ホーム > 報道・広報 > 広報・出版 > 広報誌「厚生労働」 > 特集 我が家はどうなる? これからの地域医療・介護

広報誌「厚生労働」

特集
我が家はどうなる?
これからの地域医療・介護

2025年−。この年、日本がどうなっているか、想像できますか? 団塊の世代はすべて75歳以上の後期高齢者となり、それに伴って、その後しばらく医療・介護サービスの需要が高まります。今でも介護人材不足と言われているのに、医療・介護サービスは足りるのでしょうか。この問題を解決するため、国は医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの構築を進めています。そうしたなか、今年4月には診療報酬改定と介護報酬改定が同時に行われました。これは、医療サービスと介護サービスの対価を見直すという仕組みのこと。両改定によって、2025年を見据えた日本の医療・介護サービスの姿が明確になりました。地域の医療・介護がどうなるのか、一緒に見ていきましょう。

めざすべき医療・介護の未来像とは

日本の医療・介護は、これからどうなっていくのでしょうか。 医療・介護の基本的な仕組みから、日本が抱える課題、今後の方向性まで解説します。

医療や介護サービスの価格は定期的に見直される

 皆さんはご自身やご家族の受けている医療や介護サービスの価格が、どのように決められているのか、ご存じですか。医療(公的保険)は診療報酬、介護(同)は介護報酬という形で国によって決められており、それぞれの報酬は点数、単位で表されます。
 診療報酬は、医療機関が診察や検査、投薬、手術、指導などの医療行為を患者に提供した際の対価として支払われる報酬です。原則的に2年に1回、診療報酬改定で点数が見直されたり、新しい医療行為に点数がつけられたりします。
 介護報酬は、事業者が介護サービスを利用者に提供した際の対価として支払われるもの。こちらは、サービスの内容に応じて単位数が決められています。原則として3年に1回、介護報酬改定で見直しが図られています。
 今年4月には、診療報酬改定と介護報酬改定が同時に行われました。診療報酬改定は本体(技術・サービスへの評価)がプラス0.55%、介護報酬改定はプラス0.54%と決定しました。

「地域包括ケアシステム」の構築・推進へ

今回の診療報酬改定は、次の基本的視点と具体的方向性をもとに進められました。
(1)地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進
(2)新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実
(3)医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進
(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

一方、今回の介護報酬改定は、次の4つの柱を中心に据えて行われました。
(1)地域包括ケアシステムの推進
(2)自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
(3)多様な人材の確保と生産性の向上
(4)介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

 どちらにも共通しているのが、「地域包括ケアシステムの構築・推進」です。
 日本は現在、世界に類を見ないスピードで高齢化が進み、昨年10月1日時点で高齢化率は27.7%に達しました。約800万人いる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、医療や介護の需要はさらに増えると考えられますし、多くの人が亡くなることが予測されるので看取りの増加への対応も課題とされています。
 そこで国は、地域包括ケアシステムの実現を進めているのです。地域包括ケアシステムとは、「重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組み」のこと。このページに載せている図表1が、まさにめざしている地域包括ケアシステムの姿です。地域によって高齢化率や人口構成は異なりますし、医療や介護の充足度も違います。市町村は、自分たちの地域の実情・特性に合わせて、地域包括ケアシステムをつくり上げることが求められているのです。

住民すべてが参画しつながる「地域共生社会」の実現を

 さらに今、国がめざしているのは、高齢者に限定しない「丸ごと」の「地域包括ケア」、そして、国民一人ひとりの暮らしと生きがいをともにつくる「地域共生社会」です。
 国は、これまで高齢者施策として「地域包括ケアシステム」を推進してきましたが、地域には高齢者だけではなく、障害者、子ども、難病を抱える人など、さまざまな人が暮らしています。地域に暮らす住民誰もがそれぞれの実情に合った支援を受けられるよう、高齢者を支える仕組みにとどめるのではなく、すべての住民のための仕組みに深化させることとしています。
 高齢者、障害者、子ども、難病を抱える人などへの支援は、これまで制度ごとに「縦割り」で対応してきました。しかし、制度の対象外とされて支援を受けられない人や、複合的な課題を抱えている世帯に対しては適切に支援ができていないという課題がありました。そこで、制度を「縦割り」から、地域という“面”からみた「丸ごと」へ再構築することとしています。
 加えて、これまで住民はサービスの「受け手」「支え手」に分かれていましたが、今後は、いずれの立場にもなれる社会をめざします。たとえば、高齢者や障害者が時にはサービスを受け、時にはほかの利用者を支援する側になることで、自立や自己実現につながり、いわば「支えの好循環」をもたらします。あらゆる人が能力に応じた役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる「地域共生社会」を育てていくことをめざします。
 昨今、この観点から、大きく2つの取り組みがなされています。1つ目は、住民が「他人事」と捉えがちな地域課題に対して、「我が事」として主体的にその課題を把握して解決を試みる仕組みを地域でつくること。市町村の相談支援体制や地域づくりも、対象者ごとの縦割りではなく「丸ごと」にすることです。これらは、先の社会福祉法改正で、市町村が取り組むべき義務として明記されました。2つ目は、これまで対象者ごとの「縦割り」で提供していた公的な福祉サービスを「丸ごと」へと転換するため、サービスや専門人材の養成課程の改革を進めています。この点も、先の法改正で共生型サービスの類型が制度として位置づけられ、今回の報酬改定で具体的な点数などが決まりました。

医療と介護の連携を進め 質の高いサービスを提供

 今回の両改定のポイントとしては、次が挙げられます。
 医療と介護の連携を図りつつ、効果的・効率的な医療・介護の提供をめざしています。介護報酬改定では、要介護者の自立支援・重度化防止に向けてリハビリテーションが重視されていますが、今回の同時改定において、リハビリテーションが医療から介護に円滑に移行できるような見直しを行うことで、これまで以上に効果的なリハビリテーションを提供できると期待されています。
 今後、高齢者の増加に伴い、医療ニーズの高まりが予測されるため、限りある医療資源を適切に配分しなければなりません。そこで、医療機関の役割・機能が明確になりました。
 病院については大きく、「急性期入院医療を提供する機能」「集中的なリハビリテーションの提供や自宅等への退院支援機能」「長期療養を要する患者への入院医療を提供する機能」の3つに分類されています(図表2)。そして入院医療の評価体系の抜本的な再編・統合を行い、地域ニーズに合った、質の高い入院医療をより効果的・効率的に提供できる仕組みにしたのです。

 外来医療の役割分担も明確になり、基本的に大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診はかかりつけ医が担う流れが強まりました。紹介状を持たずに大病院を受診する場合、患者は特別に料金を負担する必要があり、対象となる大病院が増加しました。これまでの特定機能病院(高度医療の提供、高度の医療技術の開発などを行う)および一般病床500床以上の病院(地域医療支援病院)から、今回の改定で許可病床400床以上の病院(同)にも対象が広がったのです。
 さらに、住み慣れた地域で最期まで暮らし続けられるように、在宅や特別養護老人ホームなどの施設における医療ニーズへの対応や看取りの推進も図られています。

  • 続きを読む
    (発行元の(株)日本医療企画のページへリンクします)

ホーム > 報道・広報 > 広報・出版 > 広報誌「厚生労働」 > 特集 我が家はどうなる? これからの地域医療・介護

ページの先頭へ戻る