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広報誌「厚生労働」

特集 自分で守り・つくるヒントがある! 考えてみよう 私自身の健康生活

生活習慣が発症に深く関わる病気群を「生活習慣病」と言います。現在、高齢化の進展を背景に日本人の死亡者数の約6割を占めています。 また、日本において糖尿病は、有病者は約1,000万人、その予備群も約1,000万人いるとされ、今や「国民病」と言われるほどです。 本特集では、生活習慣病の予防について、その必要性と取り組み事例を「運動」と「食事」の分野からクローズアップします。

<Step1>数字で見る日本人の健康状態

生活習慣病は一人ひとりが考え、予防に取り組まなければならない問題です。
ここでは、日本人の現在の健康状態や、めざすべき姿について解説します。

平均寿命と健康寿命の差をどう埋めるか

 昨年7月に「平成28年簡易生命表」が公表され、日本人の平均寿命は男性で80.98年、女性で87.14年と過去最高を更新しました。
 現在、日本人の平均寿命は世界一の水準です。しかし、日常生活に制限のない期間を指す「健康寿命」と、平均寿命との差は男性で約9年、女性で約12年あります(図表1)。

図表1 平均寿命と健康寿命の推移

 この差=期間は生活に制限のある、生活習慣病などにより健康ではない状態で過ごしていることになります。この差を埋め、健康で長く過ごすには、生活習慣病の予防に努めることが大切です。
 生活習慣病とは、食事・運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が発症・進行に関与する疾患群のことを言います。日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患はもちろん、脳血管疾患・心疾患の危険因子となる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などを含んでいます。
 平均寿命の延びとともに、疾病全体に占める生活習慣病の割合が増加し、現在、死因の約6割に達しています(図表2)。生活習慣病による死亡を減らすことも急務です。

図表2 死因別死亡割合

運動・食事などの改善で健康寿命を延ばす

 生活習慣病の増加を受けて、厚生労働省では「『健康寿命』をのばそう!」をスローガンに「スマート・ライフ・プロジェクト」に取り組んでいます。
 具体的には、「運動」、「食生活」、「禁煙」、そして「健診・検診の受診」の4つの視点から、生活習慣病予防を促しています。
特に、適度な「運動」は、糖尿病・心臓病・脳卒中・がん・足腰の痛み・認知症などになるリスクを下げ、メンタルヘルスや生活の質の向上にも効果があるとされています。
 また、「食生活」の面から見ると、日本では戦後、高塩分・高炭水化物・低動物性たんぱく質が中心の食事から、動物性たんぱく質や脂質の増加した食事へと変化しました。これにより、生活習慣病の増加という深刻な問題が出てきており、その食生活の改善が急務となっています。

<運動>目的を持って習慣化することが大切

宮地元彦 さん(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 身体活動研究部長)

宮地(みやち)元彦(もとひこ) さん(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 身体活動研究部長)

スマホの歩数計で歩数を見える化

 健康日本21(第二次)で定められた1日あたりの平均歩数の目標値は男性が9,000歩、女性が8,500歩ですが、現状は男性が約7,000歩、女性が約6,000歩です。また、過去10年間でともに約500歩減少しています(図表1)。現状の歩数は、一日約50分間の歩行に相当します。学校や仕事、家事、子育てなどで忙しいなか、これだけの時間を歩くことに費やせるのは評価すべきです。最近の研究では、日本人は世界で最も多く歩いていることも明らかとなりました。
 しかし、少しでも長く健康に過ごすには、歩数の増加が必要です。そのために、自分の平均歩数を把握してみてはいかがでしょうか。以前は歩数計を持ち歩いている人はとても少数でしたが、今は、スマートフォンなどに内蔵されているため、多くの方が自分の歩数を知ることができます。こうしたIOTを活用して歩数を見える化し、プラス1,000歩をめざしましょう。

図表1 歩数の平均値の年次推移

高齢でも元気でいるため1日30分週2回以上の運動を

 一方、「運動習慣」を見ると、日本人はあまり優秀とは言えません(図表2)。
 「運動習慣」とは、1日30分、週2日以上スポーツや体力づくりに取り組むことを指します。仕事や家事、目的地への移動などは、運動習慣に含みません。生活習慣病を予防するには、目的を持って運動をするとより効果的です。

図表2 運動習慣のある者の割合の年次推移

 一緒に運動する誰かがいると、つながりが生まれ、より楽しみながら運動に取り組むことができます。
 「動いていないから、調子が悪いな」と思えるくらい、運動が当たり前になるといいですね。
 体重や血圧を下げるなら、食事管理のほうが効率的かもしれません。しかし、筋力をつけたり、血管や心臓を強くするなど、運動でしか得られない効果もあります。
 運動には企業や自治体の協力も不可欠です。残業を減らせば運動時間を捻出できますし、歩道や公園を整備することで、体を動かす機会を増やすことができるようになります。
 運動か食事かどちらかを徹底するのではなく、両方をバランス良く改善し、生活習慣病予防に取り組むことをお勧めします。

<食事・栄養>減塩や野菜摂取の方法は一人ひとり異なる

武見ゆかりさん(女子栄養大学大学院研究科長/女子栄養大学教授/食生態学研究室博士)

武見(たけみ)ゆかり(ゆかり)さん(女子栄養大学大学院研究科長/女子栄養大学教授/食生態学研究室博士)

減塩を進めるには摂取源を考えることから

 国民の身体や栄養摂取量、生活習慣の状況を明らかにする「国民健康・栄養調査」が毎年行われており、2016年の調査結果を見ると、減塩の意識が徐々に浸透してきていると感じました。食塩の摂取量は2006年は、11.2gでしたが、その後減り続け、2016年には9.9gにまで下がっています(図表1)。2026年時の到達目標として掲げられている8gに少しずつ近づいていると言えます。

図表1 食塩摂取量の平均値の年次推移

 これには、企業や自治体が減塩に対する取り組みを活発に行っている食環境整備の影響が考えられます。たとえば、スーパーマーケットを運営する愛知県のユニー株式会社は、独自に減塩の食品を開発したり、他社も含め減塩の食品を集めたコーナーを設けています。
 国民一人ひとりが減塩を意識することも必要です。食塩は、調味料に多く含まれるイメージが強いですが、パンや麺、魚介類や野菜の加工食品にも多く含まれることがあります。
 まず、自分の食塩の摂取源や、どの食品でなら減塩ができるかを考えてみましょう。

プラス1皿やベジファーストで野菜摂取

 野菜は1日350gとりましょう、野菜をもっと食べましょうと訴え続けてきましたが、野菜摂取量は増えていないのが実情です(図表2)。明確な原因はわかりませんが、もしかしたら、350gと言われても具体的にイメージできなかったのかもしれません。

図表2 野菜摂取量の平均値の年次推移

 そこで現在は、「いつもの食事にプラス1皿(野菜)」や「ベジファースト(最初に野菜から食べること)」など、具体的な方法を打ち出すようにしています。一例として、東京都足立区では、飲食店に対し最初に野菜を使った料理を出すように呼びかけています。
 ただし、調理方法によっては食塩の量を増やしてしまうので、単に野菜を摂取すればよいというわけではありません。野菜は丁寧に調理すれば、本来の旨みや甘みを感じることができ、調味料の過度な使用が抑えられます。
 性別や年齢や地域により食事の形態はさまざまです。改めて、国民一人ひとりが自分の食生活を見直し、食事面から生活習慣病予防に取り組みましょう。

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    (発行元の(株)日本医療企画のページへリンクします)

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