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不開示情報に関する判断基準(法第5条関係)(別添2)

第1 個人に関する情報(法第5条第1号)

 不開示情報として、法第5条第1号においていわゆる個人に関する情報が掲げられているが、その要件ごとの考え方は、次のとおりである。

1 特定の個人を識別することができる情報(本文)

  1. (1) 「個人に関する情報」
     「個人に関する情報(以下「個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
     個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別性のある情報を一般的に不開示とし、個人情報の判断に当たり、原則として、公務員に関する情報と非公務員に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、特に不開示とすべきでない情報を法第5条第1号ただし書ハにおいて除外している。
     「個人」には、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。生前に本号により不開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適当である。
  2. (2) 「(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」
     「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外している。
  3. (3) 「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」
     「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報の全体である。
     「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等が挙げられる。氏名以外の記述等単独では、必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することができることとなる場合が多いと考えられる。
  4. (4) 「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」
    •  当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものについても、個人識別情報として不開示情報となる趣旨である。
       照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報、図書館等の公共施設で一般に入手可能なもの等一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれると解する。他方、特別の調査をすれば入手し得るかも知れないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。
       照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に適切に判断することが必要となる。
    •  また、識別可能性の判断に当たっては、厳密には特定の個々人を識別することができる情報ではないが、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合があり得る。このように、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得る。
  5. (5) 「特定の個人を識別することができないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」
     行政機関が保有する個人情報の大部分は、特定の個人を識別することができる情報であり、これを不開示情報とすることで、個人の権利利益の保護は基本的には十分確保されると考えられる。
     しかしながら、中には、匿名の作文や無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものがあることから、特定の個人を識別できない個人情報であっても、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがある場合について、補充的に不開示情報として規定したものである。
     なお、法に基づき著作物を公開する場合、未公表著作物であれば、公表権や氏名表示権を害することとなり、また、複製物の交付等により開示する場合、複製権を害することとなるため、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第43号。以下「整備法」という。)によって著作権法(昭和45年法律第48号)を改正し、法の円滑な施行と著作権法上の権利との調整措置を講じている。その概略は次のとおりである。
    •  公表権との調整(著作権法第18条第3項及び第4項)
       未公表の著作物の著作者が、当該著作物を行政機関に対し、特段の意思表示をせずに提供した場合には、法に基づく開示に同意したものとみなされる。この場合の「特段の意思表示」は、開示決定の時までに行えば足りる。なお、整備法施行前に提供された著作物には適用されない(整備法附則第2条)。さらに、法第5条第1号ロ及び第2号ただし書、同条第1号ハ並びに同法第7条による特に公益性に着目してなされる開示決定の場合は、公表権の規定は適用されない。
    •  氏名表示権との調整(著作権法第19条第4項)
       氏名表示権(著作者がその著作物を公衆に提供等する場合に、実名又は変名の表示とするか又は匿名とするかにつき決定する権利)の規定は、法に基づき著作物を開示する際、既にその著作者が表示しているところに従って著作者名を表示する場合及び法第6条第2項の規定による部分開示を行う際に当該著作者名を省略する場合には適用しない。
    •  複製権等との調整(著作権法第42条の2)
       法に基づく開示の実施の方法に関し、著作権法上の権利との関係では、文書の写し、録音テープの複製、録画テープの複製等の複製物を作成する場合における複製権、録音テープを再生する場合における演奏権又は口述権、ビデオテープを再生する場合における上映権等が問題となる。
       これらの著作物を法で定める方法による開示をする場合には、開示に必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができることとなっている。したがって、著作物を法に基づいて開示すること自体が可能であっても、著作物の写しの交付は1人につき1部が限度と解され、あらかじめ著作物を送信可能化すること、著作物の展示、翻訳等は認められない。著作隣接権等についても同様である(著作権法第86条及び第102条)。
       なお、情報公開条例に基づく著作物の開示についても同様の規定が置かれている(著作権法第18条第3項第2号等)。

2 「法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(ただし書イ)

 個人情報であっても、一般に公にされている情報については、あえて不開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の不開示情報から除くこととしたものである。

  1. (1) 「法令の規定により」
     「法令の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は、「公にされている情報」には該当しない。
  2. (2) 「慣行として」
     公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。
     当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
  3. (3) 「公にされ」
     当該情報が、現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に公知(周知)の事実である必要はない。過去に公にされたものであっても、時の経過により、開示請求の時点では公にされているとは見られない場合があり得る。
  4. (4) 「公にすることが予定されている情報」
     将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がない等、当該情報の性質上通例公にされるものも含む。

3 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(ただし書ロ)

 人の生命、健康その他の基本的な権利利益を保護することは、行政機関の基本的な責務である。
 不開示情報該当性の判断に当たっては、開示することの利益と開示されないことの利益との調和を図ることが重要であり、個人情報についても、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、当該個人情報を開示する必要性と正当性が認められることから、当該情報を開示しなければならないこととするものである。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
 この比較衡量に当たっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である。
 なお、人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(法第7条)により図られる。

4 「当該個人が国家公務員、独立行政法人等の役員及び職員、地方公務員並びに地方独立行政法人の役員及び職員(以下「公務員等」という。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」(ただし書ハ)

 行政文書には、公務等遂行の主体である公務員等の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で、公務員等についても、個人としての権利利益は、十分に保護する必要がある。
 この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ、特定の公務員等が識別される結果となるとしても、個人に関する情報としては不開示とはしないこととする趣旨である。

  1. (1) 「当該個人が公務員等である場合において」
     個人情報のうち、当該個人が「公務員等」である場合である。
     「公務員等」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等、公務員等以外の個人情報である場合がある。このように一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに不開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての不開示情報該当性と他の個人にとっての不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいずれかに該当すれば、当該部分は不開示とされることになる。
     「公務員等」とは、広く公務等遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員並びに独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員や職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、公務員等であった当時の情報については、本規定は適用される。
  2. (2) 「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき」
     「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、独立行政法人等又は地方公共団体の機関並びに地方独立行政法人(以下「行政機関等」という。)の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。
     また、本規定は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とし、例えば、公務員等の情報であっても、人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は管理される公務員等の個人情報として保護される必要があり、本規定の対象となる情報ではない。
  3. (3) 「当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
     公務員等の職務の遂行に係る情報には、当該公務員等の氏名、職名及び職務遂行の内容によって構成されるものが少なくない。このうち、前述のとおり、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにする観点から、公務員等の氏名を除き、その職名と職務遂行の内容については、当該公務員等の個人に関する情報としては不開示とはしないという意味である。
  4. (4) 公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名の取扱い
     公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、公にした場合、公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けた上で、ただし書イに該当する場合には例外的に開示することとするものである。
     すなわち、当該公務員等の職及び氏名が、法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている場合には、職務の遂行に係る情報について、本号のハとともに、イが重畳的に適用され、個人情報としては不開示とはならないことになる。慣行として公にされているかどうかの判断に当たっては、人事異動の官報への掲載その他行政機関等により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関等により作成され、又は行政機関等が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合には、その職にある者の氏名を一般に明らかにしようとする趣旨であると考えられ、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されていると解される。

5 本人からの開示請求

 本法の開示請求権制度は、何人に対しても、請求の目的の如何を問わず請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、特定の個人が識別される情報であれば、本号のイからハまで又は公益上の理由による裁量的開示(法第7条)に該当しない限り、不開示となる。
 なお、行政機関が保有する電子計算機処理に係る個人情報については、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(昭和63年法律第95号)により一定の個人情報ファイルに記録さ、 れている自己情報の開示が認められている(同法第13条参照)。

第2 法人等に関する情報(法第5条第2号)

 不開示情報として、法第5条第2号において、いわゆる法人情報が掲げられているが、その要件ごとの考え方は、次のとおりである。

1 「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(以下「国等」という。)を除く。以下「法人等」という。)」(本文)

  1. (1) 法人等
     「法人等」には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、独立行政法人、特殊法人及び認可法人、政治団体、外国法人、法人ではないが権利能力なき社団等も含まれる。
     一方、国等については、その公的性格にかんがみ、法人等とは異なる開示又は不開示の基準を適用すべきであるので、本号から除き、その事務又は事業に係る不開示情報は、法第5条第6号等において規定している。
  2. (2) 法人等に関する情報
     「法人に関する情報」は、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と何らかの関連性を有する情報を指す。
     なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。
  3. (3) 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」
     「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、(2)に掲げた法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号で規定しているものである。

2 「ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」(第2号ただし書)

 本号のただし書は、法第5条第1号ただし書ロと同様に、当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益とこれを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護することの必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないとするものである。
 現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得る。

3 「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」(第2号イ)

  1. (1) 「権利」
     信教の自由、集会又は結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切を指す。
  2. (2) 「競争上の地位」
     法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位を指す。
  3. (3) 「その他正当な利益」
     ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。
  4. (4) 「害するおそれ」
     「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類、性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断する必要がある。なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

4 「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」(第2号ロ)

 この規定は、法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報として保護しようとするものであり、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護しようとするものである。なお、行政機関の情報収集能力の保護は、別途、法第5条第6号等の不開示情報の規定によって判断されることとなる。

  1. (1) 「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」
    行政機関の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、行政機関の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、行政機関が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれ得ると解する。
     「要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、行政機関の長が報告徴収権限を有する場合でも、当該権限を行使することなく、任意に提出を求めた場合は含まれる。
     「公にしない」とは、本法に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三者に対して当該情報を提供しない意味である。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。
     「条件」については、行政機関の側から公にしないとの条件で情報を提供してほしいと申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から行政機関の要請があったので情報は提供するが公にしないでほしいと申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立するものである。
     また、条件を設ける方法については、黙示的なものを排除する趣旨ではない。
  2. (2) 「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」
     「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。
     公にしないとの条件を付すことの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の変化も考慮する趣旨である。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、本号には当たらない。

第3 国の安全等に関する情報(法第5条第3号)

 我が国の安全、他国等との信頼関係及び我が国の国際交渉上の利益を確保することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために政府に課された重要な責務であり、本法においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。
 そこで、法第5条第3号において、公にすることにより、国の安全が害されるおそれ等があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報を不開示情報とすることとした。本号の要件ごとの考え方は、次のとおりである。

1 「国の安全が害されるおそれ」

 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていること等が考えられる。
 「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。

2 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」

 「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していない地域、政府機関その他これに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織(アジア太平洋経済協力、国際刑事警察機構等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすようなおそれをいう。例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなる、他国等の意思に一方的に反することとなる、他国等に不当に不利益を与えることとなる等、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報が該当すると考えられる。

3 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」

 他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望むような交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下する等のおそれをいう。例えば、交渉(過去のものを含む)に関する情報であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が執ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当すると考えられる。

4 「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は国際交渉上不利益を被るおそれがある情報については、一般の行政運営に関する情報とは異なり、その性質上、開示又は不開示の判断に高度の政策的判断を伴うこと、我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測としての専門的かつ技術的判断を要すること等の特殊性が認められる。
 この種の情報については、司法審査の場においては、裁判所は、本号に規定する情報に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)どうかを審理・判断することが適当と考えられることから、このような規定としたところである。
 本号の該当性の判断においては、行政機関の長は、「おそれ」を認定する前提となる事実を認定し、これを不開示情報の要件に当てはめ、これに該当すると認定(評価)することとなるが、このような認定を行うに当たっては、高度の政策的判断や将来予測としての専門的かつ技術的判断を伴う。裁判所では、行政機関の長の第一次的判断(認定)を尊重し、これが合理的な許容限度内であるか否かという観点から審理・判断されることになる。

第4 公共の安全等に関する情報(法第5条第4号)

 国の安全等に関する情報と同様に、公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的利益を擁護するために政府に課された重要な責務であり、法第5条第4号では、刑事法の執行を中心とした公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報を不開示情報とすることとした。本号の要件ごとの考え方は、次のとおりである。

1 「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持」

  1. (1) 「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行」
     「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行」は、「公共の安全と秩序の維持」の例示である。
     「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。なお、国民の防犯意識の啓発、防犯資機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報については、本号に該当しない。
     「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。
     「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起等のために犯人及び証拠を発見・収集・保全することをいう。犯罪捜査の権限を有する者は、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)によれば、検察官、検察事務官及び司法警察職員(司法警察員(官)及び司法巡査をいう。)であり、司法警察職員には、一般司法警察職員と特別司法警察職員とがある。
     厚生労働省における司法警察職員(司法警察員(官))には、次のものがある。
    •  麻薬取締官が、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第54条第5項の規定に基づき、刑事訴訟法の規定による司法警察員として職務を行う場合
    •  労働基準監督官が、次の各法律の規定に基づき、刑事訴訟法の規定による司法警察員(官)の職務を行う場合
      1. [1]労働基準法(昭和22年法律第49号)第102条
      2. [2]最低賃金法(昭和34年法律第137号)第39条
      3. [3] じん肺法(昭和35年法律第30号)第43条
      4. [4] 炭坑災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(昭和42年法律第92号)第14条
      5. [5] 家内労働法(昭和45年法律第60号)第31条
      6. [6] 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第92条
      7. [7] 作業環境測定法(昭和50年法律第28号)第40条
      8. [8] 賃金の支払の確保等に関する法律(昭和51年法律第34号)第11条
       「公訴の維持」とは、検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為を公訴の提起というが、この提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張及び立証、公判準備等の活動を指す。
       「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法(明治40年法律第45号)第2章に規定された死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行及び監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、本号に該当する。
  2. (2) 「公共の安全と秩序の維持」
     ここでいう「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。
     刑事訴訟法以外の特別法により、臨検、捜索又は差押え、告発等が規定され、犯罪の予防又は捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、独占禁止法違反の調査等や犯罪の予防又は捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制又は強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、本号に含まれる。
     また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や特定の建造物又はシステムへの不法な侵入及び破壊を招くおそれがある等、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、本号に含まれる。
     一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報については、本号ではなく、法第5条第6号の事務又は事業に関する不開示情報の規定により開示又は不開示が判断されることになる。

2 「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報については、その性質上、開示又は不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的かつ技術的判断を要すること等の特殊性が認められることから、国の安全等に関する情報と同様、司法審査の場においては、裁判所が、本号に規定する情報に該当するかどうかについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かについて審理・判断するのが適当であり、このような規定振りとしているものである。

第5 審議、検討等に関する情報(法第5条第5号)

 開示請求の対象となる行政文書は、決裁、供覧等の手続を終了したものに限られないことから、国の機関等の内部又は相互間における意思決定前の審議、検討又は協議の段階において作成又は取得された文書であっても、組織的に用いるものとして現に保有していれば、対象文書となる。
 このように、開示請求の対象となる行政文書の中には、行政機関等としての最終的な決定前の事項に関する情報が少なからず含まれることになるため、これらの情報を開示することによってその意思決定が損なわれないようにする必要がある。しかしながら、事項的に意思決定前の情報をすべて不開示とすることは、政府がその諸活動を説明する責務を全うするという観点からは、適当ではない。そこで、個別具体的に、開示することによって行政機関等の適正な意思決定に支障を及ぼすおそれの有無及び程度を考慮し、不開示とされる情報の範囲を画したものである。この場合のその要件ごとの考え方は、次のとおりである。

1 「国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(以下「国の機関等」という。)の内部又は相互間」

 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院(これらに属する機関を含む。)を指し、これら国の機関等について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間の意味である。

2 「審議、検討又は協議に関する情報」

 国の機関等の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開催する有識者、関係法人等を交えた研究会等における審議や検討等、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報をいう。

3 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」

 公にすることにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けること等により、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したもので、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。
 例えば、審議、検討等の場における発言内容が公になると、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれがある場合には、法第5条第4号等の他の不開示情報に該当する可能性もあるが、「率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれ」が生じたり、また、行政機関内部の政策の検討がまだ十分でない情報が公になり、外部からの圧力により当該政策に不当な影響を受けるおそれがあり、「意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」が生じたりすることのないようにする趣旨である。

4 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」

 未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報等を公にすることにより、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が公にされることによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
 例えば、特定の物資が将来不足することが見込まれることから、政府として取引の規制が検討されている段階で、その検討情報を公にすれば、買い占め、売り惜しみ等が起こるおそれがある場合に、「国民の間に不当な混乱」を生じさせたりすることのないようにする趣旨である。

5 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」

 尚早な時期に情報や事実関係の確認が不十分な情報等を公にすることにより、投機を助長する等して、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合を想定したもので、4と同様に、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
 例えば、施設等の建設計画の検討状況に関する情報が開示されたために、土地の買い占めが行われて土地が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得たり、違法行為の事実関係についての調査中の情報が開示されたために、結果的に違法又は不当な行為を行っていなかった者が不利益を被ったりしないようにする趣旨である。

6 「不当に」

 上記3、4及び5のおそれの「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断するものである。

7 意思決定後の取扱い等

 審議、検討等に関する情報については、行政機関としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が行われるものであることに注意が必要である。また、当該審議、検討等に関する情報が公になると、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合等があれば、本号に該当し得る。
 なお、審議、検討等に関する情報の中に、調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実やこれに基づく分析等を記録したものであれば、一般的に本号に該当する可能性が低いものと考えられる。

第6 国等の事務又は事業に関する情報(法第5条第6号)

 国の機関等が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、不開示とする合理的な理由がある。
 国の機関等が行う事務又は事業は広範かつ多種多様であり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある事務又は事業の情報を事項的にすべて列挙することは技術的に困難であり、実益も乏しい。そのため、各機関共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを「次に掲げるおそれ」としてイからホまで例示的に掲げた上で、これらのおそれ以外については、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」として柱書きに包括的に規定した。

1 「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(第6号本文)

  1. (1) 「次に掲げるおそれ」
     「次に掲げるおそれ」としてイからホまでに掲げたものは、各機関共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることにより、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を挙げたものである。これらの事務又は事業の外にも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があり得る。
  2. (2) 「当該事務又は事業の性質上」
     当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断する趣旨である。
  3. (3) 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」
     本規定は、行政機関の長に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要があり、また、事務又は事業がその根拠となる規定又は趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。
     「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。

2 「監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(第6号イ)

 「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいう。
 「検査」とは、法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。
 「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について、適法又は適正な状態を確保することをいう。
 「試験」とは、人の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。
 「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」
 上記の監査等は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがある事務である。これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報や試験問題等のように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をする等のおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示とするものである。また、事後であっても、例えば、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当し得ると考えられる。

3 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国等の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(第6号ロ)

  1. (1) 「契約、交渉又は争訟」
     「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
     「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整等の折衝を行うことをいう。
     「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立てその他の法令に基づく不服申立てがある。
  2. (2) 「国等の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」
     国等が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
     これらの契約等に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を公にすることにより公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉、争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、不開示とするものである。

4 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(第6号ハ)

 国の機関等が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)の成果については、社会、国民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員が、その発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。
 調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、[1]知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報等で、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、[2]試行錯誤の段階のものについて、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退する等、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報を不開示とするものである。

5 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(第6号ニ)

 国の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で当該組織の独自性を有するものである。
 人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報を不開示とするものである。

6 「独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(第6号ホ)

 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業をいう。)又は地方独立行政法人に係る事業については、企業経営という事業の性質上、法第5条第2号の法人等に関する情報と同様な考え方で、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものを不開示とするものである。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その開示の範囲は法第5条第2号の法人等とでは当然異なり、独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関する情報の不開示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。

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