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広報誌「厚生労働」

特集
年金を受けとれる! 社会保険に入れる!
解説!年金改革

昨年12月に、国民年金法等の一部が改正されました。それにより、「年金の受給資格期間の短縮」「中小企業における被用者保険の適用拡大」が行われ、今年から新たに年金を受けとれるようになったり、社会保険に加入できる人が増加します。
今回は、改正の目的と内容、適用対象となる人の条件、また社会保険に加入するメリットなどについて解説していきます。

Part1:教えて!受給資格期間の短縮

今年8月から、年金の受給に必要な保険料の納付期間等が25年から10年に短縮されることになりました。ここでは、新たに受給対象者となった方が、年金を受けとるために必要な手続き等について説明します。

新たに年金を受けとれる方が増えます

 今年8月1日から政府の社会保障・税一体改革の一環として、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」が施行されます。年金を受けとれる方を増やし、納めていただいた年金保険料をできるだけ年金につなげるため、年金の受給に必要な保険料の納付期間等が25年から10年に短縮されます(図表1)。

図表1

 したがって、今回の法改正により、保険料を納めた期間等が10年以上の方は、新たに年金の給付の対象となります。
 年金を受けとるためには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。今年の2月末以降、日本年金機構から対象者の方に対し、「年金請求書」が送付されており、7月までにかけて、原則、年齢の高い方から順次送付されます。生年月日や性別によって送付スケジュールが異なりますので、ご確認ください(図表2)。また、共済組合等の加入期間を有する方などについては、今年6月〜7月にかけて送付されます。

図表2

 年金請求書は、(図表3)の黄色の封筒に入れられお手元に届きます。開封する前に、宛名欄に正しく自分の名前が書かれてあるかご確認をお願いします。封筒の中には、「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が入っています。こちらには、日本年金機構で管理・把握している加入履歴等の情報が印字されていますので、その内容の確認をお願いします。そのうえで、署名欄や電話番号、年金の受取口座など必要事項をご記入ください。

図表3

 年金請求書は、お近くの年金事務所や街角の年金相談センターの相談窓口に直接お持ちいただくこともできますし、郵送での提出も可能です。窓口での手続きを希望される方は、封筒の下部に記載されている『ねんきんダイヤル』にお電話して、相談日時を事前に予約していただくと、手続きがスムーズに運びます。年金事務所の担当の相談員が、予約日までに予約のあった方の年金記録を確認し、相談内容に応じてきめ細やかに対応できるように準備します(図表4)。窓口にお越しの際は、「年金請求書」のほかに、住民票や戸籍謄本など必要な書類をお持ちください。郵送で提出される場合も必要な書類を忘れずに同封してください。

図表4

 もし、ご本人が窓口に行くことができない場合は、代理人が提出することも可能です。その場合は、委任状の作成をお願いします。
 今回の法改正により、日本年金機構から年金請求書が送付されるのは原則65歳以上の方が対象となりますので、病気などにより、ご本人が自ら手続きを行うことが困難なケースも少なくないことが予想されます。ご本人宛に「年金請求書」が届いたことにお気づきになったご家族や、介護施設職員の方は、お手数ですが、請求書作成の支援を行っていただくようにお願いします。
 受理した年金請求書を日本年金機構が審査した後、「年金証書」を送付します(この年金証書の発行には、年金請求書のご提出後、しばらく時間がかかります)。年金のお受けとりは改正法施行後の今年9月分からで、翌月10月13日に、ご指定の口座に年金が振り込まれます。以降、2カ月分の年金を偶数月にお受けとりいただくことになります。
 手続きが遅れた場合、年金は5年間の時効の範囲内でさかのぼってお受けとりいただけます。

10年に満たない方には任意加入制度などの救済措置も

 一方、年金の保険料を納めた期間等が10年に満たない方は、残念ながら法改正後も原則として給付対象者になりません。
 しかし、そのような方のために、最長70歳まで国民年金に加入することができる国民年金の「任意加入制度」や、保険料を後から納めることができる「後納制度」という制度があります。後納制度とは平成27年10月から30年9月までの時限措置で、過去5年間の未納保険料で、時効(2年)が成立しているものについて納付できる制度です(ただし、老齢基礎年金の受給権を持っている方はこの制度を利用できません)。これらの諸制度を活用して、年金の保険料を納めた期間等を10年以上にすることができれば、年金を受けとることができます。詳細については(図表5)をご参照ください。

図表5

 また、海外に住んでいて国民年金に加入していない期間など、年金の額には反映されないものの、年金を受けとるために必要な資格期間の計算には含まれる期間(いわゆる「カラ期間」)がある場合は、年金を受けとれる可能性があります。主な「カラ期間」は次のとおりです。

  1. 1.サラリーマン(厚生年金保険や共済組合などの加入者)の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間(昭和36年4月1日〜昭和61年3月31日)
  2. 2.学生で国民年金に任意加入しなかった期間(昭和36年4月1日〜平成3年3月31日)
  3. 3.日本人であって海外に居住していた期間のうち、国民年金に任意加入しなかった期間(昭和36年4月1日から)
  4. 4.昭和36年4月から昭和61年3月末までの間に脱退手当金の支給を受け、昭和61年4月から65歳までの間に保険料を納めた期間や保険料を免除された期間がある場合

 今後、日本年金機構では、新たに年金給付の対象となった方だけでなく、年金の保険料を納めた期間等が10年に満たない方にも、年内をめどにお知らせの送付を開始する予定です。

年金の額は納付期間によって異なる

 今回の法改正により、保険料を10年間納めれば年金を受けとることができるようになりますが、我が国においては、法律により、40年間保険料を納付することが必要です。また、納付した期間が長い程、年金の額が増えますので、老後を安心して過ごすためにも、満額の老齢基礎年金を受給できるよう40年間保険料を納付していただくことが大切です。経済的事情により、保険料の納付が困難な方については、保険料の免除制度等もありますので、ご活用ください。
 具体的な年金額を見てみます。年金の保険料を納めた期間が14年の場合と、20歳から60歳になるまでの40年間、保険料を納付した場合の年金額を比較してみます。40年間納付した場合は、老齢基礎年金を満額受けとることができ、年金額は年間77万9,300円(月額6万4,941円)となります(平成29年度、図表6)。一方、14年間(168カ月)の場合は、年金額が77万9,300円(満額)×(168カ月÷480カ月)=約27万2,755円となり、月額にすると約2万2,729円。40年間納付した場合の半分以下の年金しか受けとることができません。

図表6

 そして、年金の保険料を納めた期間が10年間(120カ月)で、老齢基礎年金の受給要件をぎりぎり満たすケースではさらに少なくなり、年額が77万9,300円(満額)×(120カ月÷480カ月)=約19万4,825円、月額では約1万6,235円になります。このように、保険料を納めた期間に応じて、年金額は異なります。したがって、今回の法改正後も、40年間、年金をしっかりと納付することが大切です。
 また、一定の要件を満たせば、障害を負った場合は障害年金が、亡くなられた場合にはご遺族の方に対して遺族年金が支給されます。
 なお、今回の受給資格期間の短縮は、老齢年金及び寡婦年金が対象です。遺族年金や障害年金を受けとるための要件はこれまでどおりで変更はありません。
 最近、高齢者宅を中心に、日本年金機構をかたる電話が発生していることが報告されています。今回の法改正の件で、年金請求書をご送付する前に、日本年金機構からお電話をすることは一切ありません。「年金請求書を送付するから手数料を振り込んでほしい」「年金を振り込むから金融機関の口座を教えてほしい」といった不審な電話がかかってきた場合は、まず警察に相談するなど、くれぐれもご注意ください。
 ご不明な点や相談の予約は、お気軽に『ねんきんダイヤル』ナビダイヤル0570-05-1165までお問い合わせください。また、この機会に「ねんきんネット」を利用して、自分の年金記録を確認してみましょう。

図表7

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    (発行元の(株)日本医療企画のページへリンクします)

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