japanese cedar pollinosisの発見.アレルギー13:16-18, 1964.

Q.花粉飛散と花粉症の関係は?
  A. 花粉の飛散状況は種々の花粉により異なる。スギ花粉の場合、上空まで上がり長距離を移動して大量の花粉を北海道北部、沖縄を除く日本全土に飛散させる。もちろん花粉飛散数が増加すると花粉症の発症も増加し、すでに発症している人の症状は増悪する。
  文献: 西間三馨ほか:花粉症における予防・治療に関する研究報告書.平成2年度厚生省報告書.多門印刷(福岡市), 1990.

Q.花粉症の疫学は?
  A. スギ花粉症の全国調査報告は非常に少ない。しかし、一般的に幅広い年齢層、特に5歳から9歳の小児と60歳以上で増加がみられ、国民の約20%が罹患していると考えられている。2008年の報告では、花粉症全体で29.8%と非常に高い有病率が示されている。
  文献: Okuda M: Epidemiology of Japanese cedar pollinosis throughout Japan. Ann Allergy Asthma Immunol 2003; 91: 288-296.
馬場廣太郎、中江公裕:鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較)−耳鼻咽喉科医とその家族を対象にして−Progress in Medicine 28(8):145-156.2008)

Q.花粉症の病態生理・病理は?
  A. 花粉に対するIgEが結合した鼻粘膜や結膜でのマスト細胞と花粉抗原が結合してヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質を鼻粘膜中や結膜中に放出する。粘膜に存在するヒスタミンやロイコトリエンの受容体と反応し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみなどの症状が出現する。また遊走細胞により遅発相の反応が出現する。
  文献: Okuda M, Shida T: Clinical Aspects of Japanese cedar pollinosis. Allergology Int 1998; 47: 1-8.

Q.花粉症の臨床所見は?
  A. 花粉症では鼻粘膜の腫脹や鼻腔内の鼻汁の増加が認められる。また結膜は充血する。
  文献: 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:第4章 検査・診断法.鼻アレルギー診療ガイドライン.2009年版.ライフサイエンス.東京.2008, 18-31

Q.花粉症の診断は?
  A. 花粉症の診断には鼻汁中好酸球の増加、血清中の抗原特異的IgEや皮膚反応などの診断のための検査がある。簡便的には問診による季節の症状と特異的IgEの存在(血清特異的IgEや皮膚反応)により診断できる。
  文献: 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:第4章 検査・診断法.鼻アレルギー診療ガイドライン.2009年版.ライフサイエンス.東京.2008, 18-31

Q.花粉症と誤りやすい疾患は?
  A. 最も多いスギ花粉症は2月から5月に生じ、この時期には風邪による急性鼻炎と区別がつきにくくなることがある。鼻汁の性状や発熱、眼の症状の有無などで鑑別する必要があり、また他の鼻疾患の可能性も考えなければならない。
  文献: 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:第4章 検査・診断法.鼻アレルギー診療ガイドライン.2009年版.ライフサイエンス.東京.2008, 18-31

Q.口腔アレルギー症候群とは?
  A. 果実野菜過敏症とも言われる症候群である。果物や野菜を食べると口の中が痒くなる。多くはシラカバ花粉症の方に頻度が多いが、イネ科花粉症やスギ花粉症でも報告されている。最も症状を生じさせやすい果物はシラカバと共通抗原性のあるバラ科のリンゴ、サクランボである。稀にショックも報告されている。
  文献: 池澤善郎:Oral allergy syndrome, 総論.アレルギー・免疫8: 837-844, 2001.

Q.花粉症の治療法の選択は?
  A. 治療はできるだけ花粉症患者の症状に見合った治療方法を選択する。十分なインフォームドコンセントでどのような治療法でもできる限り持続させ、それでも症状がつらい様であれば再受診し、さらに患者とone step上の治療法を選択してゆく。抗原回避、薬物療法を中心に減感作療法、手術療法をうまく組み合わせる。
  文献: 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:第5章 治療.鼻アレルギー診療ガイドライン.2009年版.ライフサイエンス.東京.2008, 34-62

Q.花粉症の代替医療の効果は?
  A. 花粉症の代替医療いわゆる民間医療は、現在、花粉症が治療ではなかなか治癒しないために国民に多く広がっている。しかし、その効果が高いエビデンスで確認されているものはみられない。代替医療は決して全てが否定されるものではないが、今後効果のエビデンスが必要となると考える。厚生労働省班研究「代替医療の実態と科学的評価」で検討が進められている。
  文献: 岡本美孝:花粉症の民間医療について.厚生労働省ホームページ.2005年http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/okamoto.html

Q.花粉症の重症化防止法は?
  A. 花粉症の重症化の防止には、季節中の重症化と経年的な重症化の問題がある。季節中の重症化予防では、症状がなくても4月末までは治療を継続することが必要である。経年的な重症化予防では花粉暴露を少しでも減らし、抗体産生を減少させることが必要である。
  文献: 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:第5章 治療.鼻アレルギー診療ガイドライン.2009年版.ライフサイエンス.東京.2008, 34-62

Q.花粉症の合併症は?
  A. 花粉症には、他の抗原によるアレルギー性鼻炎や結膜炎、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患が合併しやすい。
  文献: ARIA Workshop Group: Allergic rhinitis and its Impact on Asthma. ARIA workshop report (chairman: Bousquet J). J Allergy Clin Immunol 108(5):s147-s334, 2001

Q.花粉症診療相談機関・医療機関は?
  A. 花粉症の診療は、一般医、内科、耳鼻咽喉科、眼科などにより行われる。一般的な治療で症状が軽快しない症例は、アレルギー専門医に紹介されるべきである。専門医の医療機関はアレルギー協会の協力医名簿で選択される。
  文献: 患者相談協力認定医・専門医等名簿 平成20年度.(財)日本アレルギー協会.協和企画.東京.2008

Q.花粉症の発症予防法は?
  A. 花粉症の発症予防には、既に花粉症である人の季節中の発症予防と花粉症になっていない人の発症予防がある。
既に花粉症になった人では、花粉飛散初期からの治療が発症を遅らせたり、症状を弱める。あるいは減感作療法(抗原特異的免疫療法)で花粉に対する反応閾値を高めておく。また、花粉症を発症していない人には、抗原であるスギ花粉の大量の暴露を避けることが発症への予防となる。
  文献: Gotoh M, Okubo K and Okuda M: Repeated antigen challenge in patients with perennial allergic rhinitis to house dust mite. Allergology Interenational 52: 207-212, 2003

Q.花粉症の現在行われている研究は?
  A. 現在進められている花粉症に関する研究は、メカニズム、治療法の面からの研究が主体である。厚生労働省の免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業では現在、リアルタイムモニター花粉数の情報とあり方の研究と舌下ペプチド・アジュバント療法の臨床研究、代替医療の実態とその科学的評価が行われている。
  文献: 大久保公裕:リアルタイムモニター飛散数と現状の治療によるQOLの関連性の評価研究と花粉症根治療の開発.厚生労働省ホームページ.2006年http://www.allergy.go.jp/Research/H17/index.html

Q.花粉症指導のポイントは?
  A. 花粉症の自然治癒はごく僅かであり、治癒の可能性があるのは抗原特異的免疫(減感作)療法のみである。このため薬物療法などの対症療法では毎年治療が必要となる。またこの症状は飛散花粉の量により増減する。花粉飛散予想などから毎年治療の予定を立て実行すると症状の増悪は少ない。
  文献: 大久保公裕:花粉症.2002年今日の治療指針.総編集 多賀須幸男ほか、医学書院、東京、503-504. 2002.


監修:日本医科大学耳鼻咽喉科 大久保 公裕
作成協力:国立病院機構相模原病院 秋山 一男
千葉大学耳鼻咽喉科 岡本 美孝

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