ホーム > 報道・広報 > 広報・出版 > 広報誌「厚生労働」

広報誌「厚生労働」

特集
看護師等免許保持者の届出制度とナースセンター活用術
もう一度働きたい看護師等を支援します

団塊の世代が75歳以上となる2025年。このころには医療や介護の需要が一段と高まり、看護師等の専門職のニーズがますます高まることが予測されています。これは「2025年問題」と呼ばれ大きな社会的課題となっており、こうした予測を踏まえ、国は積極的に潜在看護師等の復職支援を強化しようとしています。その一環として、2015年10月1日に改正看護師等の人材確保の促進に関する法律が施行され、看護師等(保健師、助産師、看護師、准看護師)の免許を持ちながら、その仕事に就いていない人は、氏名や連絡先などの基本情報を都道府県ナースセンターに届け出ることになりました。この届出情報をもとに、都道府県ナースセンターは離職中の看護師等とつながりを保ち、求職者になる前の段階から個々の状況に応じて復職への働きかけを行うことになります。こうした取り組みを通じ、看護職員の確保を着実に実施していきます。そこで、本特集では、看護師等免許保持者の届出制度の中身と、ナースセンターの概要を紹介します。

Introduction:看護師等の免許をお持ちの方がそれらの仕事に就いていない場合や離職した際に知っておいてほしいこと

「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の改正により、看護師等の免許をお持ちの方がそれらの仕事に就いていない場合や離職した際は都道府県ナースセンターへの届出が必要になりました。具体的な届出内容などを見ていきましょう。

ナースセンターの機能強化 看護師の復職につなげる

 国は2015年10月に、改正看護師等の人材確保の促進に関する法律(以下、看護師等人材確保促進法)を施行しました。これは、看護師等の復職支援をより一層強化し、来る2025年までに看護師等を確保するのが目的です。この改正に基づき、さまざまな取り組みが強化されており、その一つにナースセンターの役割強化があげられます。
 これまで、各都道府県に設置されているナースセンターには、就業していない看護師等を把握する仕組みがなかったため、いったん離職されてしまうと、本人が復職を希望してナースセンターを訪れない限り、ナースセンターと離職者が接点を持つことはほとんどなかったのです。
 しかし、今回の改正により、看護師等の免許をお持ちの方がそれらの仕事に就いていない場合や離職した際はナースセンターに氏名や住所、連絡先などの情報を届出することになりました。その結果、ナースセンター側から、離職中の看護師等が再び医療・介護・福祉の現場に復職できるよう、能動的な情報発信やアプローチが可能となったのです。国は、この仕組みを通じて多くの方に復職をしていただきたいと考えています。

早急な対策が必要な「2025年問題」

 なぜ今、このような取り組みが行われているのでしょうか。
 それは、8年後の2025年には、団塊の世代が75歳以上となるためです。この時点で、国民の3人に1人が65歳以上、さらに5人に1人ほどが75歳以上になります。 高齢者が増えれば、必然的に医療や介護のニーズは高まります。当然、医療機関や介護施設、在宅など、看護師等が必要とされる場面は多くなります。世界中、どこの国も体験したことのないような状況に、今から日本は備えなければなりません。
 現在、就業している看護師等は日本全体で約160万人です。2025年には約196〜206万人の看護師等が必要と推計されており、今後、順調に増えていったとしても、最大で13万人の看護師等が不足すると試算されています。少子化の現状を考えると、新規養成数を増加させることが容易ではなくなることも予測されます。これらの理由から、看護師等の確保は喫緊の課題となっています。
 そうしたなか、資格を保有しながらも未就業の看護師等は、約71万人いると推計されています。今回の改正は、こうした潜在看護師等の復職支援の強化につながるものといえるでしょう。

看護師等免許保持者の届出制度を創設 スマホで簡単に登録可能

 それでは、看護師等人材確保促進法の改正で大きく変わった内容の一つ、「看護師等免許保持者の届出制度」について説明しましょう。
これは、看護師等は離職等した場合、個人の住所や氏名、電話番号やメールアドレスなどの基本情報を都道府県ナースセンターに届け出るように努めなければならないというものです(図表1、図表2)。



 一度届出をした後で基本情報に変更が生じた場合も、その変更内容を届け出る必要があります。また、離職後に看護師として働く予定がない人も、届け出ることが求められます。年齢による届出の制限はないため、定年退職により離職した人も届出対象に含まれます。これにより都道府県ナースセンターでは、常に資格保有者の情報を把握できるようになったのです。
 さらに、より手軽に届け出ることができるよう、看護師等の届出サイト「とどけるん」により、パソコンやスマートフォン経由で簡単に登録できるようになりました(図表3)。もちろん、インターネットが使用できない人は、最寄りの都道府県ナースセンター窓口に届出票を提出する方法での登録も可能です。


 病院や介護施設などの責任者および教育機関においても、この届出が適切に行われるよう、自院・施設を離職する看護師等に必要な支援を行うことが規定されています。

復職に向けての意向確認や情報提供などに努める

 看護師等免許保持者の届出制度の創設により、都道府県ナースセンターはより積極的な復職支援ができるようになりました。
 主な支援の例としては、看護師等への復職意向の定期的な確認や、医療機関の求人情報の提供、復職に必要な医療・看護の知識や技術習得の研修の案内などがあげられます。
 都道府県ナースセンターによる情報提供の内容は、看護師等の皆さんが必要とする情報を届けるように配慮されています。
 また、都道府県ナースセンターは、ハローワークとも密接に連携を図るなど、求職者のニーズに合ったきめ細やかな復職支援を行えるようにシステム化されています。

看護師等の勤務環境の改善も促進

 潜在看護師等に復職してもらうには、そのニーズに合った情報提供などだけでは足りません。というのも、離職に大きく影響を与える要因として、看護師等を含む医療従事者の勤務環境の問題があるからです。看護などの仕事にやりがいを感じ、続けたいと思っていても、休みがとりにくい、残業が多いなどの問題により、辞めてしまう人もいるのです。特に子育て中の方は、家庭と仕事の両立が難しいことから離職せざるを得ず、なかなか復職しにくいという現状があります。
 医療従事者の離職防止および医療安全の確保を目的として、改正医療法(2014年10月施行)に基づき、次のとおり、医療従事者の勤務環境改善に取り組んでいます。

<医療従事者の勤務環境改善の促進>

1.医療機関が、PDCAサイクルを活用して計画的に医療従事者の勤務環境改善に取り組む仕組みを創設(医療勤務環境改善マネジメントシステム、図表4)


2.医療機関のニーズに応じた総合的・専門的な支援を行う体制を各都道府県で整備(医療勤務環境改善支援センター)。

 また、具体的な医療勤務環境改善策を知ってもらうため、国は現在、「いきいき働く医療機関サポートWeb(通称いきサポ)」 (http://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/)を開設しています。ここでは、国や都道府県、関係団体が行っている勤務環境改善の施策や事業、医療機関が取り組んだ勤務環境改善の具体的な事例を紹介しています。キーワードによる取り組み事例の検索ができるので、医療機関は同サイトを使い、自院に合った方法を見つけることが可能です。
 復職支援とあわせて、医療機関に勤務環境の改善に努めてもらうことで、国は、看護師等の離職防止や定着促進を図ることとしています。

  • 続きを読む
    (発行元の(株)日本医療企画のページへリンクします)

ホーム > 報道・広報 > 広報・出版 > 広報誌「厚生労働」

ページの先頭へ戻る