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広報誌「厚生労働」

ニッポンの仕事、再発見!

《中華料理調理人》

 中華料理は中国の各地方ごとに特色があり、中華料理調理人は北京・広東・上海・四川の4つの料理を網羅していなければならない。食材のおいしさを活かすため、丁寧さと手早さが要求される。

中華料理はダイナミックでかつ繊細素材を活かしつつ彩り豊かに

安川哲二
やすかわ・てつじ
 1948年、福岡県生まれ。福岡市の中村調理製菓専門学校を卒業後、上京。日本における四川料理の祖である故陳建民氏などに師事。その後、有名中華料理店で料理長を務め、77年、東京・原宿に「龍の子」を開店。服部栄養専門学校などで後進の育成にあたっている。昨年、「現代の名工」に選定される。

 現代日本では世界各国の料理を味わうことができますが、なかでも中華料理は、日本人にとってなじみ深い料理です。安川哲二さんは、日本における四川料理の草創期から辛味に特色がある四川料理に魅了され、長年にわたって、その可能性を追求。オリジナリティーあふれる独創的なメニューを生み出しています。

和食や洋食からもヒントを得て新しい四川料理を考案

 日本人が長年にわたって親しんできた中華料理。現在では、手作りの中華料理が食卓に並ぶ家庭も多いのではないでしょうか。中華料理は北京・広東・上海・四川の4つに分類され、安川哲二さんは四川料理を得意としています。自身の店を開業して39年になるベテランです。
四川料理の調理人を志したのは、その特徴である辛味に魅力を感じたからだとか。四川料理の代表といえば、麻婆豆腐、エビのチリソース、バンバンジー、ホイコーローなどおなじみのものが多く、安川さんはその基本を押さえたうえで、独創的な料理を考案し続けています。現代の名工に認定された理由のひとつも、そこにあります。
「他のジャンルの料理人との交流を通して、いろいろなヒントをもらうことが多いですね。中華でも、北京・広東・上海料理のいいところを取り入れ自分なりにアレンジしたりします」
 有名中華料理店の料理長を務めていた時代からオリジナルの四川料理を開発してきましたが、ひとつの料理を完成品として客に供するまでには試行錯誤を重ねると言います。
「アイデアが浮かんだら実際に作り、試食を繰り返します。でも、仕上がりが良くないとか、味がぼやけているなどの難点が改善できず、お客さまにお出しするまでに至らないこともあるんですよ。考えすぎて眠れないこともありますが、絶対にあきらめない。どうにかしてアイデアを形にします」
 最近では、フレンチやイタリアンなどで使われているエスプーマ(液状の食材を泡状にする)や液体窒素などのマシンを使った料理も生み出しています。

「一生修業」の信念のもと後進に人間性の大切さを説く

 安川さんは、68歳になった今も料理に関する研鑽を積みつづけており、一生修業だと語ります。
 「他のジャンルの料理人と交流するのも、新メニューを考案するのも勉強です。和洋中関係なく食べ歩きをするのも、ヒントはいろんなところに転がっているから。他のジャンルの調理人とコラボして、ホテルなどでフルコースを提供することも、お互いに刺激になり勉強になりますね。毎年1回、本場の四川省に研修に行っているんですが、最近は辛味も油も控えめになってきている。現地の最新情報も、料理の考案に大いに役立ちます」
 料理に対する客の感想に耳を傾けるのも、大切だそうです。ようやく納得できる新メニューが完成したときも、まずは常連客に味見をしてもらうとか。
 「お客さまの要望に応えるのが調理人の務めですから、まずはお客さまの感想をお聞きしないと。ですから、料理を残して何も言わずにお帰りになると、とても気になりますね。遠慮なく感想をおっしゃってくださるほうが、調理人としてもうれしいんですよ」
 勉強を怠らず、常に謙虚な姿勢で料理に向き合う安川さんは、調理師を育成する専門学校でも、まずは人間性の大切さを説きます。
 「礼儀をわきまえること、人の嫌がる仕事を進んでやること、先輩を立てること、友達をたくさんつくることなど、人間性を磨くことは、調理人として成長するための基本だと思いますね」
 下働きをしていた時代は、早朝から夜中まで働くのが当たり前でしたが、今は定休日もあり恵まれた環境になっているため、卒業後は学ぶ機会が少なくなっています。
 「店が定休日のときは、別の店で勉強するなどの努力がないと、なかなか一人前の料理人にはなれませんね」
 自身の人脈を活用して他店の料理長に教え子を紹介するなど、卒業後も面倒を見ています。自分が勤務する店以外で働く機会をもつことは、勉強になるだけでなく、同じ年頃の仲間を増やすことにもなり、それが励みにもなると言います。
 安川さんにとって一番うれしいのは、客がおいしそうに食べてくれることです。
 「おいしい料理を作るには、炒める、焼く、蒸すなど調理法に合わせて丁寧に仕上げることが大切です。そのためには技術も知識も必要ですね。心を込めるとは、そういうことなんです」

中華料理調理人 安川哲二さん
主材料と副材料の素材の良さを引き出し、その二つをうまくミックスするとおいしい料理になるという。炒め物の場合は、下ごしらえを丁寧にしたら手早く仕上げる

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