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広報誌「厚生労働」

特集2
読めば世の中がわかる
平成28年版『厚生労働白書』『労働経済の分析』

厚生労働省は、2016年9月30日に『平成28年版労働経済の分析』、10月4日に『平成28年版厚生労働白書』を発表しました。これらは、労働経済の現状や課題を分析することや、厚生労働行政の現状や今後の見通しを国民に伝えることを目的としています。本特集では、各白書の概要を紹介します。

各白書のポイント

PART-1『平成28年版厚生労働白書』

テーマは、第1部が「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」、第2部が「現下の政策課題への対応」。高齢期の暮らしに関する制度や国民の意識を紹介しつつ、すべての人々が生きがいをともに創り、高め合う「地域共生社会」の実現を目指すという方向性を提示しています。

PART-2『平成28年版労働経済の分析』

テーマは、「誰もが活躍できる社会の実現と労働生産性の向上に向けた課題」とし、第1章では2015年度の「労働経済の推移と特徴」、第2章では「労働生産性の向上に向けた我が国の現状と課題」、第3章では「人口減少下の中で誰もが活躍できる社会に向けて」について分析しています。

高齢者人口が急上昇するなか就業率は国際的に高い水準に

 『厚生労働白書』の第1章では、我が国の65歳以上の高齢者を取り巻く状況を解説し、第2章では、高齢期の暮らしを「就労に関する意識」などの視点から分析しています。そして、第3章では、高齢期を支える医療・介護制度の概要を、第4章では、就労意欲を持つ高齢者に対する国の支援策や地域包括ケアシステム、地域共生社会の構築について説明しています。
 1950年時点で5%に満たなかった我が国の高齢化率は、2015年には26.7%へと急上昇。2060年には39.9%と、65歳以上人口が約2.5人に1人という社会になる見通しです。
 また、高齢者のいる世帯数は2015年に2,372万4,000世帯と、30年前の2倍以上に増加。世帯構造別の構成割合では、単独世帯が全世帯のおよそ4分の1を占め、夫婦のみの世帯と合わせると半数を超えています。
 65歳以上の労働力人口は、2015年に744万人となり、増加傾向が続いています。労働力人口総数に占める割合は11.3%で、1970年の4.5%から約2.5倍に増加し、労働力人口の構成においても、高齢化の傾向が顕著となっています。高齢者の就業率は主要諸国の中で高い水準となっており、特に男性は高く、60〜64歳が74.3%、65歳以上が29.3%となっています

高齢者の多くは「働けるうちは働きたい」と考えている

 第2章では、高齢者の就労意識にも触れています。内閣府が2013年に行った「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によると、「働けるうちはいつまでも働きたい」という人が29.5%と最も多く、65歳以降の合計は約66%に達しています(図表1=PDF参照)
 この結果には、日本人の多くが、「健康であるうちは働き続けたい」と考えていることが示唆されています。ちなみに、2013年時点での我が国の健康寿命は、男性が71.19歳、女性が74.21歳です。
 また、厚生労働省が2016年に行った「高齢者社会に関する意識調査」では、高齢者の就業促進のために国が取り組むべき施策について、働く意欲のある当事者に聞いています。それによると「企業が65歳以上の人を雇用するインセンティブづくり」、「希望者全員が65歳まで働ける仕組みの徹底」、「ハローワークでの高齢者への職業紹介の取り組みの強化」、「紹介できる職種の拡大などシルバー人材センターの機能強化」、「70歳までの定年延長」といった回答が多くありました(図表2=PDF参照)

意欲ある高齢者が活躍できる「生涯現役社会」の実現へ

 第4章では、人口高齢化を乗り越える視点が提示されています。
 視点の一つが「生涯現役社会」です。働く意欲のある高齢者が、長年培ってきた知識や経験を生かして年齢にかかわりなく活躍し続けられる「生涯現役社会」の実現は、高齢者自身の健康や生きがいにもつながることから、ますます重要になっています。
 2016年度には、全国の主要なハローワークに設置している「高年齢者総合相談窓口」を「生涯現役支援窓口」へと変更し、窓口の積極的な周知を図るとともに、新たに求人者支援員を設置して、高齢求職者が活躍できる求人開拓・確保の強化などを開始しています(図表3=PDF参照)。また、2016年の法律改正により、65歳以降に新たに雇用された人にも雇用保険が適用されるほか、シルバー人材センターの就業時間の要件緩和なども可能となりました。
 今後は、特に65歳以上の高齢者の就業機会を確保するため、高齢者の雇用環境の整備や再就職支援などを行っていく予定です。

「地域で安心して暮らせる社会づくり」を推進

 2つ目の視点は、健康寿命を延ばすための「健康づくり・疾病等の予防」です。国では、ヘルスケアポイントの付与など個人や保険者が自ら進んで健康づくりを行うインセンティブを与える仕組み構築や、高齢者のフレイル(虚弱)対策などに取り組んでいます。
 3つ目の視点が、「地域で安心して自分らしく老いることのできる社会づくり」です。
 高齢者が地域で安心して暮らせる社会をつくるには、医療・介護の提供体制を整え居住環境を充実させるだけではなく、生活支援と介護予防を組み合わせた総合的な仕組みを構築する必要があります。この仕組みの要となるのは、「在宅医療の推進」、「ICTの活用」、「認知症施策の推進」、「在宅医療・介護連携の推進」、「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の配置や協業体の設置による生活支援サービスの充実」、「地域づくりによる新しい介護予防の推進」、「情報提供や相談体制の充実などによる介護に取り組む家族への支援」などです。
 この仕組みづくりでは、市町村が中心となり、高齢者も含めて生活支援・介護予防サービスを提供したいと考えている個人や団体と地域のニーズをマッチさせることが重要です。具体的には、ボランティア、NPO、民間企業、社会福祉法人、協同組合などといった多様な事業主体の参加を促す必要があります(図表4=PDF参照)

「地域共生社会」へのパラダイムシフト

 人口高齢化を乗り越える4つ目の視点は「地域共生社会」です。これは、高齢者だけではなくすべての人々が地域に暮らし、生きがいをともにつくり、高め合う社会といえます。この背景には、核家族化や人々の移動性・流動性の高まりなどによって地縁・血縁が希薄化し地域社会が脆弱化していること、また、公的サービスは分野ごとに質・量の両面で充実が図られてきたものの、近年では「ダブルケア」のように、ニーズが複雑化・多様化してきていることがあります。だからこそ、誰もが支え、支えられる共生型の地域社会の再生が求められているのです。
 こうした状況を踏まえ、単独の相談機関では十分に対応できない、いわゆる「制度の狭間」の課題の解決を図るために、複合的な課題を抱える人などに対する包括的な相談支援システムを構築していきます。それとともに、高齢者も含むボランティアなどと協働し、地域に必要とされる社会資源を創出する取り組みをモデル的に実施します。
 具体的には、市区町村が実施主体となって、地域の中核となる相談機関を中心に、以下の取り組みを行います。@相談者が複数の相談機関に行かなくても、複合的な悩みを総合的に相談できる体制をつくる、A相談者本人だけでなく、世帯全体が抱える課題も把握する、B多機関・多分野の関係者の会議などを通じ、課題に応じた支援を包括的に提供する、C地域に不足する社会資源の創出を図る。
 この包括的支援体制を効果的かつ効率的に機能させるためには、総合的な福祉人材を育成し確保していくことも必要だと考えられます(図表5=PDF参照)

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