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広報誌「厚生労働」

「認知症の本人及び家族への地域資源を活用した支援に関する調査」を公表しました

対象としたのは4つの自治体

 わが国の認知症高齢者の数は2012年に約462万人で、25年には約700万人に増加し、65歳以上の約5人に1人が認知症になると推計されています。認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会を実現するため、
厚生労働省では15年に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定しました。これは7つの柱(図表)から構成されています。
 厚生労働省では新オレンジプランについて、地域資源を活用して取り組んでいる自治体のなかから4つの自治体を対象に、実施状況を調査しました。認知症の人が自分らしく暮らし続けることができる地域づくりについて、自治体が地域資源を活用しながら主体的に進めている取り組み内容などを報告することで、他自治体、関係機関などに参考情報として活用してもらうことを目的としています。
 調査対象となった自治体は、北海道砂川市、岩手県岩手郡岩手町、兵庫県川西市、熊本県山鹿市です。調査結果は、「『認知症の本人及び家族への地域資源を活用した支援に関する調査―自治体における新オレンジプランの実施状況について―』アフターサービス推進室活動報告書Vol24」としてまとめました。
調査結果は次のとおりです。

1.認知症サポーターの養成と活動の支援(熊本県山鹿市)

 山鹿市では、市民や介護事業所職員などを対象に、認知症地域サポートリーダー養成講座を実施しています。ここでは、地域における認知症支援を実践的に学ぶことができ、同講座の修了者は任意でグループをつくり、認知症の理解と啓発を進めるために地域活動を行っています。
 その一つが、認知症への理解を深めるために、年に2回開催されている市民フォーラムです。フォーラムで取り上げる内容は、認知症地域サポートリーダーの年間の活動を踏まえたもの。これまで、「山鹿市の取り組みと現状」の報告や、若年性認知症の本人による講演などを企画してきました。
また、同市内の学校では、認知症サポーター養成講座を実施しています。小学校では、絵本を使って認知症の人への理解や支援について教えます。中学校や高校では、認知症に関する講義を行い、講座終了後にはグループごとに発表をするなど、振り返りができるように工夫しています。受講対象者に合わせた講座内容にすることで、理解につなげているのです。

2.認知症初期集中支援チームの設置(北海道砂川市)

 認知症初期集中支援チーム(以下、「集中支援チーム」)は、認知症を初期段階で把握し、適切な医療・介護につなげることを目的としています。砂川市では、地域包括支援センターを運営する一般社団法人北海道総合在宅ケア事業団と、認知症疾患医療センターを運営する砂川市立病院に集中支援チームの業務を委託。これらに行政が加わって、協働して業務を進めています。2014年9月から翌年10月末までの間に、集中支援チームでは18人の支援を行いました。
 同市の認知症初期集中支援のポイントは、[1]訪問時の状況確認と[2]医師による医療にかかる緊急性の判断です。まず、医師以外のチーム員が訪問し、対象者の状況を確認します。その情報をもとに、会議で医師が[2]の医療にかかる緊急性を判断します。状況確認の時点で特に緊急性があると判断される場合は、会議開催をまたずに、医師に連絡をとります。
 対象者への支援として、受診勧奨や介護保険サービス・介護保険外サービスの案内などを行っています。
集中支援チームによる支援終了後も、対象者が独居の場合などは医療・介護につないだ後も定期的に連絡をとるなど、モニタリングを実施しています。

3.医療・介護関係者等の間の情報共有の推進(兵庫県川西市)

 川西市では、医療・介護情報連携ツール「つながりノート」の活用を進めています。これは、大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室が考案した「みまもり・つながりノート」を基本案に、同教室、川西市、川西市医師会が検討を重ねて作成。2013年2月に導入しました。
 同ノートには、既往歴や介護事業所の利用状況などの医療・介護情報のほか、医療・介護に関する依頼事項や留意点、質問などを書き込むことができます。同ノートをやりとりすることで、本人や家族は孤立せずにすむ効果があります。実際に家族からは「かかりつけ医や介護職に相談しやすくなった」、介護職からは「家族が何に困っているのかを理解できた」などの声があがっています。
 川西市では、連絡会で同ノートの活用例を紹介するなどして、さらなる利用促進につなげています。

4.地域での見守り体制の整備(岩手県岩手郡岩手町)

 岩手町では2012年度から、「高齢者の日常の安否確認」、「福祉問題の早期発見」、「緊急時の迅速な対応」、「安心感を保った地域生活」を目標に、「安心生活あいネット」を立ち上げました。
 その活動の一つとして、地域の事業所による見守りにも力を入れています。具体的には、郵便や水道、ガスなど、訪問業務を行う企業などの事業所が見守り事業所として登録。通常業務を行いながら、日常的に高齢者を見守り、異変を察知した際には地域包括支援センターに連絡する仕組みです。
 また、「緊急情報カード」の利用も促進しています。これは、75歳以上の独居・夫婦世帯や希望者を対象にしたものです。かかりつけ医療機関や服薬内容などを書いたカードを緊急情報カプセルに入れ、自宅冷蔵庫の卵ケースに置いておくことで、緊急搬送時に消防署や医療機関などが必要な情報を迅速に取得できます。同カードは、行政・民生委員・消防署などの関係機関で個人情報を共有することへの同意書も兼ねています。

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