厚生労働省

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定例事務次官記者会見概要

(H21.07.23(木)14:02〜14:20 省内会見場)

【広報室】

《次官等会議等について》

(次官)

本日の事務次官会議ですが、厚生労働省では政令案が一つかかっております。「確定拠出年金法施行令の一部を改正する政令案」であります。中身は、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援するため、確定拠出年金の掛金の拠出限度額を引き上げるというものであります。

《質疑》

(記者)

今日で記者会見は最後になりますが、この二年間を振り返っての感想をお聞かせ下さい。

(次官)

先週の金曜日に一週間後に発令をするということで閣議にかかりまして、私の任務も明日で解かれるということになります。この二年間、様々な課題がありまして、その課題の一つ一つに省を挙げて各部局一生懸命取り組んでくれて、私もまた、そのスクラムの一員として一緒に努力をしてきたつもりであります。課題が解決したもの、途上のもの、これからが山場だというもの、様々ありますけれども、厚生労働行政全体を見ますと、全体としては目一杯努力はしておりますが、巡航速度的な状況になったのかなという感じがしています。また、記者会見では皆様方に様々な角度から御質問いただき十分に答えられたかどうかはわかりませんが、二年間お付き合いいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。様々な形で御支援を賜りましたことに、重ねて感謝を申し上げたいという気持ちであります。

(記者)

明日幹部人事の発令になると思いますが、しばらくすると民主党政権が視野に入ってくると思いますが、そういうことを視野に入れて人事異動を行ったということはありますでしょうか。

(次官)

厚生労働行政は、厚生省と労働省が分かれている時代も含めて、その法律や執行する業務の中身は、国民全体の支持を受けたい、政党で言えば与党も野党も関係なく支持を受けたいということで、国会関係でも、かなり丁寧に野党とも打ち合わせをしながらやってきたという伝統があります。そういう意味では、与野党がどのようになろうとも厚生労働行政を進めていく姿勢は変わりませんので、人事については特別にそのようなことは配慮しておりません。適材適所ということを考えて人選をしました。

(記者)

民主党の菅代表代行が、先週の記者会見で事務次官会見について否定的な見解を示されまして、民主党政権になったら廃止の方向ということもありますが、どのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

(次官)

まず、民主党政権が出来るのかどうかですし、出来た時に菅議員の意見が民主党内閣の意見になるかどうかわかりませんので、あまり予断をもって考えることはないのかなと思います。ただ、大臣が説明した後、現在でも案件によっては事務方が補足説明をしておりまして、出来るだけ、行政の中身を正確に、公平に、偏りなく伝えたいということが行政側のスタンスであります。そういうスタンスが活かされるような工夫はどのような内閣であっても必要ではないかと思っております。

(記者)

原爆症の関係ですが、一部では一審の勝訴原告は全員認定するとか、敗訴者に一時金を支払うなどの報道がされていますが、原爆の日までの解決に向けて、事実関係も含めてお聞かせ下さい。

(次官)

原子爆弾の放射線に起因する疾病が対象になりますが、起因するかどうかについては、最終的には厚生労働大臣が認定することになっています。ただ、厚生労働大臣や行政官も含めてそういう専門家ではありませんので、医学やその他知識のある外部の有識者の方々の御意見を賜りながら判断をする、法律上もそういう仕組みになっております。原爆の放射線に起因するとは認められないという専門家の判断がありまして、それに基づいて私どもも法律を執行しているところであります。その判断を巡って訴訟が起こっていますが、その訴訟につきましては、訴訟を起こした人が全て裁判所で認められているわけではなくて、因果関係有りと認められている人もいれば、無しという人もおります。一審判決は判断がかなり幅広く分かれておりますので、そういう意味では、法律に基づいて適正に執行する立場から言えば、出来るだけ正確な法律判断に基づかなければいけない、そういう観点から議論のあるところについては高裁の判断を仰いできているところであります。そういう基本姿勢は今でも変わっておりません。ですから、そういう報道が一部でなされたという話がありますが、それにつきましては私どもの良くわからない点であります。また、かなり認定基準を広げましたし、新基準になる前に比べれば年間の認定患者数は30倍近く認められてきております。そういう全体を総合して考えて、どのようなやり方が法律に基づいて適正に執行するという範囲に入るのかどうか。その範囲に入らないものについてはどういうものであっても不可能であります。法律違反を役所がするわけにはいきませんので、そこは不可能になってくると思っています。

(記者)

山口で老人ホームが土砂災害に巻き込まれて亡くなった方も出ておりますが、そのお受けとめをお願いいたします。

(次官)

土砂災害で亡くなられた方が出たということはまことに残念でして、亡くなられた方、被害をお受けになられた方々にはお悔やみとお見舞いを申し上げたいという気持ちです。今回の件につきまして、ニュースではいろいろなことが出ておりますが、どういう原因があったのか、対応について工夫改善の余地がどのくらいあったのかという事実関係をきちんと把握して、対応策を考え、一般論として、適用できるものについては、多くの施設に守ってもらえるような対応を、考えて行くようにしたいと思います。

(記者)

先の国会で厚生労働省が提出した法案がいくつも廃案になったのですが、これをどのようにお受け止められておりますでしょうか。

(次官)

先の参議院選挙で衆参のねじれ現象が出来たあと、法律の成立は大変難しくなってきております。衆議院が3分の2を超えているからと言って、何でも3分の2を使うのがいいかというと、これは立法府としての見識の世界だと思います。私どもとしては、厚生労働省の提出する法案は与野党を含めて、ともに賛成をしてもらいたいというつもりで出しておりますので、国会で議論が重ねられて一つの結論に至るという形が望ましいと思っております。政治的な意味合いがあって十分議論ができなかった法案があったのは、法案を出した側としてはまことに残念でありますが、これにつきましては国会に出した以上は、まな板の上の鯉で料理をされる側ですので、我々が法案で出した問題意識、改善をしなければならないと思う中身については、選挙後の国会で、できるだけ与野党で議論をして成果が得られるようにしてもらいたいと思っております。

(記者)

これまでの総括ですが、今年の概算要求基準で社会保障費の自然増が認められるということになったのですが、そのことの評価と受け止め、それと内閣府の次官をされていた時代を含めて、2千2百億円を抑制させていくという小泉政権時代の方策が正しかったのかどうかの評価をお願いいたします。

(次官)

1年で2千2百億円、5年間で1兆1千億を削減するのは、2011年度までに一般会計のプライマリーバランスを黒字化するという目標から来ています。国債費の返還ですとか、買い換え以外の部分、つまり行政経費はその歳の歳入でまかなおうという方針を立てて、2011年までにプライマリーバランスの黒字化を実現するという目標が立てられました。私はその方針自身は大変大事なことだと思っております。国と地方を会わせて8百兆円を超える借金があり、現在の人達の生活の豊かさを、まだ生まれてもいない人達につけを回すという財政状況ですから、そういう財政状況を改善していく努力をしていくというのは現在生きている人間の責務だと思っております。そういう責務に向けての第一歩だと思っており、プライマリーバランスを回復するというのは正しいと思っています。それをどうやって回復するかと言いますと、大きく言えば二つの方法があります。一つは行政経費の削減であり、もう一つは歳入増、つまり、増税です。その両方を咬み合わせなければ正しい方法ではないと思います。小泉内閣の最後に私は内閣府の事務次官をしておりましたが、当時の経済財政担当大臣は与謝野大臣でした。小泉改革を次の内閣にも継続してもらおうということで骨太方針2006がまとめられました。これをまとめるに当たりまして、議論は政府内でもありましたが、最終的にそのとりまとめは政府でまとめるのはなくて、党にまとめてもらうということで、当時の中川政調会長を中心に5年間の歳出削減がどのくらい可能か、歳入増をどう図るべきかということが議論されました。そういう中で、詳しいところは党に投げられていますから、私自身は分かりませんが、仄聞するところによると、厚生労働行政分野ではそれ以前の5年間におおむね1兆1千億円くらい削減している、その後の5年間も1兆1千億円くらいの削減が出来るのではないかということで、削減目標が決まったと聞いております。その判断の仕方が正しかったかどうかについては検証が出来ておりません。ただ、積み上げて決めていったわけではありません。前の5年間に確保出来ていたということですが、その確保出来た中には介護保険制度が新たに出来たことですとか、医療で言えば、本人の2割負担から3割負担の増ですとか、そういうものが入っておりまして、同じようにその次の5年間も削減を行うというのは、医療で4割負担にするとか、そういうことを行わないと出来ない目標が立てられたということです。そういう意味では、1兆1千億という目標の立て方について政治決断で決めたという話ですが、もっと精緻な検証がいるのではなかったかという感じがしております。
 これが決められたことによる影響ですが、私は内閣府にいて、その後外に出て1年後に厚生労働省に戻って来たわけですが、マイナス2千2百億円というのは厚生労働行政、及び職員の士気に大変マイナスの影響を与えていると感じました。マイナス2千2百億円を実施するために無理な制度改正、必ずしも前向きと言えないような制度改正を行います。私の厚生労働省での最後の仕事は、介護保険制度を創設することでした。当時は審議官で、大変負担感のある仕事でしたが、「制度を創設して介護で苦しんでいる家族を助けていけるのではないか」というプラスの思いがあればいくら負担感のある仕事であってもやりがいと意欲もあるわけです。マイナス2千2百億円の削減を達成するために無理な制度改正をするというのは、どうしても職員の士気を下げるということになります。私は厚生労働省に呼ばれて事務次官に就任した時は、職員の士気のために、なんとか2千2百億円は撤廃したいと、会保障制度の在り方をきちんと守って行こうと思いました。これは私が思っていたから出来るわけではありません。実際にマイナス2千2百億円のシーリングで行っていくという結果が、私が就任した直後に出産のたらい回しがありましたが、そういう事件につながり、様々な医療現場の問題ですとか、福祉分野の問題、高齢者医療につきましても制度が改正されたものの経過措置がかなり長くついているとか、様々な制度改正の趣旨から言えば趣旨の手直しが入っています。こういう制度改正は職員の士気を下げるのではないかということで、2千2百億円の頸木から、我が組織を解き放したいということが就任した時の気持ちでした。幸いに、多くの与党の先生方もそういう思いであり、麻生総理自身もそういう思いが強く、この内閣で撤廃出来たということだと思います。私は社会保障のためにも、社会保障を一生懸命進める人間にとっても大変良かったのではないかと思っております。

(了)


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