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血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保に関する基本的な方針

○血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針

(平成二十年厚生労働省告示第三百二十六号)

安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和三十一年法律第百六十号)第九条第三項の規定に基づき、血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針(平成十五年厚生労働省告示第二百七号)の全部を次のように改正し、平成二十年七月三十日から適用する。

血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針

我が国の血液事業は、昭和三十九年の閣議決定を契機として、関係者による多大の努力が積み重ねられてきた結果、輸血用血液製剤については昭和四十九年以降、国内自給が達成されている。しかしながら、血漿分画製剤に関しては、一部の製剤について、国内自給率は上昇してきたものの、その他の製剤についてはいまだ相当量を輸入に依存している状況にある。このような現状を踏まえ、血液製剤(安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和三十一年法律第百六十号。以下「法」という。)第二条第一項に規定する血液製剤をいう。以下同じ。)の安定的な供給が確保され、かつ、国内自給が推進されるよう一層の取組を進めることが必要である。

我が国は、過去において、血液凝固因子製剤によるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染問題という、深甚な苦難を経験しており、これを教訓として、今後、重大な健康被害が生じないよう、血液製剤の安全性を向上するための施策を進めることが必要である。

本方針は、これらの経緯等を踏まえ、法の基本理念である血液製剤の安全性の向上、献血によって得られた血液による国内自給の確保、血液製剤の安定供給、適正使用の推進及び公正かつ透明な血液事業の実施体制の確保を図るため、法第九条第一項に基づき策定する基本的な方針であり、今後の血液事業の方向性を示すものである。血液事業は、本方針、本方針に基づき定める献血推進計画及び需給計画、都道府県が定める都道府県献血推進計画並びに採血事業者が定める献血受入計画に基づいて一体的に進められることが必要である。

本方針は、血液事業を取り巻く状況の変化等に的確に対応する必要があること等から、法第九条第三項に基づき、少なくとも五年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

第一 血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保に関する基本的な方向

一 基本的な考え方

血液製剤は人体から採取された血液を原料とする有限で貴重なものであることを、まず十分認識することが必要である。

国並びに地方公共団体(都道府県及び市町村をいう。以下同じ。)、採血事業者、製造販売業者等(製造販売業者、製造業者及び販売業者をいう。以下同じ。)、医療関係者など血液事業に関わる者は、法に基づき課せられた責務を確実に果たすとともに、法に掲げられた以下の四つの基本理念の実現に向け、各般の取組を進めることが必要である。

1 安全性の向上

血液製剤は医療の領域に多くの成果をもたらしてきており、また、科学技術の進歩により、病原体の発見、その検査法や不活化技術の開発・導入等を通じ、血液製剤を介して感染症等が発生するリスクは著しく低減してきている。しかし、人の血液を原料として製造されていることから、当該リスクを完全には否定できない可能性があること、製造過程における病原体の不活化処理等には限界がある場合があることなどの特徴を有する。このため、常に最新の科学的知見に基づき、血液の採取から製造、供給、使用に至るまで、一貫した遡及調査体制を構築するなど、安全性の確保及びその向上に向けた不断の努力が必要である。

これまで、血液製剤については、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に基づき、その安全性の確保を図ってきたところであるが、我が国は、過去において、血液凝固因子製剤によるHIV感染問題という、深甚な苦難を経験しており、より一層の安全確保対策の充実が求められている。国は、平成十四年七月に公布された薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成十四年法律第九十六号)を踏まえ、安全性情報の収集・評価等の安全対策が迅速かつ的確に行われ、常にその実効性が検証されるような体制によって血液事業を運営していくこととする。

2 国内自給の原則と安定供給の確保

法第三条第二項において血液製剤の国内自給が確保されることを基本とすることが規定されているとおり、倫理性、国際的公平性等の観点に立脚し、国内で使用される血液製剤が、原則として国内で行われる献血により得られた血液を原料として製造され、海外の血液に依存しなくても済む体制を構築すべきである。このため、中期的な需給見通しに基づき、有限で貴重な血液製剤を献血により確保し、医療需要に応じて過不足なく安定的に供給するとともに、血液製剤の適正使用を推進する必要がある。

特に、血漿分画製剤については、供給の見通しを踏まえた検討を行った上で、毎年度、需給計画を定めることにより、安定的な供給を確保するものとする。

3 適正使用の推進

医療関係者は、血液製剤が人の血液に由来する有限で貴重なものであること及び原料に由来する感染のリスク等について特段の注意を払う必要があることを十分認識し、患者に真に必要な場合に限って血液製剤を使用するなど、適切かつ適正な使用を一層推進する必要がある。これは国内自給及び安定供給の確保の観点からも重要である。

このため、医療機関において、血液製剤の管理体制を整備し、血液製剤の使用状況を正確に把握するなど、血液製剤の適正な使用を推進する必要がある。

また、国は、血液製剤の適切かつ適正な使用を推進するため、血液製剤の適正使用や輸血療法の実施等に関する指針を状況の変化に応じて改定し、その普及を図るとともに、医療機関における血液製剤の使用状況について定期的に評価を行うなど、適正使用を更に促進するための方策を講ずることとする。

4 公正の確保及び透明性の向上

国、地方公共団体、採血事業者、製造販売業者等、医療関係者など血液事業に関わる者は、献血者の善意にこたえ、国民の理解と協力を得ることができるよう、献血の推進、適正使用の推進等血液事業に係る施策の策定及び実施に当たり、血液製剤の安全性や供給の状況等につき、十分な情報を公開する必要がある。

また、国、地方公共団体その他の血液事業に関わる者は、血液事業の公正かつ透明な運営を確保するものとする。

二 血液製剤代替医薬品の取扱い

用法、効能及び効果について血液製剤と代替性がある医薬品(以下「血液製剤代替医薬品」という。)についても、その安全性の確保及び向上が必要である。

また、血液製剤代替医薬品は、安定供給を確保するため、計画的に製造及び供給が行われる必要があるとともに、それぞれの患者への必要に応じて、適切かつ適正に使用されることが求められる。

血液製剤代替医薬品の安全性や供給の状況等についても、血液製剤と同様に十分な情報を公開する必要がある。

三 国民の理解と参加

国民一人一人が、献血に由来する血液製剤を用いた医療が提供されることによって生命と健康が守られているということを理解し、積極的に献血に協力すること等を通じ、国民が今後の血液事業の健全な展開に参加することが期待される。

こうした国民の血液事業への参加を促すため、血液事業に関わる者は、国民に対し、血液事業や血液製剤を用いた医療に関する分かりやすい情報の積極的な提供に努めることが必要である。

第二 血液製剤についての中期的な需給の見通し

血液製剤及び血液製剤代替医薬品の需給動向を勘案しつつ、それらの中期的な需給の見通しとして、平成二十五年度までの今後五年間の状況について考察する。

一 輸血用血液製剤

輸血用血液製剤は、昭和四十九年以降、すべて国内献血で賄われている。平成十九年においては、全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤及び血漿製剤について、血液量に換算して合計八十五万リットルが供給されており、血漿分画製剤の原料血漿を含め、約四百九十四万人の献血者からの血液によって供給された。

輸血用血液製剤は、引き続き医療需要に応じた供給が確保される必要がある。また、献血者の確保のための努力が続けられる一方で、血液製剤の適正使用の推進がさらに図られることにより、医療に必要な輸血用血液製剤は今後とも国内献血で賄われると見込まれる。

二 血漿分画製剤

1 原料血漿

原料血漿については、毎年度、需給計画において翌年度に確保されるべき原料血漿の量の目標を定めた上で、計画的に原料血漿を確保し、供給している。平成十八年度の原料血漿確保目標量は九十三万リットル、平成十九年度は九十七万リットルと定め、原料血漿の確保を行ったことにより、これまで需要に見合う供給が行われてきている。過去の供給状況等を勘案すると、平成二十五年度において百二十万リットル程度までの量が供給可能と予測され、血液製剤代替医薬品の供給状況にもよるが、今後とも、需要に見合う供給が可能であると見込まれる。

2 免疫グロブリン製剤及びアルブミン製剤

血漿分画製剤のうち、免疫グロブリン製剤及びアルブミン製剤の供給量は、製造に要する原料血漿量に換算して、平成十九年においてそれぞれ九十六万リットル及び百五十七万リットルであり、うち国内献血に由来するものの供給量は、それぞれ九十一万リットル及び九十八万リットルである。

これらの製剤の今後の需要予測は、過去の使用状況等を勘案すると、製造に要する原料血漿量に換算して、平成二十五年度においてそれぞれ九十四万リットル〜九十八万リットル程度及び百二十五万リットル〜百二十八万リットル程度であると見込まれ、これらは国内の製造業者の現在の製造能力約百三十万リットルを超えないものである。

原料血漿の供給量及び血漿分画製剤の国内製造業者の製造能力等を勘案すると、今後は、遺伝子組換え製剤の開発も重要な課題である。

3 血液凝固因子製剤等

血液凝固第VIII因子製剤(遺伝子組換え製剤を除く。)及び血液凝固第IX因子製剤(複合体を除く。)は、すべて国内献血で賄われている。

これらの製剤については、今後とも国内自給が確保されることが見込まれるが血漿由来製剤及び遺伝子組換え製剤の特性及び副作用の発現状況並びに危機管理的な対応を考慮した製造体制及び製造能力の確保が必要であり、国内献血由来製剤を一定量確保する必要がある。

なお、特殊免疫グロブリン製剤等多くを輸入に依存している製剤については、国内自給の方策を具体的に検討していく必要がある。

三 血液製剤代替医薬品

血液凝固第VIII因子製剤については、血液製剤代替医薬品として、血液に由来する製剤の外に遺伝子組換え製剤が輸入により供給されている状況にある。なお、将来的には遺伝子組換え第VIII因子製剤の国内での製造の可能性も検討する必要がある。

また、新たに開発された遺伝子組換えアルブミン製剤について承認がなされたところであり、今後、徐々に供給されていくと見込まれるが、当該製剤の製造及び供給状況を確認していくことが必要である。

第三 血液製剤に関し国内自給が確保されるための方策に関する事項

一 基本的な考え方

血液製剤は安全性の向上に常に配慮しつつ安定的に供給されなければならず、かつ、国内の献血に基づく国内自給が確保されることを基本とするものである。このことから、平成十九年現在、国内自給を達成している輸血用血液製剤、血液凝固第VIII因子製剤(遺伝子組換え製剤を除く。)及び血液凝固第IX因子製剤(複合体を除く。)に加え、アルブミン製剤(遺伝子組換え製剤を除く。)及び免疫グロブリン製剤等の血液製剤についても、平成二十五年を目途に国内自給の達成を目指すものとする。なお、アルブミン製剤(遺伝子組換え製剤を除く。)の国内自給については、今後の遺伝子組換えアルブミン製剤の供給状況も影響することに留意する必要がある。

また、アルブミン製剤(遺伝子組換え製剤を除く。)及び免疫グロブリン製剤等の血漿分画製剤については、国内自給を推進するために、国内の需要を満たすために必要な献血量の確保、原料血漿の有効利用、献血由来原料血漿を使用した生産の拡大、医療関係者に対する献血由来製剤の意義の啓発、患者への情報提供、血液製剤の適正使用の推進等の方策を各関係者が実践して取り組むことが必要である。

なお、特殊免疫グロブリン製剤については、国内での原料血漿確保の実現可能性を考慮しながら、国内製造の方策を引き続き検討していく。

二 国内自給が確保されるための具体的な方策

1 献血量の確保

国、地方公共団体及び採血事業者は、第二に示した血液製剤についての中期的な需給の見通しを踏まえ、第四に示すとおり、計画的な献血の推進に努め、血液製剤の国内自給のために必要な献血量を確保することが求められる。

2 国内における献血由来製剤及び血液製剤代替医薬品の製造と供給

国、採血事業者、製造販売業者及び製造業者は、第五に示すとおり、国内の献血により得られた血液及び原料血漿がすべて有効に利用され、医療需要に応じて、血液製剤として国内に過不足なく供給されるよう、血液製剤の国内自給に向けた製造及び供給のための体制を整備し、血液事業の安定的な運営を通じて、血液製剤の安定供給を確保する必要がある。

このため、採血事業者、製造販売業者及び製造業者は、採血から製造及び供給に至るすべての段階において、事業の最大限の効率化及び合理化を図ることが必要である。

また、国は、国内自給を推進するに当たって、採血事業者、製造販売業者等、患者又はその家族、医療関係者、献血者等血液事業に関わる者の意見を十分踏まえるとともに、遺伝子組換えアルブミン製剤の開発状況及び承認後の供給状況、国内の献血に由来する血液製剤及び輸入される血液製剤の供給をめぐる動向等も十分に考慮するものとする。

3 医療関係者等に対する啓発等

国、地方公共団体、採血事業者及び製造販売業者等は、医療関係者及び患者に対し、国内の献血により得られた血液に由来する製剤の意義についての啓発に取り組む必要がある。

医療関係者においては、献血により確保されている血液製剤は貴重なものであることを含め、そのような血液製剤に関して、患者への分かりやすい情報提供に努めることが重要である。

4 適正使用の推進

免疫グロブリン製剤の使用量は近年やや増加傾向にあり、今後とも適切かつ適正な使用の推進が求められる。アルブミン製剤の使用量は、適正使用の推進の結果として、減少傾向にあるものの、引き続き適正使用が図られる必要がある。

医療機関においては、血液製剤の適正使用の一層の推進に努めることが、アルブミン製剤等の国内自給を推進する方策としても重要である。

第四 献血の推進に関する事項

一 基本的な考え方

国、地方公共団体、採血事業者、献血推進協議会、民間の献血推進組織等は、本方針及び献血推進計画を踏まえ、協力して、相互扶助及び博愛の精神に基づき、献血推進運動を展開する必要がある。また、その際には、献血について国民に正確な情報を伝え、その理解と協力を得る必要がある。

中長期的な課題として、今後の人口動態を考慮すると、献血可能人口が減少すると推定されていることから、血液製剤の安定供給には国民一人一人の一層の協力が不可欠であると考えられる。こうした状況にかんがみ、献血についての理解を広め、献血者を増やすため、幼少期も含めた若年層を中心に普及啓発を一層推進する必要がある。

また、四〇〇ミリリットル全血採血及び成分採血は、献血量を確保しやすくなるとともに、感染症等のリスクを低減させるなどの利点があるため、今後も、一層の普及が必要である。

なお、献血者の理解を深めるためには、血液製剤の使用状況に関する情報提供や医療機関における患者等への説明等を通じ、血液製剤の適正使用に関する理解を得ることも重要である。

また、血液製剤、特に赤血球製剤の安定供給を確保するためには、国、都道府県及び採血事業者は、在庫水準を常時把握し、在庫が不足する場合には供給に支障を及ぼす危険性を回避するよう早急な対策を講ずることが必要である。

さらに、国及び地方公共団体は、あらかじめ災害時の対応を検討するとともに、災害時における献血が確保され、血液が適切に供給されるよう所要の措置を講ずるものとする。採血事業者は、あらかじめ災害時における献血受入体制を構築し、各採血所間における需給調整が迅速にできるよう備えることにより、災害時における献血量の確保に協力する必要がある。

二 献血推進計画及び都道府県献血推進計画

国は、献血により確保すべき血液の目標量、その目標量確保のための基本的な施策、献血の推進に関する事項について、毎年度、薬事・食品衛生審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴いて献血推進計画を策定し、公表する。また、献血推進計画に基づき、国民の献血への理解と協力を得るための教育及び啓発、採血事業者による献血の受入れや献血者の保護に対する協力等を行う。

都道府県は、本方針及び国の定める献血推進計画に基づき、毎年度、血液製剤の需給の状況、適正使用の推進状況、人口動態等を考慮して、効果的な都道府県献血推進計画を策定し、公表する。また、住民の献血への理解を深めるための広報、献血推進組織の育成、献血の受入れの円滑な実施等の措置を講ずることが重要である。

市町村は、国及び都道府県とともに献血推進のための所要の措置を講ずることが重要である。

三 献血受入計画

採血事業者は、本方針及び国の定める献血推進計画に基づき、毎年度、献血受入計画を作成し、国の認可を受けなければならない。事業の実施に当たっては、献血受入体制を着実に整備し、献血の受入れに関する目標を達成するための措置を講ずることが必要である。例えば、採血時の安全性の確保、事故への対応、献血者の個人情報の保護、採血による献血者等の健康被害の補償等献血者が安心して献血できる環境の整備、採血に際しての血液検査による健康管理サービスの充実及び献血者登録制度による献血者との連携の確保を図ることが重要である。また、希少血液の確保に引き続き取り組むことが求められる。

四 献血推進施策の進捗状況等に関する確認及び評価

国及び地方公共団体は、献血推進施策の進捗状況について確認及び評価を行うとともに、採血事業者による献血の受入れの実績についての情報を収集する体制を構築し、必要に応じ、献血推進施策の見直しを行うことが必要である。

第五 血液製剤の製造及び供給に関する事項

一 基本的な考え方

血液製剤は安定的に供給されなければならないことから、血液製剤の供給に当たっては、緊急時の輸入、国内で製造が困難な血液製剤の輸入等やむを得ない場合を除き、海外の血液に依存しなくても済むよう、原則として国内の献血に基づく国内自給を推進することが求められる。また、国内の献血によって得られた血液が有効に利用され、血液製剤として安定的に供給される必要がある。さらに、一部の製剤で供給に支障が生じるような緊急事態に対応できるよう、製造販売業者等は所要の在庫を保有しておくことが重要である。

このため、保健衛生上の観点から、医療に必要な血液製剤を確保して安定的に供給するために、厚生労働大臣が製造、供給等の需給動向を適時適切に把握する必要のある血漿分画製剤については、血液製剤代替医薬品を含め、法第二十五条に基づき、第二に示した中期的な需給の見通しを踏まえ、需給計画を策定し、公表するものとする。なお、輸血用血液製剤については、災害時等の緊急的な対応を常に考慮しつつ、その需給が季節的に変動すること等も踏まえ、献血推進計画等により、安定的な供給を確保する必要がある。

二 血液製剤の安定供給の確保のための需給計画

需給計画を策定する際には、当該血漿分画製剤の需給動向のみならず、その製造に使用する原料血漿の量の動向、当該製剤に代替する医薬品、治療法等を考慮し、審議会の意見を聴いて策定する。

血漿分画製剤の製造販売業者等は、需給計画に沿って、計画的に血漿分画製剤の製造及び供給に取り組む必要があるとともに、その製造実績等を厚生労働大臣に報告することが必要である。厚生労働大臣は、当該報告を受け、安定供給の確保の観点から、需給計画を尊重して適正に製造及び供給が行われるよう、必要に応じ勧告等の措置を講ずるものとする。

また、国内の献血に由来する血液製剤を取り扱う製造販売業者等は、その供給の確保に努めることが重要である。

なお、国内の献血に由来する原料血漿を一旦海外へ輸出して外国の工場において製剤化して日本へ輸入する血液製剤を取り扱うことが特に必要であるとされた場合には国内での安定供給及び国内自給の推進と両立する範囲内において実施することについて、課題毎に具体的な検討が必要である。

三 原料血漿の配分

国は、製造販売業者及び製造業者の製造能力及び製造効率を勘案し、安定供給に必要な血漿分画製剤の適正な水準の生産が確保されるよう、審議会における公正かつ透明な審議を踏まえ、需給計画において採血事業者から製造販売業者及び製造業者への血漿の配分量及び配分する際の標準価格を規定するものとする。

採血事業者、製造販売業者及び製造業者は、需給計画を尊重して原料血漿を配分することが必要であり、厚生労働大臣は、計画が尊重されているかを把握するため、原料血漿の配分結果の報告を求めるものとする。

四 血液製剤の製造及び供給の在り方

血液製剤の今後の製造及び供給の在り方については、「血漿分画製剤の製造体制の在り方に関する検討会」での議論を踏まえ、安定供給の確保の観点から血液事業が安定的に運営できるよう、各関係者が取り組むことが必要とされる。また、その際には、輸血用血液製剤及び血漿分画製剤がともに人の血液に由来する有限で貴重なものであり、安全性の向上、安定供給の確保、適正使用の推進等の点で他の医薬品とは異なる性格を有するものであることを十分踏まえた取扱いが必要である。

なお、国は、災害等の場合にあっても、血液製剤の供給に支障を来すことがないよう、製造販売業者及び製造業者による安定供給に必要な量の備蓄の状況等に関し、適宜、確認を行うなど、その安定供給を確保することとする。

第六 血液製剤の安全性の向上に関する事項

一 安全性の向上のための取組

薬事法に基づき、生物由来製品について、その感染のリスク等を踏まえ、原材料の採取及び製造から市販後に至る各段階において、一般の医薬品等における各種基準に加え、以下に掲げる基準等が定められた。これらを柱として、血液製剤の一層の安全性の確保を図ることとする。

1 原材料採取の方法等について保健衛生上の観点から定める品質等の付加的な基準

2 構造設備、製造管理及び品質管理の方法について、その特性に応じた付加的な基準

3 直接の容器又は直接の被包等において、感染のリスク等を有することから適正に使用すべき医薬品等であることを明らかにするため、安全性の確保に関し必要な付加的な表示を行うこと。

4 病原体の混入が判明した場合に遡及調査を速やかに講ずることを可能とするため、製造販売業者等及び医療関係者は必要な事項について記録を作成し、保存すること。

製造販売業者及び外国特例承認取得者は、薬事法第六十八条の八に定める感染症定期報告を行うことが必要であり、製造業者は、特定生物由来製品について、遡及調査のために必要な量を適切に保存することが必要である。

医療関係者は、特定生物由来製品を使用する際には、原材料に由来する感染のリスク等について、特段の注意を払う必要があることを十分認識する必要がある。また、薬事法第六十八条の七に基づき、その有効性及び安全性その他当該製品の適正な使用のために必要な事項について、患者又はその家族に対し、適切かつ十分な説明を行い、その理解と同意を得るよう努めるものとする。

都道府県及び保健所を設置する市(特別区を含む。以下「都道府県等」という。)は、必要に応じ、医療関係者が安全対策を適切に実施するよう、指導に努めることが重要である。

採血事業者は、血液製剤を介して感染症等が発生するリスクをできる限り排除するために、献血時における問診の充実を図ることが必要である。また、国、地方公共団体及び採血事業者は、あらかじめ献血者に対し、検査を目的とした献血を行わないよう周知徹底する必要がある。

医療関係者は、血液製剤の免疫学的副作用の発生にも留意する必要がある。

なお、血液製剤代替医薬品についても、安全性の確保を図ることが重要である。

二 迅速かつ適切に安全対策を実施するための体制整備

国、採血事業者、製造販売業者等及び医療関係者は、感染症等、血液製剤に係る安全性に関する情報を把握し、その情報を評価し、安全対策の実施を迅速かつ適切に行うとともに、遡及調査を速やかに実施できる体制を整えることが必要である。

血液製剤の安全性に関する情報については、審議会において、専門家、患者等と遅滞なく情報を共有するとともに、国民に対し適時適切かつ迅速に情報を公開し、提供するものとする。

三 血液製剤の使用により感染症の発生等が判明した場合の対応

国は、血液製剤の使用により、感染症等の保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、遡及調査を速やかに実施し、ほかの患者等への健康被害が拡大しないよう、薬事法第六十九条の三に基づく製品の販売等の一時停止や同法第七十条第一項及び第二項に基づく回収等の措置を講ずることとする。また、患者又はその家族に対する不利益や偏見、差別に配慮しつつ、患者又はその家族を始めとする国民や医療機関等へ各種の手法により迅速に情報を提供するとともに、原因の究明、改善の指示等を行うものとする。

四 安全性の向上のための技術の開発促進及び早期導入

製造販売業者等は、病原体の不活化・除去技術の向上、より高感度かつ高精度の検査方法の開発等を通じ、より安全性の高い血液製剤の開発等に努めることが必要である。

また、国は、血液製剤の安全性の向上に係る技術に関する情報を収集し、技術開発を支援し、採血事業者及び製造業者がそれらの技術を早期導入するように指導するものとする。

五 自己血輸血等の取扱い

輸血により、感染症、免疫学的副作用等が発生するリスクは完全には否定できない可能性があることから、自己血輸血は推奨される手法である。自己血輸血を行う際は、法第二十四条第二項に基づき定める基準及びその実施に関する指針に沿って適切に行う必要がある。

また、自己血輸血を除き、院内血輸血は、安全性の問題及び患者又はその家族に対する負担の問題があることから、原則として行うべきではない。

第七 血液製剤の適正な使用に関する事項

一 血液製剤の適正使用の推進

医療関係者は、血液製剤の特徴を十分に理解し、その適正な使用を一層推進する必要がある。また、医療関係者に対する教育、研修等、様々な機会を通じて働きかけていくことが重要である。

国は、血液製剤の適正使用、輸血療法の実施等に関する指針を医療機関に示してきたところであるが、医療機関における血液製剤の使用状況等について報告を求め、定期的に評価し、必要に応じて当該指針を見直す等、適正使用の推進のためのより効果的な方法を検討するものとする。

二 院内体制の整備

医療機関においては、血液製剤を用いた医療が適正になされるよう、院内の血液製剤を管理し、使用するための体制を整備することが重要である。このため、国及び都道府県等は、そのような医療機関に対し、様々な機会を通じて、院内における輸血療法委員会及び輸血部門の設置並びに責任医師の任命を働きかけるものとする。

三 患者等に対する説明

医療関係者は、それぞれの患者に応じて血液製剤の適切な使用に努めることが重要であり、患者又はその家族に対し、血液製剤に関して適切かつ十分な説明を行い、その理解と同意を得るよう努めるものとする。

第八 その他献血及び血液製剤に関する重要事項

一 血液製剤代替医薬品に関する事項

遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤をはじめとする血液製剤代替医薬品は、血液製剤の需給動向に重要な影響を与えるため、第五に示したとおり、その計画的な製造及び供給が行われる必要がある。

また、血液製剤代替医薬品の安全対策については、第六に示した薬事法に基づく規制を適用することとする。なお、患者又はその家族への説明及び同意あるいは記録の保存等についても、必要に応じ、特定生物由来製品と同様に行うことが求められる。

血液製剤代替医薬品は、血液に由来する製剤と同様に、それぞれの患者に応じ適切に、また適正に使用することが求められる。

二 採血基準の見直し

四〇〇ミリリットル全血採血等の対象年齢等を規定している採血基準に関しては、献血により得られる血液量の確保とともに、献血者の安全確保を図るために、体重、採血間隔、血中ヘモグロビン値、比重等のデータや新たな感染症の発生状況等の最新の科学的知見に基づき、諸外国の状況も勘案し、専門家の意見を聴きながら、採血基準の見直しを行うことが必要である。

三 血液製剤の表示

血液製剤については、患者又はその家族の選択の機会を確保するため、製造販売業者等は、直接の容器又は直接の被包に、採血国及び献血又は非献血の区別を表示することが必要である。

また、血液製剤代替医薬品のうち、特定生物由来製品についても、採血国及び献血又は非献血の区別を表示することが必要である。

四 血液製剤等の研究開発の推進

血液製剤の安全性の向上の観点から、国は、血液製剤の安全性の向上に係る技術開発の支援等を行い、製造販売業者等は、より安全性の高い血液製剤の開発等に努めることが必要である。

また、血液製剤の安定供給及び国内の献血に基づく国内自給等の観点から、原料血漿の供給量、血漿分画製剤の国内製造業者の製造能力等を勘案すると、今後とも、遺伝子組換え製剤等の血液製剤代替医薬品の開発は重要な課題である。

いわゆる人工血液等、新たに開発される血液製剤代替医薬品については、血液製剤との比較において優れた安全性及び有効性を有するものの製品化が促進されるよう、研究開発を推進する必要がある。

五 研究開発等における血液製剤の使用に関する基準の策定

国民の善意の献血によって得られる血液を主たる原料とする血液製剤は有限で貴重なものであり、研究開発等の使用に当たっても、倫理的な観点からの慎重な配慮が必要である。血液製剤の適用外使用により、本来の効能及び効果を目的として供給される血液製剤が不足したり、医療に支障を生じることがあってはならない。

しかしながら、研究開発等に当たり、人の血液を使用せざるを得ない場合もあるため、本来の効能及び効果を目的とした血液製剤の供給に支障を生じないよう、国は、研究開発等における血液製剤の使用に関する基準を策定し、これを様々な機会を通じて医療関係者等に徹底させるものとする。

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